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特定技能外国人の給与相場を社労士が解説!手取り計算と3つのトラブル予防策

2025.12.30 外国人雇用

特定技能外国人の採用を検討する企業にとって、最も頭を悩ませるのが「給与設定」と「労務管理」ではないでしょうか。「日本人と同じ給料で良いのか?」「手取り額はいくらになるのか?」といった疑問は、多くの人事担当者が抱える共通の課題です。

特定技能制度では、外国人材に対して「日本人と同等以上」の報酬を支払うことが法令で義務付けられています。このルールを正しく理解し、適切な給与設定を行わなければ、在留資格の許可が下りないばかりか、入国後のトラブルや早期離職に直結してしまいます。

本記事では、特定技能外国人の給与相場の実態から、具体的な手取り計算の方法、雇用契約書作成の注意点まで、外国人雇用の専門家である社会保険労務士の視点で徹底解説します。法令を遵守し、優秀な外国人材が長く活躍できる職場環境を整備するための「完全ガイド」としてご活用ください。

目次

特定技能外国人の賃金原則を徹底解説:日本人と同等以上がなぜ必要か?

特定技能外国人を雇用する際、絶対におさえておくべき大原則が「日本人と同等以上の報酬額」です。これは出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づく省令で明確に定められた基準であり、遵守されていない場合は在留資格が許可されません。

「日本人と同等以上」の具体的な意味とは

「日本人と同等以上」とは、単に月額給与の数字だけを指すのではありません。以下の3つの観点から総合的に判断されます。

  1. 比較対象者の選定
    社内で「同じ業務に従事し、同程度の責任を負う日本人従業員」と比較します。もし、全く同じ業務の日本人がいない場合は、最も近い業務を行う日本人を比較対象とします。
  2. 年齢や経験の考慮
    比較対象となる日本人と特定技能外国人の年齢や経験年数に差がある場合、その差を合理的に説明できる範囲で給与額を調整することは認められています。しかし、合理的な理由なく「外国人だから」という理由だけで低く設定することは差別的取り扱いとして禁止されています。
  3. 手当や賞与の扱い
    基本給だけでなく、通勤手当、皆勤手当、住宅手当などの各種手当や、賞与(ボーナス)、退職金についても、日本人従業員と同様の支給要件であれば、差別なく適用しなければなりません。

社内に比較対象の日本人がいない場合

小規模な事業所や、外国人のみが従事する部署など、社内に適切な比較対象者がいないケースもあります。その場合は、以下の基準を用いて報酬額の妥当性を説明する必要があります。

  • 賃金規定(就業規則)に基づく算定
    社内の賃金規定に基づいて給与が決定されていることを示します。
  • 近隣同業他社の給与水準
    ハローワークの求人票や公的な統計データを参照し、同じ地域・同じ職種で働く他社の給与水準と比較して遜色ない金額であることを証明します。

技能実習生との違い

技能実習制度では最低賃金水準での雇用が多く見られましたが、特定技能は「即戦力」として扱われるため、技能実習2号修了者と同等、あるいはそれ以上の技能レベルを持つとみなされます。したがって、技能実習生よりも高い給与水準(技能実習2号の給与を上回る額)を設定することが、審査において重要なポイントとなります。

【職種別】特定技能外国人の給与相場をデータで確認する方法

適正な給与を設定するためには、公的な統計データを知ることが重要です。厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」などのデータをもとに、特定技能外国人の給与相場を見ていきましょう。

最新データに見る特定技能の平均賃金

厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、在留資格「特定技能」を持つ外国人労働者の平均月給(きまって支給する現金給与額)は、約21万1,200円となっています。
これは、技能実習生の平均月給(約18万2,700円)と比較して約3万円近く高く、特定技能人材がより高い技能と責任を持つ労働力として評価されていることが分かります。

主要分野別の給与傾向

特定技能1号の対象となる12分野の中でも、職種によって給与相場には差があります。

  • 建設分野
    月給23万円〜30万円程度。日本人と同様に、経験や資格(建設キャリアアップシステムなど)に応じた昇給が見込まれる職種です。
  • 介護分野
    月給20万円〜24万円程度。処遇改善加算の対象となるため、他の職種に比べて手当が充実している傾向があります。夜勤の回数によって総支給額が変動します。
  • 外食業・飲食料品製造業
    月給18万円〜22万円程度。都市部と地方で最低賃金の差が大きく影響する分野です。シフト制勤務が多く、残業代が給与の多寡に直結します。
  • 農業
    月給17万円〜20万円程度。季節によって労働時間の変動が激しいため、変形労働時間制を採用しているケースが多く見られます。

