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特定技能「建設分野」賃金支払い基準の徹底解説|日本人と同等以上の報酬を証明する6つの手順

2026.02.01 外国人雇用

建設分野における特定技能外国人の受け入れは、他分野と比較しても特に厳格な審査基準が設けられています。特に「賃金水準」については、単に最低賃金を上回っていれば良いわけではなく、「日本人と同等額以上」であることの客観的な証明に加え、建設キャリアアップシステム(CCUS)と連動した適正な評価が求められます。

多くの企業が「自社の日本人社員と同じように決めた」つもりでも、入管や国土交通省の審査で「根拠が不明確」「安価な労働力として扱っている」と判断され、不許可になるケースが後を絶ちません。**経営者や人事担当者が、適法かつスムーズに特定技能外国人を雇用し、安定して定着させるためには、報酬決定のロジックを明確にする必要があります。**

この記事では、建設分野特有の賃金要件をクリアし、トラブルを未然に防ぐための具体的な6つの手順を、現場の実務に詳しい社会保険労務士が解説します。

Step1:比較対象となる日本人労働者の定義と選定基準を確定する

【結論】このステップでは、特定技能外国人の賃金設定の根拠となる「比較対象日本人労働者」を明確に選定、または仮想設定します。

特定技能制度において、報酬額は「日本人が従事する場合と同等額以上」であることが絶対条件です。建設分野では、これが入管だけでなく国土交通省の「建設特定技能受入計画」の認定要件としても厳しくチェックされます。

  • 社内に同種の業務に従事する日本人がいるか確認する
  • 比較対象者の「経験年数」「責任の程度」「職務内容」を洗い出す
  • 比較対象者がいない場合は、賃金規程上のモデル賃金を設定する
  • 年齢や勤続年数だけでなく、保有資格や技能レベルで比較する

実務上の注意点として、比較対象とした日本人の賃金が、そもそも相場より著しく低い場合、その金額に合わせて設定しても不許可になるリスクがあります。また、比較対象者が「親族のみ」の場合や「役員のみ」の場合は比較対象として不適切とされるため、賃金規程に基づく客観的な初任給設定などが必要です。

Step2:建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価と賃金を連動させる

【結論】このステップでは、CCUSの技能者登録を行い、その能力評価(レベル)に応じた賃金設定を行います。

建設分野の特定技能では、CCUSへの登録と利用が義務付けられています。さらに重要なのは、CCUSのレベル判定結果と賃金が乖離していないことです。例えば、技能実習を3年間修了して特定技能に移行する場合、実質的にレベル2相当の技能を持っているとみなされることが多く、未経験者(レベル1)と同じ賃金設定では合理性が問われます。

  • 採用予定者のCCUS登録状況と現在のレベルを確認する
  • 特定技能1号としての業務内容がどのレベルに相当するか定義する
  • レベルアップ(昇格)した際の昇給幅を想定しておく

現場では「まだCCUSのカードが届いていないから」と手続きを後回しにしがちですが、受入計画の申請時に事業者IDや技能者IDの連携が求められるため、採用内定段階で速やかに登録手続きを進めることが鉄則です。

Step3:賃金テーブル(給与規定)を整備し客観的な報酬決定ルールを明文化する

【結論】このステップでは、個別の「どんぶり勘定」を排除し、誰が見ても納得できる賃金テーブルや給与規定を整備します。

「社長の頭の中にだけ基準がある」状態は、審査において最も不利になります。特に小規模な建設事業者では、明確な賃金テーブルが存在しないケースも多いですが、特定技能外国人を雇用する上では、基本給、職能給、各種手当の支給要件を明文化しなければなりません。

  • 基本給の決定要素(年齢給、職能給など)を規定化する
  • 固定残業代を導入する場合は、計算根拠と超過分の支払いルールを明記する
  • 「日本人には支給しているが外国人には支給しない手当」がないか点検する

ここでよくあるミスは、日本人には「家族手当」や「住宅手当」を出しているのに、特定技能外国人には「単身だから」「寮があるから」という理由で規定上の根拠なく不支給にすることです。合理的な理由がない待遇差は差別的取り扱いとみなされます。規定上で支給要件(例:扶養家族が国内に居住していること等)を明確にしておく必要があります。

Step4:技能実習からの移行時における「経験加算」と昇給の妥当性を検証する

【結論】このステップでは、技能実習生から特定技能へ移行する際、実習期間中の経験を正当に評価し、賃金に反映させます。

技能実習生として3年間自社で働いた後に特定技能へ切り替える場合、その外国人はすでに「3年の実務経験者」です。それにもかかわらず、技能実習時代と同じ賃金(最低賃金ギリギリなど)で雇用契約を結ぼうとすると、国土交通省の審査で「技能の習熟に応じた昇給がなされていない」と指摘される可能性が高いです。

  • 技能実習時代の最終賃金を確認する
  • 3年間の経験に対する「経験加算」を基本給に上乗せする
  • 新たに発生する責任や役割(後輩指導など)に対する手当を検討する

一方で、他社から転職してくる特定技能外国人の場合、前職の賃金水準を必ず確認してください。合理的な理由なく前職より賃金が下がる場合、転職のメリットがないと判断されるだけでなく、審査官に「不当な引き抜きまたは買いたたき」を疑われる要因になります。

Step5:賃金控除の適正化と「本人同意」に基づく支払いフローを構築する

【結論】このステップでは、給与から天引きする費用(家賃、水道光熱費など)が適正実費であることを確認し、法的な同意手続きを完了させます。

建設業では社宅や寮を用意することが一般的ですが、ここでの控除額がトラブルの火種になります。労基法上の「賃金全額払いの原則」の例外として控除を行うには、労使協定の締結が必要です。さらに特定技能においては、控除額が「実費」を超えてはならないという厳格なルールがあります。

  • 家賃控除額が近隣相場や実際の借上賃料を超えていないか確認する
  • 水道光熱費を一律定額で引く場合、実費との精算ルールを決める
  • 雇用契約書とは別に「控除に関する協定書」および「本人同意書」を作成する
  • 給与明細に控除項目を日本語と母国語(または英語)で併記する

管理費や事務手数料といった名目で、会社側の利益となるような上乗せ控除を行うことは厳禁です。これが発覚すると、最悪の場合、受入計画の認定取り消しや行政処分の対象となります。

Step6:物価高騰・賃金上昇トレンドに合わせた報酬の定期的な見直しを行う

【結論】このステップでは、雇用開始後も世間の賃金相場や物価上昇に合わせて、定期的に報酬を見直す仕組みを運用します。

建設分野の特定技能受入計画では、「昇給の見込み」についても記載が求められます。また、日本の最低賃金は年々上昇しており、建設業界全体の賃金水準も上がっています。数年前に設定した賃金のまま据え置いていると、いつの間にか「日本人同等以下」や「相場以下」になってしまうリスクがあります。

  • 毎年の最低賃金改定時に、基本給が下回っていないか(または近づきすぎていないか)確認する
  • 建設業全体の賃金統計や、地域の同業他社の動向をチェックする
  • 年1回以上の昇給査定を確実に実施し、記録に残す

特に特定技能1号は最長5年の在留が可能ですが、その間に一度も昇給がないというのは、通常の実務慣行として不自然です。能力向上に応じた昇給を行うことは、外国人のモチベーション維持だけでなく、法令遵守の観点からも必須のアクションです。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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