障害年金と生活保護は併用できる?複雑なルールと失敗を防ぐ注意点を徹底解説【プロが教える】
【この記事の結論】
【結論】障害年金と生活保護は併用可能です。ただし、障害年金は「収入」とみなされるため、生活保護費から同額が差し引かれます。

具体的なポイント:
- 併用は可能:ただし、障害年金分だけ生活保護費が減額されます。
- 総額が増える可能性:障害等級1級・2級相当の場合、生活保護の「障害者加算」がつき、受給総額が増えるケースがあります。
- 遡及請求の注意点:過去分の年金を一括で受け取ると、その期間の生活保護費を返還しなければならない義務(法第63条)が生じます。
- 手続きの鉄則:申請前に必ず担当のケースワーカーに相談してください。
※自己判断で申請を進めると、後から返還請求などのトラブルになる恐れがあります。不安な方は専門家への相談をおすすめします。
「生活保護を受けているけれど、障害年金も申請できるの?」
「両方もらえたら生活が楽になるはず…」
「でも、役所に黙って申請したら怒られる?」
このような疑問や不安をお持ちの方は非常に多くいらっしゃいます。生活保護と障害年金は、どちらも生活を支える大切な制度ですが、その関係性は非常に複雑です。「両方もらって収入が倍になる」と誤解されている方もいますが、実際には厳密な調整ルールが存在します。
知識がないまま進めてしまうと、「苦労して年金を受け取ったのに、全額役所に返還することになった」「手続きの順番を間違えて損をしてしまった」という事態になりかねません。
本記事では、年間数多くの相談を受ける大阪難波の社会保険労務士事務所が、障害年金と生活保護の併用について、仕組みから注意点までを徹底解説します。特に「失敗しないためのポイント」に重点を置いていますので、ぜひ最後までお読みいただき、正しい知識を身につけてください。
障害年金と生活保護、それぞれの制度の基本を理解しよう
制度の役割と「他法優先の原則」
まず、2つの制度の決定的な違いを理解しましょう。
- 障害年金:病気やケガで働けなくなった人が、保険料を納めていた対価として受け取る「権利」です。資産や家族の収入があっても受け取れます。
- 生活保護:生活に困窮するすべての人に対し、最低限度の生活を保障する「最後のセーフティネット」です。あらゆる資産や能力を活用しても生活できない場合に支給されます。
生活保護法には「他法優先の原則」というルールがあります。これは、「他の法律や制度(障害年金など)で活用できるものがあれば、まずはそれを優先して使いなさい」という決まりです。
そのため、生活保護を受給している方が障害年金の受給要件(障害等級に該当するなど)を満たす可能性がある場合、福祉事務所(役所)から「障害年金を申請してください」と指導されることがあります。これは嫌がらせではなく、法律に基づいた適正な手続きなのです。
よくある3つの誤解
❌ 誤解1: 「両方満額もらえて収入が倍になる」
✅ 正解: 収入は倍にはなりません。障害年金を受け取った分、生活保護費が減額されます。
❌ 誤解2: 「生活保護を受けていると障害年金は申請できない」
✅ 正解: 申請できます。むしろ、受給要件を満たすなら申請する義務があるとも言えます(他法優先の原則)。
❌ 誤解3: 「障害年金をもらうと生活保護は打ち切りになる」
✅ 正解: 必ずしも打ち切りにはなりません。障害年金の額が生活保護の基準額より少なければ、差額分の生活保護費は継続して支給されます。
知っておきたい豆知識
実は、障害年金の審査結果が出るまでには数ヶ月かかりますが、その間も生活保護費は支給され続けます。また、障害年金の申請にかかる診断書代などの費用について、自治体によっては「自立更生費」として一時的に支給してくれる場合もあります。必ず事前にケースワーカーに相談してみましょう。
障害年金と生活保護の併用は可能?気になる調整ルールを徹底解説
収入認定の仕組みと計算式
障害年金と生活保護を併用する場合、最も重要なのが「収入認定」という仕組みです。生活保護制度では、障害年金は「収入」として扱われます。
基本的な計算式は以下のようになります。
つまり、国が定めた最低生活費(家賃扶助+生活扶助など)から、入ってきた障害年金の額を差し引き、足りない分だけが生活保護費として支給されます。結果として、手元に残るお金の総額は、基本的には変わりません。
ケーススタディ:Aさんの場合
【状況】単身でうつ病治療中のAさん。最低生活費(生活保護基準額):月額 130,000円
【障害年金受給前】生活保護費として 130,000円 支給。
【障害基礎年金2級(月額 約68,000円)が決まった場合】1. 障害年金:68,000円を受け取る(偶数月に2ヶ月分振込)。2. 生活保護費:130,000円 - 68,000円 = 62,000円 に減額支給。3. Aさんの手元資金:68,000円(年金)+ 62,000円(保護費)= 130,000円
このように、基本的には「財布の中身」の合計額は変わりません。しかし、次項で解説する「障害者加算」が適用されると話が変わります。
【重要】「障害者加算」による実質増額
ここが最大のポイントです。障害年金の等級が1級または2級に認定されると、生活保護の計算において「障害者加算」という上乗せ手当が付く可能性が高いです。
- 障害者加算(1級相当):月額 約26,000円程度(地域による)
- 障害者加算(2級相当):月額 約17,000円程度(地域による)
もし先ほどのAさんが障害者加算(月17,000円)の対象になった場合、最低生活費が130,000円から147,000円にアップします。その結果、手元に残る総額も月額17,000円増えることになります。これが併用の最大のメリットです。
併用で失敗しないために!メリット・デメリットと知っておくべき注意点
