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休業手当とは?正しい理解と適切な対応でトラブルを防ぐ

2025.04.30 社労士コラム

休業手当の支給判断や計算方法で悩む経営者様へ

「新型コロナや設備トラブルで休業する場合、休業手当の支給は必要?」「休業手当の計算で平均賃金を正確に算出できているか不安…」「会社都合の休業と不可抗力の境界線がわからず、支給判断に迷っている」そんな課題を抱えていませんか?

100名規模の企業では、様々な事由による休業が発生し、適切な休業手当の支給判断が法的リスク管理の重要な要素となります。労働基準法第26条により、使用者の責に帰すべき事由による休業には平均賃金の60%以上の支払義務がありますが、「使用者の責に帰すべき事由」の判断は複雑で、誤った対応は労働基準監督署の指導や労働紛争のリスクを招く可能性があります。

一方で、適切な休業手当の支給により、従業員の生活安定、労使関係の信頼維持、法的リスクの回避を実現できます。特に雇用調整助成金等の公的支援制度を活用することで、企業の経済的負担を軽減しながら雇用維持を図ることが可能になります。

本記事では、全国対応のHR BrEdge(エイチアールブレッジ)社会保険労務士法人が、100名規模企業の経営者・総務担当者が押さえるべき休業手当の法的要件から実務上の対応方法まで、包括的に解説します。適正な支給判断と計算により、法令遵守と雇用維持を両立する実践的な知識をお届けします。

休業手当の法的要件と100名規模企業における判断基準

休業手当は労働基準法第26条に定められた、使用者の責に帰すべき事由による休業時の所得保障制度です。100名規模の企業では、多様な休業事由に対して適切な判断と迅速な対応が求められます。

休業手当支給の法的要件

休業手当の支給要件は以下の3つの要素から構成されます:

要件 具体的内容 判断のポイント 100名企業での注意点 実務上の対応
使用者の責に帰すべき事由 会社側の事情による休業 不可抗力との区分 個別ケースの慎重な判断 専門家への事前相談
労働者の責に帰さない事由 労働者に落ち度がない 労働者の行為・態度の評価 個別事情の確認 事実関係の記録保持
労働者に労働意思がある 働く意欲・能力を有する 代替業務への従事可能性 配置転換等の検討 代替措置の提案・記録

100名規模の企業では、個別ケースごとの詳細な検討と適切な記録保持が特に重要になります。

「使用者の責に帰すべき事由」の判断基準

最も判断が困難な「使用者の責に帰すべき事由」について、具体的な分類と判断基準:

支給が必要なケース(使用者責任あり)

  • 設備・機械の故障:定期点検不備、老朽化による故障
  • 原材料・部品不足:発注ミス、在庫管理不備による不足
  • 経営判断による休業:業績悪化、事業縮小による人員調整
  • 取引先関係:発注取消し、支払遅延による操業停止
  • 法令違反:許認可失効、行政処分による営業停止

支給不要なケース(不可抗力)

  • 天災地変:地震、台風、洪水等による物理的な操業不能
  • 社会的事件:戦争、暴動、ストライキ等
  • 真の不可抗力:予見不可能で回避困難な外的要因

判断が困難なケース(個別検討要)

  • 感染症関連:新型コロナ、インフルエンザ等による休業
  • 停電・断水:公共インフラの停止による操業不能
  • 交通機関麻痺:台風・大雪等による従業員出勤困難
  • 官公庁の指導:保健所、労働基準監督署等の行政指導

休業手当の計算方法と実務上の注意点

休業手当は以下の方法で計算します:

休業手当 = 平均賃金 × 60%以上 × 休業日数

平均賃金の算定方法

  • 算定期間:休業開始日直前3か月間
  • 計算式:3か月間の賃金総額 ÷ 3か月間の総日数
  • 含める賃金:基本給、諸手当、残業代、賞与(臨時的なものは除く)
  • 除外する賃金:結婚祝い金等の臨時的給付、3か月超の期間ごとの賞与

最低保障額の確認

  • 日給・時給・出来高給の場合は最低保障額との比較が必要
  • 高い方の金額を平均賃金として採用
  • 複雑な賃金体系では専門家による確認が重要

効果的な休業手当対応と実務上の成功事例

休業手当の適正な対応は、迅速な判断と正確な計算、適切な説明により実現できます。以下、実際の対応事例と効果的な手続き方法をご紹介します。

新型コロナ対応による適正な休業手当支給事例

製造業KK社(従業員102名)の包括的対応事例:
取引先の感染症拡大により部品供給が停止し、工場の一部休業を余儀なくされました。顧問社労士と連携して適正な休業手当支給と雇用調整助成金活用により、従業員の生活保障と企業の負担軽減を両立しました。

実施した対応手順:

  • 事由分析:取引先の供給停止が使用者責任に該当するか詳細検討
  • 対象者特定:休業対象部署・従業員の明確化
  • 平均賃金計算:個人別の正確な平均賃金算定
  • 休業手当支給:平均賃金の60%以上(実際は70%)を支給
  • 助成金申請:雇用調整助成金により企業負担を軽減
  • 従業員説明:休業理由・期間・支給内容の丁寧な説明

結果、雇用調整助成金により休業手当の90%以上をカバーでき、従業員の雇用を維持しながら経営への影響を最小化できました。

サービス業LL社(従業員95名)の事例:
設備の老朽化による故障で店舗の一時休業が発生しました。迅速な休業手当支給と代替業務の提供により、従業員の理解を得ながら円滑な対応を実現しました。

休業手当対応の標準プロセス

段階別対応フロー

ステップ1:緊急対応(発生当日)

