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2025年版セクハラ相談対応:企業が取るべき法的義務と実効性ある防止策

2026.01.01 ハラスメント対策

社会の意識変革とともに、ハラスメントに対する目は年々厳しさを増しています。特に2025年は、改正育児・介護休業法の全面施行や、2024年11月に施行されたフリーランス保護法の実務運用が本格化する重要な年です。企業には従来の社内向け対策に加え、社外の人材や就職活動生など、より広範な対象への配慮義務が求められています。

2025年版セクハラ相談対応:企業が取るべき法的義務と実効性ある防止策

セクシュアルハラスメント(以下、セクハラ)の相談対応を一歩間違えれば、被害者のメンタルヘルス悪化による離職、SNSでの拡散による社会的信用の失墜、そして高額な損害賠償請求といった深刻なリスクを招きます。本記事では、2025年時点での最新法令に基づき、企業が講ずべき法的義務と、実務担当者が押さえるべき相談対応の鉄則を徹底解説します。

2025年版ハラスメント対策関連法規の最新動向と企業への影響

2025年のハラスメント対策における最大のトピックは、「保護対象の拡大」と「両立支援との連動」です。従来の「社内の異性間トラブル」という認識を捨て、法改正に対応したアップデートが必要です。

  • フリーランスへのハラスメント対策義務化(フリーランス保護法)2024年11月の施行を受け、2025年は実務対応が本格化します。発注事業者(従業員を使用する企業)は、業務委託するフリーランスに対しても、社内従業員と同様にハラスメント相談窓口の利用を認めるなどの体制整備が義務付けられました。「外部の人だから」という言い訳は通用しません。
  • 育児・介護休業法の改正(2025年4月・10月施行)子の看護休暇の対象拡大(小3まで)や、介護離職防止のための意向確認義務化に伴い、制度利用を阻害する言動(マタハラ・パタハラ・ケアハラ)への監視が強化されます。これらはセクハラと複合的に発生しやすいため、一体的な防止措置が求められます。
  • 就活ハラスメント防止措置の法制化に向けた動き2025年の法改正議論では、就職活動中の学生等に対するセクハラ防止措置の義務化が焦点となっています。すでに厚生労働省の指針では「望ましい取り組み」とされていますが、法的義務化を見越したルールの策定が急務です。
  • カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の強化東京都の条例制定などを皮切りに、国レベルでもカスハラ対策を事業主の義務とする法改正の準備が進んでいます。セクハラ相談窓口とカスハラ窓口の連携も課題となります。

セクハラ相談受付から問題解決までの具体的対応フロー

セクハラ事案が発生した際、初期対応の成否が解決までの期間とコストを決定づけます。担当者は以下のフローを頭に入れ、冷静かつ迅速に行動する必要があります。

1. 一次相談受付と緊急性の判断

相談窓口に連絡が入った時点で、まずは相談者の安全確保を最優先します。「死にたい」といった深刻なメンタル不調の訴えや、身体的暴行の恐れがある場合は、即座に人事責任者や産業医と連携し、必要であれば加害者との物理的な引き離し(自宅待機命令や席替え)を行います。

2. ヒアリングの実施(傾聴の徹底)

被害者へのヒアリングは、原則として同性の担当者が2名で行うことが望ましいです(記録係を含む)。ここでの目的は「事実の断定」ではなく「主張の把握」です。「いつ、どこで、誰に、何をされたか」「目撃者はいるか」「どのような解決を望むか」を時系列で丁寧に聴取します。この段階で「あなたにも隙があったのでは?」といった予断を持った発言は厳禁です。

3. 事実関係の調査と証拠収集

被害者の了解を得た上で、加害者および第三者(目撃者)へのヒアリングを行います。メール、チャット(LINEなど)の履歴、録音データなどの客観的証拠も収集します。加害者への聴取では、いきなり核心を突くのではなく、業務上の指導の一環だったのか、私的な感情があったのかなど、背景事情も確認します。

被害者と加害者の双方への対応と二次被害防止策

セクハラ相談対応において最も注意すべきは、「セカンドハラスメント(二次被害)」の防止です。調査過程での配慮不足が、新たな火種となるケースが後を絶ちません。

プライバシー保護の徹底

相談者、行為者双方のプライバシーを保護することは鉄則です。ヒアリングは防音設備の整った個室で行い、関係者には守秘義務を遵守させる誓約書を取るなどの措置が必要です。「○○さんがセクハラ被害を訴えているらしい」という噂が社内に広まるだけで、相談者は居場所を失います。

