障害年金と傷病手当金は同時に受給できる?調整のルールをわかりやすく図解
はじめに:その疑問、専門家が解決します
病気やケガで長期間働けなくなった時、生活を支える二つの大切な制度、「障害年金」と「傷病手当金」。これらを受け取る可能性がある方から、「障害年金と傷病手当金は同時に受給できる?」というご質問を非常に多くいただきます。収入が途絶えるかもしれないという不安の中で、少しでも多くの経済的支援を受けたいと考えるのは当然のことです。結論から言うと、同時受給は可能ですが、そこには複雑な「調整」というルールが存在します。このルールを知らずに手続きを進めると、後で返金を求められるなど、思わぬ失敗につながることも少なくありません。この記事では、障害年金申請を全国でサポートするHR BrEdge(エイチアールブレッジ)社会保険労務士法人が、同時受給の仕組み、よくある間違い、そして損をしないための注意点を分かりやすく解説します。
障害年金と傷病手当金は同時に受給できる!ただし「併給調整」が鍵
多くの方が疑問に思う「障害年金と傷病手当金は同時に受給できるのか?」という点について、答えは「イエス」です。ただし、全額を両方からもらえるわけではなく、「併給調整」という仕組みによって支給額が調整されます。これは、同じ病気やケガに対して、公的な保障が二重に支払われるのを防ぐための大切なルールです。
調整の基本原則:障害年金が優先される
併給調整の最も重要なポイントは、障害年金の支給が優先されるという点です。つまり、障害年金の金額は一切減額されず、傷病手当金の側が調整(減額または支給停止)されます。生活の長期的基盤となる障害年金が守られる仕組みになっているのです。この大原則をまず理解しておきましょう。
【図解】3つの支給パターンを理解しよう
具体的な調整は、それぞれの1日あたりの金額(日額)を比較して行われます。以下の3つのパターンを覚えておくと、ご自身の状況をイメージしやすくなります。[画像挿入提案: ここに傷病手当金と障害年金の調整ルールを示すシンプルな図を挿入。推奨ALTテキスト:「障害年金と傷病手当金の同時受給における調整ルールの図解」]
- パターン1:傷病手当金の日額 > 障害年金の日額
この場合、傷病手当金から障害年金の日額を差し引いた「差額」が、傷病手当金として支給されます。全くもらえなくなるわけではありません。 - パターン2:傷病手当金の日額 ≦ 障害年金の日額
障害年金の日額の方が同額か多い場合、傷病手当金は「支給停止」となります。ただし、これはあくまで傷病手当金が止まるだけで、優先される障害年金は満額受給できます。 - パターン3:調整の対象外となるケース
例外として、障害年金の原因となった傷病と、傷病手当金の原因となった傷病が全く異なる場合は、調整の対象外となり、両方を満額受給できる可能性があります。しかし、この判断は医学的な見地から慎重に行われるため、自己判断は禁物です。
この調整ルールは、あなたの生活設計に直接影響します。まずはご自身の状況がどのパターンに当てはまる可能性があるのか、冷静に確認することが第一歩です。
出典: [外部リンク: 全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」]
要注意!同時受給で陥りがちな3つの失敗と回避策
「障害年金と傷病手当金は同時に受給できる」という知識だけでは、かえって大きな落とし穴にはまってしまう危険性があります。ここでは、実際に多くの方が経験する失敗例とその回避策を具体的に解説します。失敗を未然に防ぐことが、安定した生活を守る上で何よりも重要です。
失敗例1:障害年金の「遡及請求」で多額の返還義務が発生
最も注意すべきなのが、障害年金を過去にさかのぼって請求する「遡及請求」を行うケースです。例えば、2年前に遡って障害年金の受給が認められたとします。この場合、過去2年分の障害年金が一括で支給されますが、もし同じ期間に傷病手当金を受け取っていたら、その分は調整の対象となります。結果として、過去に受け取った傷病手当金の一部または全額を返還しなければならなくなるのです。まとまったお金が入ると思っていたら、逆に多額の返還通知が届き、途方に暮れてしまう方も少なくありません。
