こんにちは。HR BrEdge社会保険労務士法人代表、特定社会保険労務士の渡辺俊一(わたなべとしかず)です。
「扶養内勤務とは、結局どういう働き方?」「扶養の範囲内で働くには週何時間まで?」「2026年から制度が変わると聞いたけれど、何がどう変わるの?」
パート従業員を雇用する企業の経営者・人事担当者の方から、こうしたご質問をいただく機会が増えています。
2025年の税制改正で「103万円の壁」が「123万円の壁」に引き上げられ、さらに2026年には社会保険の適用拡大や130万円の壁の判定方法変更など、大きな制度改正が相次ぎます。
従業員への説明や給与計算の見直しなど、企業側の実務対応も急務です。
この記事では、500社超の顧問先を持つHR BrEdge社会保険労務士法人が、扶養内勤務の定義から年収の壁の最新情報、時給別シミュレーション、企業が取るべき実務対応までをわかりやすく解説します。
扶養内勤務とは?わかりやすく解説
扶養内勤務とは、配偶者や親の「扶養」に入ったまま働ける範囲で勤務することを指します。読み方は「ふようないきんむ」です。
「扶養の範囲内」には、大きく分けて「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があり、それぞれ基準となる年収や条件が異なります。

税制上の扶養とは
税制上の扶養とは、一定の年収以下であれば配偶者控除や扶養控除を受けられる仕組みです。
扶養に入っている方の給与収入が基準額以下であれば、扶養する側(配偶者や親)の所得税・住民税が軽減されます。
2025年の税制改正により、所得税の基準額は以下のように変更されました。
| 項目 | 改正前(2024年まで) | 改正後(2025年〜) |
| 基礎控除 | 48万円 | 58万円 |
| 給与所得控除(最低保障額) | 55万円 | 65万円 |
| 所得税が発生しない上限 | 103万円 | 123万円 |
さらに、2026年1月からは基礎控除の特例引き上げにより、年収178万円まで所得税が発生しない扱いとなる見込みです。
社会保険上の扶養とは
社会保険上の扶養とは、配偶者の健康保険・厚生年金の被扶養者として保険料を負担せずに保障を受けられる仕組みです。
こちらは年収だけでなく、勤務時間(週何時間働くか)も判定基準に含まれるため、より注意が必要です。
社会保険上の扶養を維持するための主な条件は以下のとおりです。
1. 年収130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)
2. 週の所定労働時間が20時間未満(勤務先の企業規模による)
3. 月額賃金が8.8万円未満(2026年10月に撤廃予定)
渡辺 俊一
【2026年最新】年収の壁一覧表 — 何がいくらで変わる?
「年収の壁」とは、一定の年収を超えると税金や社会保険料の負担が発生し、手取りが減少するポイントのことです。
2025年〜2026年の制度改正を反映した最新の年収の壁を一覧でまとめました。

| 年収の壁 | 種類 | 超えるとどうなる? | 最新の変更点 |
| 110万円 | 住民税 | 住民税(所得割)が発生する | 2026年度〜(旧100万円) |
| 123万円 | 所得税 | 本人に所得税が発生する | 2025年〜(旧103万円) |
| 106万円 | 社会保険 | 勤務先の規模等の条件を満たすと社会保険に加入 | 2026年10月に賃金要件撤廃予定 |
| 130万円 | 社会保険 | 配偶者の社会保険の扶養から外れる | 2026年4月〜契約ベース判定に変更 |
| 150万円 | 所得税 | 配偶者特別控除の満額(38万円)が減り始める | — |
| 201万円 | 所得税 | 配偶者特別控除がゼロになる | — |
2026年の注目改正ポイント
2026年は扶養内勤務に影響する制度改正が集中しています。企業の人事担当者は、以下の3点を特に押さえておきましょう。
1. 106万円の壁 — 月額8.8万円の賃金要件が撤廃(2026年10月予定)
これまで社会保険加入の条件の一つだった「月額賃金8.8万円以上」の要件が撤廃されます。週20時間以上勤務していれば、賃金額にかかわらず社会保険加入の対象となる見込みです。
2. 130万円の壁 — 契約ベースの判定に変更(2026年4月〜)
従来は「実際の収入見込み」で判定していた130万円の壁が、「労働契約書(労働条件通知書)の内容」で判定する方式に変わります。契約上の年収が130万円未満であれば、一時的な残業で実収入が増えても原則として扶養にとどまれます。
3. 50人以下の企業にも社会保険適用拡大(2027年10月〜段階的に)
