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「退職代行・退職勧奨」2025年最新:企業が取るべき法的対応とトラブル回避の鉄則

2026.01.18 スタッフブログ

退職代行・退職勧奨をめぐるトラブルは、2025年現在、企業の労務管理において最も深刻な課題の一つとなっています。かつてはタブー視されていた退職代行サービスの利用が若手層を中心に一般化し、一方で企業側が行う退職勧奨は、ハラスメント規制の強化や司法判断の厳格化により、極めて慎重な対応が求められるようになりました。特に2025年4月の雇用保険法改正による給付制限の緩和は、人材の流動化を加速させ、予期せぬ離職リスクを高めています。本稿では、激変する労働法制と社会情勢を踏まえ、企業が法的リスクを回避し、組織を守るために知っておくべき実務対応を解説します。

2025年最新動向:退職代行・退職勧奨を取り巻く法的環境の全体像

2025年の労働市場において、退職代行・退職勧奨を取り巻く環境は、法改正と社会意識の変化により大きな転換点を迎えています。企業は従来の慣行を見直し、最新の法的トレンドに適応する必要があります。

雇用保険法改正が加速させる「退職の流動化」と代行市場の拡大

2025年4月に施行された改正雇用保険法は、自己都合退職における基本手当(失業給付)の給付制限期間を、従来の2ヶ月から条件付きで短縮しました。この改正は、労働者が退職を決断する際の経済的ハードルを下げ、「より良い条件を求めて転職する」動きを活性化させています。これに伴い、退職時の心理的負担を回避するためのツールとして、退職代行サービスの利用がさらに拡大しています。民間調査によると、2025年の退職代行市場規模は過去最高を記録し、利用者は新卒社員から中堅層まで広がっています。「辞めさせてくれないなら代行を使う」という意識が定着しつつある今、企業は「引き止め」のリスクを再認識しなければなりません。

司法判断のトレンド:「意思決定の自由」を侵害する行為への厳格化

一方で、企業側が行う退職勧奨(退職推奨)に対する司法の目は厳しさを増しています。近年の裁判例では、労働者の「自由な意思決定」が阻害されたかどうかが違法性の判断基準として重視される傾向にあります。

  • 反復継続した執拗な勧奨: 退職を拒否しているにもかかわらず、連日のように面談を行う行為。
  • 心理的圧迫: 多人数で囲い込む、大声で威圧する、机を叩くなどの威迫行為。
  • 不利益取扱いの示唆: 「辞めないなら配転だ」「懲戒解雇にするぞ」といった脅し。

これらの行為は、不法行為として損害賠償の対象となるだけでなく、退職合意そのものが無効と判断されるリスクを高めています。退職代行・退職勧奨のいずれの局面においても、企業は「法的な正当性」と「プロセスの適正さ」を厳密に問われる時代に突入しています。

「退職代行」急増時代に企業が取るべき初動対応と交渉術

ある日突然、見知らぬ業者から「○○さんの退職を代行します」と電話がかかってくる。このような事態に直面した際、担当者が動揺して不適切な対応を取ると、後に法的な紛争に発展する恐れがあります。ここでは、退職代行・退職勧奨の専門知識に基づき、企業が取るべき冷静な初動対応を整理します。

業者の属性を見極める「3つの分類」と交渉権の有無

退職代行業者からの連絡を受けた際、最初に確認すべきは相手の「属性」です。代行業者は大きく以下の3つに分類され、それぞれ法的に認められる権限(交渉権)が異なります。これを混同して対応することは、非弁行為(弁護士法72条違反)への加担や、不要な譲歩につながります。

  • 弁護士(法律事務所):
    • 本人の代理人として、退職条件(退職日、有給消化、退職金など)に関するあらゆる交渉が可能です。法的根拠に基づく主張をしてくるため、企業側も弁護士を立てるなど慎重な対応が必要です。
  • 認定司法書士:
    • 140万円以下の紛争(未払い残業代請求など)に限り、交渉権を持ちます。ただし、業務範囲には制限があります。
  • 労働組合(合同労組・ユニオン):
    • 団体交渉権を持っています。形式上は労働組合ですが、実質的に代行業務のみを行っているケースも多いです。団体交渉を申し入れられた場合、正当な理由なく拒否すると不当労働行為になる可能性があります。
  • 民間業者(株式会社など):
    • 単に本人の意思を伝える「使者」に過ぎません。交渉権は一切ありません。退職日の調整や有給取得の条件交渉などを行うことは非弁行為にあたるため、企業はこれらの交渉を拒否できます(すべきです)。

