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「5年の壁」を突破する特定技能2号移行の全貌|対象職種拡大と熟練者の定着戦略を社労士が解説

2026.01.31 社労士コラム

特定技能制度の開始から時間が経過し、多くの企業で「特定技能1号」の在留期限である「通算5年」が目前に迫っています。これまで現場を支えてくれた熟練の外国人材を、期限だからといって帰国させることは、企業にとって莫大な損失です。

そこで注目されているのが「特定技能2号」への移行です。2023年の閣議決定により対象分野が大幅に拡大され、実質的にほぼすべての分野で移行が可能となりました。しかし、現場では「要件が複雑でわからない」「試験のハードルが高い」といった声も聞かれます。

本記事では、外国人雇用に強い社会保険労務士が、特定技能2号への移行メリットや具体的な手続き、そして「熟練者の定着」という経営課題を解決するための戦略を解説します。

5年で帰国させるのはもう限界?特定技能2号移行が企業の命運を分ける理由

【結論】特定技能2号への移行は、企業の持続的な成長に不可欠な生存戦略です。

特定技能1号の在留期間は通算で5年までと決まっています。もし2号へ移行しない場合は、5年かけて育てた熟練の人材を必ず手放さなければなりません。一方で、2号への移行に成功すれば、彼らは在留期限の上限なく働き続けることが可能になります。

実務上よくあるケースとして、5年満了で帰国した人材の穴埋めに、またゼロから新人を採用・育成している企業が見受けられます。これでは採用コストと教育コストが永遠にかかり続け、現場の生産性は一向に向上しません。「5年の壁」を突破し、リーダー層として定着させることこそが、人手不足時代を生き抜く鍵となります。

特定技能1号と2号の決定的な違い|社労士が教える「家族帯同」と「在留期限」の実務的価値

【結論】在留期間の更新制限がなくなり、配偶者や子を日本に呼べる点が決定的な違いです。

特定技能1号はあくまで「一時的な労働力」という側面が強く、家族の帯同は認められていません。一方で、特定技能2号は「熟練した技能を持つ人材」として扱われ、要件を満たせば配偶者と子を日本に呼び寄せることができます。

また、1号は通算5年で必ず終了しますが、2号は在留期間の更新回数に制限がありません。つまり、本人が希望し、企業が雇用し続ける限り、定年まで日本で働くことが可能です。さらに、2号として実績を積めば、将来的に「永住者」への道も開かれます。これは、外国人材にとって非常に強力なモチベーションとなります。

【2024年最新】2号移行が可能な職種一覧と、新たに追加された分野の要件

【結論】介護分野以外のほぼすべての特定技能分野で、2号への移行が可能になりました。

以前は建設と造船・舶用工業の2分野のみでしたが、現在はビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造、外食業なども対象に追加されています。

主な要件のポイント:

  • 試験ルート:各分野で定められた「特定技能2号評価試験」への合格が必要です。
  • 実務経験:分野ごとに「実務経験(数年の監督者経験など)」が求められます。

なお、介護分野については「介護福祉士」の資格を取得することで在留資格「介護」へ移行できるため、特定技能2号の枠組みとは別のルートが整備されています。

実際の顧問先で直面した「熟練技能者の流出」を防いだ2号移行の成功事例

【結論】明確なキャリアパスの提示が、他社への引き抜きや帰国を防ぐ決め手となります。

私が担当するある製造業の顧問先では、特定技能1号として働く優秀なベトナム人社員がいました。彼は「5年終わったらベトナムに帰って結婚する」と話していましたが、会社としては彼をリーダーに据えたいと考えていました。

そこで会社側は、特定技能2号の試験支援を行い、「2号になれば奥さんを日本に呼んで一緒に暮らせる」「給与も日本人リーダーと同等にする」と提案しました。その結果、彼は猛勉強の末に試験に合格し、現在は奥様と日本で暮らしながら、後輩の指導役として活躍しています。将来のビジョンを見せることで、流出を防いだ好事例です。

