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就業規則に基づく解雇の正当性とは?企業が守るべきポイントを解説

2025.04.28 社労士コラム

就業規則の解雇規定や運用で法的リスクを不安に感じる経営者様へ

「就業規則の解雇事由が曖昧で、実際に解雇する際に不当解雇として争われるリスクが心配…」「問題のある従業員への対応で、段階的な指導記録は残しているが、解雇まで踏み切る判断基準がわからない」「就業規則に解雇事由は記載しているが、最新の法改正に対応できているか不安」そんな悩みを抱えていませんか?

100名規模の企業では、就業規則の解雇規定が法的リスク管理の最重要事項となります。不適切な解雇規定や運用は、労働審判や訴訟に発展し、多額の解決金支払いや企業イメージの悪化を招くリスクがあります。また、労働契約法により解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が求められ、就業規則の規定だけでは不十分で、適正な運用が不可欠です。

一方で、適切な解雇規定の整備と運用により、法的リスクの回避、適正な人事管理の実現、組織規律の維持を図ることができます。特に中小企業では、一人の従業員が組織に与える影響が大きいため、必要な場合の適正な解雇判断は企業の健全性維持に不可欠です。

本記事では、全国対応のHR BrEdge(エイチアールブレッジ)社会保険労務士法人が、100名規模企業の経営者・総務担当者が押さえるべき就業規則の解雇規定整備から実務運用まで、包括的に解説します。法的リスクを最小化しながら、適正な人事管理を実現する実践的な知識をお届けします。

就業規則における解雇規定の法的要件と100名規模企業での重要性

就業規則の解雇規定は、適正な解雇を行うための法的基盤であり、労働契約法第16条の「客観的に合理的な理由」を具体化する重要な役割を果たします。100名規模の企業では、多様な職種・雇用形態の従業員に対応できる包括的で明確な規定が必要になります。

解雇規定に必要な法的要件

適正な解雇規定は、以下の法的要件を満たす必要があります:

法的要件 具体的内容 規定のポイント 100名企業での注意点 実務上の留意事項
明確性 誰でも理解できる表現 具体的事例の列挙 職種別の配慮 曖昧な表現の排除
合理性 社会通念上妥当な基準 段階的措置の規定 業種特性の反映 過度に厳格な規定の回避
適正手続き 弁明機会の付与 手続きフローの明記 迅速な対応体制 記録保存の徹底
比例原則 違反行為と処分の均衡 段階的懲戒の規定 個別事情の考慮 画一的適用の回避

100名規模の企業では、個別事情への配慮と統一的な運用基準の両立が特に重要になります。

解雇事由の体系的整理

就業規則では、解雇を以下の3つに分類して、それぞれ明確な事由を規定する必要があります:

1. 普通解雇事由

  • 能力不足:「業務遂行能力が著しく劣り、指導を行っても改善されない場合」
  • 勤務態度不良:「正当な理由なく遅刻・早退を○回以上繰り返した場合」
  • 無断欠勤:「正当な理由なく連続○日以上又は月○日以上欠勤した場合」
  • 適応性欠如:「配置転換を行っても職場適応が困難と認められる場合」
  • 心身の故障:「心身の故障により業務遂行が困難と医師が判断した場合」

2. 懲戒解雇事由

  • 重大な経歴詐称:「採用時に重要事項について虚偽の申告をした場合」
  • 業務命令違反:「正当な理由なく業務命令に従わず、職場秩序を乱した場合」
  • 機密漏洩:「職務上知り得た機密を第三者に漏洩した場合」
  • 横領・窃盗:「会社又は他の従業員の金品を横領・窃盗した場合」
  • セクハラ・パワハラ:「他の従業員に対し著しいハラスメント行為を行った場合」

3. 整理解雇事由

  • 経営悪化:「経営状況の著しい悪化により人員削減が必要な場合」
  • 事業縮小:「事業の全部又は一部を縮小・廃止する場合」
  • 技術革新:「技術革新により業務内容が変更され、配置転換が困難な場合」

重要なのは、具体的な基準(日数、回数等)の明記段階的な対応手順の規定です。

100名規模企業特有の解雇規定のポイント

100名規模の企業では、以下の特性を踏まえた規定設計が重要です:

  • 職種の多様性:事務職、営業職、技術職、製造職等に応じた基準設定
  • 個別対応の必要性:画一的な適用ではなく、事情考慮の余地を確保
  • 代替要員確保の困難:解雇前の配置転換・教育訓練の努力義務明記
  • 組織への影響:他の従業員への影響を考慮した慎重な判断基準
  • 法的対応力:専門家との連携を前提とした手続き規定

効果的な解雇規定運用と実務上の成功事例

就業規則の解雇規定は、適切な日常運用と段階的な対応により、その効力を発揮します。以下、実際の成功事例と効果的な運用方法をご紹介します。

段階的指導による適正解雇事例

IT企業AA社(従業員108名)の適正対応事例:
勤務態度不良の従業員について、就業規則に基づく段階的な指導を実施し、最終的に適正な普通解雇を実現しました。顧問社労士と連携して法的リスクを最小化した手続きを実行しました。

実施した段階的対応:

  • 第1段階(口頭注意):遅刻・早退の改善を口頭で指導・記録
  • 第2段階(文書警告):改善されない場合の書面による警告
  • 第3段階(面談・指導):人事担当者との正式面談・改善計画策定
  • 第4段階(最終警告):改善されない場合は解雇もありうる旨の通告
  • 第5段階(解雇通告):30日前予告による解雇実行

各段階で本人の弁明機会を確保し、改善の猶予期間を設けました。結果、解雇の有効性が認められ、労働紛争は発生しませんでした。

製造業BB社(従業員95名)の懲戒解雇事例:
従業員による会社資金の横領が発覚し、懲戒解雇を実施しました。適正な事実調査と手続きにより、有効な懲戒解雇を実現しました。

