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特定技能外国人の試用期間・解雇で失敗しない手順|入管法と労基法の二重リスクを回避する専門家実務

2026.01.21 外国人雇用

特定技能外国人の採用においても、日本人社員と同様に「試用期間」を設けることは可能です。しかし、いざ「能力不足」や「適性欠如」を理由に本採用を見送る(解雇する)場合、労働基準法だけでなく、入管法に基づく特有の義務やペナルティが発生することをご存知でしょうか。

安易な解雇は、不当解雇として訴えられるリスクだけでなく、企業が「特定技能外国人の受入れ停止処分」を受けるリスクにも直結します。この記事では、特定技能外国人の試用期間設定から、万が一の解雇・契約終了時に企業が踏むべき実務ステップを、専門家である社会保険労務士が解説します。

Step1:雇用契約と支援計画の整合性を確認する

【結論】このステップでは、試用期間の条件が「雇用契約書」と「1号特定技能外国人支援計画」の両方で矛盾なく設定・説明されているかを確認します。

特定技能外国人の場合、労働条件は単に契約書に書けば良いだけでなく、入国(または在留資格変更)前の「事前ガイダンス」で母国語等を用いて十分に説明し、本人が理解している必要があります。

  • 雇用契約書および労働条件通知書に試用期間の有無と期間(例:3ヶ月)が明記されているか確認する
  • 試用期間中の賃金や待遇が、日本人と同等以上であり、かつ最低賃金を上回っているか確認する
  • 「事前ガイダンス」の記録を確認し、試用期間中の契約解除の可能性について本人が理解しているかチェックする

社労士の視点:
よくあるミスは、雇用契約書には試用期間の記載があるものの、本人への説明が不十分で「正社員としてずっと働けると思っていた」とトラブルになるケースです。特に特定技能は「フルタイムの直接雇用」が前提のため、試用期間終了での契約解除は、本人にとって在留資格を失う重大事態であることを認識しておく必要があります。

Step2:パフォーマンス不足を評価し指導記録を残す

【結論】このステップでは、能力不足や勤務態度不良が見られる場合、具体的かつ客観的な指導を行い、その記録を書面で残します。

日本の労働法では、解雇(本採用拒否)には「客観的合理性」と「社会的相当性」が求められます。特定技能外国人の場合、「日本語能力不足によるコミュニケーションエラー」を「業務能力不足」と混同して評価してしまうケースが散見されます。

  • 業務上のミスや指導内容を「いつ・誰が・どのような状況で」行ったか記録する
  • 単なる口頭注意だけでなく、改善策を本人と一緒に考え、実行期間を設ける
  • 日本語レベルの問題であれば、業務指示の方法(やさしい日本語、翻訳ツールの活用など)を工夫した形跡を残す

社労士の視点:
「仕事ができない」と判断する前に、「指示が伝わっていないだけ」ではないかを疑ってください。会社側が適切な指導や配慮を行わずに解雇した場合、不当解雇と判断されるリスクが高まります。一方で、遅刻や無断欠勤などの勤怠不良については、日本人同様に厳格に記録を残すことが重要です。

Step3:解雇の法的有効性を判定する

【結論】このステップでは、指導を尽くしても改善が見られない場合に、法的に解雇(本採用拒否)が可能かどうかを最終判断します。

試用期間終了時の本採用拒否は、法的には「解雇」の一種です。したがって、30日前の解雇予告(または解雇予告手当の支払い)が必要です。さらに、特定技能特有のリスクとして、不当な解雇と認定された場合、企業は「出入国管理法令違反」として、今後の外国人受入れができなくなる可能性があります。

  • 就業規則の「解雇事由」または「試用期間の取消事由」に該当するか確認する
  • 他の日本人社員と比較して、処分が不当に重くないか(差別的取扱いの禁止)を検討する
  • 解雇予告通知書を作成し、本人に手交する準備をする(母国語訳を添えることが望ましい)

社労士の視点:
解雇事由が「会社の経営難」などの会社都合である場合と、「本人の能力不足」などの自己都合(または普通解雇)である場合で、後の手続きが異なります。特定技能の場合、会社都合での解雇は、特定技能外国人の「非自発的離職」となり、企業に重い転職支援義務が課されます。

Step4:登録支援機関と連携し入管へ届け出る

【結論】このステップでは、解雇・退職が確定した後、速やかに入管(出入国在留管理庁)への届出を行います。

特定技能所属機関(受入れ企業)には、雇用契約の終了について入管へ届け出る義務があります。これを怠ると罰則の対象となります。

  • 登録支援機関に連絡し、支援委託契約の終了タイミングや対応を協議する
  • 「特定技能雇用契約の終了に関する届出」を、事由発生から14日以内に入管へ提出する
  • 受入れ困難となった場合は「受入れ困難に係る届出」も併せて行う必要があるか確認する

社労士の視点:
自社で支援を行っている場合は自社で、登録支援機関に委託している場合は支援機関を通じて手続きを行います。特に「受入れ困難に係る届出」は、解雇など会社側の事情で雇用継続ができなくなった場合に重要です。ここを曖昧にすると、後の行政調査で指摘を受ける可能性があります。

Step5:離職後の転職支援義務を履行する

【結論】このステップでは、会社都合(推奨退職や解雇含む)で契約終了する場合に必須となる「転職支援」を行います。

ここが特定技能制度の最も重要なポイントの一つです。特定技能外国人が非自発的に離職する場合、受入れ企業は「関連機関と連携して、次の受入れ先を探すための支援」を行わなければなりません。これを怠ると、受入れ体制の不備とみなされ、欠格事由に該当する恐れがあります。

  • ハローワークへの同行や求人情報の提供を行う
  • 推薦状の作成や、有給休暇の消化による転職活動期間の確保を行う
  • 登録支援機関や職業紹介事業者と連携し、次の就職先が見つかるようサポートする
  • 帰国を希望する場合は、帰国費用の負担や手続きの支援が必要なケースもあるため確認する

社労士の視点:
「解雇して終わり」ではありません。特定技能制度では、外国人が路頭に迷わないよう企業が責任を持つことが求められています。一方で、本人に重大な責め(犯罪行為など)がある懲戒解雇の場合はこの限りではありませんが、能力不足による解雇の場合は、転職支援を行うのが実務上の安全策です。

まとめ

特定技能外国人の試用期間と解雇は、労基法上の「解雇規制」と、入管法上の「受入れ責任」の二重のハードルを越える必要があります。特に、離職後の転職支援義務は日本人社員にはない特有のルールであり、対応を誤ると企業全体の外国人雇用に影響を及ぼします。

特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

監修者プロフィール

本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。

日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。

  • 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
  • キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
  • HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
  • 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
  • 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
  • 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
  • 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績

制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。

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