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就業規則改定:初心者でも安心!法改正対応とリスク回避のための3つのステップ
就業規則改定の必要性:なぜ今、見直しが求められるのか?
企業の成長と安定した経営において、就業規則改定は避けて通れない重要な課題です。多くの経営者や人事担当者が「一度作ったから大丈夫」と考えがちですが、それは大きなリスクをはらんでいます。なぜ今、改めて就業規則の見直しが強く求められているのでしょうか。主な理由は、頻繁に行われる法改正への対応と、労務トラブルの未然防止という2点に集約されます。

近年、働き方改革関連法をはじめ、労働関係の法律は毎年のように改正されています。特に2025年には、育児・介護休業法の大幅な改正や、高年齢者雇用安定法に関連する経過措置の終了など、企業実務に直結する変更が相次ぎます。古いままの就業規則を放置することは、知らず知らずのうちに法令違反(コンプライアンス違反)の状態を招き、行政指導や罰則の対象となる恐れがあります。
また、就業規則は会社と従業員の信頼関係を支えるルールの基盤です。曖昧な記述や実態と乖離した規定は、未払い残業代請求や不当解雇といった深刻な労使トラブルの火種となります。会社を守り、従業員が安心して働ける環境を整えるためにも、最新の法令と自社の実態に即した就業規則改定は、経営上の最優先事項の一つと言えるでしょう。
法改正への対応:見落としがちな重要ポイントを解説
2025年育児・介護休業法改正のインパクト
2025年4月および10月から段階的に施行される改正育児・介護休業法は、今回の就業規則改定における最大の焦点です。これまでの制度から大きく拡充される点が多く、既存の規定のままでは対応できない可能性が高いため、詳細な確認が必要です。
具体的には、所定外労働の制限(残業免除)の対象となる子の範囲が「3歳未満」から「小学校就学前」へと大幅に拡大されます。また、「子の看護休暇」についても取得事由が緩和され、名称も「子の看護等休暇」へと変更される予定です。これらの変更を就業規則に正確に反映させなければ、従業員からの申し出を誤って拒否してしまうリスクが生じます。
柔軟な働き方を実現するための措置
新たに義務化される「柔軟な働き方を実現するための措置」も見逃せません。3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者に対して、始業時刻等の変更(フレックスタイム制など)、テレワーク、短時間勤務制度などの中から、事業主は2つ以上の制度を選択して措置を講じる必要があります。
これらの制度導入には、単に法律をなぞるだけでなく、自社の業務フローに合わせた運用ルールを策定し、就業規則や労使協定に明記することが求められます。特にテレワークに関しては、通信費の負担や労働時間管理の方法など、細かい規定整備が不可欠です。
高年齢者雇用とハラスメント対策の強化
高年齢者雇用安定法に関連し、65歳までの雇用確保措置に関する経過措置が終了することも忘れてはなりません。継続雇用制度の対象者を限定する基準を設けていた企業は、希望者全員を対象とする制度への変更が必要となる場合があります。
さらに、パワハラやセクハラに加え、近年社会問題化しているカスタマーハラスメント(カスハラ)への対応も重要です。ハラスメント防止規定を見直し、相談窓口の設置や加害者への懲戒処分を明確にすることで、企業としての安全配慮義務を果たす姿勢を示す必要があります。
リスク回避のための就業規則改定:トラブルを防ぐチェックポイント
労働時間と残業代規定の明確化
労使トラブルの中で最も多いのが、労働時間と残業代に関する争いです。特に固定残業代(みなし残業代)制度を導入している場合、就業規則への記載方法が不適切だと、制度自体が無効と判断されるリスクがあります。基本給と固定残業代の金額、対象となる残業時間数、超過分の支払いについて、誰が見ても分かるように明確に規定されているかを確認しましょう。
懲戒事由と解雇規定の具体性
問題社員への対応において、就業規則の懲戒規定は会社の正当性を主張する唯一の根拠となります。「その他前各号に準ずる行為」といった包括的な規定だけでなく、SNSでの不適切な投稿による情報漏洩や、私生活上の非行など、現代的なリスクに対応した具体的な懲戒事由を列挙しておくことが重要です。また、解雇に関しては法的なハードルが非常に高いため、解雇事由を限定列挙しつつ、予期せぬ事態にも対応できるような条項を設けるバランス感覚が求められます。
メンタルヘルスと休職・復職規定
メンタルヘルスの不調による休職者が増加する中、休職期間の上限や復職の条件に関するトラブルも増えています。医師の診断書の取り扱いや、復職可否の判断権限が会社にあること、復職後のリハビリ勤務中の処遇などを詳細に定めておくことで、スムーズな職場復帰を支援し、再発時の対応も明確にすることができます。
自社に最適な就業規則を作る視点:従業員の働きやすさを追求する
エンゲージメント向上ツールとしての活用
就業規則改定を単なる義務やリスク管理として捉えるのではなく、従業員のエンゲージメント(会社への愛着心)を高めるツールとして活用する視点も大切です。分かりやすく、公平なルールがあることは、従業員に安心感を与え、モチベーション向上に直結します。
例えば、副業・兼業の解禁や、時間単位有給休暇の導入など、従業員の多様なライフスタイルを尊重する制度を積極的に取り入れることで、優秀な人材の確保や定着率の改善が期待できます。「会社は従業員を大切にしている」というメッセージが伝わるような規定作りを心がけましょう。
