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特定技能外国人の在留資格管理: 企業が知るべき複雑な更新・変更手続きの専門的ノウハウ10選

2025.12.31 外国人雇用管理

特定技能制度を活用して外国人材を受け入れる企業にとって、在留資格の適切な管理は、事業継続の要となる最重要課題です。特に、在留期間の更新や、転職・職務内容の変更に伴う許可申請は、手続きが複雑であり、一つのミスが「不法就労」や「受入れ停止処分」といった重大なリスクに直結します。「いつまでに」「何を」「どのように」手続きすべきか、正確な知識を持たなければ、優秀な人材を失うことになりかねません。

この記事では、特定技能外国人の雇用管理における、更新・変更手続きの具体的な手順と、企業が見落としがちな法的リスク、そして実務担当者が知っておくべき専門的なノウハウを10選として整理しました。以下の情報を活用し、コンプライアンスを遵守した安定的な雇用体制を構築してください。

特定技能外国人の在留資格管理:更新・変更手続きの全体像と法的要件

特定技能外国人の在留資格管理において、まず理解すべきは更新と変更の全体像です。特定技能制度は、技能実習制度とは異なり、転職が認められている点や、更新手続きの頻度が比較的高い点が特徴です。ここでは、手続きの種類と遵守すべき法的要件について解説します。

  • 在留期間更新許可申請:現在の在留資格のまま、在留期間を延長する手続き
  • 在留資格変更許可申請:転職や業務区分の変更、または他の在留資格(技能実習など)から移行する手続き
  • 法的要件の履行:納税義務、社会保険料の納付、定期・随時届出の完了

特定技能1号と2号の更新頻度の違い

特定技能1号の在留期間は「1年」「6ヶ月」「4ヶ月」のいずれかであり、通算で最大5年まで在留可能です。一方、特定技能2号は「3年」「1年」「6ヶ月」のいずれかで、更新回数に上限はなく、要件を満たせば永住許可申請への道も開かれています。企業は、雇用する外国人がどの区分に該当するかを常に把握し、頻繁に訪れる更新期限を管理する必要があります。

申請のタイミングと準備期間

更新申請は、原則として在留期間満了日の3ヶ月前から受け付けられます。しかし、必要書類の収集には時間を要するため、満了日の4ヶ月前には準備を開始するのが鉄則です。特に、特定技能所属機関(受入れ企業)側の書類には、納税証明書や社会保険料納付証明書など、取得に日数を要するものが含まれているため、早めの着手がスムーズな許可につながります。

在留期間更新許可申請の詳細:準備から許可までの実務ポイント

在留期間更新許可申請は、単なる期間延長の手続きではありません。前回の申請時から雇用条件や生活状況に変更がないか、適正に雇用管理が行われているかが厳格に審査されます。ここでは、更新を確実に成功させるための実務ポイントを掘り下げます。

【ノウハウ1】必要書類の整合性チェック

更新申請で最も重要なのは、前回提出した書類との整合性です。特に賃金台帳や雇用契約書の内容が、当初の計画と食い違っている場合、その合理的な説明が求められます。昇給や手当の変更があった場合は、必ず変更の経緯を説明する資料を準備してください。不整合は虚偽申請と疑われる最大のリスク要因です。

【ノウハウ2】公的義務履行の徹底確認

特定技能外国人の在留資格更新において、本人および受入れ企業の「公的義務の履行」は絶対条件です。具体的には、住民税、所得税、国民健康保険税(料)、国民年金保険料の納付状況が審査されます。未納や滞納がある場合、原則として更新は不許可となります。企業は、給与天引き(特別徴収)を徹底するか、本人が確実に納付しているかを領収証書等で定期的に確認する仕組みを整えましょう。

【ノウハウ3】受入れ機関側の提出書類の落とし穴

受入れ機関が提出すべき書類には、「特定技能所属機関概要書」や「公的義務履行に関する説明書」などがあります。これらは最新の情報を反映させる必要がありますが、特に社会保険の適用状況や労働保険の納付状況について、直近の領収証書の写しが求められます。口座振替にしている場合、領収証書が手元にないケースがあるため、年金事務所等での証明書発行が必要になる点に注意してください。