「熟練した技能」はどう証明する?試験合格と実務経験のハードルを越えるポイント

【結論】技能試験の合格に加え、実務での「監督・指導経験」を具体的に証明する必要があります。

特定技能2号に求められる「熟練した技能」とは、単に作業ができるだけでなく、工程を管理し、他の作業員を指導できるレベルを指します。これを証明するためには、以下の2つが重要です。

  • 試験対策:各業界団体が実施する2号試験は難易度が高いため、過去問の分析や日本語での実技説明の練習が必須です。
  • 実務経験の証明:所属機関(企業)が作成する実務経験証明書において、「いつからいつまで」「どのような立場で」「何人の部下を指導したか」を詳細に記載しなければなりません。

実務上では、現場での班長経験やリーダー経験を職務経歴書にどう落とし込むかが審査のポイントになります。

登録支援機関への委託費をゼロに?2号移行で変わる支援義務とコスト削減の現実

【結論】特定技能2号には「支援計画」の策定・実施義務がないため、管理コストを大幅に削減できます。

特定技能1号の場合、受入れ企業には事前ガイダンスや生活オリエンテーション、四半期ごとの定期面談などの義務的支援が課されています。自社で実施できない場合は登録支援機関に委託する必要があり、1名あたり月額2〜3万円程度の委託費が発生するのが一般的です。

一方で、特定技能2号に移行すれば、これらの義務的支援は不要になります。日本人社員と同様の労務管理で済むため、登録支援機関への委託費をカットすることが可能です。例えば10名を2号に移行できれば、年間数百万単位のコスト削減に繋がるケースもあります。

家族を呼べる安心感が「一生ここで働きたい」を生む|定着率を高める心理的メリット

【結論】家族との日本での生活基盤ができることで、帰国リスクが極限まで低下します。

単身で日本に来ている外国人材の多くは、母国に残した家族への送金や、将来の帰国後の生活を考えて働いています。そのため、少しでも条件の良い職場があれば転職したり、目標額が貯まれば帰国したりする傾向があります。

しかし、家族を帯同できる特定技能2号では、生活の拠点が「日本」に移ります。子供が日本の学校に通い、配偶者が日本で生活するようになれば、簡単に帰国や転職を選択しなくなります。「家族と安心して暮らせる会社」という心理的安全性こそが、最強の定着戦略となるのです。

実務で誤解されやすい「2号移行の落とし穴」|不許可リスクを避けるための事前準備

【結論】本人だけでなく、受入れ企業の法令遵守状況や社会保険の加入状況も厳しく審査されます。

2号移行の申請時に不許可になるケースとして、以下の落とし穴に注意が必要です。

  • 税金・社会保険の未納:本人に未納がある場合は論外ですが、企業の経営状況や社会保険加入状況も審査対象です。
  • 素行不良:1号在留中に資格外活動のオーバーワークや、軽微な法令違反があった場合、2号への変更が認められないことがあります。
  • 家族の扶養要件:家族を呼ぶ場合、その家族を養えるだけの安定した収入があるかが問われます。

特に、1号から2号への切り替えは「在留資格変更許可申請」となるため、1号時代の在留状況がクリーンであることが大前提です。日頃の労務管理がここで試されます。

2026年の制度改正を見据えて|特定技能2号を軸にした中長期的な人材育成ロードマップ

【結論】「育成就労」制度への転換を見据え、2号社員を現場の管理者として育成すべきです。

政府は技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労」制度を創設する方針を固めています。この新制度は、特定技能への移行を前提とした人材育成の仕組みです。つまり、将来的には「育成就労(3年)→特定技能1号(5年)→特定技能2号(無期限)」というキャリアパスが標準化されます。

今から特定技能2号の育成に力を入れている企業は、将来入ってくる育成就労生や特定技能1号を指導する「外国人リーダー」を確保できている状態になります。制度改正に慌てることなく、中長期的な視点で組織図を描くことが重要です。

まとめ

特定技能2号への移行は、単なる在留期間の延長手続きではありません。企業にとっては、熟練した技術を持つ人材を長期的に確保し、組織の核として定着させるための重要な経営判断です。

対象職種が拡大した今こそ、社内の特定技能1号人材に対して、試験対策の支援やキャリアパスの提示を始める絶好のタイミングです。要件の確認や準備には時間がかかるため、早めの着手をおすすめします。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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