自社の実情に合わせたカスタマイズ
厚生労働省が公開している「モデル就業規則」は参考になりますが、そのままコピー&ペーストして使うのは危険です。企業の規模、業種、社風によって、最適なルールは異なります。
例えば、少人数のアットホームな職場であれば、厳格すぎる転勤規定は不要かもしれませんし、逆にIT企業であれば、機密情報管理に関する規定をより厳重にする必要があります。自社の現状と将来のビジョンを反映させた、オリジナルの就業規則を作り上げることが、組織の成長を後押しします。
就業規則改定の具体的な進め方:スムーズなプロセスを実現するステップ
就業規則改定は、法律で定められた手順を確実に踏むことが求められます。手続きに不備があると、せっかく改定した規則が無効になることもあるため注意が必要です。ここでは、改定の全体像をスムーズに進めるための主要ステップを解説します。
- Step 1:現状分析と改定案の作成
まずは最新の法改正情報と自社の課題を整理し、どの部分を変更・追加する必要があるかを洗い出します。その上で、具体的な条文案(ドラフト)を作成します。 - Step 2:従業員代表からの意見聴取
作成した改定案について、従業員の過半数代表者(または過半数労働組合)の意見を聞き、「意見書」を作成してもらう必要があります。これは法的な義務です。 - Step 3:労働基準監督署への届出
改定した就業規則、意見書、就業規則変更届の3点セットを、管轄の労働基準監督署に提出します。現在は電子申請も可能です。 - Step 4:従業員への周知
届出が完了したら、必ず全従業員に改定内容を周知します。周知されて初めて就業規則は効力を持ちます。
意見書の重要性とポイント
意見書は、就業規則の変更に対して従業員側の意見を記載する書類です。重要なのは、会社側には「意見を聴く義務」はありますが、「同意を得る義務」までは(不利益変更の場合を除き)課されていないという点です。たとえ意見書に反対意見が書かれていても、届出自体は可能です。しかし、円滑な運用のためには、事前に丁寧な説明を行い、理解を得る努力を惜しまないことが大切です。
変更届の作成テクニック
就業規則変更届には、特別な決まった様式はありませんが、厚生労働省などが提供しているテンプレートを利用するのが効率的です。記載すべき内容は、労働保険番号、事業場名、使用者職氏名、添付書類の種類などです。新旧対照表を添付すると、どこが変更されたかが一目で分かり、監督署の確認もスムーズになります。
改定後の運用と周知徹底:従業員への浸透が成功の鍵
周知義務違反のリスクとは
労働基準法第106条では、就業規則を従業員に周知させることを義務付けています。ここで言う「周知」とは、従業員が「見ようと思えばいつでも見られる状態」にしておくことを指します。社長の机の引き出しにしまっている状態や、パスワードを知らないと閲覧できないサーバーに保存しているだけでは、周知義務を果たしたことになりません。
過去の判例でも、周知手続きを欠いた就業規則の効力が否定されたケースが存在します。つまり、どんなに立派な就業規則改定を行っても、周知が不十分であれば、そのルールを従業員に適用できず、懲戒処分なども行えない可能性があるのです。
効果的な周知方法の実践
法令で認められている周知方法は、常時見やすい場所への掲示、書面の交付、デジタルデータでの保存(PC等で常時確認できる状態)などです。最近では、社内ポータルサイトやクラウド上の共有フォルダに格納し、アクセス方法を全従業員にメール等で通知する方法が一般的かつ効率的です。
また、単にファイルを置くだけでなく、改定時には説明会を開催したり、要点をまとめた「概要版」を配布したりすることで、従業員の理解度を高める工夫も効果的です。特に重要な変更点については、給与明細に案内を同封するなど、確実に見てもらえる工夫を凝らしましょう。
よくある疑問と失敗談から学ぶ:就業規則改定の注意点
つまずきやすいポイント一覧
初めての改定作業では、思わぬ落とし穴にはまることがあります。よくある失敗を避けるため、以下のポイントを事前に確認しておきましょう。
- 法改正情報のキャッチアップ不足:ネット上の古い情報を参考にしてしまい、最新の法令に適合していない規定を作ってしまう。
- 不利益変更の強行:賃金カットや休日減少など、従業員にとって不利益な変更を、十分な合意形成や合理的な理由なしに行ってしまう。
- コピペ就業規則の弊害:他社の規則やひな形をそのまま使い、「自社には存在しない部署」や「支払うつもりのない手当」まで規定してしまう。
- 意見書の不備:管理職を従業員代表に選任してしまうなど、代表選出のプロセス自体に違法性がある。
特に「不利益変更」は法的リスクが極めて高い領域です。やむを得ず労働条件を引き下げる場合は、変更の必要性や代償措置の有無など、合理性を慎重に検討し、従業員の同意を丁寧に取り付けるプロセスが不可欠です。
まとめ
本記事では、2025年の法改正を見据えた就業規則改定の必要性から、具体的な手順、リスク回避のポイントまでを解説しました。就業規則は会社を守る盾であると同時に、従業員との信頼を築くための重要な契約書です。
法改正への対応は待ったなしの状況ですが、これを好機と捉え、自社の働き方やルールを根本から見直してみてはいかがでしょうか。正しい手順で改定を行い、確実に周知徹底することで、労務リスクを最小限に抑え、誰もが安心して働ける職場環境を実現しましょう。
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