2025年6月に成立した改正年金法により、現在は従業員51人以上が対象の社会保険適用拡大が、2027年10月以降は50人以下の企業にも段階的に適用されることが確定しました。中小企業も今から準備が必要です。
渡辺 俊一
扶養の範囲内で働くには週何時間まで?時給別シミュレーション
「扶養内で働くには週何時間まで?」「月いくらまで稼いでいいの?」という疑問に、時給別の具体的なシミュレーションでお答えします。

社会保険の扶養を維持する場合(年収130万円未満)
年収130万円未満を維持するための月収上限は約10.8万円です。
時給別に週の勤務時間の目安をまとめました。
| 時給 | 週の勤務時間上限 | 月収目安 | 働き方の例 |
| 1,000円 | 約25時間 | 約10.8万円 | 1日5時間 × 週5日 |
| 1,200円 | 約20時間 | 約10.4万円 | 1日5時間 × 週4日 |
| 1,500円 | 約17時間 | 約10.6万円 | 1日4時間 × 週4日 |
注意点:時給1,200円以上の場合、年収130万円未満に収めようとすると週20時間前後になります。週20時間以上になると、勤務先の企業規模によっては106万円の壁(社会保険加入義務)に該当する可能性があるため、両方の基準を確認する必要があります。
税制上の扶養を維持する場合(年収123万円以下)
2025年からの新基準では、年収123万円以下であれば所得税は発生しません。
月収の上限は約10.2万円です。
| 時給 | 週の勤務時間上限 | 月収目安 | 年収目安 |
| 1,000円 | 約23時間 | 約10.2万円 | 約122.4万円 |
| 1,200円 | 約19時間 | 約10.0万円 | 約120.0万円 |
| 1,500円 | 約15時間 | 約10.0万円 | 約120.0万円 |
扶養内勤務は「週20時間」がカギ
扶養の範囲内で働くには、「週20時間未満」が実務上の最も重要なラインです。
週20時間以上勤務すると、以下のリスクが発生します。
1. 雇用保険の加入義務が発生(週20時間以上で原則全員加入)
2. 社会保険の加入対象になる可能性(従業員51人以上の企業で、他の条件も満たす場合)
3. 年収130万円未満でも扶養から外れるケースがある
「扶養内で働きたい」という従業員には、週20時間未満かつ月額8.8万円未満(2026年10月まで)を目安として案内するのが現時点での実務的な対応です。
「週20時間を超えたり超えなかったり」する場合はどうなる?
パート従業員の勤務時間は繁忙期と閑散期で変動しがちです。「ある週は22時間、翌週は16時間」というケースでは、どう判定されるのでしょうか。
社会保険の加入判定における「週20時間」は、「所定労働時間」で判断します。つまり、労働契約書(雇用契約書)に記載された1週間の勤務時間が基準となります。
ポイント:
1. 契約上の所定労働時間が週20時間未満 → 一時的に20時間を超えても、原則として加入義務は生じません
2. 契約上の所定労働時間が週20時間以上 → たまたま20時間未満の週があっても、加入対象のままです
3. 実態が契約と大きく乖離している場合 → 実態に基づいて判断されるリスクがあります
企業としては、労働契約書の所定労働時間を明確に定め、実態と大きな乖離がないよう管理することが重要です。シフト制の場合は「週平均○時間」と記載し、実績との整合性を定期的に確認しましょう。
大学生の扶養内勤務 — 2025年からの特定親族特別控除
大学生のお子さんがアルバイトで扶養を超えてしまうケースも増えています。
従来は年収103万円を超えると親の扶養控除(63万円)が受けられなくなりましたが、2025年の税制改正で新たな控除制度が設けられました。
特定親族特別控除(19歳〜22歳が対象)
年収123万円を超えても、年収150万円までは従来と同じ63万円の控除が受けられます。
150万円を超えると段階的に控除額が減少し、年収188万円を超えると控除額はゼロになります。
これにより、大学生のアルバイトは年収150万円までは親の税負担を増やさずに働けるようになりました。
ただし、社会保険上の扶養(年収130万円未満)は別基準ですので、130万円を超えると親の健康保険の扶養から外れる点に注意が必要です。
企業の人事担当者は、学生アルバイトの保護者から問い合わせを受ける可能性があるため、この改正内容を把握しておくとよいでしょう。
扶養を超えたらどうなる?手取りの「逆転現象」と損益分岐点
「扶養を超えるとどれくらい手取りが減るの?」というのは、従業員から最も多く寄せられる質問の一つです。
手取りが逆転するゾーン
年収130万円を超えて社会保険に加入すると、社会保険料(健康保険料+厚生年金保険料)として給与の約15%が天引きされます。

