債務整理という言葉が頭をよぎったとき、真っ先に気になるのは「債務整理をしたら、住宅ローンはどうなるのか」ではないでしょうか。
今の住宅ローン契約は続けられるのか。家は取られてしまうのか。
将来もう二度と住宅ローンを組めなくなるのか。家族に影響は及ぶのか。影響の全体像が分からないから、決められない。そんな状態の方は少なくありません。
じつは、「債務整理をすると家を失う」「もう一生住宅ローンは組めない」というのは、どちらも恐怖による一括りの誤解です。
影響の出方は「どの手続きを選ぶか」と「住宅ローンを対象に入れるか」でまったく変わり、家を残しながら借金だけを整理する方法も複数あります。
ただしどの道にも「期限」と「条件」があり、迷っている時間が長いほど、選べる道は減っていきます。
当法人は社会保険労務士法人として年間1,000件以上の障害年金のご相談をお受けするなかで、働き盛りで倒れた大黒柱の方、住宅ローンと借金の板挟みになったご家族のお話を数多く伺ってきました。
この記事では、法律の条文と公的機関の情報を根拠に、債務整理と住宅ローンの関係を中立の立場で整理します。
債務整理すると住宅ローンはどうなる?影響の全体マップ【結論】
最初に全体像からお伝えします。「債務整理したらどうなるか」への影響は、次の4つの軸に分けると一気に見通しが良くなります。
影響は4つの軸で考える
・軸①: 今の住宅ローン契約への影響
任意整理で対象から外せば契約はそのまま続き、銀行への通知も行きません(詳細は次章)
・軸②: 家への影響
個人再生には家を残すための住宅資金特別条項があります。自己破産のみ原則処分
・軸③: 将来の住宅ローンへの影響
信用情報の登録期間中(5〜7年程度)は新規の審査に通りません。ただし期限付きです
・軸④: 家族への影響
信用情報は個人単位。配偶者名義のローンやお子さんには原則影響しません(ペアローンは例外・後述)
つまり、「債務整理=家を失う・一生組めない・家族を巻き込む」のどれも、正確ではありません。
手続き別の早見表。家の行方と信用情報の年数
影響の大きさは手続きの選び方で変わります。全体を早見表にまとめました。

| 手続き | 家の行方 | 信用情報(いわゆるブラックリスト)の目安 |
| 任意整理 | 住宅ローンを対象から外せばそのまま住める | 整理した借金の完済から5年程度 |
| 個人再生 (住宅資金特別条項) |
条件を満たせば残せる可能性(住宅ローンは払い続ける) | 5〜7年程度(官報情報は7年) |
| 自己破産 | 持ち家は原則処分(競売・任意売却) | 5〜7年程度(官報情報は7年) |
※信用情報の年数は各信用情報機関の公式情報に基づく目安です(※2026年8月時点)。数え方の詳細は後述します。
債務整理では、住宅ローンを「対象に入れるかどうか」で影響は激変する
早見表の背景にある大原則はシンプルです。
住宅ローンを債務整理の対象に入れなければ(または特別扱いすれば)、今の契約と家への影響はほぼ避けられる。影響が全面に及ぶのは、住宅ローンごと整理する自己破産を選んだ場合が中心です。
ご相談の場でも、「債務整理をしたら家を取られると思って、何年も自転車操業を続けてきた」という方に本当によくお会いします。
正しい知識に出会えなかったばかりに、利息と遅延損害金で借金を育て、家計の傷を深くしてしまうのです。逆に、住宅ローン自体の滞納が進むと、後述する「時間切れ」が現実になります。
この記事を読んでいる「今」が、選択肢がいちばん多いタイミングになる方が多いようです。
今の住宅ローンへの影響|任意整理なら対象から外して契約を守れる
まず軸①、いちばん多くの方が心配される「今の住宅ローン契約」への影響です。結論から言えば、任意整理の「整理する借金を選べる」という特徴を使えば、今の住宅ローン契約に影響を与えずに他の借金だけを整理できます。
カードローンやリボ払いが膨らんでいるものの、住宅ローン自体は何とか払えている。という方の第一候補です。
整理する借金を選べるのが任意整理の最大の特徴
任意整理は、弁護士・司法書士が債権者と個別に交渉し、将来利息のカットや分割条件の見直しを求める手続きです。裁判所を通さない私的な和解なので、「どの借金を整理し、どれを外すか」を選べます。
