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外国人雇用トラブル回避!特定技能受入れ企業の5要件と注意点【社労士が徹底解説】

2025.12.23 外国人雇用

人手不足解消の切り札として「特定技能」制度を活用する企業が急増していますが、同時に厳格化される審査や監査への対応に苦慮するケースも増えています。「特定技能外国人を採用したいが、自社が要件を満たしているか不安」「手続きが複雑で何から手を付ければいいか分からない」といった悩みを抱えていませんか?

特定技能外国人の受入れには、入管法に基づいた詳細な基準をクリアする必要があります。この記事では、専門家の視点から「特定技能受入れ要件」を5つのポイントに整理し、審査で躓きやすい注意点やトラブル回避の実務を分かりやすく解説します。

特定技能制度の基本:企業が知るべきポイント

Q1. 特定技能の受入れ企業になるための基本条件とは?

特定技能受入れ要件を理解する第一歩として、まずは制度の全体像と企業の責任範囲を把握しましょう。特定技能制度は、国内で人材確保が困難な12の産業分野(介護、建設、製造業など)において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れるための在留資格です。

受入れ機関(企業)は、単に外国人を雇用するだけでなく、職業生活から日常生活に至るまでの広範な支援を行う責任を負います。入管法等の法令遵守はもちろん、過去に失踪者を出していないことや、日本人と同等以上の待遇を確保することが求められます。これらは「特定技能所属機関」として適合しているかどうかの審査基準となり、一つでも欠ければ許可は下りません。

【要件1】受入れ企業が満たすべき法的義務と申請時の落とし穴

Q2. 法令遵守と欠格事由:過去の違反が命取りになる理由とは?

特定技能受入れ要件の中で最も基本的かつ重要なのが、労働社会保険諸法令の遵守と欠格事由への非該当です。受入れ企業は、労働基準法、労働安全衛生法、雇用保険法、厚生年金保険法などの法令を遵守している必要があり、過去1年以内に非自発的離職者(会社都合の解雇など)を出していないことも求められます。

特に注意が必要なのが「欠格事由」です。過去5年以内に出入国・労働関係法令違反で罰金刑以上を受けている場合や、技能実習法に基づく認定取消しを受けている場合は、受入れ機関になることができません。また、役員の中に欠格事由に該当する者がいる場合も同様です。「知らなかった」では済まされないため、申請前には必ず直近の労務管理状況や役員の経歴を精査し、社会保険料や税金の未納がないかも確認してください。

【要件2】支援体制の構築と適切な運用:よくある失敗事例と対策

Q3. 自社支援か委託か?支援責任者の選任基準とリスクとは?

特定技能受入れ要件には、外国人が安定的かつ円滑に活動できるよう、適切な支援体制を構築することが含まれます。企業は、支援責任者および支援担当者を選任し、以下の基準を満たす必要があります。

  • 支援責任者等が、中立的な立場(外国人を監督する立場でないこと)であること
  • 過去2年間に中長期在留者の生活相談等の業務に従事した経験があること
  • 支援責任者等が、欠格事由に該当しないこと

自社でこれらの要件を満たすのが難しい場合は、「登録支援機関」に支援計画の全部を委託することで、要件を満たしているとみなされます。失敗事例として多いのが、名ばかりの支援責任者を置き、実質的なサポートができていないケースです。これは監査での指摘事項となり、最悪の場合受入れ停止処分を受ける可能性があるため、リソース不足の企業は迷わず外部委託を検討すべきでしょう。

【要件3】雇用条件・労働環境の適正化:法令違反を避けるための注意点

Q4. 労働時間と有給休暇:日本人社員との格差は許されない?

特定技能受入れ要件においては、外国人であることを理由とした不当な差別的取り扱いが固く禁じられています。雇用契約における所定労働時間、休憩、休日は、労働基準法を遵守し、かつ同種の業務に従事する日本人従業員と同等でなければなりません。

特にトラブルになりやすいのが有給休暇の扱いです。特定技能外国人が一時帰国を希望した場合、企業は必要な有給休暇を取得させるよう配慮する義務があります。また、割増賃金の計算ミスや、36協定を超えた残業も頻出する違反項目です。雇用契約書の内容が適正であっても、実態が伴っていなければ虚偽の届出とみなされるため、勤怠管理システムの整備など、透明性のある労務管理が不可欠です。

【要件4】報酬要件と日本人と同等以上の賃金設定における誤解

Q5. 「日本人と同等以上」の具体的定義と証明方法とは?

