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就業規則と実態の乖離を防ぐ!2025年法改正対応と見直し選択肢を比較

2026.01.18 就業規則

「就業規則を作成したものの、実態と合わなくなっている」「度重なる法改正に追いついていない」——多くの企業がこのような課題を抱えています。就業規則と実態の乖離は、単なる管理不足にとどまらず、労使トラブルの火種や、法的な経営リスクに直結する重大な問題です。

就業規則と実態の乖離を防ぐ!2025年法改正対応と見直し選択肢を比較

特に2025年は、育児・介護休業法の大幅な改正や雇用保険法の見直しなど、企業の人事労務管理に大きな影響を与える変革の年です。このタイミングでの就業規則の点検と見直しは、企業のコンプライアンス維持だけでなく、人材確保の観点からも不可欠といえます。

この記事では、就業規則と実態の乖離が招くリスクを整理し、2025年の法改正ポイントを解説します。さらに、見直しのための「自社対応」「社労士依頼」「管理ツール活用」という3つの選択肢を徹底比較し、自社に最適な方法を選ぶための判断材料を提供します。

目次

就業規則と実態の乖離が企業にもたらす法的・経営リスク

就業規則は、企業と従業員の間の「契約内容」を定める重要なルールブックです。記載内容と現場の運用実態が異なっている場合(乖離している場合)、企業は予期せぬ法的リスクや経営上の損失を被る可能性があります。

法的効力の欠如と労使トラブルの敗訴リスク

就業規則に定めた懲戒規定や労働条件が実態と異なる場合、いざ問題社員への対応や労働条件の変更を行おうとした際に、その効力が否定されるリスクがあります。

  • 懲戒処分の無効: 懲戒事由が就業規則に明記されていても、周知されていなかったり、過去に黙認していたりする実態があれば、懲戒権の濫用として無効になる判例(フジ興産事件など)があります。
  • 未払い賃金のリスク: 労働時間管理の実態が規則と異なり、変形労働時間制などの運用要件を満たしていないと判断されれば、遡って多額の割増賃金の支払いを命じられる可能性があります。

「黙示の承認」による労働慣行の固定化

就業規則よりも従業員に有利な取り扱いが慣行として定着している場合、それが「労使慣行」として法的拘束力を持つことがあります(日本貨物検数協会事件など)。

例えば、就業規則上は「賞与なし」としていても、長年一律に支給し続けていれば、経営悪化時に不支給とすることが「不利益変更」とみなされ、容易には撤回できなくなる恐れがあります。

組織風土の悪化と採用への悪影響

ルールと実態が異なる「ダブルスタンダード」の状態は、従業員の会社に対する不信感を招きます。「うちはルールがあっても守られない会社だ」という認識が広がれば、モラルハザード(規律の欠如)を引き起こし、生産性の低下につながります。また、こうした実態が口コミなどで広がれば、コンプライアンス意識の高い優秀な人材の採用が困難になります。

2025年法改正の最新動向と就業規則見直しの必要性

2025年は、働き方の多様化や両立支援を推進するための重要な法改正が施行されています。これらの改正に対応できていない就業規則は、法令違反の状態となるため、早急な見直しが必要です。

育児・介護休業法の改正ポイント(2025年4月・10月施行)

育児・介護休業法は、2段階で施行される改正への対応が必須です。

  • 子の看護休暇の見直し: 名称が「子の看護等休暇」に変更され、対象となる子の範囲が「小学校3年生修了まで」に拡大されました。また、取得事由に「学級閉鎖」や「入卒園式」なども追加され、勤続6ヶ月未満の除外規定が廃止されています。
  • 所定外労働の制限(残業免除): 対象となる子の範囲が「3歳未満」から「小学校就学前」まで拡大されました。
  • 柔軟な働き方を実現するための措置: 3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に対し、始業時刻変更、テレワーク、短時間勤務などから2つ以上の制度を選択して措置を講じることが義務化されました(2025年10月)。

雇用保険法の改正と新たな給付金(2025年4月施行)

  • 育児時短就業給付の創設: 2歳未満の子を養育するために短時間勤務をする場合、賃金の一定割合(10%相当)が支給される制度が開始されました。これに伴い、就業規則や賃金規程において、時短勤務時の賃金計算方法を明確にしておく必要があります。

