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外国人雇用の労基署調査で指摘される5つの指導事例!特定技能の受入れ停止を防ぐ社労士の対策
近年、人手不足の解消策として「特定技能」外国人の雇用が急増する一方で、労働基準監督署(労基署)による調査(臨検)の対象となる企業も増えています。「登録支援機関に任せているから大丈夫」と考えていませんか?実は、労基署からの是正勧告は、単なる労務改善にとどまらず、特定技能の「受入れ停止」という最悪の事態を招く引き金になり得るのです。
本記事では、外国人雇用に強い社会保険労務士が、実際の調査で指摘されやすい5つの事例と、企業が取るべき具体的な防衛策を解説します。特定技能外国人の受入れを継続し、企業のコンプライアンスを守るための実務ノウハウとしてお役立てください。
Q1. 「特定技能だから大丈夫」は危険?労基署調査が外国人雇用企業を狙う背景
【結論】外国人雇用企業は労基署の重点監督対象であり、入管庁との連携強化によりリスクは年々高まっています。
労基署は定期的に「重点監督対象」を定めて調査を行っていますが、外国人労働者を雇用している事業場は、その対象になりやすい傾向があります。特に、特定技能外国人が多く働く建設、食品製造、介護などの分野は、慢性的な人手不足により長時間労働が発生しやすいと見なされているからです。
実務上よくあるケースとして、技能実習生を受け入れていた企業が特定技能へ切り替えた際、「実習生と同じ感覚」で管理を続けてしまい、調査で指摘を受けるパターンが散見されます。技能実習法と異なり、特定技能は入管法と労働関係法令の遵守がよりダイレクトにリンクしています。
一方で、法令を遵守し、適正な労務管理を行っている企業であれば、調査を過度に恐れる必要はありません。しかし、「知らなかった」では済まされないのが法律の世界です。入管庁と厚労省(労基署)は情報連携を強化しており、労基署での違反事実が入管に通知され、ビザの更新や新規受入れに影響するケースが増えています。
Q2. 【実例】労基署から是正勧告を受けた指導事例と特定技能特有の落とし穴
【結論】「労働条件通知書の記載不備」と「不当な賃金控除」が、調査で最も多く指摘される違反事例です。
実際の顧問先での相談事例として多いのが、雇用契約書(労働条件通知書)の不備です。特定技能外国人の場合、母国語での雇用契約書作成が義務付けられていますが、日本語版と翻訳版で内容にズレがあったり、最新の法改正(法廷労働時間や最低賃金の変更など)が反映されていなかったりするケースが目立ちます。
また、寮費や光熱費、食費などを給与から天引きしている場合、労使協定(24協定)の締結と届出がなければ違法となります。特に注意が必要なのは以下の点です。
- 実費を超えた過大な家賃を徴収している
- 事前の合意なく「強制貯金」のような名目で控除している
一方で、適正な労使協定があり、本人からの同意書も取得している場合は問題ありません。しかし、外国人労働者が「何のために引かれているか理解していない」と調査官に答えてしまうと、トラブルの原因になります。控除項目については、母国語で丁寧に説明し、理解を得た証拠(サイン等)を残しておくことが重要です。
Q3. 日本人との「同一労働同一賃金」が盲点に?賃金台帳チェックの重要性
【結論】日本人従業員と比較して不合理な待遇差がある場合、是正勧告の対象となり、特定技能の要件も満たさなくなります。
特定技能の許可要件には「日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること」という規定があります。労基署の調査では、賃金台帳をチェックし、同じ業務を行っている日本人社員との給与格差がないかを厳しく確認します。
これまで多くの企業を支援してきた中で、基本給は同等でも「手当」で差がついているケースがよく見受けられます。例えば、日本人には支給されている「家族手当」や「住宅手当」が、外国人には支給されていない場合、その理由が合理的でなければなりません。
一方で、経験年数や責任の範囲、日本語能力による業務遂行レベルの違いによって給与に差をつけることは可能です。重要なのは、「なぜその金額なのか」を客観的に説明できる賃金規定や評価制度が存在するかどうかです。曖昧な決定プロセスは、調査官に「差別的取り扱い」と判断されるリスクを高めます。
Q4. 是正勧告が命取り?入管局への報告義務と受入れ停止リスクの連鎖
【結論】労働基準関係法令違反による罰則は、特定技能の「欠格事由」に該当し、最長5年間の受入れ停止処分を受ける可能性があります。
労基署からの是正勧告自体は行政指導であり、直ちに受入れ停止になるわけではありません。しかし、是正勧告に従わず、悪質とみなされて「送検」されたり、罰金刑を受けたりした場合は、特定技能所属機関としての欠格事由に該当します。
さらに、特定技能制度では、労働基準法違反などの不正行為があった場合、入管庁への報告や、登録支援機関による通報が義務付けられています。実務上の注意点として、労基署の調査が入った事実を隠蔽しようとすると、かえって悪質性が高いと判断され、受入れ認定の取り消しにつながるリスクがあります。
一方で、軽微な違反で早期に是正を行い、報告義務を果たしている場合は、指導にとどまることもあります。リスクの連鎖を断ち切るためには、隠さずに迅速に対応し、改善の実績を作ることが何より重要です。
Q5. 調査当日に慌てないための準備と登録支援機関を見極める3つの基準
【結論】「法定三帳簿」の整備と、労務知識を持った登録支援機関の選定が、調査対策の鍵となります。
労基署調査の連絡が来た際に、まず準備すべきは「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の法定三帳簿です。これらが正しく整備され、整合性が取れているかを確認してください。特に特定技能外国人の場合、在留カードの写しや雇用条件書との突き合わせが必須です。
また、登録支援機関の質も重要です。以下の3つの基準で支援機関を見極めてください。
- 労務管理の専門家(社労士等)が在籍または連携しているか
- 定期面談の記録が形式的ではなく、実質的な労働環境確認になっているか
- 労基署対応についてのアドバイスができるか
一方で、自社支援を行っている企業の場合は、社労士による外部監査を定期的に入れることを強く推奨します。第三者の目でチェックすることで、内部では気づかない法違反を未然に防ぐことができます。
Q6. 36協定や就業規則の届出漏れは外国人のビザ更新にどう影響するか?