  • 休業事由の詳細な事実確認
  • 使用者責任の予備的判定
  • 対象従業員の特定・安全確認
  • 暫定的な対応方針の決定

ステップ2:法的検討(1-2日以内)

  • 休業事由の法的分析
  • 休業手当支給義務の正式判定
  • 代替業務提供の可能性検討
  • 助成金申請の可能性確認

ステップ3:計算・準備(3-5日以内)

  • 対象者別の平均賃金算定
  • 休業手当額の計算
  • 支給方法・時期の決定
  • 従業員説明資料の作成

ステップ4:実行・説明(1週間以内)

  • 従業員への詳細説明
  • 休業手当の支給実行
  • 助成金申請手続き
  • 労働基準監督署への報告(必要に応じ)

ステップ5:事後管理(継続)

  • 休業期間中の定期連絡
  • 復旧・復職に向けた準備
  • 再発防止策の検討・実施
  • 関連記録の整備・保管

雇用調整助成金との連携活用

休業手当支給時の経済的負担軽減のため、雇用調整助成金を戦略的に活用します:

助成金活用のメリット

  • 負担軽減:休業手当の大部分(最大100%)を助成
  • 雇用維持:解雇を回避した雇用維持への支援
  • 技能向上:休業中の教育訓練費用も助成対象
  • 迅速支給:簡素化された手続きによる迅速な支給

申請要件と手続き

  • 経済的理由による事業活動縮小
  • 雇用保険の適用事業主
  • 6か月間の雇用維持
  • 労使協定による休業実施

複雑なケースへの対応

感染症関連休業の判断基準

  • 従業員感染:業務起因性の有無による労災・休業手当の判定
  • 濃厚接触者:保健所指導による休業は原則として休業手当支給
  • 自主的休業:会社判断による自主休業は休業手当支給
  • 政府要請:緊急事態宣言等による休業要請への対応

部分休業・短時間休業の取り扱い

  • 所定労働時間の一部休業も休業手当の対象
  • 実働時間と所定労働時間の差額分を計算
  • 平均賃金の60%保障との比較
  • 高い方の金額を支給

トラブル予防と適正な記録管理

休業手当関連のトラブルを予防するため、以下の記録管理が重要です:

必要な記録・書類

  • 休業事由の詳細な記録
  • 平均賃金の計算根拠
  • 休業手当の支給記録
  • 従業員への説明・合意書
  • 代替業務検討の記録
  • 助成金申請関連書類

労働基準監督署対応

  • 調査時の説明資料準備
  • 法的根拠の明確化
  • 計算過程の透明性確保
  • 是正指導への迅速対応

アウトソース活用による専門性確保

複雑な休業手当の判定・計算は、社労士事務所との連携により専門性と正確性を確保できます:

  • 休業事由の法的分析・判定
  • 平均賃金の正確な計算
  • 助成金申請の代行・サポート
  • 労働基準監督署対応
  • トラブル発生時の専門的支援

休業手当対応で頻出する実務上の疑問をQ&A形式で解決

Q1:台風により従業員が出勤できない場合、休業手当の支給は必要?

A: 台風による交通機関の麻痺等で従業員が出勤できない場合、原則として休業手当の支給義務はありません。これは労働者側の事情による欠勤と判断されるためです。ただし、会社として事業所の営業を停止した場合は、使用者都合の休業として休業手当の支給が必要になる可能性があります。経営者としては、事前に就業規則で自然災害時の取り扱いを明確にし、有給休暇の使用や振替出勤などの代替案も併せて検討することが重要です。

Q2:新型コロナの影響で売上が減少したため従業員を休ませる場合、休業手当は必要?

A: 売上減少による経営判断での休業は、原則として休業手当の支給が必要です。新型コロナの影響であっても、会社の経営判断による休業は「使用者の責に帰すべき事由」に該当するとされています。ただし、雇用調整助成金の特例措置により、休業手当の大部分(場合によっては100%)を助成金でカバーできるため、実質的な企業負担を大幅に軽減できます。総務担当者は、休業手当支給と助成金申請を併せて検討し、従業員の生活保障と企業の負担軽減を両立させてください。

Q3:平均賃金の計算で、直前3か月に賞与が含まれている場合の取り扱いは?

A: 3か月を超える期間ごとに支払われる賞与は平均賃金の計算から除外しますが、毎月支給される賞与や3か月以内の期間で支給される賞与は含めて計算します。例えば、四半期賞与は含める必要がありますが、半年ごとや年2回の賞与は除外します。判断が困難なのは、基本給の一部を賞与として分割支給している場合で、この場合は実質的な性格を考慮して判断する必要があります。正確な計算のためには、賞与の支給根拠と支給間隔を確認し、必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。

適正な休業手当対応で築く信頼される労使関係

休業手当の適正な対応は、法令遵守の基本であると同時に、従業員との信頼関係構築の重要な機会です。100名規模の企業では、一人ひとりの従業員との関係が深く、適切な休業手当の支給により企業への信頼と安心感を高めることができます。

重要なのは、休業手当を単なる法的義務として捉えるのではなく、従業員の生活を支える重要なセーフティネットとして位置づけることです。迅速で正確な支給、丁寧な説明、助成金の積極活用により、従業員が安心して働き続けられる環境を整備することで、長期的な組織力強化と競争力向上につなげることができます。

休業手当の対応でご不安を感じていらっしゃるなら、今すぐ専門家にご相談ください。全国対応のHR BrEdge社会保険労務士法人では、2007年創業・顧問先50社の豊富な実績をもとに、複雑な休業手当の判定から助成金申請まで包括的にサポートいたします。法的要件を満たしながら、従業員の安心と企業の負担軽減を両立する最適な対応により、信頼される労使関係の構築を支援いたします。LINE・Slack・Chatworkでの迅速な相談対応も可能ですので、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

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