住宅ローンを対象から外せば、住宅ローン契約はこれまでどおり継続し、家に影響は及びません。カードローン・リボ払い・消費者金融の借入だけを整理して利息を止め、住宅ローンと生活を守る
これが最も傷の浅い解決パターンです。
なお、依頼すると整理対象の債権者へ受任通知が送られ、貸金業法の規定により取り立てと返済が一時停止します。住宅ローンは対象外なので通知は行かず、銀行に知られる心配も基本的にありません。
この方法で解決できる条件は、「利息が止まれば返せる」範囲かどうか
任意整理で減るのは主に将来利息で、元本は原則減りません。
そのため、この方法が機能するのは「住宅ローン以外の借金が、利息さえ止まれば3〜5年の分割で完済できる範囲」にある場合です。
目安として、住宅ローン以外の借金の総額が年収を大きく超えているような状況では、任意整理だけでは支えきれないことが多く、次の個人再生を検討する段階といえます。
なお、「整理ではなく低金利のローンにまとめて金利を下げる」という借金一本化の道もありますが、借金の総額自体は減らないため、返済能力が既に限界の方の解決策にはなりません。
注意: 住宅ローンそのものの減額はできない
任意整理はあくまで「住宅ローン以外」を軽くする方法です。
住宅ローン自体の返済が既に苦しい場合は、この方法では解決しません。
その場合は、後述する金融機関への返済相談(条件変更)や、個人再生の検討など、弁護士や司法書士への相談がおすすめです。
家への影響|個人再生の住宅資金特別条項なら残せる可能性がある
次に軸②「家への影響」です。住宅ローン以外の借金が大きく膨らみ、任意整理では支えきれない場合でも、家を失うと決まったわけではありません。
個人再生という裁判所を通す手続きの中に、「住宅資金特別条項」(通称・住宅ローン特則)という、家を守るための特別な仕組みが法律で用意されています。

住宅ローン特則の仕組みは、住宅ローンはそのまま払い、他の借金を大幅に減額
個人再生は、民事再生法に基づいて裁判所に申し立て、借金をおおむね5分の1程度(最低100万円・後述の清算価値等による)まで減額し、原則3年(最長5年)で分割返済する手続きです。
そして住宅資金特別条項を使うと、住宅ローンだけは特別扱いでこれまでどおり(または条件を変更して)払い続け、それ以外の借金だけを大幅減額できます(民事再生法196条以下)。
「住宅ローンを外して他を整理する」という点は方法①と同じ発想ですが、他の借金の元本そのものを大きく減らせる点が決定的に違います。例えば住宅ローン以外に500万円の借金がある場合、任意整理では500万円(利息カットのみ)を返しますが、個人再生なら100万円台まで減る可能性があります(個別の事情によりますので弁護士や司法書士への相談が推奨されます)。
使える条件は、「自宅」と「住宅ローン」の要件
住宅資金特別条項には法律上の要件があります。主なものを挙げます(民事再生法196条・198条)。
・本人が所有し、自分の居住のために使っている建物であること(床面積の2分の1以上が居住用)
・住宅の建設・購入等のための分割払いの借入(住宅ローン)で、その債権を担保する抵当権が住宅に設定されていること
・住宅に住宅ローン以外の担保権が付いていないこと(ここが落とし穴になります。後述)
・このほか、継続的な収入の見込みなど個人再生自体の要件を満たすこと
投資用物件や、主に事業用に使っている建物は対象外です。要件の当てはめは個別性が高いため、必ず弁護士に確認してください。
返済方法の4類型は、滞納があっても組み直せる場合がある
住宅ローンの払い方も、状況に応じて4つの型が用意されています(民事再生法199条)。
・そのまま型: 約定どおり払い続ける
・期限の利益回復型: 滞納分を再生計画の期間内で分割して追いつき、以後は約定どおり
・リスケジュール型: 最終返済期限を延長する(約定の期限から10年以内・完済時年齢70歳以下の範囲)
・同意型: 債権者(銀行・保証会社)の同意があれば、より柔軟な変更も可能
つまり、多少の滞納が始まっていても、期限の利益回復型などで立て直せる余地が制度上あるのです。
注意: 清算価値保障、家の「純資産」が返済額を押し上げる
