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技能実習から特定技能への切り替え費用を徹底比較!社労士が教えるコスト最適化と移行手順

2026.02.02 外国人雇用

技能実習生の在留期限が迫る中で、「特定技能」への切り替えを検討する企業が増えています。しかし、経営者や人事担当者が最も頭を悩ませるのは、「結局、どちらがコスト安なのか?」「移行にかかる総額はいくらか?」という点ではないでしょうか。

本記事では、技能実習から特定技能への切り替えにかかる費用構造と、コストを最適化するための具体的な移行手順を解説します。この記事を読めば、監理費と支援委託費の比較、自社支援による削減効果、そして見落としがちな「隠れコスト」まで、移行に必要な判断材料がすべて揃います。社労士の視点から、失敗しない制度移行の進め方をステップ形式でご紹介します。

技能実習から特定技能へ切り替える際の「総コスト」を構造的に理解する

具体的な手順に入る前に、費用の全体像を把握しましょう。技能実習制度では「監理費」が主なランニングコストでしたが、特定技能では「支援委託費(または自社支援コスト)」に加え、「日本人同等以上の給与設定」による人件費増が大きな要素となります。単なる手数料の比較ではなく、人件費全体を含めたトータルコストでのシミュレーションが不可欠です。

Step1:実習3号か特定技能か?移行タイミングによる費用対効果を判定する

【結論】このステップでは、技能実習2号修了後の進路として「実習3号への移行」か「特定技能への切り替え」か、コストと制度趣旨の両面から最適な選択肢を判定します。

技能実習2号を良好に修了した外国人材には、そのまま「技能実習3号」としてあと2年実習を続ける道(対象職種の場合)と、「特定技能1号」へ在留資格を変更して最長5年(制度によってはそれ以上)働く道があります。この分岐点での判断が、向こう数年間のコスト構造を決定づけます。

  • 監理費と支援委託費の比較:一般的に、監理団体の監理費(月額3万~5万円程度)に比べ、登録支援機関の委託費(月額2万~3万円程度)の方が安価な傾向にあります。
  • 在留期間とキャリアパス:実習3号はあくまで「実習」であり最長2年で帰国が前提ですが、特定技能は更新が可能で、長期的な戦力化が見込めます。
  • 対象職種の確認:そもそも実習3号の対象職種でない場合は、特定技能への切り替え一択となります。

社労士視点の実務ポイント:
実務の現場では、「コストが下がるから」という理由だけで安易に特定技能へ切り替えるケースが見られますが、注意が必要です。特定技能は「転職が可能」な在留資格です。実習3号であれば原則として転職はできませんが、特定技能に切り替えた途端、より条件の良い他社へ転職されるリスクが発生します。「採用・育成コストの回収」という観点では、実習3号の方が確実性が高い場合もあります。一方で、本人の意向を無視して実習3号を強要することはできません。本人と面談し、長期就労の意思を確認した上でコスト比較を行うのが鉄則です。

Step2:登録支援機関の委託費用を比較し「隠れた追加料金」を精査する

【結論】このステップでは、特定技能外国人の支援を外部委託する場合の「登録支援機関」を選定し、見積もりの表面上の金額だけでなく、追加発生しうる費用を精査します。

特定技能1号を受け入れる企業(特定技能所属機関)には、法律で定められた「義務的支援」を実施する責任があります。これを外部の登録支援機関に委託する場合、支援委託費が発生します。しかし、この費用体系は機関によって千差万別であり、トラブルの元になりやすいポイントです。

  • 月額支援委託費:1名あたり月額2万円~3万円が相場ですが、支援内容(面談回数や緊急時対応)が含まれているか確認します。
  • 初期費用・契約金:月額とは別に、契約時に10万円~20万円の初期費用を請求されるケースがあります。
  • 定期面談の交通費:3ヶ月に1回の定期面談が義務付けられていますが、その際の交通費が実費請求か、込み価格かを確認します。
  • 通訳・翻訳費用:母国語対応が必要な場面での通訳費用が別途請求される場合があります。

社労士視点の実務ポイント:
「月額1万円!」といった格安の支援機関も存在しますが、実務経験上、安すぎる業者には注意が必要です。法定の支援(事前ガイダンス、生活オリエンテーション、四半期ごとの定期報告など)がずさんで、後々の入管調査で指摘を受けるリスクがあるからです。また、トラブル対応時に「それは別料金です」と言われ、結局高くつくケースも散見されます。見積もりを取る際は、「義務的支援のすべてが含まれているか」「追加料金が発生する条件は何か」を必ず書面で確認してください。

Step3:自社支援への切り替えによるコスト削減の可否と基準を検討する

【結論】このステップでは、登録支援機関への委託をやめ、自社で支援を行う(自社支援)ことによるコスト削減が可能かどうか、社内体制と照らし合わせて判断します。

特定技能の支援は、要件を満たせば外部委託せず、自社で行うことが可能です。これにより、月額の委託費(年間24万~36万円/1名)を削減できます。しかし、自社支援を行うには厳しい要件があります。

  • 支援責任者・担当者の選任:中長期在留者の適正な受入れ実績がある役員や職員を選任する必要があります。
  • 言語対応能力:外国人が十分に理解できる言語(母国語など)で支援できる体制が必要です。社内に通訳レベルの社員がいるか、あるいは通訳を都度外注する必要があります。
  • 支援の中立性:支援担当者は、外国人を指揮命令する立場(直属の上司など)であってはなりません。

