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【スタートアップ向け】就業規則はいつから必要?失敗しない作成手順と雛形活用の注意点

2026.01.22 スタッフブログ

スタートアップの経営者や人事担当者にとって、事業の急成長に伴う組織体制の整備は待ったなしの課題です。その中でも「就業規則」は、会社のルールブックとして極めて重要な役割を果たします。

【スタートアップ向け】就業規則はいつから必要?失敗しない作成手順と雛形活用の注意点

しかし、「従業員が少ないうちは必要ない」「テンプレートを少し直せば大丈夫」と安易に考えていないでしょうか?実は、その認識が将来的に重大な労務トラブルや、数百万円単位の損失(助成金の不支給など)を招く原因となることがあります。

本記事では、HR BrEdge社会保険労務士法人の専門ライターが、スタートアップ企業が知っておくべき就業規則の作成義務のタイミング、テンプレート活用のリスク、そして失敗しないための具体的な作成手順を徹底解説します。

就業規則がないとどうなる?スタートアップが直面するリスク

「就業規則は従業員を縛るもの」というイメージがあるかもしれませんが、本来は「会社を守り、公平な運用を行うための防具」です。作成を後回しにすることで、スタートアップは以下のような深刻なリスクに直面します。

1. 助成金が受給できない可能性

多くの雇用関係助成金(キャリアアップ助成金など)は、申請要件として「就業規則の作成・届出」や「特定の規定(賃金規定や育児休業規定など)の整備」を求めています。たとえ従業員数が少なく作成義務がない段階であっても、就業規則が存在しない、あるいは内容に不備があることで、本来受給できたはずの数百万円の助成金を逃すケースは少なくありません。

2. 未払い残業代や解雇に関するトラブル

残業代の計算方法(固定残業代の運用など)や解雇事由が就業規則で明確に定められていない場合、労使トラブルが発生した際に会社側の主張が認められないリスクが高まります。特にスタートアップでは、曖昧な労務管理が原因で、退職した社員から高額な未払い残業代を請求される事例が後を絶ちません。

3. 問題社員への対応が困難に

「無断欠勤を繰り返す」「会社の機密情報を持ち出す」といった問題行動をとる社員に対し、懲戒処分を行うには、あらかじめ就業規則に「懲戒の種別と事由」を明記し、周知しておく必要があります(罪刑法定主義の原則)。ルールがなければ、減給や出勤停止といった処分すら法的に有効に行えない可能性があります。

【いつから必要?】就業規則作成義務が発生するタイミング

労働基準法第89条では、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に対し、就業規則の作成と労働基準監督署への届出を義務付けています。

「常時10人」の正しいカウント方法

ここで言う「常時10人」の定義には注意が必要です。正社員だけでなく、パートタイム労働者やアルバイトも人数に含まれます。

例えば、正社員が5人でも、アルバイトが5人いれば合計10人となり、作成義務が発生します。

一方で、派遣社員は派遣元(派遣会社)の従業員としてカウントされるため、派遣先の「常時10人」には含まれません。また、繁忙期だけ一時的に10人を超えるようなケースは「常時」とはみなされませんが、状態として10人以上であれば義務の対象となります。

10人未満でも作成すべき理由

法的義務がない「10人未満」の段階であっても、前述の通り助成金の申請やリスク管理の観点から、早期に就業規則を作成することを強く推奨します。ルールを早期に明確化することは、採用時の信頼性向上や、組織文化の醸成にも寄与します。

スタートアップ向け!就業規則に必ず含めるべき主要項目

就業規則には、法律で必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」と、制度を設ける場合に記載が必要な「相対的必要記載事項」があります。これらに加え、スタートアップならではの項目も検討が必要です。

絶対的必要記載事項(必ず書くこと)

これらが欠けていると、就業規則として不備となります。

  • 労働時間関係: 始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇、交代制勤務のルールなど。
  • 賃金関係: 賃金の決定方法、計算方法、支払方法、締め日・支払日、昇給に関する事項。
  • 退職関係: 解雇の事由を含む、退職に関する手続きや定年など。

相対的必要記載事項(制度があるなら書くこと)

  • 退職手当(退職金)
  • 賞与(ボーナス)
  • 食費や作業用品などの費用負担
  • 安全衛生、職業訓練、災害補償
  • 表彰・制裁(懲戒処分)

スタートアップが特に重視すべき「+α」の項目

  • 秘密保持規定: 技術情報や顧客リストなど、重要資産を守るための規定。
  • 副業・兼業規定: 柔軟な働き方を認める場合でも、競業避止や本業への支障がない範囲での許可制・届出制を明確にする。
  • SNS利用規定: 会社の信用を損なう投稿や情報漏洩を防ぐためのガイドライン。
  • 知的所有権(職務発明): 業務中に生み出したプログラムや特許の帰属を明確にする。