就業規則への反映と運用の再確認

これらの改正は、単に法律が変わっただけでなく、企業の「支援体制」そのものの見直しを迫るものです。

  • 育児・介護休業規程の全面的な改定。
  • 労使協定(除外規定など)の再締結。
  • 従業員への周知と、制度を利用しやすい環境整備(ハラスメント防止含む)。

就業規則見直しの主要な3つのアプローチとその特徴

就業規則を見直す方法は、大きく分けて「自社対応」「社会保険労務士への依頼」「管理ツールの活用」の3つがあります。それぞれの特徴を比較し、自社のリソースや優先順位に合わせて選択することが重要です。

1. 自社対応(厚生労働省モデル就業規則など)

  • 概要: 厚生労働省が公開している「モデル就業規則」などをベースに、社内の担当者が作成・変更を行う方法。
  • コスト: 最も低い(人件費のみ)。
  • 適性: 創業期で予算が限られている企業や、社内に法務知識の豊富な専任担当者がいる場合。

2. 社会保険労務士への依頼

  • 概要: 労働法の専門家である社労士に、ヒアリングから作成、届出までを一任する方法。
  • コスト: 中〜高(数万円〜数十万円)。
  • 適性: 法的リスクを最小限に抑えたい企業、特殊な労働形態がある企業、アウトソーシングで本業に集中したい企業。

3. 就業規則管理ツール(クラウドサービス)の活用

  • 概要: 質問に答えるだけで規程案が自動生成されるクラウドサービスや、版数管理・周知機能を持つツールを利用する方法。
  • コスト: 低〜中(月額サブスクリプション形式が多い)。
  • 適性: コストを抑えつつ一定の品質を担保したい企業、拠点が多く周知を効率化したい企業。

自社で就業規則を見直すメリット・デメリットと具体的なステップ

自社対応はコストメリットが大きい反面、品質担保の責任が全て自社に降りかかる点に注意が必要です。

メリット:コスト削減と社内ノウハウの蓄積

外部委託費用がかからないため、金銭的なコストを最小限に抑えられます。また、担当者が自ら条文を検討することで、自社のルールに対する理解が深まり、運用時の質問にも即答できるノウハウが蓄積されます。

デメリット:法改正対応の遅れとリスクの見落とし

最新の法改正情報を自力で収集し、正確に反映させるには高度な専門知識と時間が必要です。ネット上のひな形をそのままコピー&ペーストすると、自社の実態に合わない条項(不要な手当や厳しすぎる懲戒規定など)が含まれてしまい、逆にリスクを高める「不完全な規則」になる危険性があります。

具体的な見直しステップ

  1. 現状分析: 現在の就業規則と、実際の勤務体系・手当支給状況などを照らし合わせ、乖離箇所をリストアップします。
  2. 法改正チェック: 厚生労働省の最新パンフレット等を参照し、必須対応項目を確認します。
  3. 条文作成: モデル就業規則を参考に、自社の実態に合わせて条文を修正します。
  4. 意見聴取・届出: 従業員代表の意見書を添付し、所轄の労働基準監督署へ届け出ます。
  5. 周知: サーバーへの掲示やハンドブック配布などで、全従業員に周知します。

社会保険労務士に依頼するメリット・デメリットと選定ポイント

専門家である社労士への依頼は、安心と品質を買う選択肢です。

メリット:リスクヘッジと「生きた規則」の作成

最大のメリットは、法適合性の保証とリスク対策です。判例やトレンドを踏まえ、「会社を守りつつ、従業員も納得できる」バランスの取れた規定を提案してもらえます。また、助成金の申請要件を満たすような制度設計のアドバイスを受けられる点も大きな付加価値です。

デメリット:コスト負担と相性の問題

専門家への報酬が発生するため、他の方法に比べてコストは高くなります。また、担当する社労士の経験値やスタンス(会社寄りか、中立か)によって提案内容が変わるため、自社の風土に合わない規定を提案されるリスクもゼロではありません。

選定のポイント

  • 専門分野: 就業規則の作成実績が豊富か、自社の業界に詳しいか。
  • 提案力: 単に法律を守るだけでなく、「どう運用するか」という実務視点でのアドバイスがあるか。
  • コミュニケーション: レスポンスの早さや、専門用語を使わずに説明してくれるか。

