新着情報
助成金不正受給で失敗しない!企業が陥るトラブル事例と回避のための全知識
企業の資金繰りや労働環境の改善に役立つ助成金ですが、申請内容に誤りや虚偽が含まれていると「不正受給」とみなされ、取り返しのつかない事態を招くことがあります。助成金不正受給は、単なる返金手続きでは済まされず、ペナルティの加算や企業名の公表、最悪の場合は刑事罰に問われる重大なコンプライアンス違反です。「知らなかった」「悪気はなかった」では済まされないのが助成金の実務であり、経営者や担当者は常に適正な運用を求められます。

本記事では、企業が陥りやすい具体的なトラブル事例やその発生原因、不正受給が発覚した際の影響について詳しく解説します。また、失敗を未然に防ぐためのチェックポイントや改善策も網羅的に紹介しますので、健全な助成金活用の手引きとしてお役立てください。
助成金不正受給で企業が陥る具体的なトラブル事例
助成金の不正受給は、悪意を持って行われるケースだけでなく、制度への理解不足や社内の連携ミスから発生することもあります。ここでは、業種や規模を一般化した典型的なトラブル事例を紹介します。
製造業A社のケース:雇用調整助成金の架空休業
地方の中小製造業A社では、受注減少に伴い従業員を一時的に休業させ、雇用調整助成金を申請していました。しかし、実際には納期に間に合わせるために一部の従業員を出勤させていたにもかかわらず、タイムカードを打刻させずに「全日休業」として申請を行いました。
労働局の実地調査により、パソコンのログイン履歴や業務日報と出勤簿の不整合が発覚。A社は過去に受給した助成金の全額返還に加え、ペナルティとして20%の加算金、さらに年3%の延滞金を支払うこととなり、資金繰りが急速に悪化しました。
サービス業B社のケース:キャリアアップ助成金の要件不備
ITサービス業B社は、契約社員を正社員に転換したとしてキャリアアップ助成金(正社員化コース)を申請しました。しかし、就業規則には「正社員の基本給は月給制」と定められていたにもかかわらず、対象者の給与計算が時給制のまま運用されており、実態として正社員転換が行われていないと判断されました。
B社は「単なる事務ミス」と主張しましたが、就業規則と実態の乖離は重大な要件不備とみなされ、不支給決定だけでなく、過去の申請分についても再調査が行われる事態となりました。
なぜ起こる?助成金不正受給トラブルの背景と発生原因
助成金トラブルが発生する背景には、企業側の認識の甘さや、外部環境の要因が複雑に絡み合っています。
多くのケースで見られるのは、「助成金はもらえるもの」という安易な認識です。助成金は融資とは異なり返済不要の資金ですが、その原資は事業主が支払う雇用保険料であり、支給には厳格な法令順守が求められます。しかし、経営難による焦りや、「他社もやっているから大丈夫だろう」という集団心理が働き、コンプライアンス意識が麻痺してしまうことがあります。
また、助成金制度自体の複雑さも一因です。毎年のように要件変更が行われるため、最新のルールを把握しきれず、意図せず不正な申請を行ってしまうケースも少なくありません。さらに、一部の悪質なコンサルタントが「手数料さえ払えば簡単に受給できる」と甘い言葉で不正を指南し、企業がそれに乗ってしまうトラブルも後を絶ちません。
不正受給問題の根本原因を詳細に分析する
不正受給が発生する根本原因を掘り下げると、組織的な管理体制の不備や知識不足が浮かび上がります。主な原因は以下の通りです。
- 労務管理のずさんさ: 出勤簿や賃金台帳が実態と乖離している、または改ざんが常態化している場合、助成金申請の土台そのものが崩れています。
- 制度理解の不足: 「正社員化」や「休業」の定義を独自に解釈し、支給要件を満たしていないのに申請してしまうケースです。
- 属人化した業務体制: 助成金申請を特定の担当者一人に任せきりにし、社内でのダブルチェック機能が働いていないことが不正の温床となります。
- 悪質な外部業者の介入: 「受給額の〇〇%を手数料とする」といった成果報酬型の業者が、受給額を釣り上げるために不正を主導するケースがあります。
- 経営者のコンプライアンス意識欠如: 資金繰りを優先するあまり、不正受給のリスクを軽視し、現場に無理な申請を強いるトップダウン型の不正も存在します。
助成金不正受給が企業に与える多大な影響とリスク
一度でも不正受給が発覚すると、企業は金銭的な損失だけでなく、社会的信用も失うことになります。その影響は計り知れません。
経済的なペナルティ
