こんにちは。HR BrEdge社会保険労務士法人代表、特定社会保険労務士の渡辺俊一(わたなべとしかず)です。
「企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入したけれど、どの商品を選べばいいか分からない」「元本確保型100%のまま放置していて、これでいいのか不安」「自分の年代に合った配分の目安が知りたい」——大阪・東京・福岡・名古屋を中心に、HR BrEdgeの顧問先500社の人事担当者からは、社員さんからのこうした相談を毎月のように受けています。
厚生労働省の統計(2023年3月末)では、企業型DC加入者の運用商品のうち預貯金等の元本確保型が約28%を占めており、依然として「とりあえず安全な商品にしておこう」と判断している方が多いことが分かります。一方、長期運用(10〜30年単位)では、適切な分散投資の方が結果的に資産が大きく育つというデータも金融庁から発表されています。
こんなお悩みを感じていませんか?
- 「企業型DCの加入時に商品を選んだが、その後一度も見直していない」
- 「自分の年代では何%を株式・債券に配分すべきか目安が知りたい」
- 「信託報酬が高い商品を選んでしまい、損していないか不安」
- 「人事担当者として、社員からの相談に答えられる中立的な情報を持ちたい」
この記事では、社労士の中立的な視点から、企業型DCで選べる商品カテゴリ、配分を決める3ステップ判断フロー、20代から退職前までの年代別配分の考え方、信託報酬・純資産・運用方針の3つのチェックポイント、リバランス・マッチング拠出・退職時の対応、そして企業(人事)の役割まで網羅的に解説します。
※ 本記事は社労士の立場から「商品選びの考え方の枠組み」を解説するもので、個別の投資信託の購入を推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任で、必要に応じて運営管理機関・金融機関にもご相談ください。

企業型確定拠出年金(DC)の基礎知識|自己責任原則と「配分しない」リスク
企業型DCの商品を選ぶ前に、制度の根本的なルールを押さえておきましょう。これを理解しないまま商品を選ぶと、「なぜか資産が増えない」「気付いたら定期預金100%だった」というありがちな失敗につながります。
企業型DCとは|事業主が掛金拠出、加入者が運用
企業型DCは、会社(事業主)が毎月一定額の掛金を拠出し、加入者である従業員が自分でその資金を運用する仕組みの企業年金制度です。運用商品の選択も、配分の決定も、運用結果(増えた・減った)も、すべて加入者本人の責任で行うのが大原則です。これを「自己責任原則」といいます。
60歳まで引き出せない=長期分散投資が活きる土俵
企業型DCの掛金とその運用益は、原則として60歳まで引き出せません。20代で加入すれば30〜40年、40代で加入しても15〜20年の長期運用が約束されている、ということです。これは投資理論的には大きなアドバンテージで、短期的な値下がりがあっても時間をかけて回復させやすく、複利効果も最大化できる環境といえます。
商品選択をしないと「元本確保型」へ自動設定される
多くの企業型DC制度では、加入時に商品を選択しないと、自動的に元本確保型(定期預金等)に振り分けられる運用が一般的です。安全に見えるこの初期設定こそが、「30年経っても資産がほとんど増えていなかった」という最大の失敗パターンです。30年運用で投資信託(年率3%想定)と定期預金(年率0.002%)の運用結果は、毎月2万円の積立で200万円以上の差が出るというシミュレーションもあります。
渡辺 俊一
企業型DCで選べる商品カテゴリ|元本確保型vs元本変動型
企業型DCで選べる商品は、大きく分けて「元本確保型」と「元本変動型(投資信託)」の2つです。それぞれの特徴を理解した上で、自分のリスク許容度に合わせて組み合わせるのが基本戦略です。

元本確保型(定期預金・保険商品)
元本割れの可能性がほぼない安全資産です。定期預金(1年・3年・5年など)と保険商品(積立年金保険等)が代表例です。利回りは年0.002〜0.5%程度と非常に低く、インフレが進行している局面では実質価値が目減りするリスクがあります。
元本変動型(投資信託)|国内株式/外国株式/債券/バランス型/REIT
市場の値動きに応じてリターンが変動する商品で、企業型DCの主役です。資産クラス別に次のように分類できます。
- 国内株式:日経平均やTOPIXに連動するインデックスファンドが代表的
- 外国株式:先進国株式(米国・欧州)/新興国株式/全世界株式インデックスなど
- 国内債券:日本国債を中心とする安定資産
- 外国債券:先進国債券/新興国債券