社労士視点の実務ポイント:
「コスト削減のために自社支援にしたい」という相談をよく受けますが、通訳ができる社員がいない場合は、自社支援への切り替えは推奨しません。 外部の通訳を使うたびに費用がかかり、また支援担当者の事務工数(定期報告書の作成など)も膨大になるため、人件費換算するとかえってコスト高になることが多いからです。一方で、既に同国籍の正社員が在籍しており、通訳・相談業務を兼務できる体制がある企業であれば、自社支援への切り替えで大幅なコストダウンが実現できます。

Step4:切り替え申請における書類作成の工数と行政書士費用の相場を把握する

【結論】このステップでは、在留資格変更許可申請(技能実習→特定技能)にかかる手続き費用と、社内リソースで対応する場合の工数を比較検討します。

技能実習から特定技能へ切り替えるには、地方出入国在留管理局への「在留資格変更許可申請」が必要です。この手続きは非常に煩雑で、提出書類も多岐にわたります。

  • 行政書士への依頼費用:相場は1名あたり10万円~15万円程度です。許可が下りなかった場合の再申請規定なども確認が必要です。
  • 自社申請の実費:自社で行う場合、申請手数料(収入印紙)の4,000円のみで済みます。
  • 必要書類の収集・作成:雇用契約書、支援計画書、給与支払実績、納税証明書、社会保険加入証明など、数十種類の書類が必要です。

社労士視点の実務ポイント:
初めて特定技能の申請を行う場合、自社申請はハードルが非常に高いのが現実です。特に「特定技能雇用契約書」や「1号特定技能外国人支援計画書」は記載事項が細かく規定されており、不備があると何度も入管に通うことになります。人事担当者が数日かけて書類を作成し、入管で数時間待たされる人件費を考えると、初回や複雑なケース(過去に実習中のトラブルがあった場合など)は専門家に依頼する方が、結果的にコストパフォーマンスが良い場合が多いです。

Step5:移行後の給与設定と社会保険料の変動による人件費増をシミュレーションする

【結論】このステップでは、特定技能移行後の給与設定(日本人同等以上)と、それに伴う社会保険料の会社負担額を具体的にシミュレーションします。

特定技能制度では、報酬額を「日本人と同等以上」に設定することが絶対条件です。技能実習生時代は最低賃金に近い設定であったとしても、特定技能へ移行し、経験者として働く以上、昇給が必要になるケースがほとんどです。

  • 基本給の見直し:同じ業務に従事する日本人従業員の給与水準と比較し、不当に低くないか確認します。
  • 手当の確認:日本人には支給されている手当(皆勤手当、住宅手当など)が、外国人にも公平に適用されているかチェックします。
  • 社会保険料の会社負担増:給与が上がれば、当然ながら健康保険・厚生年金保険の会社負担額も増加します。

社労士視点の実務ポイント:
ここで重要なのは、「特定技能外国人は転職できる」という事実です。法律上の「日本人同等以上」をクリアしていても、近隣の同業他社より給与が低ければ、せっかく費用をかけて切り替えてもすぐに転職されてしまいます。実務上は、実習生時代の給与から月額2万~3万円程度のアップ、あるいは賞与の支給対象にするなど、明確な処遇改善を行う企業が定着率も高い傾向にあります。この「昇給分」も移行コストの一部として計画に組み込んでおくべきです。

Step6:不法就労助長罪を回避するための「在留カード管理」と「定期報告」体制を整える

【結論】このステップでは、移行後に発生する法的リスク(不法就労助長罪など)を回避するための管理体制を構築し、コンプライアンス維持にかかるコストを見積もります。

特定技能外国人の雇用において、最大のリスクコストは「法令違反による罰則」と「受入れ停止処分」です。これらを防ぐためには、日々の厳格な管理が必要です。

  • 在留カードの期限管理:在留期限が1日でも過ぎればオーバーステイ(不法滞在)となります。更新申請のスケジュール管理は必須です。
  • 四半期ごとの定期報告:入管に対し、支援実施状況や活動状況を3ヶ月ごとに報告する義務があります。これを怠ると指導の対象となります。
  • 労働関係法令の遵守:36協定の範囲内での残業管理、最低賃金の改定対応など、日本人同様の労務管理が求められます。

社労士視点の実務ポイント:
「うっかり更新を忘れていた」というミスが、企業にとって致命的なダメージ(不法就労助長罪:3年以下の懲役または300万円以下の罰金)につながります。Excelでの管理には限界があるため、労務管理システムの導入や、顧問社労士による定期チェックの依頼など、管理コストを惜しまないことが、結果として会社を守る最も安上がりな方法となります。

まとめ

技能実習から特定技能への切り替えは、単なるビザの変更ではなく、雇用形態とコスト構造の大きな転換点です。目先の委託費や申請費用の安さだけで判断せず、移行後の定着率やコンプライアンスリスクまで含めた「総コスト」で判断することが重要です。

自社の体制に合わせて、登録支援機関を賢く利用するか、自社支援に挑戦するかを慎重に検討してください。適切なコスト投下は、優秀な外国人材の定着という大きなリターンをもたらします。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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