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2025年版キャリアアップ助成金:正社員化・賃金アップで活用できる最新情報と申請手順

2025.12.11 助成金制度

この記事では、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善に取り組む企業を支援する「キャリアアップ助成金」の2025年(令和7年度)に向けた最新動向をわかりやすく整理します。

2025年版キャリアアップ助成金:正社員化・賃金アップで活用できる最新情報と申請手順

2024年の法改正を経て、2025年(令和7年度)に向けてさらに注目が高まるキャリアアップ助成金。人手不足が深刻化する中、非正規雇用労働者の正社員化や賃上げを通じた定着支援は、企業の存続に関わる重要課題です。

政府は「年収の壁」対策や賃上げ支援を強化する一方で、2025年度からは一部コースで要件の厳格化や助成額の見直しも検討されています。本記事では、2025年版の最新情報に基づき、制度の全体像から具体的な申請手順までを詳しく解説します。

キャリアアップ助成金とは?2025年最新版の全体像

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる「非正規雇用労働者」の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。

2025年に向けた最新のトレンドとして、以下の3点が大きなポイントとなります。

  • 正社員化コースの動向注視: 令和7年度(2025年4月〜)の予算概算要求において、正社員化コースの助成額縮小(2期目の支給廃止など)が検討されています。現行の最大80万円(中小企業)をフル活用するには、早期の計画実行が鍵となります。
  • 年収の壁対策の継続: パート・アルバイトの就業調整を防ぐ「社会保険適用時処遇改善コース」は、2025年も引き続き重要な支援策として機能します。
  • 事務手続きの簡素化: キャリアアップ計画書の提出について、従来の「認定制」から「届出制」への変更などが議論されており、申請ハードルが下がる可能性があります。

企業にとっては、制度改正の過渡期にあるため、「現行制度のメリット」と「次年度の変更リスク」の両方を理解しておく必要があります。

2025年版キャリアアップ助成金の主要コースと支給要件

キャリアアップ助成金には複数のコースがありますが、2025年の実務において特に重要となるのが「正社員化コース」「賃金規定等改定コース」「社会保険適用時処遇改善コース」の3つです。

1. 正社員化コース

非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換した場合に助成されます。最も利用頻度が高いコースですが、要件が細かく設定されています。

  • 助成額(中小企業): 1人あたり最大80万円(2期合計)
    • ※令和7年度以降、重点対象者(雇入れ3年以上等)以外は減額の可能性があります。
  • 主な要件:
    • 就業規則に転換制度を規定していること。
    • 転換後6ヶ月間の賃金を、転換前6ヶ月間と比較して3%以上増額させていること。
    • 賞与または退職金制度の導入、かつ昇給があること(令和5年改正要件)。
  • 対象となる労働者: 雇用期間が通算6ヶ月以上の有期雇用労働者など。

2. 賃金規定等改定コース

非正規雇用労働者の基本給の賃金規定等を増額改定し、実際に昇給させた場合に助成されます。

  • 助成額(中小企業): 対象労働者数や引き上げ率に応じて変動(例:3%以上増額で1人あたり最大6万5千円など)。
  • 活用シーン: 最低賃金の上昇対応や、ベースアップを実施する際に活用可能です。

3. 社会保険適用時処遇改善コース

「106万円の壁」対策として、新たに社会保険に加入する労働者の手取り収入が減らないよう処遇改善を行った場合に助成されます。

  • 助成額(中小企業): 1人あたり最大50万円
  • メニュー:
    • 手当等支給メニュー: 社会保険適用促進手当の支給等で賃金を増額する場合。
    • 労働時間延長メニュー: 週の所定労働時間を延長する場合。

【ステップ解説】キャリアアップ助成金申請の具体的な流れ

キャリアアップ助成金は、「事前の計画」から「事後の申請」まで、厳格な手順を踏む必要があります。ここでは最も一般的な「正社員化コース」を例に、具体的なステップを解説します。

  1. キャリアアップ計画書の作成・提出

    • タイミング: 取り組み(正社員転換など)を開始する前日まで。
    • 内容: 対象者、目標、期間などを記載し、管轄の労働局へ提出します。
    • 注意: 計画書を出さずに転換させてしまうと、一切支給されません。
  2. 就業規則の整備・改定