在留資格変更許可申請のケーススタディと注意すべき点

転職や職種変更の際に必要な在留資格変更許可申請は、更新申請以上に複雑な判断が求められます。ここでは具体的なケーススタディを通じて、実務上の注意点を解説します。

【ノウハウ4】転職時の「空白期間」と就労開始日

特定技能外国人が他社から転職してくる場合、在留資格変更許可が下りるまでは、新しい会社で就労することはできません。申請中に見切り発車で働かせてしまうと、不法就労助長罪に問われます。審査期間は通常2週間から1ヶ月程度かかるため、入社日は「許可取得後」とする契約を結ぶことが重要です。

【ノウハウ5】同一分野内の業務区分変更

同じ「製造業分野」であっても、「素形材」から「電気・電子情報関連」へ業務区分が変わる場合など、区分変更に伴う変更申請が必要なケースがあります。この場合、新たな業務区分に対応する技能評価試験への合格が必要です(試験免除の要件に該当する場合を除く)。「分野が同じだから手続き不要」という思い込みは危険です。

【ノウハウ6】退職証明書と源泉徴収票の早期回収

転職による変更申請には、前職の退職証明書や源泉徴収票が必要です。しかし、退職した会社との関係が悪化している場合、これらの書類取得が難航することがあります。採用面接の段階で、前職からの書類取得が可能かを確認し、必要であれば本人が退職手続きを行う際に確実に受け取るようアドバイスすることが、スムーズな申請の鍵となります。

企業が見落としがちな在留資格管理上のリスクと対策

特定技能制度は、厳格な法令遵守を前提としています。管理上の些細なミスが、企業全体の外国人受入れ停止という最悪の事態を招くこともあります。ここでは、企業が見落としがちなリスクと、その対策について解説します。

【ノウハウ7】届出義務違反による受入れ停止リスク

特定技能所属機関には、四半期ごとの「定期届出」と、契約内容に変更があった際の「随時届出」が義務付けられています。これらの届出を怠ると、指導や改善命令の対象となり、最悪の場合、受入れ機関としての認定が取り消され、5年間の受入れ停止処分を受ける可能性があります。特に、外国人が退職した後の「雇用契約終了の届出」は忘れがちなので注意が必要です。

【ノウハウ8】支援計画の不履行と記録管理

特定技能1号外国人に対する支援計画(事前ガイダンス、生活オリエンテーション、定期面談など)は、計画通りに実施し、その記録を保存しなければなりません。実施していても記録がなければ「未実施」とみなされるリスクがあります。登録支援機関に委託している場合でも、最終的な責任は受入れ企業にあります。委託先から定期的な報告を受け、記録簿を確認する体制を構築しましょう。

特定技能外国人の雇用継続を確実にするための定期確認チェックリスト

複雑な特定技能の管理を確実に行うためには、定期的なチェックが欠かせません。以下のリストを活用し、抜け漏れのない管理体制を整えてください。

【ノウハウ9】在留期限・申請期限のW管理

  • 在留カードの有効期限(在留期限)を確認し、カレンダーに登録しているか。
  • 更新申請が可能になる「3ヶ月前」を期限管理のアラートとして設定しているか。
  • パスポートの有効期限も併せて確認しているか(更新時にパスポートが切れていると手続きが滞る)。

【ノウハウ10】定期届出・随時届出の履行状況チェック

  • 四半期ごとの定期届出(受入れ状況、支援実施状況、活動状況)を期限内に提出しているか。
  • 給与額、手当、労働時間などの労働条件に変更があった際、遅滞なく随時届出(契約変更の届出)を行っているか。
  • 支援委託契約や登録支援機関に変更があった場合、直ちに届出を行っているか。
  • 外国人の住所変更など、本人による届出が完了しているか確認しているか。
  • 社会保険料や税金の納付状況(本人分含む)を定期的に確認しているか。

関連する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

まとめ

特定技能外国人の在留資格管理は、更新・変更手続きの正確さと、日々の適切な雇用管理の積み重ねが重要です。本記事で紹介した「ノウハウ10選」を参考に、期限管理の徹底、書類の整合性チェック、そして届出義務の履行を確実に行ってください。特に、転職時の変更申請における就労不可期間や、公的義務の納付状況確認は、コンプライアンス遵守の要です。

制度は頻繁に改正されるため、常に最新の情報を入手し、不明点は専門家に相談しながら、リスクのない受入れ体制を維持しましょう。

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