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特定技能の委託費が安い理由と5つの落とし穴|社労士が教える支援機関の選び方

2026.01.21 トピックス

特定技能外国人の受入れを検討する際、多くの企業様が頭を悩ませるのが「登録支援機関選び」と「委託費用の相場」です。インターネットで検索すると、月額1万円台の格安業者から、月額3万円〜5万円程度の標準的な機関まで、費用には大きな幅があります。

「コストは安いに越したことはない」と考えるのは経営として当然ですが、特定技能制度において「安さ」には必ず理由があります。そして、その理由が企業にとって致命的なリスクとなるケースが後を絶ちません。今回は、特定技能の支援委託費に格差が生まれる構造的な理由と、安易な業者選びが招く法的リスク、そしてコストと質のバランスが取れた支援機関を見極めるポイントについて、現場の実務を知る社会保険労務士の視点から解説します。

Q1. 特定技能の支援委託費に、なぜこれほど大きな価格差があるのですか?

【結論】支援業務にかける「人件費」と「専門性」の密度に決定的な差があるからです。

特定技能の支援委託費(月額管理費)の相場は、一般的に外国人1名あたり月額2万5千円〜3万5千円程度ですが、中には1万円台という業者も存在します。この価格差の最大の要因は、支援を担当するスタッフの質と人数、そして対応の手厚さにあります。

適正価格を提示している登録支援機関の場合、以下のような体制を整えています。

  • 母国語対応が可能なスタッフを正社員として雇用している
  • 定期的な訪問や面談を、法令で定められた回数以上に実施している
  • トラブル発生時に即座に現場へ駆けつける体制がある

一方で、格安の委託費を設定している業者の場合、通訳を外部のアルバイトに依存していたり、訪問回数を法令ギリギリ(あるいは形だけ)に抑えていたりすることでコストを削減しています。つまり、価格差はそのまま「有事の際の対応力」の差となって現れるのです。

Q2. 「月額1万円台」のような格安業者は、どのように利益を出しているのですか?

【結論】書類作成のみに特化し、実質的な生活支援やトラブル対応を削ることで利益を確保しています。

実務上よくあるケースとして、格安業者の多くは「薄利多売」のビジネスモデルを採用しています。1人の担当者が100名以上の特定技能外国人を担当することも珍しくなく、物理的に一人ひとりへの手厚いサポートが不可能な状態です。

具体的には以下のような運用でコストを下げています。

  • 定期面談をオンラインのみ、または形骸化した書類上の処理で済ませる
  • 生活オリエンテーションや公的手続きへの同行を省略、または別料金とする
  • 夜間や休日の緊急対応を行わない

自社に外国人社員の支援ができる専任スタッフがおり、「書類作成だけアウトソーシングしたい」という企業であれば、こうした業者を利用するメリットはあるかもしれません。しかし、支援のノウハウがない状態で安さだけで選んでしまうと、現場の負担が激増することになります。

Q3. 委託費が安いと、具体的にどのような支援が省略されがちですか?

【結論】入社直後の「生活立ち上げ支援」と、日常的な「メンタルケア」が省略される傾向にあります。

特定技能制度では、入国・入社時の生活オリエンテーションや、銀行口座の開設、携帯電話の契約、住居の確保といった生活立ち上げの支援が義務付けられています。しかし、委託費が安い業者の場合、これらの業務を「マニュアルを渡すだけ」で済ませたり、企業の人事担当者に丸投げしたりすることが少なくありません。

また、最も省略されがちなのが「日常的な相談対応」です。外国人が日本で働く上で抱える不安や、日本人従業員との些細な摩擦は、放置すると失踪や離職につながります。コストを削っている支援機関は、こうした「目に見えないケア」に時間を割くことができません。結果として、外国人が孤立し、定着率が低下するという悪循環に陥ります。

Q4. 支援が不十分な場合、委託している企業にも法的責任は及ぶのですか?

【結論】はい。支援業務を委託していても、法令違反の最終的な責任は受入れ企業(特定技能所属機関)にあります。

ここは非常に誤解されやすいポイントですが、登録支援機関に業務を委託したからといって、企業の法的責任(支援責任)が免除されるわけではありません。入管法上、支援計画の適正な実施義務はあくまで受入れ企業にあります。

もし登録支援機関が法定の支援(定期面談や報告書の提出など)を怠った場合、出入国在留管理庁から指導を受けるのは企業側です。最悪の場合、改善命令が出されたり、特定技能外国人の受入れが停止されたりするリスクがあります。「業者がやっていなかった」という言い訳は通用しません。したがって、委託先の選定は、自社の存続に関わる重要な経営判断といえます。

Q5. 委託費以外で発生する「隠れたコスト」にはどのようなものがありますか?