- バランス型:複数資産を自動分散(株式・債券・REIT等)。ターゲットイヤーファンドもこの一種
- REIT(不動産投資信託):国内REIT/海外REIT
インデックス型 vs アクティブ型|長期で勝ちやすいのはインデックス
投資信託にはさらに「インデックス型」(市場平均に連動)と「アクティブ型」(市場平均を上回る運用を目指す)の2タイプがあります。アクティブ型は信託報酬(手数料)が高く、長期では市場平均を下回るケースが多いというデータが各種研究で示されています。長期運用が前提の企業型DCでは、インデックス型を中核に据えるのが王道とされています。
商品ラインアップの法定ルール(3〜35本)と選び方の3つのチェックポイント
企業型DCの商品ラインアップは法令で本数が決められており、企業側が事前に絞り込んだ商品から選ぶ仕組みです。その中で社員一人ひとりが選ぶ際の3つのチェックポイントを整理します。

法令で「3本以上35本以下」と定められた背景
確定拠出年金法の法令解釈通知により、企業型DCの運用商品ラインアップは3本以上35本以下と決められています。一般的には20本前後の構成が多く、元本確保型を3〜4本、各資産クラスのインデックス・アクティブ・バランス型を組み合わせて並べる構成が標準です。多すぎても少なすぎても選びにくく、20本前後がバランス的に妥当という運用上のコンセンサスがあります。
チェック①:信託報酬0.2%以下が目安|長期で大きな差を生む手数料
信託報酬は、投資信託の運用にかかる年間の手数料で、運用残高に対して毎日少しずつ自動的に引かれます。インデックス型は0.1〜0.3%、アクティブ型は1.0〜2.0%程度が一般的なレンジです。30年間の長期運用では、信託報酬1%の差が最終資産で20〜30%の差を生むため、0.2%以下を目安に選ぶのが鉄則とされます。
チェック②:純資産総額が順調に増えているか
純資産総額(ファンドの規模)は、運用の安定性を示す指標です。純資産総額が順調に増えているファンドは資金流入が続いており、運用継続性の観点で安心です。逆に純資産総額が減り続けるファンドは「繰上償還リスク(運用打切り)」があり要注意です。
チェック③:運用方針(ベンチマーク)の確認
各ファンドの「目論見書」には、ベンチマーク(運用の基準となる指数)と運用方針が記載されています。自分の選びたい資産クラス(例:米国株式インデックス)と、ファンドのベンチマーク(例:S&P500)が一致しているかを必ず確認しましょう。
「配分わからない」を解決する3ステップ判断フロー
「結局、自分はどう配分すればいいか」が分からない方向けに、社労士視点で組み立てた3ステップの判断フローを提案します。

ステップ1:リスク許容度を診断する
まず自分のリスク許容度(資産が一時的に減ることをどれくらい受け入れられるか)を診断します。判断軸は次の3つです。
- 年齢:若いほど時間で取り戻せるためリスク許容度は高い
- 家計の余力:他に十分な貯蓄・収入があればリスク許容度は高い
- 性格・心理:相場下落で夜眠れなくなるタイプか、淡々と続けられるタイプか
ステップ2:年代×ライフイベントから目安配分を選ぶ
ステップ1の結果を踏まえ、次のh2「年代別おすすめ配分」のマトリックスから自分に近いパターンを選びます。ライフイベント(結婚・出産・教育費・住宅ローン・退職)も考慮して微調整します。
ステップ3:信託報酬・純資産・運用方針で個別商品を絞り込む
選びたい資産クラスが決まったら、ラインアップの中から信託報酬0.2%以下・純資産安定増加・ベンチマーク明確の3つを満たすものを選びます。同じ「先進国株式インデックス」でも複数本ある場合は、信託報酬の低い方を選ぶのが原則です。
年代別おすすめ配分の考え方|20代から退職前まで
年代別の配分は「絶対的な正解」ではなく「一般的な考え方の目安」です。同じ40代でも独身か子育て中か、住宅ローン残高で大きく異なります。あくまで出発点としてご活用ください。

20代:時間を最大の味方に、株式中心の積極配分
退職まで35〜40年あるため、時間を味方につけたリスクテイクが理論的に有利です。株式80〜100%(外国株式50〜70%+国内株式20〜30%)を中核に、安定資産は0〜20%程度。多少の下落があっても回復時間が十分あるため、長期積立で複利効果を最大化します。
30代:ライフイベント加味、株式80%目安
結婚・出産・住宅購入などライフイベントが続く時期です。株式70〜80%(外国株式40〜50%、国内株式20〜30%)+債券10〜20%+安定資産10%程度がバランス的目安。ライフイベントで家計が圧迫されている時期は、リスクをやや抑える調整も有効です。
40代:分散重視、株式60%+債券30%+安定資産10%