| 年収 | 社会保険料(年間) | 手取り目安 | 備考 |
| 129万円(扶養内) | 0円 | 約129万円 | 保険料負担なし |
| 130万円(扶養外) | 約20万円 | 約107万円 | 手取りが大幅に減少 |
| 150万円 | 約23万円 | 約124万円 | まだ扶養内の手取りに届かない |
| 160万円以上 | 約24万円 | 約132万円〜 | 扶養内の手取りを上回る |
つまり、扶養を外れて働く場合は年収160万円以上を目指さないと「働き損」になる可能性があります。
従業員から相談を受けた際は、この損益分岐点を数字で示すと理解を得やすくなります。
社会保険に加入するメリットも伝える
手取りが一時的に減少しても、社会保険に加入することで以下のメリットがあります。
1. 将来の年金額が増える(厚生年金は報酬に応じて上乗せ)
2. 傷病手当金が受けられる(病気やケガで働けないとき、給与の約2/3を最長1年6ヶ月支給)
3. 出産手当金が受けられる(産休中の所得保障)
4. 健康保険の保障が手厚くなる(被扶養者のままでは受けられない給付がある)
企業としても、社会保険に加入するメリットを正確に伝えることで、従業員が納得した上で働き方を選べるようサポートすることが大切です。
渡辺 俊一
副業している場合の扶養判定はどうなる?
近年、パート勤務と副業を掛け持ちするケースも増えています。副業がある場合の扶養判定は、税制上と社会保険上で扱いが異なるため注意が必要です。

税制上の扶養:全収入を合算して判定
パート収入と副業収入を合わせた年間の合計所得で判定します。合計が基準額を超えると、配偶者控除・扶養控除の対象から外れます。
社会保険上の扶養(130万円の壁):全収入を合算して判定
すべての勤務先からの収入を合算し、年収130万円未満かどうかを判断します。
社会保険の加入義務(106万円の壁):勤務先ごとに個別判定
一方、106万円の壁による社会保険加入義務は、勤務先ごとに個別に判定します。A社で週15時間、B社で週10時間のように、各社では基準を満たさなければ加入義務は生じません。ただし、合計収入が130万円を超えれば扶養からは外れます。
副業をしている従業員がいる場合は、他社での勤務状況も含めた総合的な確認が必要です。
企業が取るべき扶養内勤務の管理体制 — 8つの具体策
扶養内勤務を希望するパート従業員を雇用する企業が、トラブルを防ぎながら適切に管理するための具体策をご紹介します。
1. 就業規則に「扶養内勤務」の定義を明記する
「扶養内勤務」の条件(週の所定労働時間・月収上限など)を就業規則に明記しましょう。法的根拠を持たせることで、従業員との認識のズレを防ぎ、採用活動時にも「扶養内勤務OK」と明確に打ち出せます。
2. 給与計算システムをクラウド化する
扶養内勤務者の勤務時間と年収を手作業で管理すると、計算ミスや集計漏れのリスクがあります。クラウド型の勤怠管理・給与計算システムを導入すれば、リアルタイムで年収見込みを把握でき、管理の精度と効率が大幅に向上します。
3. 年収アラート機能を設定する
年収が基準額に近づいた際に自動でアラートを出す仕組みを整えましょう。月額給与と勤務時間から年間見込みを自動計算し、123万円・130万円のラインに近づいた段階で本人と管理者に通知を出すことで、「気づいたら超えていた」というトラブルを防止できます。
4. 扶養制度の社内研修を実施する
年に1回、年収の壁や制度改正のポイントを共有する場を設けましょう。制度を正しく理解している従業員は不安が少なく、離職率の低下や満足度の向上にもつながります。
5. 労働契約書の記載内容を整備する
2026年4月からの130万円の壁は「労働契約書の内容」で判定されます。契約書に所定労働時間・月収見込みを正確に記載し、実態と乖離しないよう定期的に更新することが、従業員の扶養維持と企業のリスク回避の両面で重要になります。
6. 顧問社労士と定期的に給与体系を見直す
制度改正が相次ぐ現在、半年に1回は顧問社労士とともに給与体系・勤務条件のレビューを行うことをおすすめします。法改正に即した対応を専門家と一緒に進めることで、手続き漏れや法令違反のリスクを軽減できます。
7. 助成金の活用を検討する
扶養内パート従業員の雇用管理を整備する際に、活用できる助成金がないかを確認しましょう。キャリアアップ助成金(短時間労働者の処遇改善)など、条件に合致すれば企業のコスト負担を軽減できます。
8. 勤務時間を正確に記録・管理する
「少しくらい大丈夫」と勤務時間を曖昧に記録すると、結果的に扶養を外れてトラブルの原因になります。勤務日数と時間を正確に記録し、月次で確認する体制を整えましょう。正確な記録は、給与計算の信頼性にも直結します。
よくある質問(FAQ)