ここは競合の解説でもほとんど触れられない、しかし実務では極めて重要なポイントです。個人再生には「清算価値保障」という原則があり、自己破産した場合に債権者に配当されるはずの財産価値(清算価値)以上は返さなければならないと定められています。
持ち家の場合、「家の評価額 − 住宅ローン残高」がプラス(=純資産がある)なら、その分が清算価値に加わり、再生後の返済額が「5分の1」より増えることがあります。
例えば評価額2,000万円・ローン残1,600万円なら、差額400万円が返済額の下限に影響します。「家を残せる代わりに、家の含み益の分は返す」これが住宅資金特別条項の代償の正体です。
ローン残高が評価額を上回る(いわゆるオーバーローン)状態なら、この上乗せは基本的に生じません。家の評価は手続きの中で査定等により確認されます。
滞納が進んでいる場合の影響|代位弁済から6か月で「時間切れ」になる
ここまでの2つの方法は、住宅ローンの返済が続けられていることが前提でした。では「もう滞納してしまった。保証会社から通知が来た」という段階ではどうなるのか
ここには法律で明確に区切られた期限があります。この章が、本記事でいちばんお伝えしたい内容です。

滞納から競売までの時間軸
住宅ローンを滞納すると、概ね次の順で進みます。
・滞納1〜2か月: 銀行から督促・電話
・滞納3〜6か月程度: 期限の利益を喪失(分割で払う権利を失い、残額の一括請求へ)
・その後: 保証会社が銀行へ代位弁済(肩代わり)し、債権者が保証会社に交代
・さらに放置: 保証会社が抵当権を実行し、競売の手続きへ。競売で落札されれば退去となります
「督促を無視していたら、いつの間にか競売の通知が来ていた」これが最悪の経過です。しかし、代位弁済まで進んでいても、選択肢はあります。
巻き戻し、代位弁済から6か月以内の申立てなら特別条項を使える(198条2項)
民事再生法198条2項は、保証会社が代位弁済をした場合でも、その全部を履行した日から6か月を経過する日までに個人再生(再生手続開始)の申立てをすれば、住宅資金特別条項を定められると規定しています。代位弁済を「なかったこと」にして住宅ローンを元の分割払いに戻す実務で「巻き戻し」と呼ばれる仕組みです。
逆に言えば、代位弁済から6か月を過ぎると、この道は法律上閉ざされます。競売を待つか、任意売却で手放すかの選択が中心になってしまう。
保証会社からの通知を手にしてこの記事を読んでいる方は、迷っている時間はありません。今すぐ弁護士に相談してください。依頼先の選び方は債務整理おすすめランキングの記事にまとめていますが、この段階の方は「個人再生・住宅資金特別条項の実績がある弁護士」を最優先の基準にされることがおすすめです。
不動産担保ローンでの穴埋めが「特則を使えない家」にしてしまう
もう一つ、先回りの注意です。前述のとおり、住宅資金特別条項は住宅に住宅ローン以外の担保権が付いていると使えません(198条1項ただし書)。
返済に窮した方がやりがちなのが、「家を担保に不動産担保ローンやおまとめローンを借りて穴埋めする」ことです。これをやってしまうと、家に第二の抵当権が付き、後から個人再生で家を守る道が法律上使えなくなります。一時しのぎの借入が、最後の砦を自分で壊してしまう。債務整理を少しでも視野に入れているなら、家を担保に入れる借入は絶対に避けた方が良いでしょう。
自己破産を選んだ場合の影響|家は原則処分。それでも生活は再建できる
収入が途絶えた、借金が大きすぎて再生計画の返済も見込めない、そうした場合の最終手段が自己破産です。家については、正直にお伝えします。
持ち家があると原則処分の対象になる
自己破産は、破産法に基づき裁判所を通じて返済義務の免除(免責)を求める手続きです。生活に必要な最低限の財産は手元に残せますが、持ち家のような大きな資産は処分の対象となり、管財事件として競売または任意売却で換価され、債権者への配当に充てられます。住宅資金特別条項のような「家を残す特例」は、自己破産にはありません。
だからこそ、家を残したい方は、収入があるうちに方法①〜③を検討することが重要なのです。
住宅ローン自体が払えない場合の道。公式の返済相談から任意売却まで
