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助成金「不正受給」と指摘された事例:企業が取るべき緊急対応と回避策
助成金は、企業の雇用維持や労働環境の改善を支援する重要な公的制度です。しかし、近年では会計検査院や労働局による調査が厳格化しており、「知らなかった」「軽い気持ちだった」では済まされない不正受給の摘発が急増しています。
- 「多少の辻褄合わせならバレないだろう」
- 「コンサルタントに任せているから大丈夫」
このような認識が、企業の存続を揺るがす重大なトラブルを招くケースが後を絶ちません。一度でも不正受給と認定されれば、経済的なペナルティだけでなく、社名公表による社会的信用の失墜という取り返しのつかない事態に陥ります。
本記事では、実際に起こり得る助成金不正受給の典型的な事例やその背景、指摘を受けた際に企業が取るべき緊急対応について、中立的な視点から徹底解説します。リスクを正しく理解し、健全な経営を守るための一助としてください。
助成金「不正受給」と指摘された典型事例:その実態と背景
助成金の不正受給とは、偽りやその他の不正行為によって、本来受けることのできない助成金を受け取る(または受けようとする)行為を指します。ここでは、実務上で特に問題となりやすい典型的なケースを、特定の企業を特定しない一般論として解説します。
ケース1:休業実態の偽装(製造業・中小企業の例)
受注減少に伴い従業員を休業させたとして「雇用調整助成金」を申請したケースです。実際には納期を守るために一部の従業員が出勤して製造ラインを動かしていたにもかかわらず、タイムカードや出勤簿を改ざんし、「全員が一日中休業していた」という虚偽の書類を作成して提出しました。調査時にパソコンのログや交通系ICカードの履歴と出勤簿を照合され、実態との乖離が発覚しました。
ケース2:研修実施の虚偽報告(サービス業・小規模事業者の例)
正社員化や人材育成を支援する助成金(キャリアアップ助成金など)において、実際には実施していないOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)や研修を行ったように見せかけたケースです。訓練日誌や受講レポートを後からまとめて作成し、日付をバックデートして申請しました。しかし、対象となる従業員へのヒアリング調査で「そのような研修は受けていない」「通常業務を行っていた」という証言が得られ、不正が認定されました。
助成金「不正受給」発生の背景にある共通の落とし穴と誤解
なぜ、リスクを冒してまで不正受給に手を染めてしまうのでしょうか。そこには、多くの企業が陥りやすい共通の背景と心理的な落とし穴が存在します。
「返済不要」という甘い認識と経営難
助成金は融資とは異なり、原則として返済不要の資金です。資金繰りが厳しい局面では、この性質が「もらえるものはもらっておこう」という誘惑に繋がります。「少し書類を調整するだけで数百万円が入る」という安易な動機が、重大なコンプライアンス違反の入り口となってしまいます。
悪質なコンサルタントの存在
「絶対にバレない方法があります」「受給額を最大化するスキームを教えます」と勧誘する一部の悪質なブローカーやコンサルタントの存在も問題です。企業側が制度に詳しくないことを利用し、成功報酬目当てで不正な申請を指南するケースが見られます。企業側が「プロに任せているから適正だろう」と信じ込んでいても、最終的な法的責任は申請主体である事業主が負うことになります。
制度理解の不足と「みんなやっている」という錯覚
助成金の支給要件は複雑で、頻繁に改定されます。担当者が要件を誤解したまま申請したり、「他社もやっているからこれくらい許容範囲だろう」という根拠のない集団心理(赤信号もみんなで渡れば怖くない心理)に流されたりすることも、トラブルの温床となっています。
助成金「不正受給」と判断される根本原因を徹底分析
労働局等の調査において不正受給と断定される原因は、単なるミスでは済まされない「意図」や「実態との乖離」にあります。主な原因は以下の通りです。
- 書類の改ざん・捏造: タイムカード、賃金台帳、労働契約書などの重要書類を、事実と異なる内容で作成または書き換える行為。これは最も悪質な不正とみなされます。
- 支給要件の欠格: 実際には解雇を行っているにもかかわらず「解雇なし」と申告したり、既に雇用している従業員を「新規雇用」と偽ったりするケースです。
- 架空の対象者: 退職済みの従業員や、実在しない人物(架空名義)を雇用しているように装い、助成金を請求することです。
- 経費の水増し: 研修費や設備導入費などの経費助成において、領収書の金額を書き換えたり、取引先と結託して金額を水増し請求させたりする行為です。
- 制度の目的外利用: 助成金の趣旨(雇用の安定や能力開発など)を無視し、単なる運転資金や遊興費として利用する意図が見える場合も、調査で厳しく追及されます。
これらの行為は、「偽りその他不正の行為」として明確に定義されており、発覚すれば厳しい処分が下されます。
