「従業員が50人以下だから、社会保険の適用拡大は関係ない」と思っていませんか。
結論から言うと、従業員50人以下の企業は2024年10月の適用拡大の対象外です。 しかし、2027年10月以降は段階的に対象となることが、2025年6月に成立した改正年金法で確定しました。
この記事では、社会保険加入条件における50人以下の企業の現行ルールと、今後の適用拡大スケジュール、そして今から準備すべきことを社労士が詳しく解説します。 500社超の顧問先を持つ当事務所の実務経験をもとに、経営者・人事担当者の皆様が知っておくべき情報を網羅しました。

社会保険加入条件で50人以下の企業に適用される現行ルールとは
まずは現時点での社会保険加入条件について、50人以下の企業がどのような扱いになるのかを確認していきましょう。 制度の基本を押さえることで、今後の法改正への対応もスムーズになります。
社会保険加入条件の50人以下企業における基本的な考え方
社会保険とは、健康保険と厚生年金保険を指します。 これらは従業員の病気やケガ、老後の生活を支える重要な制度です。
社会保険に加入する義務が生じる事業所は「強制適用事業所」と呼ばれます。 株式会社などの法人であれば、従業員が1人でもいれば強制適用事業所となります。 これは従業員が50人以下であっても同様です。
つまり、法人である以上、従業員数に関係なく社会保険への加入義務が発生するという点をまず理解しておく必要があります。 一方、個人事業所の場合は、常時5人以上の従業員を使用し、かつ適用業種に該当する場合に強制適用となります。
社会保険加入条件において50人以下でも加入が必要な従業員の範囲
従業員50人以下の企業であっても、以下に該当する方は社会保険への加入が必要です。

まず、正社員と役員は原則として全員が加入対象となります。 代表取締役であっても、役員報酬が支払われている限り加入義務があります。
次に、パートやアルバイトについては「4分の3基準」で判断します。 具体的には、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、正社員の4分の3以上であれば加入対象です。 例えば、正社員の週所定労働時間が40時間の会社であれば、週30時間以上働くパートは社会保険に加入する必要があります。
契約社員についても同様の基準が適用されます。 雇用形態の名称ではなく、実際の労働時間と労働日数で判断される点に注意してください。
社会保険加入条件で50人以下の企業が対象外となるケース
従業員50人以下の企業において、社会保険の加入義務がないのは、4分の3基準を満たさない短時間労働者です。 例えば、週20時間程度で働くパートタイマーは、現時点では加入対象外となります。

2024年10月からの適用拡大では、従業員51人以上の企業で働く短時間労働者が新たに対象となりました。 しかし、50人以下の企業については、この適用拡大の対象外とされています。
ただし、これはあくまで「現時点」での話です。 後述するように、2027年10月以降は段階的に50人以下の企業も対象に含まれていきます。
2024年10月の適用拡大と社会保険加入条件における50人以下企業の位置づけ
2024年10月に実施された社会保険の適用拡大について、50人以下の企業がどのような影響を受けるのかを整理します。 これまでの制度変遷を理解することで、今後の方向性も見えてきます。
社会保険加入条件の変遷と50人以下企業への影響
パートやアルバイトなど短時間労働者への社会保険適用は、段階的に拡大されてきました。
2016年10月には、従業員501人以上の企業で働く短時間労働者が対象となりました。 その後、2022年10月には101人以上に、2024年10月には51人以上へと拡大されています。
この流れの中で、従業員50人以下の企業は一貫して適用拡大の対象外とされてきました。 中小企業への配慮として、段階的な拡大が行われてきたためです。
しかし、2025年6月に成立した改正年金法により、今後は50人以下の企業も対象となることが正式に決まりました。
社会保険加入条件の判断で50人以下かどうかを確認する際の注意点
自社が50人以下かどうかを判断する際には、「従業員数」のカウント方法に注意が必要です。
ここでいう従業員数とは、会社に在籍する全員の数ではありません。 厚生年金保険の被保険者数、つまり現在社会保険に加入している従業員の数でカウントします。
具体的には、正社員と、4分の3基準を満たすパート・アルバイトの合計人数となります。 4分の3基準を満たさない短時間労働者は、このカウントに含まれません。
また、法人の場合は法人番号が同一のすべての事業所を合算してカウントします。 本社が30人、支店が25人であれば、合計55人となり51人以上に該当します。
「各事業所は50人以下だから大丈夫」と思っていたら、実は51人以上だったというケースもありますので確認が必要です。
社会保険加入条件が50人以下の企業にも適用される時期と段階的スケジュール
2025年6月に成立した改正年金法により、50人以下の企業への適用拡大スケジュールが確定しました。 自社がいつから対象になるのかを把握し、計画的に準備を進めることが重要です。

