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特定技能の登録支援機関比較・選び方|社労士が教える安さのリスクと切替手順

2026.01.19 外国人雇用

特定技能外国人の受入れにおいて、登録支援機関の選定は企業のコンプライアンスと外国人の定着率を左右する極めて重要なプロセスです。「コスト削減」を優先して委託先を選んだ結果、適切な支援が行われず、入管法違反や失踪トラブルに発展するケースが後を絶ちません。

本記事では、外国人雇用に強い社会保険労務士が、比較表だけでは見えない登録支援機関の選び方や、質の低い業者による法的リスク、そして不満がある場合の安全な切り替え手順について、実務視点で具体的に解説します。

Q1. 登録支援機関の手数料相場はいくらですか?安すぎる業者にはどのようなリスクがありますか?

【結論】月額2万円〜3万円(1名あたり)が一般的な相場であり、1万円を切るような格安業者は支援不履行のリスクが極めて高いといえます。

特定技能1号外国人に対する支援業務は、事前ガイダンスから入国時の送迎、住居確保、公的手続き同行、定期面談(3ヶ月に1回以上)など多岐にわたります。これらを適正に実施するためには、どうしても一定の人件費と経費が必要です。

一方で、月額費用が極端に安い(例:数千円〜1万円程度)業者の場合、以下のような手抜き運用が行われているケースが散見されます。

  • 法定の定期面談を実施せず、書類だけ作成して済ませている
  • 母国語対応ができるスタッフがおらず、翻訳アプリだけで対応している
  • 緊急時のトラブル対応(病気や事故など)を拒否される

実際の顧問先では、格安の支援機関を利用していた企業が、入管の実地調査で「支援計画が実施されていない」と指摘され、改善命令を受けた事例があります。安さの裏には、必ず「実施すべき業務の省略」があると考えて間違いありません。

Q2. 質の低い支援機関を使うと、受入れ企業にどのようなペナルティがありますか?

【結論】支援責任を果たしていないとみなされ、最悪の場合「特定技能外国人の受入れ停止処分」を受ける可能性があります。

登録支援機関に支援業務を委託した場合でも、特定技能外国人を受け入れている企業(特定技能所属機関)としての監督責任が消えるわけではありません。

もし委託先の支援機関が法定の支援を怠り、その状態を企業が放置していた場合、以下のような処分が下されるリスクがあります。

  • 改善命令の対象となる
  • 出入国在留管理庁から「受入れ不適正」と認定される
  • 今後5年間、新たな特定技能外国人の受入れができなくなる

一方で、定期的に支援機関の業務状況をチェックし、問題があれば是正を求めたり機関を変更したりする等の措置を講じていれば、企業側の責任は軽減される可能性があります。委託先が法令違反を犯せば、その被害は受入れ企業に直撃することを理解しておく必要があります。

Q3. 支援業務をすべて委託(丸投げ)すれば、企業側の法的責任はなくなりますか?

【結論】法的責任は完全には免除されず、企業には委託先が適切に支援を行っているかを確認する「監督義務」が残ります。

「全部委託」とは、あくまで支援業務の「実施」をアウトソーシングする契約であり、特定技能制度上の受入れ責任主体はあくまで企業側にあります。

実務上よくあるケースとして、支援機関任せにしていた結果、四半期ごとの定期届出が未提出だったり、内容に虚偽があったりして、更新申請時にトラブルになることがあります。企業担当者は最低限、以下の点を確認する必要があります。

  • 3ヶ月に1回の定期面談報告書が確実に作成されているか
  • 支援実施状況に係る届出が期日通りに入管へ提出されているか
  • 外国人本人から支援機関に対する不満が出ていないか

一方で、これらを定期的に確認し、記録を残しておけば、万が一の際に企業が善管注意義務を果たしていた証明になります。「金さえ払えば責任はない」という考えは、特定技能制度では通用しません。

Q4. 支援機関が業務を怠った場合、企業側でリカバリーすべき義務とは何ですか?

【結論】直ちに企業自らが支援を行うか、速やかに別の登録支援機関へ委託先を変更し、支援の空白期間を作らないようにする義務があります。

登録支援機関が倒産したり、業務停止処分を受けたり、あるいは契約不履行で支援を行わなくなったりした場合、受入れ企業は「被害者」であると同時に、即座に対応を迫られる当事者となります。

具体的には以下の対応が必要です。

  • 支援が行われていない期間が発生しないよう、自社で一時的に支援を実施する
  • 新たな登録支援機関を選定し、速やかに支援委託契約を締結する
  • 入管に対して「支援委託契約の変更」に関する届出を行う

一方で、この対応が遅れて「支援が行われていない状態」が続くと、受入れ企業自体が法令違反を問われます。支援機関の動きが怪しいと感じたら、すぐに切り替えの準備を始めることが、自社を守るための鉄則です。

Q5. 契約前に支援機関の実務能力を見極めるための具体的な質問は何ですか?