運用期間が15〜20年に短くなる一方、子の教育費・住宅ローンがピークの世代。株式60%+債券30%+安定資産10%程度で分散効果を強めるのが王道です。これまで株式100%で運用してきた方も、40代後半に入ったら一度ポートフォリオの見直しを推奨します。
50代:守りへシフト、株式40%+債券40%+安定資産20%
退職まで10〜15年。値下がりからの回復時間が限られるため、リスクを段階的に下げます。株式40%+債券40%+安定資産20%程度を目安に、相場下落でも生活設計が崩れない水準まで調整します。
退職前(55歳〜):安定資産60%以上で受給準備
受給開始(60歳以降)を見据え、安定資産40〜60%+債券30%+株式10〜30%へ守りを強化。退職金として一括受取するか、年金として分割受取するかの判断も含め、税理士・社労士・FPと連携しての設計が安心です。
リバランスとマッチング拠出|運用フェーズの2つの戦略
商品を選んで配分を決めた後の「運用フェーズ」で押さえたい2つの戦略を解説します。
リバランスとは|年1回の配分見直しが王道
運用を続けると、相場の動きで当初の配分比率からずれてきます。たとえば株式60%・債券40%でスタートしても、株価が大きく上がると株式70%・債券30%のような状態になります。これを当初の比率に戻すのがリバランスです。年1回(誕生月・年度替わり等)の定期見直しが王道です。
スイッチング手続きの流れ
リバランスは、運営管理機関のWebサイトにログインして「スイッチング」というメニューから手続きします。過剰になった資産を売却し、不足している資産を購入することで配分を戻します。所要時間は5〜10分程度、手数料は基本的に無料です。
マッチング拠出の活用判断|会社が制度を持っているなら検討
マッチング拠出とは、会社が拠出する掛金に上乗せして、加入者本人も給与天引きで拠出できる仕組みです。本人拠出分は全額が所得控除になるため、所得税・住民税が軽減されます。会社の制度として用意されている場合は、家計に余力があるなら積極的に活用したい仕組みです。なお、2022年10月の改正でマッチング拠出とiDeCo併用の選択ルールが変わり、両方加入できる組み合わせも増えました。
退職・転職時の対応|3つの選択肢
退職・転職した際の企業型DC資産は、3つの選択肢のいずれかに必ず移行させる必要があります。半年以内に手続きしないと自動的に国民年金基金連合会へ自動移換され、運用が止まり手数料だけが取られ続けるので要注意です。
選択肢①:転職先の企業型DCへ移換
転職先にも企業型DC制度がある場合は、新しい運営管理機関を通じて資産を移換します。継続運用ができ、最もスムーズな選択肢です。
選択肢②:iDeCo(個人型確定拠出年金)へ移換
転職先に企業型DC制度がない場合、自営業化・無職化した場合などは、iDeCoへ資産を移換します。自分で運営管理機関(金融機関)を選んで口座開設し、引き続き運用と追加掛金拠出が可能です。
選択肢③:運用指図者として継続/脱退一時金
iDeCoの追加拠出はせずに、これまで積み立てた資産だけを運用し続ける「運用指図者」という選択もあります。また、極めて限定的な条件(資産1.5万円以下等)を満たす場合のみ「脱退一時金」として受け取ることも可能ですが、ハードルが高いです。
渡辺 俊一
企業(人事)の役割|投資教育と制度活用支援
ここまでは加入者(社員)視点で書いてきましたが、最後に企業(人事担当者・経営者)の役割を整理します。企業型DCを「導入して終わり」にせず、社員の老後資産形成に貢献するためのポイントです。
確定拠出年金法 54条|事業主の継続的投資教育の責務
確定拠出年金法第54条では、事業主に対して継続的な投資教育を実施する責務を定めています。導入時の説明会だけでなく、加入後も定期的な情報提供・学習機会の提供が求められます。怠ると行政指導の対象になり得ます。
投資教育のカリキュラム例
厚労省や法令解釈通知が推奨する投資教育の最低カリキュラムは次のとおりです。
- 確定拠出年金制度の基礎知識(自己責任原則・60歳前引出禁止)
- 運用商品の特徴(元本確保型/投資信託の違い)
- リスクとリターンの基礎
- 分散投資・長期運用の効果
- 税制優遇の内容
- 退職時の手続き
顧問社労士活用で「形骸化」を防ぐ
「導入時に1度説明会をやって終わり」になっている企業は少なくありません。HR BrEdgeでは顧問先に対し、年1〜2回の継続教育セミナー、新入社員向けの個別説明、社員からの個別相談窓口などをパッケージで提供しています。社員の老後安心は、結果的に従業員満足度・定着率にも反映されます。
企業型確定拠出年金 おすすめに関するよくある質問(FAQ)
Q1. 「配分わからない」のまま定期預金100%で放置するとどうなりますか?