「他の借金ではなく、住宅ローンそのものが苦しい」という方は、債務整理の前にまず借入先の金融機関への返済相談(条件変更)という公式の道があります。
例えば住宅金融支援機構(フラット35)は、収入減少などの要件を満たす場合の返済方法変更メニューを公式に用意しており、返済期間の延長(最長15年)や、失業・収入2割以上減少時の元金据置(利息のみ支払い・最長3年)が明文化されています。民間の銀行にも同様の相談窓口があります。
それでも維持が難しい場合は、競売より高値・柔軟な条件で売却できる可能性のある任意売却や、売却後も賃貸として住み続けるリースバックという選択肢があります。
ただしいずれも不動産取引として業者の質に差が大きい領域です。「必ず住み続けられます」等の勧誘をうのみにせず、債務整理と併せて弁護士に相談したうえで判断してください。
「家を手放す=終わり」ではない
最後に、これは慰めではなく実務からの実感としてお伝えします。家を手放した方の多くが、後に「返済に追われて家族がぎすぎすしていた頃より、賃貸でも今のほうが穏やかだ」とおっしゃいます。家は家族の生活を守るための器であって、器を守るために家族の生活が壊れては本末転倒です。維持できる道を全て検討し、それでも難しければ、住み替えて生活を再建する。その判断もまた、家族を守る立派な選択です。
牧村 和磨
将来への影響|債務整理後、住宅ローンは何年で組める?審査までの準備
続いて軸③「将来の住宅ローンへの影響」です。
債務整理を検討している方にとっては「この決断が将来をどこまで縛るのか」の確認であり、既に終えた方にとっては「いつから・どうすれば組めるのか」の答えになります。
結論、将来マイホームをあきらめる必要はありませんが、年数の数え方と準備の順序を間違えると遠回りになります。

任意整理の目安は、完済から5年程度、個人再生・自己破産は、5〜7年
債務整理をすると信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に事故情報が登録され、消えるまで住宅ローン審査はまず通りません。登録期間の構造は次のとおりです(各機関公式情報・※2026年8月時点)。
・任意整理: 3機関とも「契約終了(完済)から5年」構造。整理した日ではなく、和解した借金を完済してから5年です
・個人再生・自己破産: 上記に加え、KSC(銀行系の信用情報機関)には官報情報が「決定日から7年を超えない期間」登録されます。住宅ローンは銀行と保証会社がKSCを照会するため、実質的に7年が壁になります(任意整理は官報に載りません)
さらに、金融機関やそのグループ内には取引記録が社内情報として残るため、債務整理の相手方となった銀行・保証会社の系列は年数が経っても避けるのが無難です。
申し込む前に、信用情報の開示で「消えたこと」を確認する
年数はあくまで目安です。実際に動く前に、必ず3機関へ本人開示請求をして、事故情報が消えたことを確認してください。消える前のフライング申込は、否決の記録(申込情報・6か月)を残すだけで、次の審査にも響きます。「完済から5年経つ前に銀行に相談だけでも」というのも、照会が走る申込み段階まで進めば同じことです。順序は必ず「開示で確認→申込み」です。
準備の仕方、頭金・家計の黒字実績・他の借入と申込みを作らない
事故情報が消えた後の信用情報は、利用実績のない「真っ白」な状態です。審査ではかえって警戒されることがあるため、次の準備を進めてください。
・頭金を貯める: 待機期間は準備期間です。物件価格の1〜2割の頭金と諸費用分の貯蓄は、返済能力の何よりの証明になります
・家計の黒字実績: 毎月の黒字と貯蓄の履歴そのものが審査の味方です
・他の借入・申込みを作らない: カードローンの新規借入や複数の申込みは避け、クレジットカード1枚の少額利用と確実な支払いで実績を育てます(仕組みはクレジットとはの記事を参照)
・住宅ローンの申込みは1件ずつ。事前審査の同時多発申込みは避けてください

「審査の緩い住宅ローン」は存在しない。
「自己破産後でも組めた銀行を教えてほしい」「審査の緩い住宅ローンはないか」という質問を本当によく見かけます。はっきりお伝えします。事故情報の登録期間中に通る「緩い住宅ローン」は存在しません。
家族への影響|配偶者名義・ペアローン・共有名義はどうなる?
