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残業時間上限超過の緊急対応!企業が今すぐ取るべき再発防止策10選

2025.12.30 労務管理

2024年4月より、建設業や物流業を含む全業種に対して「時間外労働の上限規制」が完全適用されました。これに伴い、上限超過による労働基準監督署の指導や送検事例、さらには「ブラック企業」としての企業名公表リスクがかつてないほど高まっています。「うっかり超えてしまった」では済まされない今、企業には法令遵守と労働環境の抜本的な改善が求められています。

残業時間上限超過の緊急対応!企業が今すぐ取るべき再発防止策10選

本記事では、残業時間の上限規制を超過してしまった、あるいは超過しそうな企業担当者に向けて、社労士法人としての専門的知見に基づき、緊急時の対応から根本的な再発防止策までを具体的かつ実践的に解説します。

残業時間の上限規制とは?法的基礎と現状理解

働き方改革関連法の施行により、残業時間(時間外労働)には罰則付きの上限規制が設けられています。まずは、遵守すべき法的基準を正確に理解しましょう。

原則となる上限(限度時間)

労働基準法における時間外労働の原則的な上限は以下の通りです。

  • 月45時間
  • 年360時間

臨時的な特別な事情がない限り、これを超えることはできません。

特別条項付き36協定による上限

繁忙期など、臨時的な事情がある場合に「特別条項付き36協定」を締結・届出することで、原則を超えて労働させることが可能ですが、以下の4つの上限すべてを遵守する必要があります。

  1. 年720時間以内(時間外労働のみ)
  2. 月100時間未満(時間外労働+休日労働)
  3. 複数月(2〜6ヶ月)平均80時間以内(時間外労働+休日労働)
  4. 月45時間を超えることができるのは年6回まで

特に注意が必要なのは、「月100時間未満」と「平均80時間以内」には休日労働が含まれる点です。また、これらは1時間でも超過すれば労働基準法違反となり、刑事罰(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となります。

【緊急対応】残業時間上限超過が判明した際の即時対策

万が一、従業員の残業時間が上限を超過していることが発覚した場合、放置や隠蔽は絶対にあってはなりません。直ちに以下の初動対応を行ってください。

  1. 正確な実態把握と記録の保全

    対象者の勤怠データ、PCログ、入退室記録などを突合し、正確な超過時間を分単位で確定させます。

  2. 当該従業員への業務停止命令と健康確保

    直ちに時間外労働を停止させ、業務を他者へ引き継ぎます。医師による面接指導の実施や、産業医への報告を行い、健康状態を確認します。

  3. 労働基準監督署への報告と相談

    違反事実を隠蔽せず、自主的に所轄の労働基準監督署へ報告・相談することを検討してください。是正に向けた誠実な姿勢を示すことが、後の指導において考慮される場合があります。

  4. 36協定の再確認

    特別条項の適用回数(年6回)や、協定内容の不備がないかを再チェックします。

残業時間超過の根本原因を特定する分析プロセス

再発を防ぐためには、「なぜ超過したのか」を突き止める必要があります。表面的な理由ではなく、以下の視点で深掘りして分析します。

1. 業務量の偏りと属人化

  • 特定の個人にしかできない業務(属人化)が集中していないか?
  • 部署ごとの業務量は適正か?

2. 構造的な非効率

  • アナログな手作業、過剰な会議、重複した報告業務などが時間を圧迫していないか?
  • システム間の連携不足による転記作業が発生していないか?

3. マネジメントの不全

  • 管理職が部下の労働時間をリアルタイムで把握しているか?
  • 「残業して当たり前」という雰囲気や、生活残業を許容する風土がないか?