社会保険加入条件の50人以下企業への適用を定めた2025年改正年金法のポイント
今回の改正では、大きく2つの要件が見直されることになりました。
1つ目は企業規模要件の段階的撤廃です。 現在は「従業員51人以上」とされている要件が、2027年10月から段階的に引き下げられ、最終的には撤廃されます。
2つ目は賃金要件の撤廃です。 現在は「月額賃金8.8万円以上」という要件がありますが、これが廃止される予定です。 最低賃金の上昇により、週20時間働けばほとんどの場合この金額を超えるため、実質的に意味をなさなくなっているためです。
これらの改正により、将来的には週20時間以上働く学生以外のすべての労働者が社会保険に加入することになります。
社会保険加入条件が50人以下の企業に適用される具体的なスケジュール
企業規模要件は以下のスケジュールで段階的に引き下げられます。
2027年10月からは、従業員36人以上の企業が対象となります。 つまり、従業員が36人から50人の企業は、この時点で適用拡大の対象に含まれます。
2029年10月からは、従業員21人以上の企業が対象となります。 従業員21人から35人の企業が新たに加わることになります。
2032年10月からは、従業員11人以上の企業が対象となります。 さらに小規模な企業まで対象が広がります。
そして2035年10月には、企業規模要件が完全に撤廃されます。 従業員数に関係なく、すべての企業で週20時間以上働く短時間労働者が社会保険に加入することになります。
社会保険加入条件の変更で50人以下企業のパートはどう変わるか
賃金要件の撤廃は2026年10月に予定されています。 これにより、いわゆる「106万円の壁」がなくなります。

現在、従業員51人以上の企業では、週20時間以上かつ月額8.8万円以上という条件で短時間労働者が加入対象となっています。 賃金要件が撤廃されると、週20時間以上働けば月額賃金に関係なく加入対象となります。
50人以下の企業については、企業規模要件の引き下げ時期に応じて順次適用されていきます。 例えば従業員40人の企業であれば、2027年10月以降、週20時間以上働くパートやアルバイトが新たに社会保険の加入対象となります。
扶養の範囲内で働きたいと考えている従業員への説明や、シフト調整の相談が必要になるケースも出てくるでしょう。
社会保険加入条件で50人以下でも今すぐ加入できる任意特定適用事業所制度
法改正を待たずに、50人以下の企業でも短時間労働者を社会保険に加入させる方法があります。 それが「任意特定適用事業所」という制度です。

