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外国人雇用契約の変更・届出基準を社労士が解説|特定技能で失敗しない変更手続きの全手順

2026.02.18 外国人雇用

特定技能外国人を雇用している企業において、昇給、配置転換、勤務地の変更などにより「雇用契約の内容」を変更するケースは少なくありません。しかし、日本人従業員と同じ感覚で契約変更を行うと、入管法上の届出義務違反(随時届出の遅延・不備)に問われるリスクがあります。

特定技能制度では、報酬額や業務内容などの重要事項に変更があった場合、変更後14日以内の入管への届出が義務付けられています。この手続きを怠ると、次回のビザ更新が不許可になるだけでなく、最悪の場合は受入れ機関としての認定取り消しにもつながりかねません。

この記事では、特定技能の実務に強い社会保険労務士が、雇用契約変更時に企業が踏むべき全手順を解説します。「どのような変更が届出対象か」「賃金設定の注意点」「具体的な届出フロー」を網羅し、コンプライアンスを遵守した運用体制を構築できるよう支援します。

Step1:雇用契約の変更が「随時届出」の対象となる基準を特定する

【結論】このステップでは、予定している変更内容が入管法上の「随時届出」が必要な項目に該当するかを判定します。

特定技能制度において、雇用契約情報の変更は入管庁への報告義務があります。特に以下の項目が変わる場合は、原則として変更から14日以内の届出が必須です。

  • 報酬額の変更(昇給・降給、手当の追加・廃止)
  • 就業場所の変更(店舗異動、転勤、事業所移転)
  • 従事する業務内容の変更(分野・区分の範囲内での変更)
  • 雇用期間の変更(契約更新など)

実務の現場でよく見られる進め方として、人事担当者が「定期昇給だから問題ない」と判断し、届出を漏らしてしまうケースが散見されます。しかし、基本給が数千円上がるだけでも、入管法上は「契約内容の変更」として扱われます。

社労士視点の判断ポイント:
「単なる部署名の変更(業務・場所は不変)」であれば届出不要な場合もありますが、「勤務地が変わる」「手当構成が変わる」場合は確実に届出対象です。迷った場合は「届出を行う」方向で動くのが安全です。

Step2:日本人同等額以上の報酬基準を維持するための賃金再設計

【結論】このステップでは、変更後の賃金が「日本人同等額以上」の基準を維持しているかを再計算・確認します。

特定技能外国人の報酬額は、同じ業務に従事する日本人従業員と同等以上であることが絶対条件です。契約変更時、特に手当の廃止や基本給の見直しを行う際は、この基準を下回らないよう注意が必要です。

  • 比較対象となる日本人従業員の最新の賃金台帳を確認する
  • 変更後の外国人の賃金シミュレーションを作成する
  • 経験年数や技能レベルに応じた合理的な格差であるか検証する

一方で、昇給させる場合であっても注意が必要です。大幅な昇給を行う場合、その原資や理由について入管から説明を求められることがあります。特に、実態と乖離した高額な報酬設定は、在留資格の不正取得を疑われる要因にもなります。

Step3:変更後の雇用契約締結と重要事項の説明手順

【結論】このステップでは、新しい条件での「雇用契約書」および「雇用条件書」を作成し、本人へ説明・締結を行います。

労働基準法第15条および特定技能運用要領に基づき、労働条件に変更があった場合は書面による明示が必要です。特定技能外国人の場合、日本語だけでなく、本人が十分に理解できる言語(母国語など)での明示・説明が強く推奨されます。

  • 変更後の「雇用契約書」および「雇用条件書(特定技能運用要領参考様式)」を作成
  • 母国語訳を併記、または通訳を介して内容を説明
  • 本人から署名・捺印を取得し、写しを本人に交付

実務で誤解されやすいポイント:
「辞令一本で異動させる」という日本的な人事慣行は、特定技能では通用しません。必ず変更前に合意形成を図り、書面を取り交わしてください。ここでの合意日が、次のステップである届出期限の起算点に関わってきます。

Step4:出入国在留管理局への変更届出における必要書類と提出期限

【結論】このステップでは、変更事由発生日(契約変更日)から14日以内に、管轄の出入国在留管理局へ随時届出を行います。

届出が遅れた場合、始末書の提出を求められるだけでなく、企業のコンプライアンス体制に疑義を持たれる可能性があります。

  • 提出書類:特定技能雇用契約に係る届出書(参考様式第3-1号)
  • 添付書類:変更後の雇用契約書および雇用条件書の写し
  • 提出方法:窓口持参、郵送、または出入国在留管理庁電子届出システム

システムを利用すれば24時間提出可能ですが、添付書類のPDF化など事前準備が必要です。また、報酬変更の場合は、次回の定期届出(四半期ごと)の際に、変更後の賃金台帳との整合性がチェックされるため、正確な記載が求められます。

Step5:登録支援機関の支援計画変更と連動したコンプライアンス対応

【結論】このステップでは、雇用条件の変更に伴い「1号特定技能外国人支援計画」の修正が必要かを確認し、対応します。

例えば、勤務地が変更になる場合、住居の確保支援や生活オリエンテーションの内容、苦情相談の対応フローなどが変わる可能性があります。

  • 登録支援機関(委託している場合)へ契約変更の内容を共有する
  • 支援計画書の記載事項(就業場所、住居、送迎など)に変更がないか確認
  • 変更がある場合、支援計画変更に係る届出書(参考様式第3-2号)も併せて提出

これまで多くの企業に関与してきた中で、雇用契約の変更届出は行っていても、支援計画の変更を忘れているケースが多く見られます。両者はセットで確認する習慣をつけてください。

Step6:変更後の実態が基準から逸脱しないための社内監査体制

【結論】このステップでは、変更手続き完了後、実際の運用が新しい契約内容通りに行われているかを定期的に監査します。

契約書上の数字と、実際の給与支払額や労働時間にズレが生じると、次回のビザ更新時に不許可となるリスクが高まります。

  • 最初の給与支払時に、変更後の条件が正しく反映されているか計算チェックを行う
  • 3ヶ月ごとの定期届出時に、過去の随時届出内容との整合性を確認する
  • 残業時間や休日数が36協定および雇用契約の範囲内かモニタリングする

社労士視点の補足:
組織や企業の状況によって、人事担当者が給与計算まで行わない分業体制の場合、情報の伝達ミスが起こりやすくなります。契約変更の情報が給与計算担当に即座に伝わるフローを確立することが、コンプライアンス維持の鍵です。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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