実効性のある「再発防止策」を導入するための具体ステップ

原因分析に基づき、具体的な再発防止策を策定・導入します。精神論ではなく、仕組みで解決することが重要です。

ステップ1:トップメッセージの発信

経営層から全社員に対し、「法令遵守」と「長時間労働是正」への強い決意を明文化して発信します。

ステップ2:全社的な数値目標の設定

「月平均残業時間20時間以内」「有給取得率70%以上」など、具体的なKPIを設定し、進捗を可視化します。

ステップ3:残業事前申請制の厳格化

残業は「原則禁止、許可制」とし、事前に「業務内容」「終了予定時刻」を申請させ、上長が承認した場合のみ認めるフローを徹底します。事後承認は原則認めません。

ステップ4:ノー残業デーの形骸化防止

単に設定するだけでなく、定時退社を促すための館内放送や、管理職による見回り(声掛け)を実施し、形骸化を防ぎます。

勤怠管理体制の見直しとシステム活用術

正確な時間管理は、上限規制遵守の第一歩です。手書きや自己申告に頼る管理は限界があります。

  • クラウド勤怠管理システムの導入

    リアルタイムで労働時間を集計し、月45時間や年360時間の閾値に近づいた段階で、本人と上長にアラートメールを自動送信する機能を活用します。

  • 客観的記録との乖離チェック

    PCのログオン・ログオフ時刻と、勤怠打刻時間の乖離をシステム上で自動検知し、差異がある場合は理由を求めます。これによりサービス残業(未払い残業)のリスクも低減できます。

業務効率化と適切な人員配置による残業削減

労働時間を削減しても、成果(アウトプット)を落とさないためには生産性向上が不可欠です。

  • 業務の棚卸しとECRSの原則

    業務をすべてリストアップし、ECRS(Eliminate:排除、Combine:結合、Rearrange:交換、Simplify:簡素化)の視点で不要な業務を削減します。

  • ITツールとアウトソーシングの活用

    RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入し、定型業務を自動化します。また、ノンコア業務は積極的に外部へ委託し、社員はコア業務に集中できる環境を作ります。

  • 多能工化の推進

    ジョブローテーションやマニュアル整備を行い、誰かが休んでも他のメンバーがカバーできる体制(多能工化)を構築します。

管理職の意識改革と従業員への教育徹底

現場の労働時間を管理するのは管理職の責務です。管理職への教育が再発防止の鍵を握ります。

  • 労務管理研修の実施

    管理職に対し、36協定の内容や違反時の法的リスク(送検、氏名公表など)を正しく理解させる研修を定期的に実施します。

  • 評価制度の見直し

    「長く働く人が頑張っている」という評価軸を廃止し、「時間当たりの生産性」を評価する制度へ移行します。残業時間が少ない部署や管理職を高く評価する仕組みを取り入れます。

残業時間上限超過による企業の法的リスクと影響

上限規制違反が企業に与えるダメージは計り知れません。リスクを正しく認識し、危機感を共有しましょう。

  • 刑事罰: 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金(労働基準法第119条)。
  • 企業名公表: 厚生労働省により、労働基準法違反の企業として実名が公表される可能性があります。
  • 社会的信用の失墜: 「ブラック企業」というレッテルにより、取引停止、金融機関からの融資への悪影響、採用活動の困難化(求職者の減少)を招きます。
  • 民事訴訟リスク: 安全配慮義務違反として、従業員やその家族から損害賠償請求を起こされるリスクがあります。

専門家(社労士)に相談するメリットと支援内容

残業時間の上限管理や再発防止策の策定は、法改正への対応も含め、非常に専門的な知識を要します。自社だけで抱え込まず、専門家である社会保険労務士(社労士)への相談を推奨します。

社労士を活用するメリット

  • 法適合性の担保: 複雑な変形労働時間制の導入や、36協定の特別条項の適切な運用について、最新の法令に基づいたアドバイスが受けられます。
  • 助成金の活用: 業務効率化や労働時間短縮に取り組む企業向けの助成金(働き方改革推進支援助成金など)の提案・申請代行が可能です。
  • 外部監査機能: 第三者の視点から労務リスクを洗い出し、労働基準監督署の調査が入る前に是正することができます。

残業時間の上限超過は、企業の存続に関わる重大な経営課題です。「知らなかった」では済まされない時代において、今すぐ具体的なアクションを起こし、健全な労働環境を構築しましょう。

関連する詳しい情報はHR BrEdge社会保険労務士法人のブログ一覧もご参照ください。

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