不正受給と認定された場合、受給した助成金の全額返還が求められます。さらに、制裁として受給額の20%相当額が上乗せされ、不正受給の日の翌日から返還完了日までの期間に対して年3%の延滞金が課されます。これらを合計すると、受給額の約1.3倍〜1.5倍近くの金額を一括で支払わなければならないケースもあり、経営破綻の引き金になりかねません。
社会的制裁と信用の失墜
厚生労働省は、不正受給を行った事業所の名称、代表者氏名、所在地、不正の内容などを公表しています。この情報はインターネット上で半永久的に残り、取引先からの契約解除や銀行融資の停止、新規採用の困難など、事業継続に致命的なダメージを与えます。
今後の助成金利用の制限
不正受給を行った事業主は、支給決定取消しの日から5年間、当該助成金だけでなく、雇用関係の助成金全般の支給を受けられなくなります。これにより、将来的な人材育成や雇用維持のための公的支援を受けられなくなります。
刑事告発のリスク
特に悪質な事案については、詐欺罪(刑法第246条、10年以下の懲役)として警察に告発される可能性があります。実際に逮捕者が出ている事例もあり、経営者個人の人生にも関わる重大なリスクです。
トラブル回避のために!助成金不正受給を防ぐ一般的な改善策
助成金の不正受給リスクをゼロにするためには、日頃からの適正な労務管理と、申請プロセスの透明化が不可欠です。以下に、実務ですぐに取り組める具体的な改善策を提示します。
- 労務管理の徹底とデジタル化: 出勤簿、タイムカード、賃金台帳の記録を正確に行い、整合性を保つことが基本です。手書きや修正の多いアナログ管理を避け、勤怠管理システムを導入することで改ざんリスクを減らし、客観的な記録を残す体制を整えましょう。
- 最新の支給要件の確認: 助成金の要件は頻繁に変更されます。申請前には必ず厚生労働省の公式サイトで最新の「支給要領」や「パンフレット」を確認し、自社が要件を満たしているかを入念にチェックしてください。
- 社内ダブルチェック体制の構築: 申請書類の作成を担当者任せにせず、責任者や別のスタッフが内容を確認するフローを設けてください。特に、タイムカードと申請書類の突合は必須です。
- 専門家の活用: 社会保険労務士などの専門家に相談し、第三者の視点で書類の適正性を確認してもらうことが有効です。ただし、専門家選びは慎重に行い、不正を提案するような業者とは関わらないことが重要です。
- 「うまい話」への警戒: 「返済不要の資金を簡単に調達できる」「裏技がある」といった勧誘には絶対に乗らないでください。リスクのない不正など存在しません。
不正受給を防ぐための意識改革
助成金不正受給を防ぐ最も強力な防壁は、経営者と従業員の高いコンプライアンス意識です。「公的な資金を預かる」という責任感を持ち、少しでも疑問があれば労働局に問い合わせるなど、誠実な対応を心がけましょう。
類似の助成金トラブルを未然に防ぐためのチェックポイント
今後、同様のトラブルに巻き込まれないために、自社の状況を以下のリストで確認してみてください。
- 実態との整合性: 申請書類の内容(休業日数、労働時間、賃金額)は、実際の勤務状況や給与振込額と完全に一致していますか?
- 就業規則の整備: 就業規則の内容は最新の法令に対応しており、かつ実際の運用と乖離していませんか?
- 対象者の要件: 助成金の対象となる従業員の雇用形態(正社員、契約社員など)や労働時間は、要件を正確に満たしていますか?
- 書類の保存: 出勤簿、賃金台帳、雇用契約書などの法定帳簿は、適切に作成・保存(通常5年間)されていますか?
- 外部業者の選定: 申請代行を依頼している業者は、信頼できる実績があり、不正な提案をしてきませんか?
関連する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
まとめ
助成金は企業の成長を支援する有用な制度ですが、ひとたび助成金不正受給に関与してしまえば、経済的な損失だけでなく、長年築き上げた社会的信用を一瞬にして失うことになります。ペナルティは年々厳格化されており、企業名の公表や刑事告発といった重い処分が課されるリスクも高まっています。
トラブルを回避するためには、日々の労務管理を徹底し、正確な事実に基づいて申請を行うことが唯一の道です。「少しぐらいならバレないだろう」という甘い考えは捨て、専門家の助言も仰ぎながら、コンプライアンスを遵守した誠実な経営を目指してください。適正な助成金活用こそが、企業の持続的な発展につながります。
大阪なんば駅徒歩1分
給与計算からIPO・M&Aに向けた労務監査まで
【全国対応】HR BrEdge社会保険労務士法人