【結論】36協定の未届や就業規則の不備は、特定技能の定期報告で発覚し、ビザ更新の不許可要因になり得ます。
特定技能外国人を雇用する企業は、四半期ごとに「定期届出」を入管に行う義務があります。この添付書類や報告内容には、労働時間の状況や社会保険の加入状況が含まれます。36協定(時間外・休日労働に関する協定届)を締結・届出せずに残業させている事実が発覚すれば、入管法上の「労働関係法令の遵守」要件を満たさないと判断されます。
実務上よくあるケースとして、従業員数が10人未満の事業場で就業規則を作成・届出していない場合があります。法律上は作成義務がありませんが、特定技能の申請実務では、就業規則(またはそれに準ずる規定)の提出が求められることが一般的です。一方で、作成していても実態と乖離している場合は虚偽報告とみなされる恐れがあるため、常に最新の状態にメンテナンスしておく必要があります。
Q7. 技能実習生と特定技能外国人で労基署のチェックポイントに違いはあるか?
【結論】特定技能外国人は「転職の自由」があるため、労働条件に対する権利意識が高く、未払い残業代などの申告リスクがより高いと言えます。
技能実習生の場合、監理団体が間に入って調整を行うことが多いですが、特定技能は企業との直接雇用契約の色彩が強くなります。そのため、労基署も「日本人労働者と同様の直接雇用関係」として厳しくチェックします。
特に、技能実習から特定技能に移行した際、給与体系や控除項目が適切に変更されているかがポイントになります。一方で、技能実習時代の「管理費」のような名目で、特定技能外国人から不明瞭な徴収を行っていると、重大な法違反となります。彼らは日本人と同様に、自分の待遇に不満があれば労基署に駆け込むことができる立場であることを忘れてはいけません。
Q8. 調査で「通訳」の同席は必須か?日本語が不十分な外国人への聴取対応
【結論】誤解による事実認定を防ぐため、調査官による外国人本人へのヒアリング時には、可能な限り通訳や支援担当者の同席を求めるべきです。
労基署の調査官は、必ずしも外国語が堪能ではありません。日本語が不十分な外国人労働者に対して、複雑な労働条件や残業の実態について質問した場合、意図が伝わらず、事実と異なる回答(例:「休憩を取っていない」と誤って答えるなど)が記録されてしまうリスクがあります。
実際の顧問先では、登録支援機関の通訳担当者に同席を依頼するか、社内の通訳可能なスタッフを立ち会わせる対応をとっています。一方で、特定技能外国人がN2レベル以上の高い日本語能力を持っている場合は、本人対応でも問題ないケースもありますが、専門用語の理解度には注意が必要です。
Q9. 登録支援機関に委託していれば労基署対応も丸投げできるのか?
【結論】できません。労基署対応の当事者はあくまで「事業主(企業)」であり、法的責任を支援機関に転嫁することは不可能です。
登録支援機関は、あくまで入管法上の「支援計画」を実施するための委託先であり、労働契約の当事者ではありません。労基署からの是正勧告書は、事業主名義で交付され、是正報告書も事業主名で提出する必要があります。
一方で、調査の場に登録支援機関の担当者が同席し、通訳や事実関係の説明をサポートすることは可能ですし、推奨されます。しかし、「支援機関に任せているから中身は知らない」という態度は、調査官に対して「使用者としての管理能力欠如」というマイナスの心証を与えるだけです。最終的な労務管理責任は自社にあることを自覚し、支援機関と二人三脚で対応する体制を整えておくべきです。
まとめ
外国人雇用に対する労基署の調査は、「来てから対応する」のでは遅く、日頃の適正な労務管理と書類整備が全てです。特定技能制度は、日本人と同等、あるいはそれ以上に厳格なコンプライアンスが求められる制度です。
是正勧告による受入れ停止リスクを回避するためには、社労士などの専門家を交え、定期的な内部監査を行うことが最も効果的な対策です。貴社の外国人雇用が、リスクではなく成長の原動力となるよう、足元の労務管理を今一度見直してみてください。
特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
監修者プロフィール
本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。
日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。
- 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
- キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
- HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
- 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
- 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
- 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
- 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績
制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。
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