初動のミスを防ぐ!連絡を受けた直後の具体的アクションプラン

代行業者から連絡があった際は、即答を避け、以下の手順で事実確認を行うことが鉄則です。

  1. 相手の特定と記録:
    • 業者名、担当者名、連絡先を聞き取ります。
    • 「弁護士か」「労働組合か」「民間業者か」を明確に確認します。
  2. 委任状の確認:
    • 従業員本人が本当にその業者に依頼したのかを確認するため、委任状の提出を求めます。委任範囲(退職の意思表示のみか、交渉権限もあるか)も確認しましょう。
  3. 本人への意思確認(必要な場合):
    • 民間業者の場合、交渉はできないため、「手続きについては本人と直接やり取りします」と伝えるのが原則です。ただし、本人が連絡を拒絶している場合、無理に連絡を取ると「強要」と受け取られるリスクがあるため、文書(内容証明郵便など)で事務連絡を行うのが安全です。
  4. 即時の承諾・拒否を避ける:
    • 「認めます」や「認めません」とその場で回答せず、「社内で事実確認を行い、後ほど回答します」と一旦電話を切りましょう。
  5. 特に、退職代行・退職勧奨の場面で感情的になり、「本人を出せ」と怒鳴ったり、業者を門前払いしたりするのは逆効果です。あくまで事務的に、淡々と法的手続きを進める姿勢が企業を守ります。

    違法とならない「退職勧奨」の限界とリスク管理の鉄則

    能力不足や協調性の欠如など、問題のある社員に対して企業が退職を促す「退職勧奨」は、適法な人事施策の一つです。しかし、やり方を間違えれば「退職強要」として違法となり、高額な慰謝料請求や地位確認訴訟に発展します。ここでは、適法な退職代行・退職勧奨の実務における境界線を解説します。

    判例に学ぶ「適法な説得」と「違法な強要」の境界線

    裁判例において、退職勧奨が違法(退職強要)とされる主なポイントは、「労働者の自由な意思決定を妨げたか否か」にあります。以下の要素を総合的に判断されます。

    • 頻度と時間:
      • 全日空事件(大阪地判平11.10.18)では、約4ヶ月間に30回以上、長時間にわたる面談を行ったことが違法とされました。1回の面談は30分〜1時間程度、回数は常識的な範囲(数回程度)に留めるべきです。
    • 言動の内容:
      • 「寄生虫」「給料泥棒」といった人格否定発言や、「辞めなければ解雇する」といった脅迫めいた発言は即座に違法性を帯びます(日立製作所事件など)。
      • 「あなたのキャリアを考えると、他社で活躍する道もあるのではないか」といった、あくまで労働者のメリットを考慮した提案型のコミュニケーションが求められます。
    • 拒否後の対応:
      • 労働者が明確に「退職しません」と意思表示をした後は、原則として勧奨を中止すべきです。拒否しているのに執拗に勧奨を続けることは、違法な強要とみなされる可能性が高まります。

    リスクを最小化する面談プロセスの設計と記録の重要性

    適法な退職勧奨を行うためには、事前の準備とプロセス管理が不可欠です。

    1. 客観的根拠の整理:
      • なぜ退職を勧めるのか、具体的な事実(業績不良のデータ、指導記録、改善が見られなかった経緯)を整理します。感情論ではなく、事実に基づく説明が必要です。
    2. 面談の録音・記録:
      • 言った・言わないのトラブルを防ぐため、面談内容は詳細に記録します。最近では、労働者側が隠し録音をしているケースも一般的です。企業側も「適正な手続きを行っている証明」として、合意の上で録音を残す、あるいは詳細な議事録を作成し双方が確認署名を行うといった対策が有効です。
    3. 優遇措置の提案:
      • 退職金の上積み(パッケージ)や再就職支援サービスの提供など、労働者が合意しやすくなる条件を提示することは、円満な解決に向けた有効な手段です。これは「強要」ではなく「交渉」の範疇となります。
    4. 退職代行・退職勧奨の実務では、強引な手法は百害あって一利なしです。「合意退職」の形式をとっていても、実態が強要であれば後から覆されるリスクがあることを常に意識してください。

      ハラスメントと隣接する退職勧奨:具体的なトラブル事例と対応

      2022年のパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)の全面施行以降、退職勧奨がパワーハラスメントと認定される事例が増加しています。退職代行・退職勧奨の現場では、ハラスメントリスクへの配慮が欠かせません。

      パワハラ認定されやすい退職勧奨の典型パターンと心理的圧迫

      以下のような退職勧奨の進め方は、パワハラに該当する可能性が極めて高いものです。

      • 隔離・仕事外し(追い出し部屋):
        • 退職勧奨に応じない社員を別室に隔離し、仕事を与えない、あるいは過酷な雑用のみを命じる行為。これは「人間関係からの切り離し」や「過小な要求」というパワハラの類型に該当します。
      • 執拗な非難と威圧:
        • 多人数で一人の社員を囲み、長時間にわたり能力不足を責め立てる行為。「精神的な攻撃」にあたります。
      • 私生活への介入:
        • 退職を迫るために、家族や保証人に連絡を入れるといった行為も「個の侵害」として違法性を問われます。

      これらの行為があった場合、退職届が提出されていても、「強迫による意思表示(民法96条)」として取り消しが可能となるだけでなく、安全配慮義務違反や不法行為に基づく損害賠償請求の対象となります。