地域別最低賃金の影響

給与設定の際には、必ず勤務地の「地域別最低賃金」を確認してください。特定技能外国人の給与は、以下の2つの条件を同時に満たす必要があります。

  1. 地域別最低賃金以上であること
  2. 特定産業別最低賃金(該当する場合)以上であること

もし基本給がこれらの最低賃金を下回っていると、労働基準法違反となり、特定技能の運用においても重大なペナルティ(受入停止処分など)を受ける可能性があります。毎年10月頃に最低賃金は改定されるため、こまめなチェックが必要です。

特定技能外国人の手取り計算ステップ:社会保険料と税金の控除

外国人労働者から最も頻繁に受ける質問の一つが「手取りはいくらですか?」です。日本の税金や社会保険制度は複雑であり、事前に手取り額のイメージを共有しておかないと、「話が違う」というトラブルに発展しかねません。

ここでは、月給(総支給額)20万円の特定技能外国人を例に、手取り計算のステップを解説します。

ステップ1:社会保険料の控除

特定技能外国人は、日本人従業員と同様に社会保険(健康保険・厚生年金保険)と雇用保険への加入が義務付けられています。

  • 健康保険料(約5%):約10,000円
    ※都道府県や組合によって料率は異なります(折半額)。
  • 厚生年金保険料(9.15%):約18,300円
    ※標準報酬月額に基づいて計算されます(折半額)。
  • 雇用保険料(0.6%):約1,200円
    ※事業の種類によって料率は異なります(労働者負担分)。

【社会保険料合計:約29,500円】

ステップ2:税金の控除(所得税・住民税)

次に、所得税と住民税が控除されます。

  • 所得税:約3,700円
    ※扶養家族の人数によって変動します。海外に住む家族を扶養に入れる場合は、送金証明書などの提示が必要です。
  • 住民税:0円(入社1年目の場合)
    ※住民税は「前年の所得」に対して課税されるため、来日1年目は基本的に天引きされません。2年目(翌年の6月)から月額約10,000円程度が引かれるようになることを、必ず入社時に説明しておく必要があります。

ステップ3:その他控除(家賃・光熱費など)

社宅や寮を提供する場合は、家賃や光熱費を給与から天引きすることがあります。ただし、これらを天引きするには「労使協定(賃金控除に関する協定)」の締結が必要です。

  • 家賃・共益費:約20,000円〜30,000円(例)
  • 水道光熱費:実費または定額

最終的な手取り額のシミュレーション

月額給与:200,000円
(-) 社会保険料:29,500円
(-) 所得税:3,700円
(-) 住民税:0円(1年目)
(-) 家賃等:25,000円(例)
(=) 手取り額:約141,800円

このように、総支給額から約20〜25%程度(家賃を除く)が控除される仕組みを、図や計算書を使って本人に理解させることが重要です。

トラブル回避!特定技能外国人の雇用契約書作成と重要ポイント

特定技能外国人と締結する雇用契約書は、入管法で定められた要件を満たす必要があります。日本人向けの一般的な雇用契約書をそのまま流用することは避け、以下のポイントを押さえた専用の契約書を作成しましょう。

必須!参考様式の使用と母国語併記

出入国在留管理庁は、特定技能運用要領に基づいた「参考様式」を公開しています。独自のフォーマットを使用することも可能ですが、記載漏れを防ぐために、この参考様式を使用することを強く推奨します。

また、雇用契約書および雇用条件書には、特定技能外国人が十分に理解できる言語(母国語)の併記が義務付けられています。日本語だけの契約書にサインをさせても、後から「内容を理解していなかった」と主張されれば、契約自体の効力が問われるリスクがあります。

雇用契約書に記載すべき5つの重要事項

以下の項目は、特にトラブルになりやすいため、明確に記載し説明する必要があります。

  1. 従事する業務の内容
    特定技能の区分に応じた業務内容を具体的に記載します。「その他付随する業務」といった曖昧な表現だけでなく、実際に任せる作業範囲を明確にします。
  2. 労働時間・休日
    始業・終業時刻、休憩時間、年間の休日数を明記します。変形労働時間制を採用する場合は、その旨と年間のシフトカレンダー等の提示が必要です。
  3. 報酬の額と支払い方法
    基本給、諸手当、残業代の計算方法、締め日と支払日を記載します。振込の場合は本人名義の口座であることを確認します。
  4. 退職・解雇に関する事項
    自己都合退職の申し出時期や、解雇の事由を記載します。外国人は「契約期間=絶対に働ける期間」と捉えがちですが、日本の労働法に基づく解雇ルールを説明しておく必要があります。
  5. 一時帰国の休暇取得
    特定技能独自の要件として、本人が一時帰国を希望した場合には、必要な有給休暇を取得させる(または無給休暇を認める)配慮が求められます。

労働条件トラブルを未然に防ぐ具体的な対策リスト

給与や労働条件に関する認識のズレは、失踪や不法就労助長といった重大なトラブルに発展する可能性があります。これらを防ぐために、企業が講じるべき具体的な対策をリストアップしました。