失敗例2:「初診日」の認識違いで予期せぬ調整対象に
自分では「うつ病で傷病手当金をもらい、その後、別の原因のケガで障害年金を申請したから調整されないはず」と考えていても、安心はできません。もし、そのケガがうつ病による集中力の低下が一因と判断されるなど、二つの傷病に医学的な因果関係が認められた場合、「同一の傷病」とみなされ、調整の対象となることがあります。この「初診日」や傷病の関連性の判断は非常に専門的です。[内部リンク: 障害年金の申請で最も重要な「初診日」とは?証明が難しい時の対処法] で詳しく解説していますが、自己判断は極めて危険です。
失敗例3:加入している健康保険組合の独自ルールを見落とす
傷病手当金のルールは、全国健康保険協会(協会けんぽ)だけでなく、大企業などが独自に運営する「健康保険組合」によって細かな規定が異なる場合があります。特に、付加給付などの上乗せ制度がある場合、調整の計算方法も変わってくる可能性があります。ご自身が加入している健康保険組合の規約を事前に確認せず手続きを進めてしまうと、想定と違う結果になりかねません。「自分の会社は大丈夫だろう」という思い込みは捨て、必ず確認しましょう。
損をしないための正しい申請ステップ
複雑な調整ルールや失敗例を知ると、不安に感じてしまうかもしれません。しかし、正しい手順を踏めば、不利益を被るリスクは最小限に抑えられます。以下のステップを参考に、慎重に行動しましょう。
- ステップ1:ご自身の状況を正確に把握する
まずは、傷病手当金の対象となっている傷病名と期間、そして障害年金の申請を考えている傷病名と初診日を正確に整理しましょう。曖昧な記憶ではなく、診療記録などで事実を確認することが大切です。 - ステップ2:関係機関に事前確認を行う
年金事務所(障害年金)と、ご加入の健康保険組合や協会けんぽ(傷病手当金)の両方に、同時受給の可能性があることを伝えて相談しましょう。このとき、具体的な状況を説明することで、より的確なアドバイスがもらえます。 - ステップ3:申請のタイミングを慎重に検討する
特に遡及請求を考えている場合は、傷病手当金の返還額がどのくらいになるかを事前にシミュレーションすることが不可欠です。経済的な影響を十分に考慮した上で、いつ申請するのが最適かを判断する必要があります。 - やってはいけない行動:独断で手続きを進めること
最も避けるべきは、誰にも相談せず、インターネットの情報だけを頼りに自己判断で手続きを進めてしまうことです。一人ひとりの状況は千差万別であり、最適な方法は異なります。少しでも疑問や不安があれば、専門家の力を借りるべきです。
これらのステップを踏むことで、後悔のない選択が可能になります。[内部リンク: 障害年金の申請代行は社労士に依頼すべき?メリットと費用を解説] を参考に、専門家の活用もぜひ検討してください。
まとめ
今回は、「障害年金と傷病手当金は同時に受給できる?」という疑問について、その調整ルールと注意点を詳しく解説しました。最後に、重要なポイントを振り返りましょう。
- 障害年金と傷病手当金の同時受給は可能だが、併給調整が行われる。
- 調整は障害年金が優先され、傷病手当金の側が減額または支給停止される。
- 特に障害年金の遡及請求をする際は、傷病手当金の返還が発生する可能性があり、細心の注意が必要。
- 初診日の解釈や健康保険組合の独自ルールなど、専門的な知識がなければ判断が難しい点が多い。
同時受給の調整は、障害年金制度の中でも特に複雑で、間違いが起こりやすい部分です。もしあなたが「自分の場合はどうなるんだろう?」と少しでも不安を感じたら、それは専門家に相談するサインです。私たちHR BrEdge(エイチアールブレッジ)社会保険労務士法人では、LINEやZoomを活用したオンラインでの無料相談を全国から受け付けております。複雑な手続きの不安から解放され、安心して治療に専念するためにも、ぜひ一度、私たち専門家にお声がけください。




