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中小企業の離職率を下げる!人材定着を叶える5つの秘訣と労務戦略

2025.11.26 人事労務管理

Q1. なぜ中小企業ばかり、採用してもすぐに人が辞めてしまうのでしょうか?

「せっかく採用したのに、3ヶ月で辞めてしまった…」。そんなため息をつく経営者の方からの相談を、私はこれまでに数え切れないほど受けてきました。実は、中小企業で早期離職が起きる原因の多くは、「入社前のイメージ」と「入社後の現実」のギャップ、いわゆる「リアリティ・ショック」にあります。

大企業と違い、中小企業では一人の社員が背負う業務範囲が広く、教育体制も手探りなケースが少なくありません。ある製造業の会社では、「アットホームな職場」と求人に書いていましたが、実際は「見て覚えろ」という職人気質が強く、若手が孤立していました。このように、求職者が求めている「安心感」や「成長の実感」を提供できていないことが、根本的な原因であることが多いのです。

Q2. 離職率が高いままだと、具体的にどのような経営リスクがありますか?

離職率の高さは、単に「人がいない」という問題だけでは済みません。見えないコストが経営を圧迫し続けます。例えば、年収300万円の社員が1人辞めた場合、採用コストや教育コスト、周囲の生産性低下を含めると、その損失は約150万〜200万円にも上ると言われています。

私が担当したあるIT企業では、キーマンの退職が連鎖的な離職を呼び、進行中のプロジェクトが頓挫、数千万円の損失を出した事例もありました。さらに恐ろしいのは、「あそこはすぐ人が辞める」という噂が広まり、採用そのものが困難になる「負のスパイラル」に陥ることです。離職率は、会社の健康状態を示すバロメーターなのです。

Q3. 人が定着する「良い会社」には、どのような共通点がありますか?

定着率が高い会社に共通しているのは、決して「給料がずば抜けて高い」わけではありません。最大の共通点は、「社員が自分の居場所を感じられること」、つまり心理的安全性が確保されている点です。

具体的には、「失敗しても頭ごなしに怒られない」「自分の意見を聞いてもらえる」「社長や上司が自分の名前を呼んで挨拶してくれる」といった、人間関係の基礎ができている職場です。実際に、離職率を劇的に改善させたある運送会社では、毎朝社長がドライバー一人ひとりと握手をして「気をつけてな」と声をかける習慣を始めただけでした。これだけで、社員は「大切にされている」と感じ、定着率が向上したのです。

Q4. コストをかけずに人材定着率を上げる「秘訣」はありますか?

はい、あります。それは「コミュニケーションの質」を変えることです。多くの経営者は「飲み会」や「イベント」を企画しがちですが、今の若手社員が求めているのは、もっと日常的な「承認」です。

例えば、「1日1回、必ず部下の良いところを具体的に褒める」や「週に10分だけ、業務以外の雑談をする1on1ミーティングを行う」といった施策です。これらにお金はかかりません。必要なのは、上司や経営者が「社員に関心を持つ」という意識変革だけです。実際、サンクスカード(感謝のメッセージを送り合う仕組み)を手作りで導入し、社内の雰囲気が一変した飲食店の事例もあります。

Q5. 社員のモチベーションを上げる評価制度は、どう作ればいいですか?

中小企業において、複雑で精緻な評価制度はかえって逆効果になることがあります。運用が面倒になり、形骸化してしまうからです。大切なのは、「何(What)」をしたかという成果だけでなく、「どのように(How)」取り組んだかというプロセスや姿勢を評価することです。

私が推奨しているのは、評価基準をシンプルに3つ程度に絞り、それを社員と共有することです。あるサービス業の会社では、「売上」だけでなく、「お客様からの『ありがとう』の数」を評価項目に加えました。これにより、数字のプレッシャーに疲弊していた社員たちが、「お客様のために」という本来のやりがいを取り戻し、結果として業績も向上しました。納得感こそが、モチベーションの源泉です。

Q6. 残業を減らしてワークライフバランスを整えれば、人は辞めませんか?

実は、「残業がない=良い会社」とは限りません。「定時で帰れるけれど、仕事がつまらない」「成長している実感がない」という理由で辞めていく若手社員は意外に多いのです。これを「ゆるブラック」と呼ぶこともあります。

もちろん長時間労働は是正すべきですが、単に時間を短くするだけではなく、その分「密度の高い仕事」ができる環境を整える必要があります。例えば、ITツールを導入して単純作業を減らし、クリエイティブな業務に時間を割けるようにするなど、「働きがい」と「働きやすさ」の両輪を回すことが重要です。社員は「楽な仕事」がしたいのではなく、「意味のある仕事」がしたいのです。

Q7. 福利厚生は大企業並みに充実させないとダメでしょうか?

中小企業が大企業と同じ土俵で福利厚生を競う必要はありません。むしろ、中小企業ならではの「ユニークさ」や「小回りの利く制度」の方が、社員の心に響くことがあります。

例えば、「親孝行手当」として年に1回実家に帰る費用を補助したり、「バースデー休暇」を導入したりといった、独自の制度が効果的です。ある美容室では、スタッフの美容代を会社が負担する制度を作り、大変好評でした。金額の多寡ではなく、「会社が社員の生活や家族を気にかけてくれている」というメッセージが伝わるかどうかが重要なのです。

Q8. 優秀な若手が育つ前に辞めてしまうのを防ぐには?

若手社員が早期に離職する大きな理由は、「この会社にいても将来が見えない」というキャリアへの不安です。これを解消するには、入社直後から「3年後、5年後にどうなってほしいか」というロードマップを提示し続けることが不可欠です。

メンター制度を導入し、年齢の近い先輩社員が相談役になるのも有効です。ただし、形式的に任命するだけでは意味がありません。メンター側の評価にも「後輩育成」を組み込み、会社全体で「人を育てる文化」を作ることが大切です。「君には期待している」と言葉で伝え続ける泥臭さが、若手の心を繋ぎ止めます。

Q9. 最後に、経営者が今すぐ変えるべき意識は何でしょうか?

最も重要なのは、社員を「コスト」ではなく「投資対象(資本)」と捉え直すことです。「給料を払ってやっている」という意識は、言葉の端々や態度に必ず表れ、社員に敏感に伝わります。

「社員は会社を一緒に育ててくれるパートナーである」というマインドセットに切り替えてください。そして、完璧な制度を作ろうと悩む前に、まずは明日、社員全員に笑顔で「おはよう」と声をかけることから始めてみてください。組織風土の変革は、経営者の小さな行動の変化からしか始まりません。人が定着する会社への第一歩は、あなたが踏み出すのです。

まとめ

中小企業の人材定着において魔法のような特効薬はありませんが、日々のコミュニケーションや評価への納得感、そして経営者の「社員を大切にする姿勢」が積み重なることで、離職率は確実に下がります。今回ご紹介した5つの視点(人間関係、評価、働きがい、独自制度、将来ビジョン)を参考に、まずは自社でできる小さな一歩から始めてみてください。社員の笑顔が増えれば、会社の未来は必ず明るくなります。

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