1. 雇用条件書の「読み合わせ」を実施する

契約書を渡すだけでなく、通訳を交えて、または母国語の翻訳ツールを使いながら、一項目ずつ「読み合わせ」を行ってください。特に「手取り額」と「残業ルール」については、本人が納得するまで時間をかけて説明します。

2. 割増賃金の仕組みを可視化する

「残業代が計算と合わない」という不満は非常に多いです。

  • 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた分は25%増し
  • 深夜労働(22時〜翌5時)はさらに25%増し
  • 休日労働(法定休日)は35%増し

といった日本の割増賃金ルールを、図解資料を用いて説明しましょう。

3. 住民税の「2年目の壁」を予告する

前述の通り、来日2年目(または3年目)から住民税の徴収が始まり、手取りが急に減ったように感じることがあります。入社時に「2年目からは税金が増えて手取りが減る」ことを明確に伝え、その分の貯金等を促す生活指導を行うことがトラブル予防になります。

4. 36協定の範囲内での運用を徹底する

特定技能外国人も労働基準法の適用対象です。36協定(時間外・休日労働に関する協定届)の上限を超えた残業は違法です。稼ぎたいという本人の希望があっても、違法な長時間労働はさせてはいけません。

受け入れ企業が実践すべき外国人への生活・就労支援

特定技能制度の最大の特徴は、受け入れ企業(特定技能所属機関)に対して、手厚い「1号特定技能外国人支援計画」の実施が義務付けられている点です。これらは福利厚生ではなく、法的義務です。

義務付けられている10項目の支援内容

企業は以下の10項目について、支援計画を作成し、実行しなければなりません。

  1. 事前ガイダンスの提供:入国前(または申請前)に労働条件や日本での生活について説明する。
  2. 出入国の際の送迎:入国時の空港出迎えと、帰国時の空港見送り。
  3. 住居確保・生活契約支援:社宅の提供や賃貸契約の連帯保証人になること、銀行口座開設、ライフライン契約のサポート。
  4. 生活オリエンテーション:ゴミ出しルール、交通ルール、防災、緊急連絡先などの説明(8時間以上推奨)。
  5. 公的手続きへの同行:住民登録、社会保険加入、納税手続きなどの同行サポート。
  6. 日本語学習の機会の提供:日本語教室の案内や教材の提供、学習情報の提供。
  7. 相談・苦情への対応:職場や生活の悩み相談に応じる体制整備(母国語での対応が必要)。
  8. 日本人との交流促進:地域のお祭りや社内イベントへの参加案内、自治会との連携。
  9. 転職支援:会社都合で解雇する場合などの転職先探しや推薦状の作成。
  10. 定期的な面談・行政への通報:3ヶ月に1回以上の定期面談(対面)と、その結果の入管への報告。

登録支援機関への委託活用

自社でこれら全ての支援を行う体制(通訳の確保など)がない場合は、国の許可を受けた「登録支援機関」に支援計画の全部を委託することができます。委託することで、企業は本来の業務に集中でき、法令遵守のリスクも軽減できます。ただし、委託費用が発生するため、コストとリソースのバランスを考慮する必要があります。

外国人雇用で企業が負う法的義務と知っておくべき罰則

最後に、特定技能外国人を雇用する企業が負う法的義務と、違反した場合の罰則について解説します。「知らなかった」では済まされない重い処分が科されることもあります。

入管法に基づく各種届出義務

特定技能外国人の雇用状況に変化があった場合、事由発生から14日以内に出入国在留管理局へ届け出る義務があります。

  • 特定技能雇用契約に係る届出:契約の変更、終了、新たな契約締結時。
  • 支援計画変更に係る届出:支援責任者の変更や委託契約の変更時。
  • 支援実施状況に係る届出(四半期ごと):定期面談の結果などを3ヶ月に1回報告。
  • 受入れ困難に係る届出:外国人が行方不明になった場合や、経営悪化で雇用継続が難しくなった場合。

ハローワークへの届出義務

労働施策総合推進法に基づき、外国人の「雇入れ」および「離職」の際は、ハローワークへ「外国人雇用状況届出」を行う必要があります(雇用保険被保険者資格取得届の備考欄等に記載して提出)。これを怠ると30万円以下の罰金対象となります。

重大な違反に対するペナルティ

以下のような悪質な違反があった場合、特定技能外国人の受入れ停止(5年間)などの厳しい処分が下されます。

  • 賃金の不払い・最低賃金違反
  • 支援計画の不履行(計画通りに支援を行っていない)
  • 虚偽の届出
  • 保証金の徴収(本人から違約金や保証金を徴収する契約を結ぶこと)
  • 人権侵害行為(パスポートの取り上げ、暴行、脅迫など)

特定技能制度は、厳格な法令遵守(コンプライアンス)の上に成り立つ制度です。ルールを正しく理解し、適正な運用を行うことが、企業の信頼を守り、優秀な外国人材の定着につながる唯一の道です。


外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

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