特定技能受入れ要件の核心部分である「報酬額」については、「日本人と同等以上」であることが絶対条件です。これは、外国人を安価な労働力として扱うことを防ぐための規定であり、基本給だけでなく、賞与や手当を含めた待遇全体で判断されます。

具体的には、社内に同等の業務・責任・経験を持つ日本人従業員がいる場合、その者の報酬額と比較して下回らないように設定します。比較対象となる日本人がいない場合は、賃金規定や近隣の同業他社の水準を参考にし、合理的な説明ができるように準備が必要です。「最低賃金をクリアしていれば良い」という誤解は禁物で、技能レベルや職務内容に見合った適正な賃金設定が求められます。

【要件5】特定技能外国人の生活支援計画:実効性のあるサポートとトラブル防止

Q6. 義務的支援10項目の落とし穴:住居確保から定期面談まで

特定技能受入れ要件を満たすためには、法律で定められた「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、以下の10項目の義務的支援を確実に実施しなければなりません。

  • 事前ガイダンス(労働条件等の説明)
  • 出入国時の送迎
  • 住居確保・生活に必要な契約支援
  • 生活オリエンテーション(日本のルール等の説明)
  • 公的手続等への同行
  • 日本語学習の機会の提供
  • 相談・苦情への対応
  • 日本人との交流促進
  • 転職支援(人員整理等の場合)
  • 定期的な面談・行政機関への通報

特に住居確保については、居室の広さ(一人当たり7.5㎡以上)などの基準があり、シェアハウス等の場合は注意が必要です。また、3ヶ月に1回の定期面談は実施するだけでなく、記録を作成して入管へ報告する義務があります。これらの支援が形式的になり、実態が伴っていないと判断されれば、指導や処分の対象となります。

特定技能雇用契約で失敗しないための最終チェックリスト

Q7. 契約締結前に確認すべき重要項目まとめ

特定技能受入れ要件をクリアし、円滑に雇用契約を結ぶために、申請前に以下の項目を最終チェックしましょう。不備があれば審査期間が長引くだけでなく、不許可の原因となります。

  • 雇用条件書(37条書面)が母国語で作成され、本人に交付・説明されているか
  • 強制貯金や保証金の徴収など、不当な契約が含まれていないか
  • 報酬額が明確に記載され、日本人と同等以上の水準になっているか
  • 社会保険・労働保険の加入手続きが漏れなく行われているか
  • 支援計画書の内容が具体的で、実施可能な体制になっているか

雇用契約書と実態の不一致は最大のトラブル要因です。契約内容は必ず本人と丁寧に読み合わせを行い、合意を得た上で署名をもらうように徹底してください。

受入れ後も安心!コンプライアンス維持とトラブル対応のポイント

Q8. 定期届出と随時届出:期限遵守が信頼を守る鍵とは?

特定技能受入れ要件は、許可が下りて終わりではありません。受入れ後も継続的に基準を満たしていることを証明するため、四半期ごと(※法改正により変更の可能性あり)の「定期届出」が義務付けられています。

定期届出では、受入れ状況、支援実施状況、活動状況などを報告します。また、雇用契約内容の変更や支援計画の変更があった場合は、その都度「随時届出」が必要です。これらの届出を怠ったり、虚偽の報告をしたりすると、特定技能外国人の受入れが認められなくなるだけでなく、企業名が公表されるリスクもあります。コンプライアンス維持は企業の信頼に直結するため、期限管理を徹底しましょう。

Q9. トラブル発生時の対応:初期対応で明暗が分かれる?

特定技能受入れ要件を遵守していても、失踪や労使紛争などのトラブルが発生する可能性はゼロではありません。万が一トラブルが起きた際は、迅速な対応と関係機関への通報・相談が不可欠です。

例えば、特定技能外国人が行方不明になった場合は、直ちに入管への届出が必要です。また、業務上の怪我や病気、メンタルヘルスの不調などには、労災保険の適用や医療機関への同行など、日本人社員と同様のケアが求められます。「言葉が通じないから」と放置せず、通訳を介して誠実に向き合うことが、問題の拡大を防ぎ、安定した雇用継続につながります。

まとめ

特定技能外国人の雇用は、人手不足に悩む企業にとって大きなチャンスですが、その前提として厳しい特定技能受入れ要件のクリアが求められます。5つの要件(受入れ機関の基準、契約基準、支援体制、報酬、支援計画)を正しく理解し、法令に基づいた適正な運用を行うことが、トラブルのない安定した雇用の第一歩です。

外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。

これから特定技能の受入れを検討されている企業様は、本記事のチェックポイントを参考に、社内の受入れ体制を今一度見直してみてください。特定技能受入れ要件を確実に満たすことで、優秀な外国人材と共に企業の成長を目指しましょう。

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