【結論】「定期面談の具体的な実施方法」と「過去の行政指導への対応実績」について、詳細なフローを質問すべきです。

パンフレットやWebサイトには「手厚い支援」と書かれていても、実態が伴っていない業者は少なくありません。契約前の面談では、以下の5つの質問を投げかけてみてください。

  • Q1. 定期面談は対面で行いますか?オンラインの場合の条件はどう設定していますか?
  • Q2. 担当者は現在何名の外国人を担当していますか?(1人あたり30名を超えている場合は要注意)
  • Q3. 夜間や休日の緊急時(病気・事故・事件)の連絡体制はどうなっていますか?
  • Q4. 過去に入管から指摘や指導を受けたことはありますか?ある場合、どう改善しましたか?
  • Q5. 支援実施状況に係る届出の控えは、いつ企業に共有してもらえますか?

一方で、これらの質問に対して「ケースバイケースです」などと回答を濁したり、即答できなかったりする業者は避けるべきです。実務能力が高い支援機関であれば、具体的な運用ルールや過去の事例を即座に提示できるはずです。

Q6. 通訳や生活支援の質を確認するために見るべきポイントはどこですか?

【結論】母国語対応スタッフが「正社員として常駐しているか」と、支援担当者1人あたりの担当件数を確認すべきです。

通訳の質は、外国人のメンタルヘルスや定着率に直結します。チェックすべきは「誰が通訳をするか」です。

  • NG例: 必要な時だけ外部の通訳アルバイトを呼ぶ、または翻訳機のみで対応する。
  • OK例: 母国語を話せる正社員スタッフが在籍し、日常的な相談に乗れる体制がある。

これまで多くの企業を支援してきた中で、通訳体制が脆弱な支援機関を使っている企業では、外国人従業員の小さな不満が解消されず、突然の失踪や退職につながるケースが多発しています。特に、専門用語が必要な医療機関への同行や、行政手続きのサポートにおいて、翻訳機レベルの対応では現場が混乱します。

Q7. 登録支援機関を変更(切り替え)する際の手順と必要な手続きは?

【結論】新旧機関との契約調整を行った上で、入管へ「支援計画変更に係る届出」を事由発生から14日以内に行う必要があります。

支援機関の切り替えは、以下のステップで進めます。

  1. 新しい支援機関の選定・内定: 現在の支援状況を引き継げるか確認する。
  2. 旧支援機関への解約通知: 契約書の解約予告期間(通常1〜3ヶ月前)を確認し、書面で通知する。
  3. 新支援機関との契約締結: 支援委託契約書を新たに交わす。
  4. 外国人本人への説明: 支援担当者が変わることを説明し、同意を得る。
  5. 入管への届出: 新しい支援計画書を作成し、変更届出を行う。

一方で、手続きが遅れると「届出義務違反」となります。特に注意が必要なのは、新しい支援計画書の作成には外国人本人の署名や履歴書等の情報が必要になるため、旧機関からのデータ引き継ぎがスムーズにいかないと、期限に間に合わなくなるリスクがある点です。

Q8. 切り替え時に旧支援機関とトラブルにならないための注意点は?

【結論】契約解除に伴う「違約金の有無」と「支援記録データの引き渡し義務」を事前に契約書で確認しておくことが重要です。

支援機関を変更しようとすると、引き止めや嫌がらせに近い対応をされることがあります。よくあるトラブルは以下の通りです。

  • 「契約期間途中での解約は違約金が発生する」と高額請求される
  • 「過去の支援記録や本人情報は渡さない」とデータ提供を拒否される
  • 入管への報告業務を放棄される

実務上の誤解されやすいポイントとして、支援記録(定期面談報告書など)は本来、受入れ企業が保管・管理すべきものです。したがって、企業側にはデータの返還を求める正当な権利があります。トラブルを避けるためにも、解約通知は必ず内容証明郵便などの記録が残る方法で行い、引き継ぎスケジュールを書面で合意するようにしてください。

Q9. 最終的に信頼できる登録支援機関を選ぶための決定的な基準は何ですか?

【結論】単なる生活支援だけでなく、「労務コンプライアンス」を理解し、企業の法的リスク管理までサポートできる機関を選ぶべきです。

特定技能制度は、入管法だけでなく労働基準法、社会保険各法とも密接に関わっています。単に「外国語が話せるスタッフがいる」だけでは不十分です。

本当に信頼できる支援機関は、以下のような視点を持っています。

  • 36協定や最低賃金の改定など、労務管理の基本を理解している
  • 外国人の有給休暇取得や残業時間管理について、企業に適切な助言ができる
  • 入管法令の改正情報をいち早くキャッチし、企業に共有してくれる

一方で、労務知識がない支援機関の場合、違法な働かせ方をしていても気づかず、結果として企業が入管から処分を受ける原因を作ってしまうことがあります。社労士法人が母体となっている機関や、労務管理に強い専門家と提携している機関を選ぶことが、長期的な安定雇用につながります。

まとめ

特定技能の登録支援機関選びは、単なるコスト比較ではなく、企業の「採用リスク管理」そのものです。安さだけで選んだ結果、不法就労助長のリスクを負ったり、外国人が定着せずに退職してしまったりしては本末転倒です。

自社の体制に合った、信頼できるパートナーを見極め、必要であれば勇気を持って切り替えを行うことが、外国人雇用の成功への近道です。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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