テンプレート活用は諸刃の剣!よくある失敗例と成功の秘訣

インターネット上には無料の就業規則テンプレートや、厚生労働省の「モデル就業規則」が存在します。これらは作成の参考にはなりますが、そのまま使用することには大きなリスクが伴います。

失敗例1:休職規定の安易な導入

大企業向けのテンプレートにある「休職制度(私傷病で働けない期間も籍を残す制度)」を、体力のないスタートアップがそのまま導入してしまい、復職の見込みがない社員を長期間解雇できず、社会保険料の負担だけが続くケースがあります。

失敗例2:正社員用の規定がパートにも適用される

「パートタイマーについては別に定める」と記載しておきながら、肝心の「パートタイマー就業規則」を作成し忘れるパターンです。この場合、正社員用の高水準な労働条件(賞与や退職金など)がパート社員にも適用されると判断されるリスクがあります。

成功の秘訣

テンプレートはあくまで「骨組み」として利用し、中身は必ず自社の実態に合わせて書き換えてください。特に「休職」「退職金」「賞与」といった金銭や雇用継続に直結する条項は、「〜支給することがある」「〜適用しない場合がある」といった、会社の裁量を残す表現を検討することが重要です。

自社の実情に合わせた就業規則を作成するためのカスタマイズ術

成長フェーズにあるスタートアップにとって、硬直的なルールは足枷になりかねません。法的要件を満たしつつ、柔軟性を持たせるカスタマイズが必要です。

  • 労働時間制度の選択: 一般的な「9時-18時」だけでなく、フレックスタイム制や専門業務型裁量労働制など、職種や働き方に適した制度を導入し、規定に盛り込みます(別途労使協定が必要な場合があります)。
  • 在宅勤務・テレワーク規定: 通信費の負担、労働時間の管理方法、情報セキュリティなどを定めます。
  • 試用期間の本採用拒否要件: 採用ミスマッチのリスクに備え、試用期間中の解雇事由(能力不足、勤務態度不良など)を具体的に列挙しておきます。

作成後の落とし穴!周知義務と変更届出で避けるべき注意点

就業規則は「作って引き出しにしまっておく」だけでは法律上の効力を持ちません。

周知義務(労働基準法第106条)

就業規則が効力を持つためには、従業員への「周知」が絶対条件です。最高裁の判例でも、周知されていない就業規則は無効とされています。

周知の方法としては、以下のような形式が認められています。

  • 書面を従業員一人ひとりに配布する。
  • 社内の見やすい場所(掲示板など)に掲示する。
  • 社内サーバーやクラウドストレージ(Google DriveやNotionなど)、Slackなどで共有し、いつでも従業員が閲覧できる状態にする。

変更届出と意見書

就業規則を作成または変更した際は、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。その際、「労働者の過半数代表者の意見書」を添付しなければなりません。

「意見書」は、会社側の案に対する従業員の意見(賛成・反対・要望など)を記載するものですが、たとえ反対意見が書かれていても、法的に不合理な内容でなければ届出自体は受理され、効力は発生します。ただし、従業員との信頼関係維持のため、事前の丁寧な説明は不可欠です。

専門家(社会保険労務士)に相談するメリット・デメリットと依頼の判断基準

最後に、自社で作成するか、社労士に依頼するかの判断基準を整理します。

社労士に依頼するメリット

  • リスクヘッジ: 最新の法改正に対応し、自社の弱点となりうる労務リスク(残業代、解雇など)を未然に防ぐ「防衛的な就業規則」を作成できます。
  • 助成金対応: 就業規則の不備による助成金の不支給を防げます。
  • 本業への集中: 専門的で煩雑な条文作成や届出業務をアウトソースできます。

社労士に依頼するデメリット

  • コスト: スポットでの作成依頼で10万円〜30万円程度、顧問契約を含めると月額費用が発生します。
  • 柔軟性の欠如(依頼先による): スタートアップの事情に詳しくない社労士の場合、大企業向けのガチガチなルールを提案される恐れがあります。

依頼の判断基準

  • 従業員数: 10人を超えそうなら、リスクが高まるため専門家のチェックを推奨します。
  • IPO(株式上場)を目指すか: 上場審査では労務コンプライアンスが厳しく見られます。早期から社労士(特にIPO支援実績のある事務所)を入れるべきです。
  • 特殊な働き方: フレックス、裁量労働、リモートワークなど複雑な制度を導入する場合は、自社作成では法的要件を満たすのが困難です。

関連する詳しい情報はHR BrEdge社会保険労務士法人ブログ一覧もご参照ください。

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