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外国人離職率を下げる5つの施策と事例|特定技能の定着と支援機関の選び方を社労士が解説

2026.01.30 社労士コラム

特定技能外国人の受け入れが進む一方で、「せっかく採用したのにすぐに辞めてしまう」「現場に馴染めずトラブルが絶えない」といった相談を、私たち社労士法人は数多く受けています。外国人材の離職は、採用コストの損失だけでなく、現場の士気低下にもつながる深刻な問題です。

本記事では、外国人雇用専門の社労士として現場で見てきた「本当の離職理由」を紐解き、離職率を劇的に下げるための5つの具体的施策や、登録支援機関の選び方・切り替えによる成功事例を解説します。2026年の制度改正も見据え、長く活躍してもらうための定着ノウハウを持ち帰ってください。

Q1. 特定技能外国人が離職する本当の理由は何ですか?(給与以外)

【結論】給与額そのものよりも「将来のキャリアが見えない不安」や「職場での孤立」が主な原因です。

多くの企業様が「給与を上げれば定着する」と考えがちですが、実務上よくあるケースとして、給与は相場並みでも「ここでは成長できない」「相談できる人がいない」という理由で離職を選ばれることが多々あります。特に特定技能外国人は、技能実習生よりも転職の自由度が高いため、より良い環境を求めて移動しやすい傾向にあります。

条件による判断の分かれ目:
単身で来日している外国人の場合は「職場での人間関係や孤独感」が離職の引き金になりやすく、一方で家族への仕送りを最優先している層であれば「残業時間の少なさ(手取り額の減少)」が直接的な原因になることがあります。

  • 将来への不安:「特定技能2号へ進めるのか」「永住権は取れるのか」という道筋が見えない。
  • 情報の非対称性:母国語での情報が不足しており、会社のルールや日本の制度を誤解している。

Q2. 現場でよく見る「コミュニケーション不全」による離職とは?

【結論】日本語能力の不足ではなく、「業務指示の曖昧さ」や「日本特有の暗黙の了解」がストレス源になっています。

「日本語が通じないから辞めた」という報告を受けることがありますが、詳しくヒアリングすると、実は「見て覚えろ」「空気を読んで」といった指示が伝わっていないケースがほとんどです。彼らは真面目に働こうとしていますが、明確なゴールが示されないことで「自分は役に立っていないのではないか」と自信を喪失し、離職に繋がります。

条件による判断の分かれ目:
日本語レベルが高い(N2以上)人材の場合は、言葉がわかる分「なぜ日本人は本音と建前を使い分けるのか」という文化的な摩擦に悩みやすく、日本語レベルが低い(N4程度)人材の場合は、単純に「安全管理上の指示が伝わらない」ことがリスクになります。

Q3. 離職率を下げるためにまず取り組むべき5つの施策とは?

【結論】「生活基盤の安定」から「評価の可視化」まで、以下の5つのステップを順に実施すべきです。

これまで多くの企業を支援してきた中で、離職率が低い企業は例外なく「業務外の支援」と「公平な評価」を両立させています。いきなり全てを行うのは難しいため、まずは生活面の不安を取り除くことから始めてください。

  • 1. 生活立ち上げ支援の徹底:住居、通信、銀行口座など、生活のストレスをゼロにする。
  • 2. 母国語相談窓口の設置:社内の上司には言えない悩みを吐き出せる場所を作る。
  • 3. メンター制度の導入:業務指導役とは別に、年齢の近い「お世話係」をつける。
  • 4. 評価基準の明確化:「何ができれば昇給するのか」を可視化する。
  • 5. 定期的なキャリア面談:3ヶ月に1回は、業務以外の将来の話をする時間を設ける。

条件による判断の分かれ目:
すでに社内リソースが不足している場合は、1と2を外部の登録支援機関に委託し、社内では3と4に注力するのが現実的です。一方で、人事担当者が充実しているなら、全て自社で内製化(自社支援)することで、より強いエンゲージメントを築けます。

Q4. メンタルヘルスケアは具体的にどう行えばよいですか?

【結論】社内の人間ではなく、「利害関係のない第三者」が母国語で話を聞く体制を作ることが最重要です。

外国人が抱えるストレスの多くは、日本人上司や同僚との関係性に起因します。そのため、社内の人間に相談しても「筒抜けになるのではないか」と警戒され、本音が出てきません。実務上は、登録支援機関の通訳担当者や、外部のカウンセラーを活用するのが効果的です。

条件による判断の分かれ目:
特定技能外国人が数名程度の小規模な受け入れであれば、社長や役員が直接食事に誘うなどのウェットな対応が機能することもあります。一方で、数十名規模で受け入れている場合は、組織的なメンタルヘルスチェックの仕組み(定期的なアンケートなど)を導入すべきです。

Q5. 評価制度や昇給ルールは定着率にどう影響しますか?

