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HR DX推進の労務リスクを徹底解説!2025年最新の法改正と対応戦略
近年、多くの企業でHR DX(人事労務のデジタルトランスフォーメーション)が急速に進展しています。業務効率化や戦略的人事の実現が期待される一方で、デジタル化に伴う新たな「労務リスク」が顕在化し始めています。特に2024年から2025年にかけては、育児・介護休業法の改正やフリーランス新法の施行、AI活用に関する議論の深化など、HR領域を取り巻く法的環境が激変しています。

単にシステムを導入するだけでは、これらの複雑な法規制に対応できず、知らぬ間にコンプライアンス違反を犯してしまう可能性があります。本記事では、HR DXを推進する上で避けて通れない2025年の最新法改正と、それに伴う具体的な労務リスク、そして企業が取るべき対応戦略について、専門的な視点から徹底解説します。
HR DX推進における労務リスクの2025年最新動向
2025年におけるHR DXの推進は、単なるツールの導入ではなく、法改正への適合性が厳しく問われるフェーズに入っています。デジタル化が進む中で特に注意すべき最新の動向を整理します。
- 改正育児・介護休業法へのシステム対応(2025年4月・10月施行):
3歳未満の子を養育する従業員へのテレワーク導入努力義務化や、子の看護休暇の対象拡大に伴い、勤怠管理システムや申請フローの改修が必須となります。 - フリーランス新法の実務定着(2024年11月施行):
タレントマネジメントシステム等で外部人材を管理する場合、発注条件の明示義務や支払期日の管理機能が法適合しているかの確認が急務です。 - AI活用のガバナンス強化:
採用や人事評価へのAI導入が進む中、EUのAI法(AI Act)や日本の「AI事業者ガイドライン」を意識した、透明性の高いアルゴリズム運用が求められています。 - 賃金デジタル払いの本格普及:
指定資金移動業者の増加に伴い、給与計算システムと決済アプリの連携における同意取得プロセスや、データ連携ミスによる未払いリスクへの対策が必要です。
DX化に伴う新たな法的・実務的労務リスクの深掘り
a) 勤怠管理DXにおける「ログ乖離」と法的整合性
テレワークやフレックスタイム制に対応した勤怠管理システムの導入はHR DXの基本ですが、ここに大きな落とし穴があります。PCのログ(稼働履歴)と自己申告の始業・終業時刻に乖離がある場合、労働基準監督署はログを重視する傾向にあります。
システム上で「休憩」と打刻していても、実際にはPC操作が行われていれば労働時間とみなされるリスクがあります。HR DX推進においては、単に打刻をデジタル化するだけでなく、客観的な記録と申告時間の乖離を自動検知し、アラートを出す仕組みや、その差異理由を記録として残す運用フローが不可欠です。システム設定が法的な労働時間管理の要件を満たしていない場合、未払い残業代請求のリスクに直結します。
b) デジタル給与払いと同意取得プロセスの不備
2023年に解禁され、2025年にかけて普及が見込まれる「賃金のデジタル払い」ですが、導入には労働者の「自由な意思に基づく同意」が絶対条件です。HRシステム上で「同意ボタン」を押させるだけの簡易的な運用では、説明義務を果たしていないと判断される恐れがあります。
また、資金移動業者の口座には100万円の上限額規制があり、これを超えた場合の自動送金設定(銀行口座への振替)がシステム側で確実に機能しなければなりません。労務リスクの観点からは、万が一のシステム障害や資金移動業者の破綻時に備えた代替払い手段の確保も、実務上の重い課題となります。
c) AI採用・評価におけるブラックボックス化と差別リスク
採用選考や人事評価にAI(人工知能)を活用する企業が増えていますが、AIが過去のデータから学習することで、性別や学歴による不当なバイアス(偏見)を再現してしまうリスクがあります。「AIが判断したから客観的である」という主張は、法的紛争において通用しなくなってきています。
特にプロファイリング技術を用いた選考は、個人情報保護法や職業安定法の観点からも慎重な運用が求められます。アルゴリズムがどのような要素を重視して合否や評価を決定したのか、人間が説明できる状態(説明可能性)を担保できない場合、HR DX自体が差別を助長する装置となり、企業ブランドを毀損する重大なリスク要因となります。
d) フリーランス・副業人材管理の「偽装請負」リスク
タレントマネジメントシステムで正社員とフリーランスを一元管理することは効率的ですが、管理手法を混同すると「偽装請負」のリスクが高まります。システム上でフリーランスに対して、正社員と同様の詳細な業務指示や勤怠管理(始業・終業時刻の拘束)を行っていると記録されれば、実質的な指揮命令関係があるとみなされます。
2024年11月施行のフリーランス新法により、取引条件の明示やハラスメント対策が義務化されましたが、あくまで「自律した事業者」としての扱いが必要です。システムの設定や権限付与において、雇用契約と業務委託契約の線引きを明確に区分けする必要があります。
e) 改正育児・介護休業法へのシステム追従遅れ
2025年の法改正により、育児のためのテレワーク導入が努力義務化され、残業免除の対象も拡大されます。これに伴い、申請ワークフローや労働時間管理の設定変更が必要です。もしシステム改修が間に合わず、旧来のルールのまま運用してしまうと、従業員の権利を侵害することになりかねません。
特に「育児時短就業給付」の創設(2025年4月・10月以降順次)など、給付金制度とも連動するため、給与計算システムの設定ミスは従業員の経済的不利益に直結します。法改正のスケジュールとベンダーのアップデート予定を常に照らし合わせる必要があります。