      メンタルヘルス不調者への対応と安全配慮義務の範囲

      特に注意が必要なのが、メンタルヘルス不調により休職・復職を繰り返している社員への退職勧奨です。企業には安全配慮義務があり、心身の健康を損なっている社員に対して、さらに追い詰めるような退職勧奨を行うことは許されません。主治医や産業医の意見を十分に聴取し、「就業に耐えうる状態か」を医学的な見地から判断する必要があります。メンタル不調を理由に直ちに退職を迫るのではなく、まずは休職制度の適用や配置転換による負担軽減を検討し、それでも就業が困難な場合に初めて、自然退職規定の適用や合意退職の話し合いに進むというステップを踏むことが、退職代行・退職勧奨トラブルを避けるための要諦です。

      2025年以降見据えるべき!退職トラブルに関する法的改正動向

      2025年は、労働法制の大きな過渡期にあります。今後の法改正や議論の行方は、企業の退職代行・退職勧奨実務に直接的な影響を与えます。

      解雇規制緩和議論の現在地と実務への潜在的影響

      長年議論されてきた「解雇の金銭解決制度」を含む解雇規制の緩和については、2025年時点でも賛否が分かれており、直ちに全面的な導入に至る見通しではありません。しかし、「ジョブ型雇用」の導入拡大に伴い、「職務適格性がない」と判断された社員に対する解雇や契約終了のルールについては、実務レベルでの運用がシビアになりつつあります。裁判所も、職務内容が限定されたジョブ型社員については、従来のメンバーシップ型社員よりも、職務不適格を理由とする解雇のハードルをやや下げる傾向が見え始めています。企業としては、雇用契約書や就業規則において「職務の範囲」や「求められる能力基準」を明確化しておくことが、将来的な紛争予防のカギとなります。

      労働契約終了をめぐる法整備の行方と企業の備え

      2025年4月の育児介護休業法改正などにより、労働者の権利保護は一層強化されています。これは、「働き続けたい」という意思を持つ労働者を不当に排除することへの監視が強まることを意味します。一方で、フリーランス新法(2024年施行)の影響もあり、雇用契約に限らない多様な働き方が普及しています。これにより、企業と個人の関係性が「従属」から「対等」へとシフトし、退職時のトラブルも「労働法」の枠組みだけでなく、契約法理に基づく解決が模索されるケースも増えるでしょう。企業は、法改正情報を常にアップデートし、就業規則や雇用契約書のひな形を定期的に見直す体制を整えておく必要があります。

      企業を守る!社労士が提言する実践的予防策と体制構築

      退職代行・退職勧奨に関するトラブルを未然に防ぐためには、事後的な対応だけでなく、予防的な組織作りが不可欠です。

      就業規則の不備を突かれないための「退職規定」見直しポイント

      多くの企業の就業規則にある退職規定は、民法の原則通り「2週間前の申し出」や「1ヶ月前」となっているケースが一般的です。しかし、退職代行による「即日退職」を防ぐ、あるいは混乱を最小限にするためには、以下の規定を整備しておくことが有効です。

      • 引継ぎ義務の明記:
        • 「退職にあたっては、業務の引継ぎを完了させなければならない」と明記し、引継ぎを行わずに会社に損害を与えた場合の損害賠償の可能性について言及しておきます(実際に請求できるかは別として、抑止力となります)。
      • 貸与品の返却ルール:
        • PC、スマホ、制服、社員証などの返却方法や期限を具体的に定めます。
      • 退職金の支給要件:
        • 「懲戒解雇事由に該当する場合」や「誠実な引継ぎを行わなかった場合」には、退職金を減額・不支給とする規定(功労報償的性格の否定)を設けることも検討に値しますが、これには合理的な理由と厳格な運用が必要です。

      現場マネジメントの意識改革:ハラスメント予防と信頼関係の再構築

      退職代行を使われる最大の原因は、実は「会社への恐怖」や「絶望」です。「上司に言っても無駄」「怒鳴られるのが怖い」という心理が、代行利用へと向かわせます。管理職に対しては、ハラスメント防止研修を徹底するだけでなく、「部下の退職サインを見逃さない」ためのコミュニケーション研修が必要です。定期的な1on1ミーティングなどを通じて、部下のキャリアプランや悩みを早期に吸い上げる仕組みを作ることで、突然の退職代行・退職勧奨トラブルを大幅に減らすことができます。

      関連する詳しい情報は日本年金機構厚生労働省の公式サイト、およびこちらのブログ一覧もご参照ください。

      まとめ

      2025年、退職代行・退職勧奨をめぐる問題は、単なる労務トラブルを超え、企業の経営リスクに直結する課題となっています。雇用保険法改正による人材流動化の波や、厳格化する司法判断に対応するためには、法的に正しい知識と、人間心理に配慮した実務対応の両輪が必要です。退職代行を使われた際の冷静な初動、違法とならない退職勧奨のプロセス管理、そして日頃のハラスメント予防と信頼関係の構築。これらを着実に実行することが、企業と従業員の双方にとって不幸な結末を回避する唯一の道です。今一度、自社の規定と体制を見直してみましょう。

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