【結論】トラブル対応時の「追加請求」や、早期離職による「再採用コスト」が隠れたコストとして発生します。

月額の委託費が安くても、トータルコストが高くつくケースは多々あります。例えば、以下のような費用が後から発生することがあります。

  • 通訳が必要な場面ごとのスポット料金請求
  • 公的手続き同行の交通費や日当の別途請求
  • トラブル発生時の緊急対応費用

さらに、最も大きな「隠れたコスト」は早期離職です。支援体制が不十分で外国人がすぐに辞めてしまった場合、それまでにかかった紹介料、渡航費、教育コストはすべて無駄になります。再び採用活動を行うための費用と時間を考えれば、最初から手厚い支援を行う機関に適正な費用を払う方が、結果的にコストパフォーマンスが良い場合が多いのです。

Q6. トータルコストで見た場合、適正価格の目安はどれくらいですか?

【結論】月額2万5千円〜3万5千円程度が、法的リスクを回避し安定雇用を実現するための適正ラインです。

もちろん地域や支援内容によって変動はありますが、法令遵守(コンプライアンス)を徹底し、外国人が安心して働ける環境を提供するためには、この程度のコストが必要です。これは単なる「管理費」ではなく、トラブルを未然に防ぐための「保険料」や、定着を促すための「投資」と捉えるべきです。

一方で、自社で通訳スタッフを雇用し、支援業務の一部を内製化できるのであれば、より安価なプランを選択することも可能です。重要なのは、提示された金額の中に「どこまでのサービスが含まれているか」を詳細に確認し、自社のリソースと照らし合わせて判断することです。最終的な判断に迷う場合は、専門家への個別相談をお勧めします。

Q7. 実際に不適切な支援が原因でトラブルになった事例はありますか?

【結論】はい。定期面談の記録が虚偽であったことが発覚し、企業が行政指導を受けた事例があります。

私が関与した実際の顧問先での事例ですが、以前契約していた格安の登録支援機関が、実際には行っていない「四半期ごとの定期面談」を行ったように装い、虚偽の報告書を入管に提出していたことがありました。これが発覚したのは、外国人本人からの「一度も面談を受けていない」という相談がきっかけでした。

このケースでは、企業側が早期に気づき、速やかに支援機関を変更して適正な運用に戻したため、最悪の事態は免れました。しかし、もし放置していれば、企業側が「虚偽届出」に関与したとみなされ、今後5年間の受入れ禁止処分を受ける可能性もありました。安さだけで選んだ結果、企業の根幹を揺るがすリスクを抱え込んでしまった典型例です。

Q8. 現在の登録支援機関に不安がある場合、どのタイミングで切り替えるべきですか?

【結論】外国人社員から不満の声が上がった時、または報告・連絡が遅いと感じた時点で、直ちに切り替えを検討すべきです。

「契約期間が残っているから」「手続きが面倒だから」と切り替えを先延ばしにするのは危険です。特に、外国人社員から「支援担当者と連絡が取れない」「相談しても動いてくれない」といった声が上がり始めたら、それは赤信号です。信頼関係が崩れると、失踪や外部ユニオンへの加入といったトラブルに発展する速度は非常に速いです。

登録支援機関の変更手続き自体は、それほど複雑ではありません。新しい支援機関が決まれば、引継ぎや入管への届出は基本的に新しい機関が主導して行ってくれます。リスクを感じたら、傷口が広がる前に動くことが重要です。

Q9. コストと質のバランスが良い支援機関を見極める「5つの基準」とは?

【結論】「通訳の雇用形態」「訪問頻度の実績」「料金体系の明瞭さ」「法令知識」「レスポンスの速さ」の5点を確認してください。

登録支援機関を選ぶ、あるいは切り替える際は、営業担当者の言葉だけでなく、以下のポイントを具体的に質問してみてください。

  • 通訳の雇用形態:通訳は正社員ですか?それとも都度外注ですか?(正社員の方が継続的な関係構築が可能です)
  • 訪問頻度の実績:法定の3ヶ月に1回だけでなく、必要に応じて随時訪問してくれますか?
  • 料金体系:追加費用が発生するケースは具体的にどのような場合ですか?
  • 法令知識:労務管理や入管法に精通した専門家(社労士や行政書士)が関与していますか?
  • レスポンス:トラブル時の緊急連絡先はあり、休日でも繋がりますか?

これらを総合的に判断し、「安さ」ではなく「安心」を買うという視点を持つことが、特定技能制度を成功させる鍵となります。

まとめ

特定技能の支援委託費が安いことには、必ず理由があります。目先のコスト削減を優先するあまり、支援の質が低下し、結果として法的リスクや離職リスクを招いてしまっては本末転倒です。

登録支援機関は、企業と外国人社員をつなぐ重要なパートナーです。「安かろう悪かろう」の落とし穴を避け、自社の状況に合った信頼できる支援機関を選ぶことが、安定した外国人雇用への第一歩となります。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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