就業規則管理ツールの活用メリット・デメリットと導入事例

近年利用が増えているクラウド型の管理ツールは、効率性とコストのバランスに優れています。

メリット:作成効率化と版数管理の容易さ

ウィザード形式で質問に答えるだけで、法改正に対応したベース案が作成できます。最大の強みは「管理・運用」の効率化です。改定履歴(版数)の自動保存、新旧対照表の自動作成、クラウド上での従業員への周知・同意取得など、アナログ管理の手間を大幅に削減できます。

デメリット:個別事情への対応力とランニングコスト

汎用的なテンプレートに基づいているため、業界特有の複雑な慣行や、独自のユニークな制度を細かく反映させるには限界がある場合があります。また、月額利用料が発生するため、長期的に利用する場合はトータルコストの試算が必要です。

導入事例:多店舗展開企業のケース

ある飲食チェーン企業では、店舗ごとに紙のファイルで就業規則を備え付けていましたが、改定時の差し替え漏れが頻発していました。クラウド管理ツールを導入し、全従業員がスマホから最新の規則を閲覧できる環境を整備。これにより、周知義務違反のリスクを解消し、本部の人事担当者の工数を月20時間削減することに成功しました。

就業規則運用で企業が陥りやすい「よくある誤解」と対策

就業規則は「作って終わり」ではありません。実務現場でよく見られる誤解と、その対策を紹介します。

よくある誤解

  • 「正社員用だけ作ればいい」: パート・アルバイトも常時10人以上の事業場には作成義務があり、働き方が異なる以上、専用の規則(パートタイム就業規則)を作成するのが望ましいです。
  • 「金庫に大切に保管しているから大丈夫」: 従業員がいつでも見られる状態(周知)になっていなければ、法的効力は発生しません(労働基準法第106条)。
  • 「従業員代表の同意がないと変更できない」: 法的には「意見を聴く」ことが要件であり、必ずしも「同意」や「合意」までは求められていません(ただし、不利益変更の場合は合理性が必要であり、同意を得る努力は不可欠です)。
  • 「法律が変わったら自動的に適用される」: 法律が改正されても、就業規則を変更しなければ、社内ルールとしては古いままです。このズレが現場の混乱を招きます。

対策:定期的な運用監査

1年に1回は「就業規則メンテナンス月間」を設け、法改正への対応状況や、実態とのズレがないかを確認するルーチンを作ることが有効です。

専門家が解説する就業規則見直し・運用の最重要ポイント

最後に、就業規則を見直し、運用していく上で、実務担当者が最も意識すべきポイントを整理します。

1. 「会社のメッセージ」としての活用

就業規則は単なる禁止事項の羅列ではありません。「わが社はこういう働き方を推奨する」「こういう行為は許さない」という、企業の価値観やメッセージを伝えるツールとして活用してください。前文に経営理念を記載するのも効果的です。

2. リスク管理と従業員満足度のバランス

会社を守るための防衛的な条項(懲戒、休職、機密保持など)は厳格に定める一方で、休暇や手当などの福利厚生的な条項は分かりやすく使いやすいものにするなど、メリハリをつけることが重要です。

3. 改定プロセスの透明化

どのような変更を行うのか、その理由は何かを従業員に丁寧に説明するプロセス自体が、労使の信頼関係を構築します。「いつの間にか変わっていた」という状況は、不信感の源泉となります。

4. 専門家やツールとの適切な連携

自社のリソースだけで完璧を目指す必要はありません。ベース部分はツールで効率化し、重要な判断が必要な箇所は社労士に相談するなど、ハイブリッドな活用が現在の主流です。自社に最適な組み合わせを見つけてください。

就業規則の適切な運用は、企業の安定的発展の基盤です。2025年の法改正を機に、ぜひ一度、自社のルールブックを見直してみてください。

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まとめ

就業規則と実態の乖離は、法的リスクだけでなく、従業員の信頼喪失という経営リスクを招きます。特に2025年は育児・介護休業法などの重要改正が相次いでおり、これらに対応した就業規則への見直しは待ったなしの状況です。

見直しの手段としては、自社対応、社労士依頼、ツール活用の3つがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。コストや手間だけでなく、法適合性や運用リスクを総合的に判断し、自社に最適な方法を選択してください。そして何より重要なのは、作成した規則を「周知」し、実態に合わせて運用し続けることです。

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