最後に軸④「家族への影響」です。ご家族の名義や共有に関するご質問は非常に多いので、まとめて整理しておきます。
債務整理は個人単位。配偶者名義の住宅ローンには影響しない
信用情報は個人単位で管理されており、夫婦でも共有されません。夫が債務整理をしても、妻名義の住宅ローンや妻のクレジットカードには影響しないのが原則です(逆も同じ)。お子さんの進学・就職・将来のローンにも影響はありません。
配偶者名義で住宅ローンを組む場合の注意
「自分が組めない期間は、配偶者名義で」という選択肢は実際にあり得ます。ただし次の点に注意してください。
・審査は配偶者自身の収入・勤続・信用情報だけで行われます(債務整理をした本人の収入を合算したり、本人が連帯保証人になったりすることは基本的にできません)
・つまり「配偶者単独の返済能力で通る借入額」までしか組めません
・名義はあくまで実態どおりに。本人が実質的に返すのに配偶者名義で借りる「名義貸し」は、金融機関との関係でも夫婦間でもトラブルのもとです
ペアローン・共有名義の家を債務整理する場合のリスク
夫婦でペアローンを組んでいる、家が共有名義という場合は、話が複雑になります。
一方が自己破産すると、その共有持分が処分対象になったり、互いに連帯保証し合う契約では配偶者に保証債務の請求が及んだりします。個人再生の住宅資金特別条項もペアローンでは扱いが難しくなる場合があります(夫婦双方での申立て等、構成に工夫を要します)。
ペアローン・共有名義の方は、必ず初回相談の時点でその旨を弁護士に伝え、家族全体での方針を設計してもらってください。
返せない原因が病気・ケガなら|債務整理の前に確認したい公的支援
最後に、この記事の根っこにある話をさせてください。
住宅ローン世代のご相談で本当に多いのが、うつ病・双極性障害・脳血管疾患などで働き盛りの大黒柱が働けなくなり、収入が崩れて借金が膨らんだというケースです。
この場合、借金の整理だけでは半分しか解決しません。「家を守る」とは、突き詰めれば住宅ローンを払い続けられる収入の柱を立て直すことだからです。

牧村 和磨
障害年金は、住宅ローン返済中でも、信用情報と無関係に受給できる
障害年金は、病気やケガで働くことや日常生活に支障がある場合に受け取れる公的年金で、現役世代の方も対象です。
うつ病などの精神疾患も、脳出血などの身体疾患も対象になり得ます。そして重要なことに、障害年金の審査に信用情報・借金・住宅ローンの有無は一切関係ありません。債務整理中でも、住宅ローンを返済中でも受給できます。
要件を満たせば2か月に1回継続的に支給され、条件により最大5年分さかのぼる遡及請求もあります。住宅ローンという長期の支払いを抱えたご家庭にとって、継続収入の柱が一本立つ意味は極めて大きいはずです。当法人は障害年金のご相談を年間1,000件以上お受けしています。「自分(家族)が対象になるのか分からない」という段階で構いませんので、判断が難しい場合は当法人や最寄りの社会保険労務士へご相談ください。
支出側の公式メニューは、返済期間の延長・元金据置
収入側の柱と併せて、支出側にも公式の軽減メニューがあります。
前述のとおり、住宅金融支援機構には返済期間の延長(最長15年)・失業や収入減少時の元金据置(最長3年)が明文で用意されており、民間銀行にも条件変更の相談窓口があります。
「滞納してから」ではなく「滞納しそうな段階で」専門家に相談するのが、条件変更を引き出す最大のコツです。
生活福祉資金・法テラス
・生活福祉資金貸付制度: 市区町村の社会福祉協議会が窓口の公的貸付制度です
・法テラス(民事法律扶助): 収入等の要件を満たせば、無料法律相談や、債務整理を依頼する際の弁護士・司法書士費用の立替え(分割償還)を受けられます。「相談するお金すらない」段階の受け皿です。詳細は法テラスの公式サイトをご確認ください
手元のお金がない状況での選択肢の全体像はお金がないときの対処法と公的制度の記事に、失業中の方向けの整理は無職でお金がない場合の対処法の記事にまとめています。
【社労士事例】働き盛りで倒れても、公的な収入の柱で家族の生活を守った例
当法人で障害年金のご相談を担当するなかで、住宅ローン世代の大黒柱が収入の柱を取り戻したケースを3つご紹介します(いずれも当法人の受給事例です)。