企業が被る助成金「不正受給」指摘による経営上の重大な影響
不正受給が発覚した場合、企業が受けるダメージは単に「お金を返せば終わり」というレベルではありません。経営の存続に関わる多角的なペナルティが課されます。
経済的な損失(高額な返還命令)
不正に受給した金額の全額返還に加え、ペナルティとして以下の支払いが求められます。
- 不正受給額の全額
- 違約金(加算金): 受給額の20%相当額
- 延滞金: 受給日の翌日から納付日までの期間に対し、年3%(または5%)の割合で算定された額
これらを合計すると、受給額の1.2倍〜1.5倍以上の現金を一括で支払う必要が生じることもあり、資金繰りに致命的な打撃を与えます。
社会的信用の失墜(社名公表)
最も恐ろしい影響の一つが、企業名等の公表です。都道府県労働局のホームページ等に、以下の情報が掲載されます。
- 事業主の名称・代表者氏名
- 事業所の所在地
- 不正受給の内容と金額
この情報はインターネット上に長期間残り続けるため、取引先からの契約解除、銀行融資の停止、新規採用の困難化など、ビジネスのあらゆる面に悪影響を及ぼします。
将来の受給資格停止と刑事責任
不正受給を行った事業主は、その決定日以降5年間、雇用関係の全助成金の申請・受給ができなくなります。また、特に悪質な事案(計画的な詐欺行為など)については、詐欺罪(刑法第246条)や補助金適正化法違反として刑事告発され、逮捕・起訴されるリスクもあります。
助成金「不正受給」への緊急対応と効果的な改善策
万が一、社内点検で不正や不備の可能性に気づいた場合、あるいは労働局から調査の連絡が入った場合、企業はどう動くべきでしょうか。被害を最小限に食い止めるための対応策を解説します。
1. 最優先すべきは「自主申告」
不正受給発覚時のリスクを軽減する唯一かつ最大の手段は、調査が入る前の自主申告です。労働局等の調査によって不正が発覚する前に、自ら申し出て全額を返還した場合、原則として社名公表を免除される措置があります(※悪質性が極めて高い場合を除く)。「バレるまで隠そう」とするのではなく、過ちを認めて直ちに修正する姿勢が求められます。
2. 専門家への相談と事実関係の整理
自主申告を行う場合でも、労働局の調査に対応する場合でも、まずは社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談し、正確な状況把握を行うことが不可欠です。
- 資料の保全: 出勤簿、賃金台帳、就業規則などの証拠書類を確保・整理する。
- 経緯の確認: 誰が、いつ、どのような判断で申請を行ったか、社内調査を行う。
3. 真摯な調査対応
労働局の実地調査には誠実に対応してください。虚偽の答弁や隠蔽工作は、状況を悪化させるだけです。調査官はすでに関係者への裏取りやデータの分析を済ませていることが多く、嘘は容易に見抜かれます。
4. コンプライアンス体制の再構築
問題の解決後は、二度と同じ過ちを繰り返さないよう、社内体制を根本から見直す必要があります。
- ダブルチェックの徹底: 申請書類は担当者任せにせず、管理職や外部専門家を含めた複数人で確認する。
- 外部専門家の選定見直し: 不正を唆すようなコンサルタントとは契約を解除し、法令遵守を重視する信頼できる社労士と顧問契約を結ぶ。
類似トラブルを未然に防ぐ!助成金申請・運用の予防ポイント
今後、助成金を適正に活用するために、日常業務で意識すべき予防ポイントを整理しました。
- 勤怠管理の徹底: タイムカードや勤怠システムは、実態通りに打刻されているか常に確認する。「あとでまとめて入力」は改ざんの疑いを招きます。
- 「実態」を優先する: 書類上の辻褄合わせではなく、実際の労働実態や研修実績に基づいて申請を行う。実態と合わない場合は申請を見送る勇気も必要です。
- ルールの最新化: 助成金の要件は頻繁に変わります。常に最新のパンフレットや支給要領を確認し、古い知識で判断しないようにしましょう。
- 証拠書類の保存: 助成金に関連する書類は、支給決定後も5年間は保存義務があります。いつでも提示できるように整理しておきましょう。
関連する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
まとめ
助成金は企業の成長を支える有用な制度ですが、ルールを逸脱した助成金不正受給は、企業の存続そのものを危うくする極めて高いリスクを伴います。「知らなかった」では済まされない重いペナルティ(返還、公表、刑事罰)が課されることを、経営者と担当者は深く認識しなければなりません。
もし現在、過去の申請内容に不安がある場合は、調査を待つのではなく、速やかに専門家へ相談し、自主申告を含めた対応を検討することが最も賢明な判断です。
目先の利益よりも社会的信用を優先し、実態に基づいた適正な労務管理と申請を行うことこそが、長期的な企業の繁栄につながる唯一の道です。
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