【メリット】経済的・精神的な安定
なぜ重要か: 生活保護だけの生活は、常に「自立しなければ」というプレッシャーや、ケースワーカーによる指導があります。障害年金を受給することで、以下のメリットが得られます。
具体的な効果: 1. 収入総額のアップ:前述の通り、障害者加算がつけば月額1.7万〜2.6万円程度、使えるお金が増えます。2. 精神的な安定:障害年金は「自分の権利」として受け取るお金です。もし将来生活保護を抜けることになっても、障害年金は継続して受給できるため、自立への大きな足がかりになります。
【注意点1】遡及請求による返還義務トラブル
なぜ重要か: 障害年金は、認定されれば過去にさかのぼって(最大5年分)一括で支払われることがあります(遡及請求)。数百万円が口座に振り込まれることもありますが、ここには大きな落とし穴があります。
具体的なリスクと対応: 過去の期間中も生活保護を受けていた場合、その期間の生活保護費は「返還」しなければなりません(生活保護法第63条)。
「大金が入った!」と喜んで使い込んでしまうと、後から役所から数百万円の返還を求められ、最悪の場合、生活保護の停止や不正受給扱いになるリスクがあります。遡及分が入金されても、絶対に手を付けず、まずはケースワーカーに報告してください。
【注意点2】社労士費用の取り扱い
なぜ重要か: 障害年金の申請を社労士に依頼した場合、報酬が発生します。しかし、生活保護受給者の場合、この報酬を経費として認めてもらえるかどうかは自治体の判断によります。
具体的な対応: 認められない場合、遡及金から全額返還を求められ、手元に社労士費用の支払い分が残らないという事態になりかねません。必ず契約前に、ケースワーカーへ「社労士に依頼したいが、その費用は必要経費として認めてもらえるか(収入認定から除外してもらえるか)」を確認してください。多くの自治体では事前に相談することで認められる傾向にあります。
【NG】ケースワーカーへの無断申請
なぜNGか: 生活保護受給者には、収入や生活状況の変化を報告する義務があります。黙って申請し、後から年金の入金が発覚すると、信頼関係が崩れるだけでなく、「収入隠し」として厳しく処分される可能性があります。
正しい対応: 「障害年金の申請を考えている」段階で相談しましょう。適切なアドバイスをもらえるだけでなく、診断書料の支給などサポートを受けられる場合もあります。
障害年金と生活保護に関するよくある疑問Q&A|専門家が不安を解消
Q1. 障害年金3級でも生活保護の障害者加算はつきますか?
A. 原則として、障害年金3級では障害者加算はつきません。
障害者加算の対象は、身体障害者手帳1・2級、または障害年金1・2級に相当する状態とされています。ただし、自治体によっては独自の判断基準を持っている場合もあるため、念のためケースワーカーに確認することをおすすめします。加算がつかなくても、将来の自立に向けた財源確保として年金申請には意味があります。
Q2. 障害年金をもらうと医療費がかかるようになりますか?
A. いいえ、生活保護を受給している限り医療扶助は続きます。
生活保護受給中は、国民健康保険ではなく生活保護の医療扶助で受診するため、窓口負担は原則無料のままです。障害年金を受給しても、生活保護が廃止にならない限り医療費の心配はありません。
Q3. 障害年金の更新で落ちたら、生活保護も減らされますか?
A. いいえ、生活保護費は元の金額に戻ります。
もし障害年金の更新で不支給になった場合、年金収入がなくなります。その分、生活保護費の減額調整もなくなるため、支給される生活保護費が増え、元の生活水準が維持されます。生活を守るためのセーフティネットですのでご安心ください。
Q4. 社労士への依頼費用が払えるか心配です。
A. 多くの事務所では「完全成功報酬」や「分割払い」に対応しています。
特に生活保護受給者の方の場合、初期費用(着手金)の支払いが難しいことを考慮し、年金が振り込まれてからの後払いに対応している事務所がほとんどです。また、前述の通り、自治体と事前協議することで、遡及金から報酬を支払うことが認められるケースも多々あります。まずは無料相談で費用面も含めてご相談ください。
🔔 無料相談のご案内
障害年金と生活保護の併用手続きは、役所との調整や複雑な計算が必要で、一人で進めるには不安が大きいものです。
- ✅ 初回相談無料 – 受給の可能性や加算の見込みを診断
- ✅ 全国・オンライン対応OK – ご自宅から安心して相談可能
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※受付時間: 平日9:00〜18:00(土日祝も対応可能)
まとめ
本記事では、障害年金と生活保護の併用について、以下のポイントを解説しました:
- 障害年金と生活保護は併用可能だが、収入認定により保護費は調整される。
- 障害年金1級・2級なら「障害者加算」により、実質的な受給総額が増えるメリットがある。
- 過去分の年金(遡及請求)を受け取ると、同期間の生活保護費を返還する義務が生じる。
- トラブルを防ぐため、申請前・受給決定時には必ずケースワーカーへ報告・相談する。
「手続きが難しそう」「役所に何を言われるか怖い」と不安に思う方もいるかもしれません。しかし、障害年金はあなたの正当な権利であり、適切に手続きを行えば生活をより安定させる大きな力になります。
【今日からできること】まずは、ご自身の障害の状態が年金の等級に該当しそうか確認することから始めましょう。そして、社労士などの専門家に相談し、ケースワーカーとの円滑な連携方法についてアドバイスを受けることをおすすめします。
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