    正社員への転換規定(試験制度や要件など)を就業規則に明記し、労働基準監督署へ届け出ます。賞与や退職金に関する規定も、助成金要件(「賞与あり」など)に合わせて整備が必要です。

  3. 正社員への転換・処遇改善の実施

    就業規則の規定に基づき、面接や試験を実施して正社員へ転換します。転換時に、雇用契約書(労働条件通知書)を新たに作成し、3%以上の賃金アップ等の条件を確定させます。

  4. 転換後6ヶ月間の雇用と賃金支払い

    転換後の新しい条件で、6ヶ月間継続して雇用し、賃金を支払います。この期間の賃金実績が、3%アップの証明となります。

  5. 支給申請

    • タイミング: 転換後6ヶ月分の賃金を支払った日の翌日から2ヶ月以内
    • 提出先: 労働局またはハローワーク。
    • 期限を1日でも過ぎると受理されないため、厳重なスケジュール管理が必要です。

申請準備から支給までの必要書類と注意点

審査では、提出された書類の整合性が徹底的にチェックされます。以下の書類は必ず整備しておきましょう。

必須となる主な書類

  • 就業規則(本則・賃金規程): 正社員と非正規社員の区分、転換ルール、賃金構成が明確か。
  • 雇用契約書(労働条件通知書): 転換前と転換後の2通が必要。労働時間、賃金、雇用期間が正しく記載されているか。
  • 賃金台帳: 転換前6ヶ月・転換後6ヶ月の給与明細。基本給、手当、残業代が明確に区分されているか。
  • 出勤簿(タイムカード): 労働日数や残業時間が賃金台帳と一致しているか。

実務での注意点

  • 3%アップの計算: 3%アップの判定基礎となる賃金には、残業代や精皆勤手当などの「変動手当」は含めません。基本給や職務手当などの「固定的賃金」だけで3%以上上げる必要があります。
  • 就業規則の施行日: 転換制度を定めた就業規則は、対象者を転換させる日より前に施行されていなければなりません。

キャリアアップ助成金活用のポイントとよくある疑問

最後に、審査で不支給とならないためのポイントと、専門家視点でのアドバイスをまとめます。

よくある誤解(不支給事例)

  • 「残業代が増えたから年収は上がった」: 前述の通り、残業代込みでの増額は認められません。基本給ベースでのアップが必須です。
  • 「固定残業代を調整した」: 基本給を上げても、その分固定残業代を減額して総額を変えないような操作は、不適切な処遇改善とみなされ不支給になるリスクがあります。
  • 「会社都合退職の発生」: 転換日の前後6ヶ月間に、事業所内で1人でも解雇や退職勧奨(会社都合退職)を行っていると、その期間の申請は却下されます。

専門家視点でのポイント整理

2025年に向けて、実務担当者が押さえるべき優先事項は以下の通りです。

  1. 現行制度(80万円)の確保: 令和7年度の改正で助成額が減る可能性があるため、現在有期雇用で働いているスタッフがいる場合は、2025年3月末までの正社員転換を検討してください。
  2. 無理な正社員化は避ける: 助成金目当てで、実力に見合わないスタッフを正社員化すると、後の労務管理でトラブルになります。人事評価制度と連動させることが重要です。
  3. スケジュール管理の徹底: 計画届から支給申請まで、最短でも1年近くかかる長丁場です。申請期限(2ヶ月間)を逃さないよう、カレンダーで厳密に管理しましょう。

関連する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

まとめ

2025年のキャリアアップ助成金は、引き続き企業の正社員化・処遇改善を支える強力なツールですが、令和7年度には制度の一部縮小も予測されています。

最新の動向を常にチェックし、有利な条件で活用できるよう、早めの計画立案をおすすめします。特に「正社員化コース」の活用を検討中の企業は、現行制度が適用されるタイミングでの実施が効果的です。要件を正しく理解し、非正規雇用労働者のモチベーション向上と企業の成長につなげてください。

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