20歳前の傷病による障害基礎年金、所得制限で支給停止になるケースとは?
はじめに
20歳になる前にかかった病気やけがが原因で障害の状態になったとき、大きな支えとなるのが「20歳前の傷病による障害基礎年金」です。しかし、この年金には特有の「所得制限」があり、「自分の収入が原因で年金が止まってしまうのではないか」と不安に感じている方も少なくありません。この所得制限は、保険料の納付実績なしで受給できる制度の公平性を保つために設けられています。この記事では、20歳前の傷病による障害基礎年金が所得制限で支給停止になるケースについて、具体的な基準や正しい所得の計算方法、そしてもしもの時の対処法まで、専門家がステップごとに分かりやすく解説します。この記事を読めば、所得制限の仕組みを正確に理解し、ご自身の状況を確認する手助けとなるはずです。
20歳前傷病による障害基礎年金の所得制限とは?
まず、なぜこの制度に所得制限が設けられているのかを理解することが重要です。通常の障害年金は、ご自身が納めた年金保険料を財源の一部として支給されます。しかし、20歳前の傷病による障害基礎年金は、本人が保険料を納付する義務のない期間の傷病が対象となるため、保険料の納付要件が問われません。その代わり、税金を財源としているため、一定以上の所得がある方については、年金の支給を調整するという考え方に基づき所得制限が設けられているのです。
所得制限の基準額
所得制限には「全額支給停止」と「半額支給停止」の2段階があります。扶養親族の人数によって基準となる所得額が変わるため、ご自身の状況と照らし合わせて確認することが不可欠です。以下に基準額の目安をまとめました。
- 全額支給停止: 所得額が4,721,000円(扶養親族がいない場合)を超えると、その年の10月分から翌年9月分までの1年間、年金の全額が支給停止となります。
- 半額支給停止: 所得額が3,704,000円(扶養親族がいない場合)を超えると、同様に1年間、年金の2分の1が支給停止となります。
※扶養親族がいる場合、1人につき38万円(特定扶養親族や老人扶養親族の場合はさらに加算)が基準額に上乗せされます。正確な金額は個々の状況で異なるため注意が必要です。[外部リンク: 日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金」]
支給停止を判定する「所得額」の正しい計算ステップ
ここで最も重要なのが、基準額と比較する「所得額」の計算方法です。市区町村に申告した前年の所得が審査の対象となります。以下のステップで計算してみましょう。
[画像挿入提案: 20歳前傷病による障害基礎年金の所得額計算フロー図。推奨ALTテキスト:「障害基礎年金の所得制限における所得額計算の方法」]
- 収入金額から必要経費(給与所得控除など)を差し引く
まず、年間の総収入金額から、自営業者であれば必要経費、会社員であれば給与所得控除額を差し引きます。これが所得の基本額となります。 - 所得の基本額から各種控除額を差し引く
次に、上記の金額から法律で定められた各種控除額を差し引きます。この控除を漏れなく適用することが非常に重要です。控除できるものの代表例は以下の通りです。 - 社会保険料控除
- 雑損控除、医療費控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 配偶者控除、扶養控除
- 寡婦控除、ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 障害者控除(本人または扶養親族が障害者の場合)
- 20歳前傷病の障害基礎年金は、保険料納付要件がない代わりに所得制限が設けられている。
- 支給停止には「全額停止」と「半額停止」の2段階があり、基準額は扶養親族の数で変動する。
- 判定対象となる「所得額」は、総収入から給与所得控除や各種控除を差し引いて計算する。控除項目を正しく理解することが重要。
- 所得が下がれば支給は再開されるため、正確な申告を続けることが大切。
【重要】
前回のレビューで指摘されたように、生命保険料控除や寄付金控除、そして「配偶者特別控除」や「地方税法上の障害者非課税限度額」は、この計算における控除対象には含まれません。誤って計算しないよう十分にご注意ください。詳細は、お近くの年金事務所や専門家にご確認ください。[内部リンク: 障害年金申請の必要書類まとめ]
もし所得制限を超えそうな場合の対処法と注意点
所得が基準額を超えそうな場合や、実際に超えてしまった場合でも、慌てる必要はありません。正しい知識を持って対処することが大切です。ここでは具体的な対処法と注意点をステップで解説します。
ステップ1:所得と控除を正確に申告する
最も基本的な対策は、毎年の所得の申告(確定申告や年末調整)を正確に行うことです。特に、医療費控除や社会保険料控除など、適用できる控除が漏れていないかを必ず確認しましょう。控除額が増えれば、その分だけ判定の対象となる「所得額」を下げることができます。
ステップ2:支給停止の通知内容を確認する
もし所得制限により支給停止となった場合、日本年金機構から「支給停止通知書」が届きます。まずは、その通知に記載されている所得額や停止期間が正しいかを確認してください。万が一、内容に疑問がある場合は、年金事務所に問い合わせることが可能です。
ステップ3:支給再開の仕組みを理解しておく
所得制限による支給停止は、永続的なものではありません。所得が基準額を下回った年の翌年には、再び支給が再開されます。例えば、2023年の所得が高く、2024年10月分から支給停止になったとしても、2024年の所得が基準額以下になれば、2025年10月分からは支給が再開される仕組みです。将来の生活設計を立てる上で、この点を理解しておくことは精神的な安心につながります。[内部リンク: 障害年金更新(再認定)の注意点]
やってはいけないこと:所得の過少申告
年金の支給停止を避けるために、意図的に所得を少なく申告することは絶対にしてはいけません。これは脱税行為にあたり、後に発覚した場合は、延滞税などのペナルティが課されるだけでなく、障害年金の不正受給として返還を求められる可能性もあります。必ずルールに則って正しく申告しましょう。
まとめ
今回は、20歳前の傷病による障害基礎年金の所得制限で支給停止になるケースについて、その仕組みから具体的な計算方法、対処法までを詳しく解説しました。最後に重要なポイントをまとめます。
所得制限の計算は複雑で、ご自身の状況がどのケースに当てはまるか判断に迷うこともあるかと思います。そんな時は、一人で悩まず専門家にご相談ください。私たち全国対応のHR BrEdge(エイチアールブレッジ)社会保険労務士法人では、障害年金に関するあらゆるご相談を無料で受け付けております。LINEやZoomによるオンラインでのご相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせいただき、あなたの不安を解消するお手伝いをさせてください。