実施した手続き:

  • 内部調査委員会の設置
  • 証拠資料の収集・保全
  • 本人への事情聴取(弁明機会付与)
  • 懲戒委員会での審議
  • 即時解雇の決定・通告

適正な手続きにより、解雇の有効性が確保され、損害賠償請求も可能になりました。

解雇規定の実効性を高める運用システム

システム1:人事評価との連動体制

  • 定期的な人事評価による能力・態度の客観的記録
  • 改善指導計画の策定・実行・評価
  • 複数の評価者による公正な判断
  • 本人への フィードバックと改善機会の提供

システム2:段階的指導の標準化

  • 指導レベル別の対応マニュアル整備
  • 記録様式の統一・電子化
  • 期限設定と進捗管理
  • 専門家との定期相談体制

システム3:法的リスク管理体制

  • 事案発生時の即座な専門家相談
  • 証拠保全の迅速な実行
  • 労働基準監督署対応の準備
  • 労働審判・訴訟対応の事前準備

解雇回避のための予防的人事管理

解雇という重大な判断を回避するため、以下の予防策が効果的です:

早期発見・早期対応システム

  • 日常的な職場コミュニケーションの充実
  • 管理職の人事管理スキル向上研修
  • 問題行動の早期発見・報告体制
  • メンタルヘルス不調者への適切な支援

能力開発・配置転換の活用

  • 職種転換のための研修制度
  • 適性に応じた配置転換の実施
  • 外部研修・資格取得支援
  • 短時間勤務等の働き方調整

職場環境改善による予防

  • ハラスメント防止対策の徹底
  • 働きやすい職場風土の醸成
  • 相談窓口・内部通報制度の充実
  • ワークライフバランスの改善

就業規則の継続的見直し・改善

解雇規定は、法改正や社会情勢の変化に応じて継続的な見直しが必要です:

年次見直しポイント

  • 労働関連法令の改正対応
  • 裁判例・行政解釈の変化
  • 自社での運用実績の検証
  • 他社事例・ベストプラクティスの参考

運用改善のPDCAサイクル

  • Plan:年間の見直し計画策定
  • Do:規定の運用・記録
  • Check:運用状況の分析・評価
  • Action:必要な改善・修正の実施

アウトソース活用による専門性確保

就業規則の解雇規定整備・運用は、社労士事務所との連携により専門性と適正性を確保できます:

  • 最新法令に適合した規定の整備
  • 個別事案の法的リスク評価
  • 段階的指導の適正性確認
  • 労働審判・訴訟時の対応支援
  • 継続的な規定見直し・改善支援

特に100名規模の企業では、予防的な相談と迅速な対応により、重大な法的リスクを回避することが可能になります。

解雇規定運用で頻出する実務上の疑問をQ&A形式で解決

Q1:就業規則に解雇事由が記載されていれば、必ず解雇できる?

A: 就業規則の記載だけでは不十分で、労働契約法第16条の「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。解雇事由に該当する事実があっても、その程度、改善の可能性、会社の指導状況、他の従業員への影響等を総合的に判断し、解雇が相当と認められる場合に限り有効になります。経営者としては、就業規則は最低限の要件であり、慎重な判断が不可欠であることを理解してください。

Q2:無断欠勤による解雇で、本人と連絡が取れない場合の対応は?

A: 連絡手段を尽くした事実の記録が重要になります。電話、メール、書面郵送、緊急連絡先への連絡、自宅訪問など、可能な限りの手段を講じ、その記録を残してください。就業規則で定めた無断欠勤日数に達した場合でも、即座に解雇するのではなく、出勤督促の書面を内容証明郵便で送付し、一定期間の猶予を与えることが一般的です。総務担当者は、すべての対応を時系列で記録し、解雇の相当性を裏付ける資料として整備することが重要です。

Q3:能力不足を理由とする解雇で、どの程度の指導・教育を行えば十分?

A: 明確な基準はありませんが、相当期間にわたる継続的な指導と改善機会の提供が必要です。具体的には、3-6か月程度の期間で、具体的な改善目標の設定、定期的な面談・指導、必要な研修機会の提供、配置転換の検討などを行い、それらをすべて記録として残すことが重要です。また、本人の努力や改善の兆候があれば、さらに期間を延長して支援することも必要になります。業種や職種の特性、会社の規模なども考慮要素となるため、個別事案ごとの慎重な判断が求められます。

適正な解雇規定で築く健全な組織運営

就業規則の解雇規定は、組織規律の維持と法的リスク回避の重要な基盤であり、適切な整備・運用により健全な職場環境を実現できます。100名規模の企業では、一人ひとりの従業員との関係性が重要であり、解雇という重大な判断においても、公正で透明性の高いプロセスを確保することが企業への信頼につながります。

重要なのは、解雇規定を「最後の手段」として位置づけ、日常的な人事管理の充実により解雇の必要性を最小化することです。適切な人事評価、継続的な指導・教育、働きやすい職場環境の整備により、従業員の能力向上と定着を図ることが、長期的な組織力強化につながります。

就業規則の解雇規定でご不安を感じていらっしゃるなら、今すぐ専門家にご相談ください。全国対応のHR BrEdge社会保険労務士法人では、2007年創業・顧問先50社の豊富な実績をもとに、最新の法令に適合した解雇規定の整備から個別事案の適正な対応まで包括的にサポートいたします。法的リスクを最小化しながら、健全な組織運営を実現する労務管理体制の構築により、安心できる企業経営を支援いたします。LINE・Slack・Chatworkでの迅速な相談対応も可能ですので、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

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