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特定技能外国人の住宅確保義務を果たす6ステップ|社労士が教える物件選定と賃金控除の法実務

2026.02.04 外国人雇用

特定技能外国人の受け入れにおいて、多くの企業が直面する最初の壁が「住居の確保」です。「どのような物件なら入管法の基準を満たすのか?」「家賃は給与から引いてもいいのか?」「保証人は誰がなるべきか?」といった疑問は尽きません。

特定技能制度では、受入れ企業(特定技能所属機関)に対し、外国人材が安定して生活できる住居の確保を支援することが義務付けられています。この対応を誤ると、在留資格の申請が不許可になったり、入国後のトラブルで早期退職につながったりするリスクがあります。

この記事では、これから特定技能の雇用を始める企業や担当者に向けて、物件選びから契約、入居後の管理まで、法適合性を確保しながらスムーズに進めるための手順を6つのステップで解説します。

Step1:【準備】特定技能外国人の住居に関する法的基準と面積要件を正確に把握する

【結論】このステップでは、候補となる物件が入管法の定める「住居の要件」を満たしているかを確認します。

特定技能外国人の住居は、単に「住めればよい」というわけではありません。出入国在留管理庁の運用要領には明確な基準が設けられており、これを満たさない物件では在留資格の許可が下りない可能性があります。

  • 1人当たりの居室面積:7.5㎡以上
    (※技能実習生の場合は4.5㎡以上とされていますが、特定技能ではより広いスペースが求められます)
  • 必要な設備
    入居後すぐに生活できるよう、以下の設備が必要です(企業が準備、または備え付け物件を選ぶ)。
    ・寝具、テーブル、椅子
    ・冷暖房器具、照明器具
    ・調理器具、食器類
    ・洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ 等
  • ルームシェア(相部屋)の可否
    寝室は原則として個室が望ましいですが、相部屋も認められます。ただし、その場合でも「1人当たり7.5㎡以上」の面積確保は必須です。

【社労士視点の重要ポイント】
実務でよくあるミスが、「LDKを含めた全体の平米数」で計算してしまうケースです。要件となる7.5㎡は、あくまで「居室(寝室)」の面積を指すことが原則です(ただし、共有スペースを含めて判断されるケースもありますが、リスクを避けるため居室のみで7.5㎡確保することを推奨します)。
また、私たちが支援する現場では、技能実習生用の寮(4.5㎡基準)をそのまま特定技能用に使おうとして、面積不足を指摘されるケースが散見されます。制度ごとの基準の違いには十分注意してください。

Step2:【物件選定】外国人入居が拒否されない物件探しと保証人・緊急連絡先問題を解消する

【結論】このステップでは、外国人入居可の物件を選定し、保証会社や緊急連絡先の体制を整えます。

日本国内の賃貸市場では、依然として「外国人不可」の物件が少なくありません。手当たり次第に問い合わせるのではなく、戦略的に物件を探す必要があります。

  • 外国人可物件の探索ルート
    ・外国人専門の不動産仲介会社の利用
    ・UR賃貸住宅(礼金・仲介手数料・更新料・保証人が不要で、外国人にも門戸が広い)
    ・社宅代行サービスの活用
  • 保証人と緊急連絡先の確保
    特定技能外国人が個人契約する場合、連帯保証人を求められることが最大のハードルです。
    法人契約(借上げ社宅)にする:企業が契約者となれば審査が通りやすい。
    保証会社の利用:外国対応可能な保証会社を利用する。
    緊急連絡先:受入れ企業または登録支援機関が担当する。

【実務での判断分岐】
もし、貴社が「従業員の定着率を高めたい」と考えるなら、法人契約(借上げ社宅)を強く推奨します。初期費用を会社が一時負担し、審査もスムーズに進むため、入社までのリードタイムを短縮できます。
一方で、どうしても「個人契約」にこだわる場合は、特定技能所属機関(企業)または登録支援機関が連帯保証人になることを求められるケースがほとんどです。そのリスクを許容できるか、社内で事前に協議しておきましょう。

Step3:【契約実務】初期費用の負担区分を明確にし、賃貸借契約の締結を支援する

【結論】このステップでは、敷金・礼金などの初期費用を誰が負担するかを決定し、契約手続きを行います。

特定技能制度の運用要領では、住居確保の支援として「物件の探索・契約手続きの補助」が求められています。費用の全額負担までは義務付けられていませんが、経済的基盤が弱い来日直後の外国人に対しては、配慮が必要です。

  • 初期費用の内訳と負担例
    ・敷金、礼金、仲介手数料:会社負担(または会社が立て替え、分割返済)
    ・火災保険料、鍵交換代:本人負担とするケースが多い
    ・家具家電の購入費:会社が購入し貸与(現物給付)
  • 契約名義の決定
    会社名義:会社が貸主と契約し、社員にまた貸しする(社宅扱い)。
    個人名義:社員本人が契約し、会社が連帯保証人となる。

