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特定技能の賃金は日本人と同等以上!社労士が教える比較方法と実務で失敗しない3つの重要ルール
特定技能外国人を雇用する際、多くの企業が頭を悩ませるのが「賃金設定」です。「日本人と同等以上」という要件は知っていても、具体的な比較対象がいない場合や、手当の扱い、昇給ルールなどで判断に迷うケースが後を絶ちません。
賃金設定を誤ると、ビザ(在留資格)の申請が不許可になるだけでなく、最悪の場合は今後の受入れが停止されるリスクもあります。本記事では、外国人雇用に強い社労士が、実務で失敗しないための賃金設定のルールと比較方法、入管への説明ポイントをQ&A形式で分かりやすく解説します。
Q1. 特定技能外国人の賃金を決めるとき、まず何に注意すべきですか?
【結論】同じ業務に従事する日本人社員と比較して、同等以上の報酬額を確保することが絶対条件です。
特定技能制度において、賃金設定は最も重要な審査ポイントの一つです。基本的には、社内に同じ業務を行う日本人従業員がいる場合、その従業員の給与水準と比較して低くならないように設定しなければなりません。これは、安価な労働力としての外国人雇用を防ぐためのルールです。
実務上よくあるケースとして、基本給だけを合わせてしまい、賞与や手当で差をつけてしまう失敗が見られます。比較対象となる日本人が定期昇給している場合、特定技能外国人にも同様の昇給ルールを適用する必要があります。一方で、比較対象となる日本人がいない場合は、賃金規定や近隣の同業他社の水準を参考にする必要があります。
Q2. 「日本人と同等以上」とは具体的にどういう意味ですか?手当も含まれますか?
【結論】基本給だけでなく、職務手当や精勤手当など、業務に関連する手当を含めた総額で判断されます。
「同等以上」の判断は、単に基本給の金額だけで行われるわけではありません。毎月決まって支払われる諸手当を含めた所定内給与全体で比較を行う必要があります。例えば、日本人社員には支給されている「皆勤手当」や「職務手当」が、合理的な理由なく特定技能外国人に支給されていない場合は、不当な差別とみなされる可能性があります。
ただし、通勤手当や扶養手当、住宅手当などは、個人の事情(通勤距離や家族構成など)に基づいて支給されるものであるため、条件に該当しない場合は支給しなくても問題ありません。一方で、業務内容や責任の重さが全く同じであるにもかかわらず、国籍を理由に一律で手当をカットすることは認められません。
Q3. 社内に同じ業務をする日本人がいない場合、どうやって賃金を設定すればいいですか?
【結論】賃金規定に基づいた設定を行うか、規定がない場合は近隣の同業他社の水準を参考に決定します。
比較対象となる日本人従業員がいない場合でも、恣意的に低い賃金を設定することはできません。まずは就業規則や賃金規定を確認し、年齢や経験年数に基づいた給与テーブルがある場合は、それに当てはめて算出します。
実際の顧問先では、明確な賃金テーブルが存在しない中小企業も少なくありません。その場合は、ハローワークに出されている同地域・同職種の求人票や、賃金構造基本統計調査などの公的な統計データを参照し、そこから大きく乖離しない金額を設定することをお勧めしています。入管への申請時には、なぜその金額になったのかという「合理的理由」を説明する書類の添付が求められることがあります。
Q4. 比較対象の日本人が新入社員しかいません。経験のある特定技能外国人の給与はどうすべきですか?
【結論】技能実習修了者などの経験者であれば、新入社員よりも高い賃金を設定すべきです。
特定技能外国人は、試験合格者であれ技能実習からの移行者であれ、一定の専門性・技能を持っているとみなされます。特に技能実習3年を修了して特定技能に移行する場合、実質的に3年以上の実務経験がある即戦力です。そのため、全く未経験の日本人新入社員と同額の賃金では「不当に低い」と判断されるリスクがあります。
一方で、その外国人が担当する業務が、新入社員と全く同じ補助的な業務に限られるのであれば、同額でも説明がつく余地はあります。しかし、実務上は経験者としてより高度な業務を任せることが多いため、経験年数や能力に応じた加算を行うのが安全です。これまで多くの企業を支援してきた中で、経験年数を考慮せずに一律初任給で設定し、入管から追加説明を求められるケースを何度も見てきました。
Q5. 賃金テーブルがない中小企業です。入管への「合理的理由」はどう説明すればよいですか?