社会保険加入条件の50人以下企業向け任意特定適用事業所とは
任意特定適用事業所とは、従業員数が50人以下の企業が、労使合意のもとで短時間労働者にも社会保険を適用できる制度です。
通常、50人以下の企業では4分の3基準を満たさないパートやアルバイトは社会保険に加入できません。 しかし、この制度を利用すれば、51人以上の企業と同じ加入要件を適用することができます。
従業員にとっては、将来受け取れる年金が増えるというメリットがあります。 また、病気やケガで働けなくなった場合の傷病手当金や、出産時の出産手当金も受給できるようになります。
企業にとっても、福利厚生の充実により優秀な人材を確保しやすくなるというメリットがあります。
社会保険加入条件の50人以下企業が任意特定適用事業所になるための手続き
任意特定適用事業所になるためには、まず労使合意を得る必要があります。
労働組合がある場合は、労働組合の同意が必要です。 労働組合がない場合は、被保険者の2分の1以上の同意を得るか、被保険者の過半数を代表する者の同意を得る必要があります。
労使合意が得られたら、日本年金機構に「任意特定適用事業所申出書」を提出します。 申出書には労使合意を証明する書類を添付する必要があります。
申出が受理されると、申出日から任意特定適用事業所として認められます。 その後、対象となる短時間労働者の資格取得届を提出して手続きが完了します。
社会保険加入条件の50人以下企業で任意適用を検討すべきケース
任意特定適用事業所の申請を検討すべき企業にはいくつかの特徴があります。
まず、優秀なパート人材の確保や定着に課題を感じている企業です。 社会保険に加入できることは、求職者にとって魅力的な条件となります。
次に、従業員の福利厚生を充実させたいと考えている企業です。 特に、長く働いてくれているパートやアルバイトに報いたいという思いがある場合に有効です。
また、2027年以降の法改正に先駆けて準備を進めたい企業にもお勧めです。 早めに制度を導入することで、社内の運用体制を整える時間的余裕が生まれます。
社会保険加入条件の変更に備えて50人以下の企業が今から準備すべきこと
法改正までまだ時間があるように感じるかもしれません。 しかし、準備には一定の期間が必要ですので、今から計画的に進めておくことをお勧めします。
社会保険加入条件の50人以下企業がまず行うべき現状把握
最初に行うべきは、自社の従業員数と労働時間の正確な把握です。
現在の厚生年金被保険者数が何人かを確認してください。 その数字によって、自社が2027年、2029年、2032年のどの時点で対象になるかが決まります。
次に、週20時間以上働いている短時間労働者が何人いるかをリストアップします。 この人数が、将来新たに社会保険に加入する可能性のある従業員数となります。
事業所が複数ある場合は、すべての事業所を合算した数字で確認することを忘れないでください。
社会保険加入条件の変更で50人以下企業に生じる費用負担の試算
社会保険料は労使折半で負担します。 新たに加入する従業員が増えれば、会社の負担も増加することになります。
健康保険料と厚生年金保険料を合わせると、給与の約15%程度が保険料となります。 このうち半分の約7.5%が会社負担分です。
例えば、月額10万円の給与を受け取るパートが10人新たに加入する場合を考えてみましょう。 会社負担分は月額約7.5万円、年間で約90万円の増加となります。
事前にシミュレーションを行い、資金計画に織り込んでおくことが重要です。
社会保険加入条件の変更について50人以下企業が従業員に説明すべきこと
法改正によって新たに社会保険に加入することになる従業員への説明も重要な準備です。
社会保険に加入すると、従業員本人も保険料を負担することになります。 そのため、手取り収入が減ることへの不安を感じる方もいるでしょう。
一方で、将来の年金額が増えること、傷病手当金や出産手当金が受けられるようになることなど、メリットも多くあります。 これらを丁寧に説明し、従業員の理解を得ることが大切です。
扶養の範囲内で働きたいという希望がある従業員については、労働時間の調整について相談に応じる体制も必要になるかもしれません。
社会保険加入条件の変更に伴う50人以下企業向けの支援制度
適用拡大に伴う企業の負担を軽減するため、いくつかの支援制度が設けられています。
まず、キャリアアップ助成金の社会保険適用時処遇改善コースがあります。 短時間労働者の社会保険加入と併せて処遇改善を行った場合に、助成金を受給できる制度です。
また、2026年10月からは保険料負担軽減の特例措置が導入される予定です。 これは従業員50人以下の企業を対象に、事業主が労使折半を超えて保険料を負担した場合に、その超過分を制度的に支援するものです。
支援対象となるのは、新たに社会保険に加入する標準報酬月額12.6万円以下の短時間労働者です。 この特例は3年間の時限措置として実施される予定です。
社会保険加入条件を満たす50人以下企業が未加入の場合のリスク
社会保険の加入義務があるにもかかわらず未加入の状態を続けると、さまざまなリスクが生じます。 法令遵守の観点からも、適切に対応することが求められます。