事例①: うつ病で障害厚生年金2級。役職者として働いていた50代男性・約1,464万円
企業で役職に就き単身赴任中にうつ病を発症し、休職と復職を繰り返した末に退職された方です。「収入もない状態で子どもたちにも苦労をかけてしまう」と思い詰めるなかで障害年金を知り、ご相談いただきました。初診が10年前という難しい案件でしたが証明をたどり、障害厚生年金2級に決定。次回更新まで総額約1,464万円という、ご家族の生活を支える大きな柱になりました。
詳細は当法人ブログ「うつ病で障害厚生年金2級を取得し、次回更新まで約1464万円を受給されたケース」もご覧ください
事例②: 脳出血で障害基礎年金1級。リビングで倒れた夫のために妻が動いた例・約292万円
リビングで倒れている50代のご主人を奥様が発見し、緊急手術で一命を取り留めたものの、重い後遺症で失職されたケースです。「何か手続きできる制度はないか」と奥様が探すなかで障害年金にたどり着き、ご相談いただきました。制度の要件(初診日から1年6か月)を整理しながら準備を進め、障害基礎年金1級に決定、次回更新まで総額約292万円を受給されました。精神疾患だけでなく、脳血管疾患のような突然の病気も障害年金の対象になることを示す例です。
詳細は当法人ブログ「脳出血で障害基礎年金1級を取得し、次回更新まで約292万円を受給されたケース」もご覧ください
事例③: 双極性感情障害で障害厚生年金2級。勤続の長い50代男性・約718万円
勤続年数が長くそれなりの立場で働いていた50代の男性が、不調を「生きていればこんなこともある」と誤魔化しながら働き続け、双極性感情障害の診断を経て退職に至ったケースです。ご家族が変化に気づいていた一方、ご本人は長く我慢を重ねていました。主治医の紹介でご相談いただき、障害厚生年金2級に決定、次回更新まで総額約718万円を受給されました。「頑張れてしまう人ほど相談が遅れる」住宅ローン世代の大黒柱にこそ知ってほしい例です。
詳細は当法人ブログ「双極性感情障害で障害厚生年金2級を取得し、次回更新まで約718万円を受給されたケース」もご覧ください
債務整理と住宅ローンに関するよくある質問
Q. 家族にバレずに債務整理できますか?
A. 任意整理は郵便物の管理次第で知られずに済む場合もありますが、個人再生は家計収支表の作成に家族の収入資料が必要になるなど、隠したまま進めるのは現実的に難しい手続きです。実務では、打ち明けて一緒に相談へ行ったご家庭のほうが再建は早いですよ。伝え方も含めて無料相談で助言を受けられます。Q. 自己破産すると家は必ず失いますか?
A. 自己破産では持ち家は原則として処分の対象です。家を残したいなら、収入があるうちに任意整理(住宅ローンを外す)や個人再生の住宅資金特別条項を検討するのが先です。逆に、住宅ローンの負担そのものが生活を壊しているなら、手放して再建する道が結果的にご家族を守ることもあります。どちらが良いかは弁護士との相談で見極めてくださいね。Q. 完済から5年経つ前に、銀行に住宅ローンの相談へ行ったら不利になりますか?
A. 一般的な情報を聞くだけなら問題ありませんが、事前審査(仮審査)まで進むと信用情報の照会が走り、否決と申込記録が残って逆効果です。順序は「開示で消えたことを確認→準備→申込み」が鉄則ですよ。焦る気持ちは分かりますが、フライングだけは避けてください。Q. 5年経たずに住宅ローンが通った人がいると聞きましたが、本当ですか?
A. 語られる例の多くは、自己資金が極めて厚い・属性が特別に高いなどの限定的なケースか、真偽の確認できない話です。「交渉次第で通る」「緩い銀行がある」という情報を当てにして動くと、否決記録が積み重なって回復がむしろ遅れます。登録期間を正しく待って準備するのが、遠回りに見えて確実な道ですよ。Q. 配偶者名義なら住宅ローンを組めますか?
A. 可能性はあります。信用情報は個人単位なので、債務整理の影響は配偶者には及びません。ただし審査は配偶者自身の収入・勤続だけで判断され、あなたの収入を合算したり連帯保証人になったりは基本的にできません。配偶者単独で無理のない借入額に収まるかが現実的な分かれ目ですね。Q. 住宅ローンだけが苦しい場合も、債務整理すべきですか?