【結論】「頑張りが正当に評価される」という実感を持たせることで、定着率は劇的に向上します。

日本企業特有の「年功序列」や「長く働けば少しずつ上がる」という感覚は、外国人には通用しにくいです。「この資格を取れば月給が5,000円上がる」「この作業リーダーになれば手当がつく」といった、短期的かつ明確なインセンティブがモチベーション維持に不可欠です。

条件による判断の分かれ目:
技能実習から移行した社員には、実習生時代との待遇差(責任の重さと給与のバランス)を明確に説明する必要があります。一方で、新規に入国した社員には、日本の生活コストや税金について丁寧に説明し、手取り額への納得感を高めるアプローチが必要です。

Q6. 登録支援機関を切り替えることで離職率は改善しますか?

【結論】支援機関の質が低い(手続き代行しかしていない)場合、切り替えは即効性のある改善策になります。

「登録支援機関にお金を払っているのに、何もしてくれない」という不満は、外国人本人からも企業からもよく聞かれます。法定の「3ヶ月に1回の定期面談」が形式的なサインだけで終わっている場合、外国人の不満は蓄積され、ある日突然の退職につながります。親身になってくれる支援機関に変えるだけで、本人の安心感が変わり、定着率が改善した事例は多数あります。

条件による判断の分かれ目:
現在の支援機関が「通訳対応が遅い」「緊急時の対応が悪い」なら即座に切り替えを検討すべきです。一方で、支援機関との関係が良好でも離職が続く場合は、社内の受入体制や労働条件そのものに問題がある可能性が高いです。

Q7. 【事例】支援機関の変更で離職者がゼロになった企業の共通点は?

【結論】「事務手続き屋」ではなく、外国人の「生活パートナー」として動ける機関を選んだ企業です。

ある製造業の企業様では、以前の支援機関が書類作成しか行わず、外国人の私生活トラブル(騒音問題や病院受診)を放置していました。その結果、地域住民との摩擦も起き、外国人が居づらくなって離職が相次ぎました。そこで、生活サポートに強い支援機関へ切り替え、24時間の多言語対応や病院同行を徹底したところ、外国人の不安が解消され、以降1年以上離職者ゼロを達成しました。

条件による判断の分かれ目:
コスト最優先で「月額支援委託費」が極端に安い機関を選ぶと、どうしても支援内容は希薄になります。定着率を重視するなら、多少コストがかかっても「人的サポート」が厚い機関を選ぶのが、結果的に採用コスト削減につながります。

Q8. 法定の「支援計画」を形骸化させないためのチェックポイントは?

【結論】計画書に書かれた実施項目が、「いつ」「誰が」「どのように」行われたか、記録と実態が一致しているか確認すべきです。

支援計画書は入管に提出するための書類ではなく、定着支援の実行マニュアルです。実務上よくある失敗は、計画書を作って満足し、実際のオリエンテーションや公的手続き同行がおざなりになるケースです。特に「事前ガイダンス」や「生活オリエンテーション」は、入社後のミスマッチを防ぐ最後の砦です。

条件による判断の分かれ目:
自社支援(登録支援機関を使わない)を行う場合は、担当者が業務多忙で支援がおろそかになりがちなので、業務時間の確保が必須です。外部委託している場合は、毎回の「実施報告書」を詳しくチェックし、定型文の使い回しがないか監視する必要があります。

Q9. 2026年の制度改正を見据えて、今からどんなキャリアパスを用意すべきですか?

【結論】「特定技能2号」への移行や、その先の「永住権」取得までを見据えた長期的な育成プランを提示すべきです。

政府は「育成就労制度」の創設など、外国人が日本で長く働ける環境整備を進めています(2026年目途)。これからの時代、「3年や5年で帰国する労働力」として扱っている企業は選ばれなくなります。「ウチで頑張れば、家族を呼んで日本でずっと暮らせるよ」という具体的な未来を見せられる企業だけが、優秀な人材を定着させることができます。

条件による判断の分かれ目:
単純労働の担い手として割り切るなら、短期的な契約更新でも回るかもしれません。しかし、現場のリーダーや将来の幹部候補として期待するなら、日本人社員と同様の等級制度への組み込みや、資格取得支援制度の整備が急務です。

まとめ

外国人離職率を下げるためには、給与などの条件面だけでなく、「心のケア」と「将来の展望」の両輪が必要です。特に特定技能制度においては、登録支援機関の質が定着率に直結します。「今の支援機関は何もしてくれない」と感じているなら、見直しを検討する時期かもしれません。

外国人雇用は、単なる労働力の確保ではなく、企業の組織力を高めるチャンスでもあります。制度の複雑さや現場のトラブルにお悩みの際は、ぜひ専門家にご相談ください。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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