発達障害(ADHD/ASD)で障害年金はもらえる?認定基準と申請のリアルな現実
はじめに
発達障害(ADHD/ASD)の特性により、日常生活や仕事で大きな困難を感じ、「もしかしたら障害年金の対象になるかもしれない」とお考えではありませんか。しかし、発達障害は外見からは分かりにくい「見えない障害」であるため、その困難さが正しく評価されず、申請をためらったり、不支給になったりするケースが少なくありません。ご自身の状況が認定基準に当てはまるのか、どうすれば受給に繋がるのか、不安や疑問でいっぱいになるのは当然のことです。この記事では、発達障害の障害年金申請におけるリアルな現実と、受給の可能性を高めるための専門的なポイントを徹底解説します。一人で抱え込まず、正しい知識を身につけることが、経済的な安心への第一歩です。お困りの際は、全国対応のHR BrEdge(エイチアールブレッジ)社会保険労務士法人へお気軽にご相談ください。
発達障害の障害年金における認定基準の「壁」とは?
発達障害で障害年金を申請する際、多くの方が直面するのが「認定基準の壁」です。特に、その特性が日常生活や就労にどの程度の影響を及ぼしているかを客観的に証明することが最大の難関となります。なぜなら、身体の障害とは異なり、困難さの度合いが数値化しにくいからです。
障害年金の審査では、国際疾病分類(ICD-10コード)において、自閉症スペクトラム障害(ASD)は「F84」、注意欠如・多動性障害(ADHD)は「F90」などに分類されますが、単に診断名がつくだけでは受給できません。重要なのは、その特性によって「日常生活能力」がどの程度制限されているかという点です。
審査で用いられる「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」では、日常生活能力を以下の7つの場面で評価します。
- (1)適切な食事
- (2)身辺の清潔保持
- (3)金銭管理と買い物
- (4)通院と服薬
- (5)他人との意思伝達及び対人関係
- (6)身辺の安全保持及び危機対応
- (7)社会性
例えば、ASDの特性を持つAさんのケースを考えてみましょう。Aさんは有名大学を卒業し、専門職として働いていますが、感覚過敏がひどく、職場の雑音で集中できずにミスを連発。また、対人関係の構築が極端に苦手で、同僚との連携が取れず孤立し、抑うつ状態を併発してしまいました。この場合、「働けている」という事実だけを見ると軽度と判断されがちですが、「多大なストレスと周囲の特別な配慮のもとで、ようやく限定的な就労ができている」という実態を証明できれば、障害年金の受給に繋がる可能性があります。
また、発達障害の申請で論点になりやすいのが「初診日」です。発達障害は先天的な脳機能の障害とされていますが、障害年金制度上の初診日は「発達障害の症状で初めて医師の診察を受けた日」を指します。この初診日にどの年金制度に加入していたか(国民年金か厚生年金か)で、受給できる年金の種類や額が変わるため、正確な証明が不可欠です。20歳前に初診日がある場合は障害基礎年金の対象となります。[画像挿入提案: ここに「日常生活能力の評価項目」を図で示した画像を挿入。推奨ALTテキスト:「発達障害の障害年金で評価される7つの日常生活能力」]
このように、発達障害の障害年金申請は、表面的な事実だけでなく、その背景にある困難さの「実態」を、客観的な基準に沿って論理的に主張することが求められるのです。
出典:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」
発達障害で障害年金の受給につなげるための行動ステップ
認定基準の壁を乗り越え、発達障害で障害年金の受給を実現するためには、戦略的な準備が不可欠です。ここでは、申請の成功率を高めるための具体的な5つのステップを解説します。
ステップ1:初診日を客観的証拠で確定させる
理由:初診日が確定しないと、申請手続きそのものが進みません。特に厚生年金に加入していた時期に初診日があれば、障害厚生年金の対象となり、受給額が大きく変わる可能性があります。