A. その場合の第一歩は債務整理ではなく、借入先の金融機関への返済相談(条件変更)です。返済期間の延長や一時的な元金据置など、公式の軽減メニューが用意されています。ポイントは滞納する前に相談すること。それでも維持が難しいときに、任意売却などの選択肢を弁護士と検討する順序が良いですよ。Q. 債務整理中・住宅ローン返済中でも障害年金はもらえますか?
A. もらえますよ。障害年金の審査で見られるのは初診日・保険料の納付状況・障害の状態だけで、借金・債務整理・住宅ローンの有無は一切関係ありません。病気やケガで働けないことが返済困難の原因なら、収入の柱として真っ先に確認する価値があります。当法人でも住宅ローンを抱えた方のご相談は珍しくありません。まとめ 債務整理と住宅ローンは「期限つきの選択」。
最後に、この記事の要点を整理します。
・影響は4つの軸で整理する今の契約(外せば影響なし)・家(残せる制度あり)・将来(5〜7年の期限付き)・家族(原則影響なし)。「債務整理=家を失う・一生組めない」は誤解
・家を残す方法は3つ①任意整理で住宅ローンを対象から外す ②個人再生の住宅資金特別条項 ③代位弁済から6か月以内の巻き戻し
・住宅資金特別条項には条件がある(居住用・住宅ローン以外の担保がない等)。家を担保にした穴埋め借入は、最後の砦を自分で壊す行為
・個人再生では清算価値保障により、家の純資産の分だけ返済額が増えることがある
・滞納を放置すると、期限の利益喪失→代位弁済→競売へ。巻き戻しの期限は代位弁済から6か月。迷っている時間が選択肢を減らす
・自己破産では持ち家は原則処分。ただし「手放す=終わり」ではなく、生活再建の道はある
・債務整理後の住宅ローンは、任意整理=完済から5年程度、個人再生・自己破産=官報情報の7年が実質の壁。開示確認→頭金・黒字実績→申込みの順序で。「審査の緩い住宅ローン」は存在しない
・配偶者名義への影響はなし。ペアローン・共有名義は最初に弁護士へ申告を
・病気で働けないことが原因なら、障害年金という収入の柱を先に確認。信用情報とは無関係に受給できる
手続きの相談は弁護士・司法書士へ、費用が不安なら法テラスへ。そして、返せなくなった原因が病気やケガにあるなら、障害年金などの、公的支援の確認を忘れないでください。
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牧村からのひとこと
牧村 和磨
この記事の執筆者
![]() 牧村 和磨 (まきむら かずま) |
HR BrEdge社会保険労務士法人 社員 HR BrEdge社会保険労務士法人にて社会保険労務士として勤務。障害年金相談 年間1,000件以上の実績を持つ法人で、お金や生活に関するご相談に幅広く対応している。 「お金に困った方が、借金や債務整理を選ぶ前に、使える公的制度や正しい選択肢を知り、計画的にお金を管理できるよう導く」を信念に、社労士視点でカードローン・消費者金融・債務整理に関する記事を執筆。 【法人情報】HR BrEdge社会保険労務士法人(旧:渡辺事務所) |
免責事項
当法人は社会保険労務士法人であり、個別の債務整理手続きの受任・代理や法律相談はお受けしておりません。本記事は、病気やケガで収入が途絶えた方に障害年金という公的制度を知っていただくことを目的として、その前提となる債務整理・住宅ローンの一般的な仕組みを整理したものです。
債務整理は、ご本人の収入・資産・借入状況・家族構成などによって最適な手続きが大きく異なります。実際の手続きの選択や具体的な法律判断については、必ず弁護士または司法書士にご相談ください。費用面が不安な場合は、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助もご検討ください。
本記事は掲載時点(2026年8月)の法令・各信用情報機関の公表情報等に基づき、正確な情報の提供に努めておりますが、その正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。法令改正や運用の変更、金融機関ごとの取扱いの違いにより、実際の結果が本記事の記載と異なる場合があります。本記事の情報を用いて行われた判断・行為により生じた損害について、当法人は責任を負いかねます。
また、本記事に記載した障害年金の受給事例は当法人の実際の受給事例ですが、受給の可否・等級・金額は個別の事情により異なり、同様の結果をお約束するものではありません。本記事内の外部リンク先の内容についても当法人は責任を負いません。