f) 電子契約・労働条件通知における本人確認と保存義務
入社手続きのDX化で労働条件通知書を電子交付するケースが一般的になりましたが、ここにもリスクがあります。メールやシステム経由での交付は「労働者が希望した場合」に限定されており、包括的な同意を得ていない場合、労働基準法違反となります。
また、電子署名を用いた雇用契約においては、なりすましリスクへの対策や、電子帳簿保存法に準拠したデータの保存要件(検索機能の確保など)を満たしているかが問われます。システム上のログが消えてしまったり、契約期間終了後にデータにアクセスできなくなったりする事態は避けなければなりません。
企業が直面する具体的な影響と潜在的な課題
HR DXにおける労務リスクは、法的な問題だけでなく、組織運営全体に具体的な影響を及ぼします。多くの企業が直面している課題は以下の通りです。
- 管理職の負担増と形骸化:
システム導入により人事部の事務負担は減る一方、現場の管理職に承認作業やデータ入力の負荷が集中し、本来のマネジメント業務が疎かになるケースが多発しています。 - コスト構造の変化:
初期導入費だけでなく、毎年のように発生する法改正(育児介護休業法、雇用保険法など)に対応するためのシステム改修費や追加オプション費用が、想定外のランニングコストとして経営を圧迫します。 - データ連携の分断(サイロ化):
給与、勤怠、評価、労務管理の各システムが分断されている場合、手作業でのデータ転記が発生し、人為的ミスによる給与計算間違いや社会保険手続きの遅延を引き起こします。
労務リスクを最小化する実践的対応策と準備事項
これらのリスクを回避し、安全にHR DXを推進するためには、以下の実践的な対応策を講じる必要があります。
- 就業規則とシステム設定の同時改定:
システムを導入する前に、就業規則や賃金規程を見直し、「デジタルの定義」を明確にします。例えば、チャットツールの使用ルールや、システム上の打刻と実労働時間の取り扱いについて明文化します。 - 定期的な「法適合性監査」の実施:
システムの設定が最新の法令(2025年改正育児・介護休業法など)に適合しているか、半年に一度は社労士等の専門家を交えてレビューを行います。ベンダー任せにせず、自社で確認する体制が重要です。 - Human in the Loop(人間による介在)の確保:
AIによる評価や採用判断を行う場合でも、最終的な決定権は必ず人間が持つプロセスを構築します。AIの判定理由を説明できるようにし、不服申し立てのルートも整備します。 - 従業員へのDXリテラシー教育:
システムの使い方だけでなく、情報セキュリティや勤怠入力の重要性(法的意味)について教育を徹底します。従業員の理解不足が最大のリスク要因になり得るからです。
HR DX推進におけるよくある誤解と正しい知識
現場では、DX化に対して危険な誤解が蔓延しています。正しい知識を持つことがリスク管理の第一歩です。
- 誤解: 「有名ベンダーのシステムを導入すれば、法対応は完璧だ」
真実: システムはあくまで「道具」であり、自社の就業規則や運用実態に合わせて設定しなければ、機能していても法違反になる可能性があります(例:36協定の上限設定など)。 - 誤解: 「すべてペーパーレス化すれば効率的だ」
真実: 労働基準監督署の調査や裁判においては、原本性の証明が求められます。電子契約データの保存要件を満たしていない場合、証拠能力が否定されるリスクがあります。 - 誤解: 「フリーランスには労務管理は不要だ」
真実: フリーランス新法の施行により、発注条件の明示やハラスメント対策など、従業員に準じた管理義務が発生しています。「放置」は法令違反となります。 - 誤解: 「AI評価なら客観的で公平だ」
真実: 学習データに過去の人間の偏見(バイアス)が含まれていれば、AIはそれを増幅して差別的な判断を下す可能性があります。AIは決して「中立」とは限りません。
専門家が提言するHR DX推進の戦略的ポイント
ポイント1: 法改正対応を起点としたロードマップ策定
2025年は育児・介護休業法の改正など、実務への影響が大きい変更が相次ぎます。システム導入ありきではなく、「法改正への対応スケジュール」を軸にDXのロードマップを引くことが重要です。いつまでにどの機能を改修すべきかを可視化しましょう。
ポイント2: データの「透明性」と「説明責任」の確保
HR DX推進において、ブラックボックス化したシステム運用は最大のリスクです。評価結果や給与計算のロジックについて、従業員から問われた際に明確に回答できるよう、プロセスの透明性を担保してください。これが従業員の信頼(エンゲージメント)向上にも繋がります。
ポイント3: 運用ルールの標準化と単純化
システムに合わせて業務フローを複雑にするのではなく、まずは業務ルール自体を標準化・単純化することが先決です。例外処理が多いままシステム化すると、改修コストが膨らみ、運用のミスを誘発します。「デジタルで扱える形」に業務を整理することこそが、真のDXの第一歩です。
関連する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
まとめ
HR DXの推進は、企業の生産性を高める強力な手段ですが、同時に新たな労務リスクを伴います。特に2025年は、育児・介護休業法の改正やフリーランス新法、AI規制など、法的要件が複雑化する年です。「システムを入れれば終わり」ではなく、法適合性の継続的なチェックと、人間中心の運用設計が不可欠です。
企業は、最新の法改正情報を常にキャッチアップし、テクノロジーと法律の両輪でHR DX推進を進めていく必要があります。正しい知識と準備を持って、安全かつ効果的なデジタルトランスフォーメーションを実現してください。
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