Q. 扶養内勤務とは簡単にいうと何ですか?
A. 配偶者や親の扶養に入ったまま働ける範囲で勤務することです。具体的には、税制上の扶養(年収123万円以下)と社会保険上の扶養(年収130万円未満・週20時間未満など)の2つの基準を超えないように働く働き方を指します。
Q. 扶養の範囲内で働くには週何時間まで?
A. 社会保険の扶養を維持するには「週20時間未満」が重要な目安です。週20時間以上勤務すると、企業規模によっては社会保険の加入対象となります。税制上の扶養のみを考慮する場合は、時給と年収上限から逆算して週の勤務時間を調整します。
Q. 2026年から扶養の条件は何が変わりますか?
A. 主に3つの変更があります。(1)106万円の壁の月額8.8万円要件が2026年10月に撤廃予定、(2)130万円の壁の判定が2026年4月から労働契約書ベースに変更、(3)住民税の非課税ラインが100万円から110万円に引き上げ。また2027年10月からは50人以下の企業にも社会保険適用拡大が段階的に始まります。
Q. 扶養内で働いていたのに年収が超えてしまいました。どうすればいいですか?
A. まずは速やかに人事・総務部門または顧問社労士に報告してください。社会保険の加入手続きが必要になる場合は、事実発生から5日以内に届出を行う必要があります。2026年4月以降は契約ベースで判定されるため、契約上の年収が130万円未満であれば一時的な超過で扶養を外れることは原則なくなります。
Q. 扶養内で週20時間を超えたり超えなかったりする場合、社会保険はどうなりますか?
A. 社会保険の加入判定は「所定労働時間」、つまり労働契約書に記載された週の勤務時間で行います。契約上の所定労働時間が週20時間未満であれば、一時的に超えても原則として加入義務は生じません。ただし、実態と契約が大きく乖離している場合は実態で判断されるリスクがあります。
まとめ:扶養内勤務の管理は2026年の制度改正への備えが急務
本記事では、扶養内勤務の基本から2026年の最新制度改正、時給別シミュレーション、企業の実務対応までを解説しました。
改めてポイントを整理します。
1. 扶養内勤務は「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の両面で考える
2. 扶養の範囲内で働くには「週20時間未満」が実務上の重要ライン
3. 2026年は106万円の壁の要件撤廃、130万円の壁の判定変更など制度改正が集中
4. 企業は就業規則の整備・労働契約書の見直し・年収管理の仕組みづくりが急務
制度改正が相次ぐ中、自社だけですべてに対応するのは容易ではありません。
HR BrEdge社会保険労務士法人では、扶養内勤務の管理体制の構築から、就業規則の整備、給与計算のアウトソースまで、企業の実務負担を軽減するサポートを行っています。
制度改正への対応やパート従業員の労務管理でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
この記事の執筆者
![]() 渡辺 俊一 (わたなべ としかず) |
HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 1977年兵庫県神戸市生まれ。関西学院大学法学部法律学科卒業後、日本マクドナルド株式会社に入社。2005年社会保険労務士試験に合格し、2007年に渡辺社会保険労務士事務所を開設。2016年法人化し、2025年5月に「HR BrEdge社会保険労務士法人」へ社名変更。 顧問先500社超・実績970社以上を誇り、「会社の財産は人・人・人である」を信念に、従業員・お客様・社会の「三方良し」の経営支援を実践。給与計算・社会保険手続き・就業規則・助成金申請から、IPO・M&Aに向けた労務監査まで幅広く対応。 著書『頂点をめざす!~経営者のパートナーとして歩む社労士の物語~』はAmazon「社会保険労務士の資格・検定」部門で1位を獲得。
【所属】全国社会保険労務士連合会/大阪府社会保険労務士会/一般社団法人EO Osaka |





