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ハラスメント申告、会社が見落としがちな失敗パターンと法的リスクを社労士が解説!【初期対応フローと注意点5選】

2026.01.01 ハラスメント対策

ハラスメント申告時の初期対応の重要性:見過ごせないリスクと企業の責任

「ただの人間関係のトラブルだろう」「当事者同士で話し合わせればいい」もし経営者や人事担当者がハラスメント申告をこのように軽く捉えているとしたら、それは企業にとって致命的なリスクとなり得ます。

ハラスメント申告、会社が見落としがちな失敗パターンと法的リスクを社労士が解説!【初期対応フローと注意点5選】

2022年4月より、中小企業を含むすべての企業において「パワーハラスメント防止措置」が義務化されました。企業には、相談窓口の設置や、事案発生時の迅速かつ適切な対応が法的に求められています。初期対応を誤り、事実確認を怠ったり問題を放置したりすれば、安全配慮義務違反職場環境配慮義務違反として、多額の損害賠償請求を受けるリスクがあります。実際に、適切な調査を行わなかったことで企業側に1,000万円を超える賠償が命じられた判例も存在します。

また、対応の不手際はSNS等での拡散を招き、企業ブランドの毀損や人材流出といった深刻な経営ダメージに直結します。「知らなかった」では済まされないのが、現代のハラスメント対応です。

【初動対応フロー】ハラスメント申告を会社が受けた際の具体的なステップ

ハラスメントの申告があった際、感情的にならず、以下の手順で冷静かつ迅速に進めることが鉄則です。

  1. 相談窓口での受付と一時対応
    まずは相談者の話を丁寧に聴きます(傾聴)。この段階では事実の真偽を判断せず、相談者の「辛い」という感情を受け止め、安心して話せる環境を作ることが最優先です。
  2. 相談者の意向確認
    会社として調査を行い、事実であれば加害者への処分を求めるのか、あるいは話を聞いてもらうだけで良いのか、相談者の希望を確認します。
  3. 緊急措置の検討
    被害の継続を防ぐため、必要に応じて相談者と行為者(加害者とされる人)の席を離したり、一時的に接触を禁止したりするなどの措置を講じます。
  4. 事実関係の調査
    調査委員会などを立ち上げ、客観的な事実確認を行います。
  5. 事実認定と措置の決定
    調査結果に基づき、ハラスメントの有無を認定し、就業規則に則って行為者への処分や被害者への配慮措置を決定します。
  6. 再発防止策の実施
    全社的な周知や研修を行い、同様の問題が起きない土壌を作ります。

公平な事実確認と調査の進め方:証拠保全と関係者ヒアリングの注意点

調査の質が、最終的な解決の成否を分けます。最も重要なのは中立性・公平性の確保です。

  • ヒアリングの順序
    原則として「被害相談者」→「行為者(加害者)」→「第三者(目撃者など)」の順に行います。被害者の了承を得ずにいきなり行為者に問いただすと、証拠隠滅や報復のリスクがあるため厳禁です。
  • 5W1Hでの具体的な聴取
    「いつ、どこで、誰が、何を、どのようにしたか」を時系列で詳細に聞き取ります。「酷いことを言われた」という抽象的な表現ではなく、「『給料泥棒』と3回言われた」といった具体的な事実を記録します。
  • 証拠の保全
    メール、チャットのログ、録音データ、業務日報などの客観的証拠を早期に確保します。言った言わないの水掛け論を防ぐために不可欠です。

被害者・加害者への適切な措置とケア:二次被害を防ぐための配慮

対応中に最も警戒すべきなのが二次被害(セカンドハラスメント)です。相談対応者が以下のような発言をすることは絶対に避けてください。

  • 「あなたにも隙があったんじゃないの?」
  • 「これくらいで騒ぐのは大げさだ」
  • 「相手はエース社員だから、事を荒立てないでほしい」

これらは被害者を追い詰め、メンタルヘルスの悪化や労災認定につながる可能性があります。

一方、行為者への対応も慎重さが求められます。ハラスメントが確定していない段階で犯人扱いしたり、自宅待機を安易に命じたりすると、逆にパワーハラスメントだと訴えられるリスクがあります。あくまで就業規則に基づき、事実認定された内容に見合った適正な処分を行う必要があります。

企業が陥りがちなハラスメント対応の「落とし穴」と法的リスクを回避するポイント

多くの企業が失敗する「落とし穴」には共通点があります。

  1. 「喧嘩両成敗」で済ませようとする
    ハラスメントは対等な人間関係のトラブルとは異なります。安易に「お互い様」として握手させようとする行為は、被害者の不信感を決定的なものにし、解決を遠ざけます。
  2. スピード重視で調査を省略する
    「早く終わらせたい」と拙速な判断を下すと、事実誤認が生じやすくなります。一方で、放置も厳禁です。調査開始から終了までは迅速に行いつつ、プロセスは省略しないバランスが重要です。
  3. 社長や上層部による「揉み消し」
    加害者が幹部社員である場合などに、会社が組織的に隠蔽しようとすることは最大のリスクです。内部告発や訴訟に発展した場合、企業の存続に関わるダメージとなります。

情報管理と記録の徹底:対応履歴の重要性とプライバシー保護

ハラスメント対応のすべてのプロセスは、文書として記録に残す必要があります。

  • 相談受付票・ヒアリングシート:誰がいつ対応し、どのような話があったかを詳細に記録します。
  • 調査報告書:認定した事実と、その根拠となる証拠、判断の理由をまとめます。
  • 検討プロセスの記録:どのような議論を経て処分を決定したかの議事録を残します。

これらの記録は、万が一法的紛争になった際に、会社が「適切な対応義務を果たした」ことを証明する唯一の武器となります。同時に、これらの情報は高度なプライバシー情報です。関係者以外に漏れることがないよう、情報の管理・保管には細心の注意を払い、「誰が相談したか」が社内で噂にならないよう徹底してください。

再発防止策の構築と運用の徹底:ハラスメントのない職場文化を育むには

個別の事案が解決しても、それで終わりではありません。ハラスメントが発生した根本的な原因(過重労働、コミュニケーション不足、属人化した業務体制など)を解消しなければ、また別の場所で問題が起きます。

  • トップメッセージの発信:「わが社はハラスメントを一切許さない」という強い姿勢を経営トップが示します。
  • 継続的な研修:管理職向け、一般社員向けにそれぞれの階層に合った研修を定期的に実施します。
  • 実態把握アンケート:潜在的なハラスメントがないか、定期的に無記名のアンケート調査を行います。

専門家(社労士・弁護士)との連携:複雑なハラスメント問題を解決するメリット

社内リソースだけで完璧なハラスメント対応を行うのは困難です。初動の段階から専門家と連携することで、リスクを最小限に抑えられます。

  • 社会保険労務士(社労士)
    就業規則の整備、相談窓口の外部委託、社内研修の実施、労働環境の改善提案など、「予防」と「体制整備」のプロフェッショナルです。日常的な労務管理の視点から、トラブルの芽を摘むサポートを行います。
  • 弁護士
    事実認定が困難な複雑な事案の調査、懲戒処分の法的妥当性の判断、加害者との交渉、訴訟対応など、「紛争解決」と「法的判断」が必要な場面で力を発揮します。

ハラスメント対応は初動がすべてです。「対応に迷う」「判断がつかない」と感じたら、手遅れになる前に、信頼できる専門家へ相談することをお勧めします。

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