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特定技能の自社支援切り替え要件を社労士が解説!委託費を削減し「選ばれる職場」を作る5ステップ

2026.01.23 社労士コラム

特定技能外国人の雇用が拡大する中、登録支援機関への委託費(支援委託料)が経営を圧迫していませんか?「毎月のコストを削減したい」「支援ノウハウを社内に蓄積したい」と考える企業にとって、自社支援への切り替えは非常に有効な選択肢です。

しかし、安易な切り替えはコンプライアンス違反や現場の混乱を招くリスクもあります。本記事では、外国人雇用に強い社労士が、自社支援へスムーズに移行するための必須要件や具体的なスケジュール、実務上の落とし穴を徹底解説します。コスト削減だけでなく、外国人スタッフとの信頼関係を深め、定着率を向上させるための「攻めの自社支援」を実現しましょう。

Q1. 登録支援機関への委託を卒業し、自社支援に切り替えるべきタイミングはいつですか?

【結論】特定技能外国人の雇用人数が「5名」を超え、かつ社内に専任または兼任の担当者を配置できる目処が立った時が最適なタイミングです。

自社支援への切り替えを検討する際、最も重要な判断基準は「コストメリット」と「社内体制の持続可能性」のバランスです。登録支援機関への委託費は、一般的に外国人1名あたり月額2万円〜3万円が相場です。雇用人数が少ないうちは委託の方が安上がりな場合もありますが、人数が増えればコストは比例して増大します。

具体的な判断基準の目安

  • 特定技能外国人が5名以上になり、月額委託費が10万円〜15万円を超えている場合
  • 人事総務部門に、支援業務(生活オリエンテーションや四半期報告など)を遂行できるリソースがある場合

一方で、雇用人数が1〜2名で、かつ社内に事務担当者がいない場合は、無理に自社支援に切り替えるべきではありません。支援業務は専門知識が必要であり、突発的なトラブル対応(病気、事故、住宅トラブルなど)も発生します。コスト削減だけを目的に切り替えると、現場の負担が激増し、日本人社員の離職につながるリスクさえあります。

実際の顧問先では、特定技能外国人が10名を超えた段階で「支援課」のような専門部署を立ち上げ、自社支援に完全移行したケースがあります。この企業では、年間数百万円の委託費削減に成功しただけでなく、外国人スタッフからの相談が直接会社に届くようになり、職場環境の改善スピードが劇的に向上しました。

Q2. 自社支援に切り替えるための「2つの必須要件」と、実務上の落とし穴は何ですか?

【結論】「支援責任者・支援担当者の配置」と「中立的な支援体制の確保」が必須要件ですが、特に「中立性」の解釈でミスが起きやすいため注意が必要です。

自社支援を行うためには、入管法で定められた厳格な要件を満たす必要があります。特に重要なのが以下の2点です。

1. 支援責任者及び支援担当者の選任
過去2年以内に中長期在留外国人の生活相談業務に従事した経験がある者、またはこれと同等の能力を有すると認められる者(過去2年以内に登録支援機関の役員や職員であった者など)を選任する必要があります。もし社内に経験者がいない場合は、「登録支援機関職員向けの講習」等を受講させることで要件を満たすことが可能です。

2. 支援の中立性の確保
支援責任者や担当者は、特定技能外国人を監督する立場(直属の上司やライン長など)にある者であってはなりません。これは、外国人が雇用主に対して言いづらい相談(賃金未払い、パワハラなど)をしやすくするためです。

実務上よくある落とし穴として、「社長や工場長を支援責任者にしてしまう」ケースが挙げられます。これは明確な要件違反となり、支援計画が認定されません。また、形式上は総務課長を担当者にしていても、実態としてその課長が外国人の人事評価や指揮命令を直接行っている場合は、中立性が保たれていないと判断されるリスクがあります。

一方で、人事部が独立しており、現場の指揮命令系統とは別にある場合は、人事担当者が支援担当者を兼務することは認められやすい傾向にあります。自社の組織図を見直し、誰を配置すれば要件を満たせるか、慎重に検討してください。

Q3. 支援委託の解除から自社支援開始までをスムーズに進めるには、どのようなスケジュールが必要ですか?

【結論】切り替え希望日の「3〜4ヶ月前」から準備を開始し、登録支援機関との契約解除通知と入管への変更届出を計画的に行う必要があります。

自社支援への切り替えは、単に「明日から自分たちでやります」と言って済むものではありません。入管への届出や、現行の登録支援機関との契約調整が必要です。以下は、トラブルなく移行するための標準的な5ステップです。

切り替えスケジュールの例

  • 【3〜4ヶ月前】社内体制の構築(支援担当者の選定、講習受講、マニュアル作成)
  • 【3ヶ月前】登録支援機関への解約申し入れ(契約書の解約予告期間を必ず確認すること)
  • 【2ヶ月前】支援計画書の作成開始(全部委託から自社支援への変更に伴う書類作成)
  • 【1ヶ月前〜2週間前】入管への「支援計画変更に係る届出」の提出
  • 【切り替え日】自社支援の開始、外国人スタッフへの周知徹底

特に注意すべきは、登録支援機関との「解約予告期間」です。契約書に「解約は3ヶ月前までに通知する」と記載されている場合、直前に申し出ても違約金が発生したり、スムーズに解除できなかったりします。まずは契約書を確認することから始めてください。

また、入管への届出は「事後届出」でも可能な場合がありますが、支援体制の変更は在留資格の維持に関わる重要事項です。実務上は、事前に管轄の入管に相談し、書類に不備がないか確認してから切り替えることを強く推奨します。不備があると、最悪の場合、受入れ停止処分を受ける可能性があります。

Q4. 自社支援化で直面する「書類作成」と「定期報告」の事務負担を最小化する社内運用術はありますか?

