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休業手当と休業補償の違いとは?労働者が知っておきたい基礎知識

2025.04.28 社労士コラム

休業手当や休業補償の支給判断で迷う総務担当者様へ

「新型コロナの影響で休業させる場合、休業手当の支給は必要?」「従業員が業務中にケガをして休業した場合、会社が支払う休業補償と労災の休業補償の違いは?」「休業の原因が会社都合か労働者都合かの判断基準がよくわからない」そんな疑問を抱えていませんか?

100名規模の企業では、様々な事由による休業が発生し、適切な補償制度の選択と支給判断が法的リスクに直結します。休業手当と休業補償を混同した不適切な対応は、労働基準監督署の指導対象となるだけでなく、従業員との労働紛争に発展する可能性もあります。また、雇用調整助成金などの公的支援制度との関係も複雑で、適切な手続きには専門知識が不可欠です。

一方で、適切な休業制度の理解と運用により、法的リスクの回避、従業員の安心感向上、緊急時の適切な対応を実現できます。特に事業継続が困難な状況では、適正な休業手当の支給と助成金活用により、雇用維持と経営安定化を同時に図ることが可能になります。

本記事では、全国対応のHR BrEdge(エイチアールブレッジ)社会保険労務士法人が、100名規模企業の経営者・総務担当者が押さえるべき休業手当と休業補償の違いから実務上の注意点まで、包括的に解説します。適正な判断基準と手続きにより、安心できる休業制度運用を実現する実践的な知識をお届けします。

休業手当と休業補償の基本概念と100名規模企業における重要性

休業手当と休業補償は、労働者が働けない状況における重要な所得保障制度ですが、適用要件や支給主体が大きく異なります。100名規模の企業では、多様な休業事由に対して適切な制度選択と迅速な対応が求められます。

休業手当と休業補償の基本的な違い

両制度の根本的な違いを正確に理解することが適正運用の前提となります:

項目 休業手当 休業補償 100名企業での注意点 実務上の判断基準
法的根拠 労働基準法第26条 労働者災害補償保険法 適用法令の正確な理解 休業原因の法的分析
休業原因 使用者の責に帰すべき事由 業務上の負傷・疾病 原因特定の重要性 事実関係の詳細調査
支給主体 使用者(会社) 労災保険・使用者 支払い責任の明確化 負担主体の確認
支給額 平均賃金の60%以上 平均賃金の60~100% 計算方法の正確性 平均賃金の適正算出
支給期間 休業期間中 療養・休業期間中 期間管理の適正性 医学的根拠の確認

100名規模の企業では、休業事由の正確な判定と適切な制度選択が特に重要になります。判断を誤ると、法的リスクや経済的負担が生じる可能性があります。

休業手当の詳細要件と支給判断

労働基準法第26条に基づく休業手当は、以下の要件をすべて満たす場合に支給義務が発生します:

1. 使用者の責に帰すべき事由

  • 設備故障・機械トラブル
  • 原材料不足・資金繰り悪化
  • 人員配置ミス・管理不備
  • 取引先からの発注取消し

2. 労働者に就労意思があること

  • 出勤可能な状態であること
  • 休業を拒否していないこと
  • 代替業務への従事も困難であること

3. 平均賃金の60%以上の支給

  • 労働基準法上の平均賃金で計算
  • 60%は最低基準(上乗せ可能)
  • 支給日は通常の給与支給日

重要なのは、「使用者の責に帰すべき事由」の判断です。天災事変などの不可抗力は除外されますが、新型コロナのような感染症の場合は個別判断が必要になります。

休業補償の種類と適用場面

休業補償には、労災保険による給付と使用者による補償の2つがあります:

労災保険による休業補償給付

  • 業務上災害:作業中の事故、職業病など
  • 通勤災害:通勤途中の事故、災害など
  • 支給額:休業補償給付(60%)+特別支給金(20%)=80%
  • 支給期間:療養のため労働できない期間
  • 待期期間:3日間は対象外(業務災害の場合、使用者負担)

使用者による休業補償

  • 労災保険給付の待期期間(最初の3日間)
  • 労災認定されない業務関連疾病
  • 支給額:平均賃金の60%以上
  • 労働基準法第76条に基づく義務

100名規模の企業では、労災認定の可能性がある事案について迅速な判断と適切な手続きが重要になります。

効果的な休業制度運用と実務上の対応事例

休業制度の適正運用は、明確な判断基準の設定と迅速な対応体制の構築により実現できます。以下、実際の対応事例と効果的な運用方法をご紹介します。

新型コロナ対応による休業手当支給事例

製造業XX社(従業員105名)の適切対応事例:
新型コロナの影響で取引先からの発注が急減し、工場の一部休業を余儀なくされました。顧問社労士と連携して適正な休業手当支給と雇用調整助成金活用により、雇用維持と経営安定化を両立しました。

実施した対応:

  • 休業原因の法的分析(使用者責任の判定)
  • 休業手当60%支給の決定
  • 雇用調整助成金申請による負担軽減
  • 従業員への丁寧な説明・相談対応
  • 段階的な操業再開計画の策定

結果、雇用調整助成金により休業手当の90%をカバーでき、従業員の雇用を維持しながら経営危機を乗り越えることができました。適切な手続きにより労働紛争も発生しませんでした。

サービス業YY社(従業員98名)の事例:
緊急事態宣言による営業時間短縮で、シフト勤務者の労働時間が大幅に減少しました。部分休業制度と助成金活用により、パートタイマーを含む全従業員の雇用を維持しました。