不利益取扱いの禁止

相談したことや、調査に協力したことを理由に、解雇、降格、不当な異動などの不利益な取扱いをすることは法律で固く禁じられています。特に、契約社員や派遣社員が相談者である場合、契約更新のタイミングでの雇い止めは報復措置とみなされる可能性が高く、極めて慎重な判断が求められます。

加害者への適正手続(デュー・プロセス)

加害者とされる側にも弁明の機会を十分に与える必要があります。一方的な被害者の主張のみで処分を決定すると、後に行為者から不当処分として訴えられるリスクがあります。公平中立な立場で双方の言い分を聞き、食い違いがある場合は再調査を行うプロセスが不可欠です。

実効性のあるセクハラ防止体制の構築と社内教育

相談件数ゼロが必ずしも良い組織とは限りません。「相談しても無駄だ」と諦められている可能性があるからです。実効性のある防止体制とは、従業員が安心して声を上げられる環境を指します。

  • トップメッセージの発信と就業規則の整備経営トップが「あらゆるハラスメントを許さない」という明確な姿勢を示し、就業規則にセクハラ行為に対する懲戒規定を明記します。「性的な冗談」や「食事への執拗な誘い」も処分の対象になり得ることを具体的に例示することが効果的です。
  • 管理職向け研修のアップデート「昔はこれくらい許された」というアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を払拭するため、最新の判例や事例を用いた研修を定期的に実施します。特に、部下の拒絶を「照れ隠し」と都合よく解釈するケースが多いため、相手の意に反する言動はすべてハラスメントになり得ることを徹底周知させます。
  • 相談窓口の周知と信頼性向上窓口の連絡先をイントラネットやポスターで掲示するだけでなく、外部機関(社外のホットライン)を設置することで、社内の人間に知られたくない従業員の心理的ハードルを下げることができます。

調査と処分:公正な判断のためのポイントと注意点

調査が完了し、セクハラの事実が認定された場合、どのような処分を下すべきか。この判断は非常に高度な法的知識とバランス感覚が求められます。

懲戒処分の「相当性」と「平等性」

処分の重さは、行為の悪質性、頻度、継続性、被害の程度、加害者の職位、過去の処分歴などを総合的に考慮して決定します(比例原則)。

  • 軽微な言動(性的冗談など): けん責、減給、出勤停止など
  • 身体的接触・執拗な行為: 出勤停止、降格、諭旨解雇
  • 強制わいせつ・強要レベル: 懲戒解雇

重要なのは「過去の自社の事例」や「裁判例」との整合性です。同様のケースで過去に軽い処分で済ませていた場合、突然重い処分を科すと権利濫用とされる恐れがあります。

裁判例に見る判断基準(海遊館セクハラ事件など)

最高裁の判例(平成27年など)では、被害者が明確に拒否していなくても、その言動が職場の環境を著しく害するものであれば、懲戒処分(出勤停止など)は有効と判断されています。一方で、事実認定が不十分なまま行った懲戒解雇が無効とされたケース(Y社事件など)もあり、拙速な処分は禁物です。

外部専門家(社労士・弁護士)との連携によるリスクマネジメント

社内調査には限界があり、身内意識が働いて判断が甘くなる、あるいは逆に厳しすぎる処分をしてしまうリスクがあります。

  • 初期段階からの専門家介入相談内容が深刻な場合、初動のヒアリング段階から社会保険労務士や弁護士のアドバイスを仰ぐことで、調査の抜け漏れを防げます。
  • 第三者委員会の設置役員が関与する事案や、組織的な隠蔽が疑われるケースでは、外部の専門家のみで構成される第三者委員会に調査を委託することが、対外的な説明責任を果たす上でも有効です。
  • 法的妥当性のチェック懲戒処分を通知する前に、その処分内容が法的リスク(解雇権濫用など)を負わないか、専門家のリーガルチェックを受けることが、企業を守る最後の砦となります。

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まとめ

2025年のセクハラ相談対応は、フリーランス保護法や育児介護休業法の改正により、従来以上に広範かつ繊細な対応が求められます。企業には、形式的な窓口設置だけでなく、被害者の心身の安全確保、プライバシー保護、そして公正な事実認定と処分プロセスを完遂する実務能力が不可欠です。

ハラスメント対策は「守りの経営」であると同時に、従業員が安心して働ける環境を整備し、人材定着を促進する「攻めの経営」の基盤でもあります。最新の法改正を正しく理解し、外部専門家とも連携しながら、実効性のある防止体制を構築していきましょう。

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