【ここがトラブルの元】
「初期費用は全額本人が払うべき」として、来日前の本人に高額な請求書を送ってしまうと、入国拒否や辞退につながる恐れがあります。
実務上は、会社が初期費用を負担(または立て替え)し、毎月の家賃に少し上乗せして回収するという運用もよく見られますが、その場合も「実費」を超えて利益を出してはいけないというルール(次項参照)に抵触しないよう注意が必要です。

Step4:【労務管理】家賃を給与控除するための「労使協定」締結と控除額の妥当性を確認する

【結論】このステップでは、家賃を給与から天引きするための法的要件をクリアし、適正な控除額を設定します。

労働基準法第24条により、賃金は全額払いが原則です。家賃や光熱費を給与から控除(天引き)するには、必ず書面による「賃金控除に関する労使協定」を締結しなければなりません。

  • 労使協定の締結
    従業員の過半数代表者と協定を結び、控除する項目(家賃、光熱費、共益費など)を明記します。
  • 控除額の上限(実費原則)
    特定技能外国人を社宅に入居させる場合、本人から徴収できる家賃(寄宿舎費)は、会社が実際に負担している額(実費)を超えてはいけません。
    ・OK:家賃5万円の物件を借り上げ、本人から3万円徴収する(福利厚生として2万円会社負担)。
    ・NG:家賃3万円の物件を借り上げ、本人から5万円徴収する(差額を会社の利益にする)。
  • 雇用条件書への明記
    雇用契約書や労働条件通知書に、控除する家賃の額を明記し、本人に母国語で説明して合意を得る必要があります。

【社労士視点の注意点】
管理費や共益費も実費の範囲内であれば徴収可能です。しかし、「管理手数料」などの名目で、会社の人件費などを上乗せして徴収することは、入管法上の「不当な利益供与」とみなされるリスクが高いため避けてください。あくまで「家賃の実費」の範囲内に留めることが鉄則です。

Step5:【生活支援】入居後のゴミ出し・騒音トラブルを未然に防ぐ生活ガイダンスを実施する

【結論】このステップでは、入居直後に日本の生活ルールを教えるオリエンテーション(生活オリエンテーション)を実施します。

特定技能1号の場合、入国後(または変更許可後)遅滞なく、生活オリエンテーションを実施することが義務付けられています。特に住居に関するトラブルは近隣住民との関係悪化に直結するため、重点的な指導が必要です。

  • ゴミ出しルールの指導
    ・分別方法(可燃、不燃、資源、プラなど)
    ・収集日と出す場所、時間の指定
    ・粗大ごみの出し方(退去時に特に重要)
    ※自治体が発行する多言語版のゴミ出しカレンダーを活用しましょう。
  • 騒音・生活マナー
    ・夜間の通話、音楽、パーティーの禁止
    ・共用部分(廊下、ベランダ)の使い方
    ・友人の宿泊禁止(契約違反になる場合があることの説明)

【現場での工夫】
口頭で説明するだけでは不十分です。実際にゴミ捨て場まで同行して場所を確認したり、部屋の中に「ゴミ出しカレンダー」を貼ったりする等の具体的なアクションが効果的です。また、騒音トラブルが発生した際は、会社や登録支援機関が間に入って速やかに注意喚起できる体制を作っておくことが、賃貸契約を継続する鍵となります。

Step6:【事後対応】退去時の原状回復トラブルと緊急時の連絡体制を整備する

【結論】このステップでは、退去時を見据えたルール作りと、災害・急病時の連絡網を整備します。

特定技能外国人が帰国したり、転職したりする際の「退去」は、最も金銭トラブルが起きやすいタイミングです。

  • 原状回復費用のルール化
    日本の賃貸慣習である「原状回復義務」を理解してもらうのは難しい場合があります。
    ・通常損耗(普通に暮らして汚れた分):オーナー負担(または会社負担)
    ・故意過失(タバコの焦げ跡、壁の穴など):本人負担
    この区分を入居時に写真付きで説明し、退去時の立ち会いを必須にします。
  • 緊急時の連絡体制
    火災、地震、水漏れ、急病などの緊急時に、誰に連絡すべきかを明確にします。
    ・110番、119番のかけ方指導
    ・管理会社、会社の担当者、登録支援機関の連絡先リストの配布

【もしトラブルが起きたら】
退去時に高額な修繕費を請求され、給与から全額引いてしまうと、最後の給与が手取りゼロになるなどの問題が発生します。このような事態を防ぐためにも、定期的な巡回訪問(3ヶ月に1回の面談時など)で部屋の使い方をチェックし、汚れや破損がひどくなる前に指導することが、結果として会社のコスト削減につながります。

まとめ

特定技能外国人の住宅確保は、単なる「部屋探し」ではなく、入管法、労働基準法、そして民法の賃貸借契約が絡む複合的な実務です。

自社ですべて手配するのが難しい場合は、登録支援機関に委託することで、物件探しから契約、入居後の生活指導までをアウトソーシングすることも可能です。コストと社内リソースのバランスを考え、最適な運用体制を構築してください。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する 特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。 法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、 企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、 「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。 特に、従業員100名以上規模の企業における 実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、 「このケースではどう判断すべきか」 「どこでトラブルになりやすいか」 といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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