社会保険加入条件を満たしながら50人以下だからと未加入を続けた場合の罰則
社会保険の加入義務がある従業員を加入させなかった場合、年金事務所による調査や指導の対象となります。
調査の結果、未加入が発覚した場合は、過去2年分の保険料を遡って徴収されることがあります。 従業員数が多ければ、その金額は数百万円に上る可能性もあります。
さらに悪質な場合には、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰が科される可能性もあります。 届出をしなかった場合や、虚偽の届出をした場合がこれに該当します。
「50人以下だから関係ない」という認識で未加入を続けることは、大きなリスクを伴います。
社会保険加入条件への対応が不十分な50人以下企業の採用への影響
社会保険への未加入は、人材採用にも悪影響を及ぼします。
求職者の多くは「社会保険完備」を就職先選びの条件としています。 特に、長期的に働きたいと考えている方にとっては重要な判断材料です。
また、既存の従業員の定着率にも影響します。 福利厚生が不十分な会社では、より条件の良い会社への転職を考える従業員が出てくる可能性があります。
人手不足が深刻化する中、社会保険の適切な運用は企業の競争力にも関わる問題といえるでしょう。
社会保険加入条件と50人以下企業に関するよくある質問
社会保険加入条件について、50人以下の企業からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

社会保険加入条件で50人以下の会社にも加入義務はありますか
法人であれば、従業員が50人以下であっても社会保険への加入義務があります。
ただし、すべての従業員が加入対象となるわけではありません。 現時点では、正社員や役員、そして4分の3基準を満たすパート・アルバイトが対象です。
4分の3基準を満たさない短時間労働者については、現在は加入義務がありません。 しかし、2027年10月以降は段階的に対象が拡大されていきます。
社会保険加入条件の「従業員数」にパートは含まれますか
従業員数のカウントには、厚生年金保険の被保険者のみが含まれます。
具体的には、現在社会保険に加入している従業員の数でカウントします。 4分の3基準を満たして社会保険に加入しているパートは含まれますが、未加入の短時間労働者は含まれません。
例えば、正社員30人、社会保険加入のパート15人、未加入のパート20人という会社の場合、従業員数は45人となります。
社会保険加入条件で50人以下企業のパートが加入するにはどうすればよいですか
50人以下の企業で4分の3基準を満たさないパートが社会保険に加入するには、任意特定適用事業所の申請が必要です。
労使合意を得たうえで、日本年金機構に申出書を提出します。 認められれば、週20時間以上働くパートも社会保険に加入できるようになります。
従業員からの希望がある場合や、福利厚生の充実を図りたい場合は、この制度の活用を検討してみてください。
社会保険加入条件が50人以下の企業に適用されるのはいつからですか
2027年10月から段階的に適用が始まります。
まず2027年10月には従業員36人以上の企業が対象となります。 その後、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上と拡大されていきます。 そして2035年10月には企業規模要件が完全に撤廃され、すべての企業が対象となります。
自社の従業員数を確認し、いつから対象になるかを把握しておくことが大切です。
社会保険加入条件の変更に伴う50人以下企業向けの支援策はありますか
いくつかの支援策が用意されています。
2026年10月からは、保険料負担を軽減する特例措置が導入される予定です。 事業主が労使折半を超えて保険料を負担した場合に、その超過分が制度的に支援されます。
また、キャリアアップ助成金を活用することで、社会保険加入と処遇改善を同時に進める企業を支援する仕組みもあります。 詳しくは社労士にご相談ください。
まとめ
社会保険加入条件について、50人以下の企業の現状と今後の見通しを解説してきました。
現時点では、50人以下の企業は2024年10月の適用拡大の対象外です。 しかし、2025年6月に成立した改正年金法により、2027年10月以降は段階的に対象となることが確定しています。
2027年10月には36人以上、2029年10月には21人以上、2032年10月には11人以上の企業が順次対象となり、2035年10月には企業規模要件が完全に撤廃されます。
今から準備すべきことは、自社の従業員数の正確な把握、対象となる短時間労働者の洗い出し、社会保険料負担増の試算、そして従業員への説明準備です。 任意特定適用事業所制度や各種助成金の活用も検討してみてください。
社会保険加入条件や50人以下企業の対応について、ご不明な点があれば当事務所までお気軽にご相談ください。 500社超の顧問実績をもとに、御社に最適なアドバイスをさせていただきます。