労災事案における適切な休業補償対応

建設業ZZ社(従業員110名)の労災対応事例:
作業現場での転落事故により従業員が負傷し、2か月間の療養が必要となりました。迅速な労災申請と適切な補償支給により、従業員の安心確保と法的リスク回避を実現しました。

実施した手続き:

  • 事故直後の応急処置・病院搬送
  • 労働基準監督署への事故報告
  • 労災保険給付申請の代行支援
  • 待期期間3日分の休業補償支給
  • 安全管理体制の見直し・改善

適切な対応により、労災保険給付が円滑に支給され、従業員も安心して療養に専念できました。

休業制度運用の標準化フロー

ステップ1:休業原因の正確な把握(即日)

  • 休業に至った事実関係の整理
  • 原因の詳細調査・記録
  • 関係者からの事情聴取
  • 外部要因の影響度評価

ステップ2:適用制度の判定(1-2日)

  • 使用者責任の有無判定
  • 労災該当性の検討
  • 不可抗力要素の評価
  • 法的根拠の確認

ステップ3:支給額・期間の決定(1日)

  • 平均賃金の正確な計算
  • 支給率の決定(60%以上)
  • 支給期間の設定
  • 支給方法・時期の決定

ステップ4:従業員への説明・支給(2-3日)

  • 制度内容の詳細説明
  • 支給条件・期間の明示
  • 質問・相談への対応
  • 適正な支給実行

ステップ5:助成金申請・事後処理(継続)

  • 雇用調整助成金等の申請
  • 労働基準監督署対応
  • 記録の整備・保管
  • 制度運用の評価・改善

雇用調整助成金との連携活用

休業手当支給時の経済的負担軽減のため、雇用調整助成金を戦略的に活用します:

助成金の種類 支給率 対象となる休業 100名企業での活用効果
雇用調整助成金(通常時) 2/3~4/5 経済的理由による休業 休業手当負担の大幅軽減
雇用調整助成金(特例) 最大10/10 コロナ等による休業 実質的な負担ゼロ
産業雇用安定助成金 2/3~4/5 在籍出向による雇用維持 出向活用による雇用確保

100名規模の企業では、助成金申請の専門性と迅速性が重要になります。社労士との連携により確実な受給を図ることが効果的です。

アウトソース活用による専門性確保

複雑な休業制度の適正運用は、社労士事務所との連携により専門性と迅速性を確保できます:

  • 休業原因の法的分析・判定
  • 適用制度の正確な選択
  • 助成金申請の代行・サポート
  • 労働基準監督署対応
  • 労働紛争時の法的支援

給与計算業務と併せてアウトソースすることで、一貫した労務管理の品質向上が可能になります。

休業制度運用で頻出する実務上の疑問をQ&A形式で解決

Q1:新型コロナの影響による休業は、必ず休業手当を支給しなければならない?

A: 休業の具体的な原因と企業の対応可能性により個別判断が必要です。政府の緊急事態宣言による営業自粛要請は不可抗力の側面もありますが、企業として他の業務への配置転換や在宅勤務の導入など、休業回避の努力を尽くしたかが重要な判断要素になります。雇用調整助成金の特例措置により実質的な負担軽減も可能なため、経営者としては従業員の雇用維持を最優先に考慮することをお勧めします。

Q2:従業員が通勤途中で事故に遭った場合、会社はどこまで対応する必要がある?

A: 通勤災害として労災保険の適用対象になる可能性が高いため、まず労災申請の手続きを支援してください。労災認定されれば、療養給付と休業補償給付(80%)が支給されます。会社としては、労災申請のサポート、職場復帰支援、再発防止策の検討が主な対応になります。ただし、通勤経路や通勤方法に逸脱・中断があった場合は労災対象外になる可能性もあるため、事実関係の正確な把握が重要です。

Q3:休業手当と有給休暇のどちらを優先的に使用すべき?

A: 労働者の選択に委ねるのが原則ですが、実務的には有給休暇の方が労働者にとって有利(通常100%支給)なため、まず有給休暇の使用を提案することが一般的です。ただし、有給休暇の強制取得はできないため、労働者が休業手当を希望する場合は適切に支給する必要があります。総務担当者は、制度の違いを丁寧に説明し、労働者が適切な選択をできるよう支援することが重要です。

適正な休業制度運用で築く安心できる職場環境

休業手当と休業補償の適正な理解と運用は、従業員の安心感向上と企業の法的リスク回避の重要な基盤となります。特に予期せぬ事業環境の変化や労働災害が発生した際、迅速で適切な対応により従業員との信頼関係を維持し、組織の結束力を高めることができます。

100名規模の企業では、一人ひとりの従業員との関係性が重要であり、適切な休業制度の運用により「従業員を大切にする会社」としての企業文化を醸成できます。また、助成金の適切な活用により、経営への負担を最小化しながら雇用維持を図ることで、持続可能な企業経営を実現できます。

休業制度の運用でご不安を感じていらっしゃるなら、今すぐ専門家にご相談ください。全国対応のHR BrEdge社会保険労務士法人では、2007年創業・給与計算月1万人の豊富な実績をもとに、複雑な休業制度の適正運用から助成金申請まで包括的にサポートいたします。迅速で正確な判断により、法的リスクを回避しながら従業員の安心確保を実現いたします。LINE・Slack・Chatworkでの迅速な相談対応も可能ですので、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

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