【結論】四半期ごとの定期報告と随時報告のタスクを年間カレンダーに落とし込み、多言語対応アプリやクラウドツールを活用して効率化すべきです。

自社支援に切り替えると、これまで登録支援機関が代行していた膨大な事務作業が自社に降りかかります。特に負担が大きいのが、四半期に一度の「定期面談」とその結果を報告する「定期届出」です。

事務負担を減らすための運用ポイント

  • 面談記録のデジタル化:紙で面談記録を残すのではなく、スマホやタブレットで入力できるクラウド型の日報システムや翻訳機能付きアプリを活用し、記録と同時に報告書の下書きが完成するフローを作る。
  • 通訳リソースの確保:社内に通訳がいない場合、面談のたびに外部通訳を雇うとコストがかさみます。ポケトークなどの翻訳機を活用するか、必要な時だけスポットで依頼できる通訳サービスを契約しておきます。

一方で、書類作成そのものが苦手な場合は、支援業務自体は自社で行い(実行)、書類作成と届出のみを行政書士や社労士にアウトソーシングする「一部委託」という方法も検討できます。これにより、現場の支援(生活サポートや相談)は自社で手厚く行いながら、面倒な官公庁対応はプロに任せるという「いいとこ取り」が可能になります。

これまで多くの企業を支援してきた中で、自社支援に失敗して再び委託に戻す企業の共通点は「担当者に業務を丸投げし、ツール導入やサポート体制への投資を惜しんだ」ことです。担当者が疲弊しない仕組み作りが、継続の鍵です。

Q5. 実際の顧問先で起きた!自社支援切り替え後に「コンプライアンス違反」を指摘されないためのチェックポイントは?

【結論】「定期面談の形骸化」と「支援実施記録の不備」が最大の違反リスクです。実施した支援は必ず証拠を残し、5分でも良いので対面での面談を徹底してください。

自社支援に切り替えた後、入管の立ち入り検査や書類確認で指摘されやすいのが、「本当に支援を行っているのか?」という点です。登録支援機関は業務として支援を行いますが、自社支援になると、忙しさを理由に面談をスキップしたり、相談対応の記録を残さなかったりするケースが多発します。

コンプライアンス違反を防ぐチェックリスト

  • 3ヶ月に1回の定期面談は必ず対面で行い、本人の署名入り面談記録を保管しているか?
  • 生活オリエンテーション(入社時など)を8時間以上実施し、その内容を記録しているか?
  • 日本人と同等以上の報酬を支払っているか(昇給時期に日本人だけ上げて外国人を据え置いていないか)?
  • 非自発的離職者(会社都合退職)を出していないか?

実務上よくあるケースとして、「食堂で毎日話しているから面談は不要だろう」という誤解があります。日常会話と、法的に義務付けられた「生活状況や労働条件に関する面談」は別物です。公的な記録として残っていない支援は、入管法上「実施していない」とみなされます。

もし支援の不履行が認定されると、特定技能外国人の受入れが取り消されるだけでなく、今後5年間は新たな受入れができなくなります。このリスクを避けるためにも、社内監査の仕組みを取り入れるか、外部専門家による定期的なコンプライアンスチェックを受けることをお勧めします。

Q6. 外部委託より定着率が上がる?自社支援が外国人スタッフとの信頼関係を劇的に深める理由は何ですか?

【結論】会社が直接生活の悩みを聞き、解決に動く姿勢を見せることで、外国人スタッフの帰属意識(エンゲージメント)が飛躍的に高まるからです。

登録支援機関に丸投げしている場合、外国人スタッフにとって会社は「ただ働くだけの場所」になりがちです。困った時に助けてくれるのが外部の人であれば、会社への感謝や愛着は生まれにくいものです。

一方で、自社支援に切り替えると、以下のような変化が生まれます。

  • 相談のスピード解決:給与やシフト、社宅のトラブルなど、社内事情に詳しい担当者が直接対応するため、解決までの時間が短縮されます。
  • 心理的距離の短縮:「会社は私たちのことを大切にしてくれている」という実感が湧き、仕事へのモチベーション向上につながります。
  • 離職の予兆検知:定期面談を自社で行うことで、本人の不満や転職のサインを早期に察知し、引き留めや環境改善の手を打つことができます。

実際に自社支援へ切り替えた製造業の顧問先では、それまで頻繁だった「より時給の高い会社への転職」が激減しました。担当者が病院への付き添いや役所手続きに親身に対応したことで、「この会社なら安心して日本で暮らせる」という信頼が生まれたためです。

コスト削減はあくまで副次的なメリットです。自社支援の真の価値は、外国人材を「一時的な労働力」ではなく「共に成長する仲間」として受け入れ、強固な組織を作る点にあります。手間はかかりますが、その分だけ組織力は確実に強化されます。

まとめ

特定技能の自社支援への切り替えは、コスト削減だけでなく、社内にノウハウを蓄積し、外国人材との信頼関係を深めるための重要なステップです。しかし、要件の誤認や運用体制の不備は、受入れ取り消しという重大なリスクを招きます。

まずは現在の雇用人数と社内リソースを冷静に分析し、無理のないスケジュールで準備を進めてください。自社だけで完結するのが不安な場合は、書類作成やコンプライアンスチェックのみを専門家に依頼する「ハイブリッド型」の運用も賢い選択です。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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