渡辺 俊一
Q2. 20代で株式100%は本当に大丈夫ですか?
渡辺 俊一
Q3. 40代で配分見直しをするベストタイミングは?
渡辺 俊一
Q4. 50代で株式比率を下げるのは正解ですか?
渡辺 俊一
Q5. 三菱UFJの企業型DCではどんな商品が一般的にラインアップされていますか?
渡辺 俊一
Q6. 信託報酬が0.2%超の商品は選んだら損ですか?
渡辺 俊一
Q7. アクティブ型はおすすめできませんか?
渡辺 俊一
Q8. 投資信託は元本割れするから怖いです。
渡辺 俊一
Q9. バランス型1本だけでもいいですか?
渡辺 俊一
Q10. リバランスを何年も忘れたらどうなりますか?
渡辺 俊一
Q11. 退職金として一括受取と分割受取はどっちが得?
渡辺 俊一
Q12. iDeCoと企業型DCは同時加入できますか?
渡辺 俊一
Q13. マッチング拠出は必ずやるべきですか?
渡辺 俊一
Q14. 選んだ商品を会社に知られたくありませんが大丈夫?
渡辺 俊一
Q15. 退職後に半年以内の手続きを忘れたらどうなる?
渡辺 俊一
まとめ|社労士視点の「中立的フレームワーク」で老後準備を加速
最後に重要なポイントを3つ振り返ります。
- 「配分わからない」を解決する3ステップ判断フロー:リスク許容度診断→年代×ライフイベント→信託報酬・純資産・運用方針で個別商品を絞り込み。これさえ覚えれば自分で判断できます。
- 年代別の目安配分:20代は株式中心、30代でライフイベント加味、40代から分散重視、50代で守りへシフト、退職前は安定資産中心。あくまで目安として、個別事情で調整を。
- 商品選定の3つのチェックポイント:信託報酬0.2%以下、純資産総額の安定増加、運用方針(ベンチマーク)の整合性。これが王道です。
HR BrEdge社会保険労務士法人では、大阪・東京・福岡・名古屋を中心に全国47都道府県対応で、企業型DC導入支援・継続的投資教育セミナー・社員向け説明会代行・退職時手続き支援まで、人事担当者・経営者の業務を一気通貫でサポートしています。「導入したけれど社員教育が形骸化している」「制度の使い方を社員に説明したい」というご相談も大歓迎です。
※ 本記事は社労士の立場から「商品選びの考え方の枠組み」を解説したものです。個別の投資信託を購入・推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任で、必要に応じて運営管理機関(金融機関)・税理士・FP等にもご相談ください。
渡辺 俊一
この記事の執筆者
![]() 渡辺 俊一 (わたなべ としかず) |
HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 1977年兵庫県神戸市生まれ。関西学院大学法学部法律学科卒業後、日本マクドナルド株式会社に入社。2005年社会保険労務士試験に合格し、2007年に渡辺社会保険労務士事務所を開設。2016年法人化し、2025年5月に「HR BrEdge社会保険労務士法人」へ社名変更。 顧問先500社超・実績970社以上を誇り、「会社の財産は人・人・人である」を信念に、従業員・お客様・社会の「三方良し」の経営支援を実践。給与計算・社会保険手続き・就業規則・助成金申請から、IPO・M&Aに向けた労務監査まで幅広く対応。 著書『頂点をめざす!~経営者のパートナーとして歩む社労士の物語~』はAmazon「社会保険労務士の資格・検定」部門で1位を獲得。 【所属】全国社会保険労務士連合会/大阪府社会保険労務士会/一般社団法人EO Osaka |





