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【混同注意】役員報酬と給料の違いとは?税務・社会保険・実務の分かれ目を徹底解説
「役員報酬と給料って何が違うの?」「社長にも給与明細を出していい?」「役員を雇用保険に入れていいの?」
中小企業の経営者や総務担当者から、こうした疑問はよく寄せられます。特に従業員100名以上の企業になると、取締役、執行役員、部長職など立場が複雑になり、報酬体系や社会保険の処理で混乱しやすくなります。
役員報酬と従業員の給料(給与・賃金)は、支払いの根拠、課税の扱い、社会保険の取り扱い、就業規則との関係など、実務上の多くの違いがあります。
本記事では、「役員報酬と給料の違いを正しく理解したい」「実務でミスを防ぎたい」という方に向けて、顧問社労士が実際の支援経験をもとに、制度の違いや注意点、給与計算や手続きで押さえるべきポイントを解説します。
そもそも「役員報酬」と「給料(給与)」の違いとは?
定義と支払い根拠の違い
項目 | 役員報酬 | 給料(従業員) |
---|---|---|
対象者 | 取締役・監査役・執行役等 | 一般従業員・契約社員など |
支払い根拠 | 株主総会や取締役会の決議 | 雇用契約に基づく |
変更可能性 | 原則年1回までしか変更不可 | 評価・査定に応じて随時変更可 |
就業規則 | 基本的に適用外 | 就業規則の対象 |
給与計算方法 | 報酬として支給 | 賃金・手当・残業代など含む |
税務上の違い
- 役員報酬は「定期同額報酬」「事前確定届出給与」などの形式でなければ損金算入できない(法人税上の制限あり)
- 従業員の給与は、変動性があっても法人税上の損金として扱える
社会保険の違い
- 健康保険・厚生年金:役員も加入対象(法人の使用人兼務役員なら)
- 雇用保険:役員は原則対象外(労働者性がないため)
- 労災保険:原則対象外だが、「特別加入制度」で加入可(建設・運輸等)
なぜこの違いが重要なのか?
名古屋の製造業で「社長にも残業代を払っていた」ケースがあり、税務調査で否認された事例があります。また、東京のIT企業では、役員を雇用保険に加入させてしまい、後から返納を求められるトラブルも。
制度の裏話:役員報酬の“調整”は助成金の対象外
たとえば「業務改善助成金」や「キャリアアップ助成金」などでは、役員報酬の引き上げは助成対象になりません。“労働者”である従業員の昇給のみが対象です。給与体系を見直す際は注意が必要です。
企業が行うべき実務対応と注意すべき8つのポイント
-
1. 役員報酬と従業員給与を制度上明確に区分する
方法:就業規則や給与規程に「役員報酬の適用外」を明記する
効果:社内外への説明がしやすくなり、トラブルを防止 -
2. 役員報酬の決定は取締役会や株主総会で行う
方法:議事録を作成・保存し、支払い額と時期を明記
効果:法人税法上の損金処理に対応しやすくなる -
3. 年1回の報酬変更ルールを守る
方法:事業年度開始から3か月以内に金額を確定させる
効果:税務否認を防ぎ、損金算入を可能に -
4. 役員を雇用保険に加入させない
方法:ハローワーク手続き時に役職確認を徹底
効果:後日の保険料返納や是正リスクを回避 -
5. 給与計算システムで役員・従業員を区別設定
方法:「役員報酬」として給与区分を別項目に設定
効果:手当・残業代・控除処理の誤りを防止 -
6. 助成金対象者を明確に管理
方法:助成金申請時に役員除外リストを作成
効果:審査落ち・返還リスクを避けられる -
7. 「使用人兼務役員」の取り扱いに注意
方法:現場で指揮命令を受ける役員には、労働者性の有無を顧問社労士と確認
効果:社会保険・雇用保険の適正加入が可能になる -
8. DX・アウトソースによる区分管理の徹底
方法:給与計算業務を外部に委託し、役員報酬と従業員給与を自動区分
効果:実務負荷を減らし、誤処理のリスクを回避
Q&A:役員報酬と給料の違いに関する疑問
Q. 役員にも給与明細を出す必要はある?
A. 税務処理や社内資料の観点から、給与明細を出している企業もありますが、「給与」ではなく「報酬明細」と明記するのが望ましいです。
Q. 兼務役員に残業代は必要?
A. 使用人部分については、就業実態に応じて残業代が発生する可能性があります。就業規則と労働時間管理の整備が必要です。
Q. 役員が出産した場合、育休・出産手当金はもらえる?
A. 社会保険加入要件を満たしていれば、出産手当金は支給対象です。ただし「労働者性」が明確でない役員は対象外となることがあります。
Q. 役員報酬にも“賞与”は出せる?
A. 役員賞与を支給するには「事前確定届出給与」として税務署に届出が必要です。届け出なしに支給すると、法人税の損金にできません。
まとめ:役員報酬と給料の違いを知ることが企業経営の安定につながる
役員報酬と従業員給与の違いは、単なる“呼び名”の違いではありません。税務処理、社会保険、就業規則、給与計算、助成金など、あらゆる実務に影響する重要な論点です。
大阪・東京・名古屋・福岡など、大都市圏の成長企業では、役職者の増加に伴いこの点の整備がますます求められています。顧問社労士と連携し、制度設計や区分ルールを整えることで、企業運営の安定と法令順守を実現できます。
役員報酬と給与、違いを理解すればトラブルを未然に防げます。
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