方法:最初に受診した医療機関で「受診状況等証明書」を取得します。もし病院が廃院していたり、カルテが破棄されていたりしても諦めないでください。当時の診察券、お薬手帳、生命保険の告知書、第三者の証明など、複数の資料を組み合わせることで初診日を証明できる場合があります。
効果:申請の土台が固まり、適切な種類の障害年金を請求できます。
ステップ2:診断書依頼時に「日常生活の困難さ」を文書で医師に伝える
理由:診察時間は限られています。医師はあなたの日常生活の全てを把握しているわけではありません。口頭での説明だけでは、困難さが十分に伝わらない可能性があります。
方法:診断書作成を依頼する際に、日常生活や仕事で困っていることを場面ごとに具体的に書き出したメモを渡しましょう。「計画的に物事を進められない」「急な予定変更に対応できずパニックになる」など、発達障害の特性に起因する困難さを具体的に記述します。
効果:医師が診断書を作成する際の重要な参考情報となり、実態に即した内容が記載される可能性が高まります。
ステップ3:「病歴・就労状況等申立書」で“人生の物語”を伝える
理由:診断書が医師の客観的な所見を記す「スナップショット」だとすれば、「病歴・就労状況等申立書」はご自身の言葉でこれまでの人生の歩みと困難さを綴る「ドキュメンタリー」です。
方法:この書類を通じて、診断書の行間にある日常生活のリアルな支障を具体的に伝えます。例えば「なぜ簡単な事務作業でミスが頻発するのか」「家族や同僚のどのようなサポートがあって、かろうじて社会生活を送れているのか」といった点を、幼少期から現在まで時系列で丁寧に記述します。これが審査官に実態を理解してもらう鍵となります。[内部リンク: 病歴・就労状況等申立書の詳しい書き方]は、こちらの記事も参考にしてください。
効果:診断書を補強し、あなたの困難さの全体像を審査官に立体的に伝えることができます。
ステップ4:就労状況を正確に申告する
理由:「働いている=障害が軽い」と短絡的に判断されるわけではありません。審査では、就労の「質」が重視されます。
方法:一般雇用か障害者雇用か、業務内容、勤務時間、給与額に加え、「職場でどのような配慮を受けているか(指示は口頭ではなくメモで貰う、業務量を調整してもらっているなど)」を具体的に申告します。
効果:支援や配慮がなければ就労が困難であることを示し、障害等級の適切な評価に繋がります。
【やってはいけない行動】実態よりも軽く申告してしまうこと
申請書類を作成する際、遠慮や見栄から「これくらいはできる」「迷惑をかけたくない」と、実際の困難さよりも軽く書いてしまう方がいます。しかし、障害年金はあくまでご自身の状態をありのままに伝えることが重要です。できないこと、助けが必要なことを正直に記載しなければ、正当な審査を受けることはできません。
出典:厚生労働省「障害年金ガイド」
まとめ:専門家に相談することが、発達障害の障害年金申請における最善手
ここまで、発達障害(ADHD/ASD)で障害年金を受給するための認定基準と、申請の具体的なステップについて解説してきました。重要なポイントを改めて整理します。
- 発達障害の審査では「日常生活能力」がどの程度制限されているかが最も重視される。
- 「初診日の証明」「実態を反映した診断書」「困難の背景を伝える病歴・就労状況等申立書」の3点が申請の成否を分ける。
- 就労していても、その内容や職場での配慮の実態を具体的に示すことで受給の可能性はある。
発達障害の障害年金申請は、その特性ゆえの困難さを書類上でいかに的確に表現するかが求められる、非常に専門性の高い手続きです。もし少しでも申請に不安を感じたり、何から手をつけて良いか分からなかったりする場合は、一人で悩まずに専門家である社会保険労務士に相談することをお勧めします。社会保険労務士は、年金制度のプロとして、あなたの代理人となり複雑な手続きをサポートすることが法律で認められています。全国対応のHR BrEdge(エイチアールブレッジ)社会保険労務士法人では、LINEやZoomを活用したオンラインでの無料相談も実施しております。あなたの状況を丁寧にお伺いし、受給に向けた最適な道筋を一緒に考えます。まずは一歩、踏み出してみませんか。