【結論】本人の能力、経験年数、担当業務の責任範囲を具体的に挙げ、算出根拠を文章化して説明します。
賃金テーブルがない場合、「社長の勘」で決めているように見えてしまうと審査で不利になります。説明書には、「同職種の初任給〇〇円をベースに、技能実習3年間の経験を評価して〇〇円を加算した」といった具体的な積算根拠を記載することが重要です。
- 基本給の設定根拠(地域の最低賃金や相場との比較)
- 経験・能力に対する評価(技能検定の等級など)
上記のような要素を分解して記述します。一方で、もし賃金が最低賃金ギリギリである場合は、その理由(業務が単純作業である等)をより慎重に説明する必要がありますが、特定技能の趣旨からするとあまり好ましくはありません。
Q6. 賃金説明書などの書類作成で、特に注意すべきポイントはありますか?
【結論】比較対象者の実名や経験年数を正確に記載し、差異がある場合はその「合理的な理由」を明記することです。
入管に提出する「特定技能外国人の報酬に関する説明書」では、比較対象となる日本人従業員の氏名や入社時期、給与額を記載する欄があります。ここで嘘を書くことは絶対にNGです。もし比較対象者と特定技能外国人の給与に差がある場合は、その理由欄に「勤続年数の違いによる」「保有資格の違いによる」といった客観的な理由を記載しなければなりません。
実務で誤解されやすいポイントとして、比較対象者は「最も近い条件の日本人」を選ぶ必要があります。全く異なる部署の日本人や、役職者を比較対象にしてしまうと、適切な比較ができず、審査が長期化する原因となります。
Q7. 外国人だからという理由で、手当や賞与に差をつけることはできますか?
【結論】国籍を理由とした差別的取扱いは法律で禁止されており、合理的な理由のない格差は認められません。
労働基準法第3条では、国籍を理由とする賃金差別を禁止しています。したがって、「外国人だから賞与はなし」「外国人だから退職金はなし」という規定は違法となる可能性が高いです。日本人社員に賞与が支給されているなら、同じ支給要件を満たす特定技能外国人にも支給する必要があります。
一方で、賞与が業績連動や個人の評価に基づくものであり、評価の結果として支給額に差が出ることは問題ありません。ただし、その評価基準が日本人と外国人で公平に運用されていることが前提です。最初から「外国人は支給対象外」とするような規定は絶対に避けてください。
Q8. 昇給について、日本人社員と異なるルールを適用しても問題ありませんか?
【結論】原則として日本人と同様の昇給ルールを適用すべきであり、異なる場合は合理的な説明が必要です。
特定技能雇用契約においては、日本人と同等の待遇を確保することが求められます。日本人が毎年昇給しているのに、特定技能外国人だけ何年も賃金が据え置きになっている場合、更新申請時に問題視されることがあります。
実際の顧問先では、日本人社員には年功序列的な定期昇給があり、中途採用の外国人には能力評価給を適用したいという相談を受けることがあります。このように人事制度自体が異なる場合は、その制度の違いを合理的に説明できれば認められる可能性がありますが、単に「外国人は昇給させない」という運用は認められません。
Q9. 賃金設定に不備があると、どのようなペナルティがありますか?
【結論】在留資格の不許可や取消しに加え、最悪の場合は特定技能外国人の受入れ停止処分を受けます。
賃金要件を満たしていないことが発覚した場合、まずはビザの申請が不許可になります。また、雇用後に契約通りの賃金を支払っていなかったり、日本人よりも不当に低い賃金で働かせていたことが判明した場合、出入国在留管理庁から改善命令が出されることがあります。
さらに悪質な場合や改善命令に従わない場合は、特定技能外国人の受入れ機関としての欠格事由に該当し、今後5年間は特定技能外国人を雇用できなくなる可能性があります。実務上よくあるケースとして、登録支援機関の定期監査で賃金台帳の不備を指摘され、慌てて修正する企業も多いですが、コンプライアンス違反は企業のリスク管理として致命的になりかねません。
まとめ
特定技能の賃金設定は、「日本人と同等以上」という原則を正しく理解し、客観的な根拠を持って決定することが重要です。比較対象者の選定や、手当・昇給のルールなど、細かな判断が求められる場面も多くあります。
安易な賃金設定は、ビザ審査の不許可だけでなく、企業の信頼失墜や受入れ停止という重大なペナルティにつながります。自社の賃金規定や評価制度を見直し、外国人も日本人も公平に働ける環境を整えることが、結果として優秀な人材の定着につながります。
特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
監修者プロフィール
本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する 特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。 法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、 企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。
日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、 「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。 特に、従業員100名以上規模の企業における 実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。
- 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
- キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
- HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
- 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
- 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
- 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
- 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績
制度の解説にとどまらず、 「このケースではどう判断すべきか」 「どこでトラブルになりやすいか」 といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。
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