障害年金コラム

【社労士解説】障害年金が「不支給」になる9つの理由と回避策|失敗を防ぐ申請の落とし穴

【この記事の結論】

障害年金が不支給になる主な理由は、以下の3点に集約されますが、細かな書類不備を含めると9つの落とし穴が存在します。

【社労士解説】障害年金が「不支給」になる9つの理由と回避策|失敗を防ぐ申請の落とし穴
  • 障害の状態が等級基準に達していない(軽いと判断された)
  • 初診日が証明できない、または特定できない
  • 保険料の納付要件を満たしていない

※特に近年、精神障害での不支給判定が増加傾向(令和6年度調査で約12%)にあり、審査が厳格化しています。申請前に「不支給リスク」を潰しておくことが受給への最短ルートです。

「診断書を出せばもらえると思っていたのに、不支給通知が届いた…」 「初診日がわからないと言われ、門前払いされてしまった」 「働いているから無理だと諦めていた」

障害年金の申請において、このような後悔をする方は後を絶ちません。実際、令和6年度の新規裁定における不支給率は約13.0%に達し、前年度から急増しているという厳しいデータもあります(厚生労働省調査より)。

障害年金は、書類審査だけで結果が決まる「一発勝負」の側面が強い制度です。一度不支給になると、その結果を覆すには膨大なエネルギーと時間がかかります。

本記事では、年間数多くの申請をサポートする社会保険労務士が、障害年金が不支給になる「9つの理由」と、それを未然に防ぐための「8つの回避策」を徹底解説します。この記事を読むことで、審査の落とし穴を事前に把握し、受給の可能性を最大化するための具体的な知識が得られます。

記事の最後には、個別の状況に応じた無料相談のご案内もしていますので、ぜひ最後までお読みください。

障害年金が「不支給」となる実態|知っておくべき9つの主な理由

制度の概要と不支給の現状

障害年金は、病気や怪我によって生活や仕事に支障が出ている現役世代を支える公的な制度です。しかし、申請すれば誰でも受給できるわけではなく、厳格な審査が行われます。

最新の統計データ

厚生労働省の最新調査(令和6年度)によると、障害年金の新規申請における不支給率(非該当率)は約13.0%でした。特に精神障害の分野では不支給率が約12.1%と、前年度の6.4%から約2倍に急増しており、審査基準の運用が厳格化している傾向が見られます。

よくある3つの誤解

❌ 誤解1: 「主治医が診断書を書いてくれれば必ず通る」

✅ 正解: 医師は医療のプロですが、年金審査のプロではありません。診断書の内容が「認定基準」に合致していなければ、医師が書いても不支給になります。

❌ 誤解2: 「働いていると絶対にもらえない」

✅ 正解: 就労していても、配慮を受けながらギリギリの状態で働いている場合などは受給の可能性があります。就労の事実だけで即不支給にはなりません。

❌ 誤解3: 「不支給になっても、何度でも気軽に出し直せる」

✅ 正解: 一度「不支給」という行政処分が下ると、その記録は残ります。同じ資料で再申請しても結果は変わりません。決定を覆すハードルは初回申請よりも遥かに高くなります。

障害年金が「不支給」になる9つの理由

1. 障害等級に該当しない(状態が軽いと判断される)

最も多い理由です。自分では辛いと思っていても、診断書や申立書の記載内容から「日常生活や就労に大きな制限はない」と審査側が判断すれば、3級や2級の基準に達せず「非該当」となります。

2. 初診日が特定・証明できない

障害年金では「初診日」が非常に重要です。カルテの保存期間(5年)が過ぎて破棄されていたり、病院が廃業していたりして初診日を証明できないと、そもそも審査の土俵に上がれず却下されます。

3. 保険料納付要件を満たしていない

初診日の前日時点で、一定の保険料納付実績が必要です。「初診日がある月の前々月までの公的年金加入期間」において、未納が3分の1以上ある場合などは受給できません。

4. 診断書と申立書の整合性が取れていない

医師が書く「診断書」と、自身で書く「病歴・就労状況等申立書」の内容に矛盾があるケースです。例えば、申立書では「寝たきり」と書いているのに、診断書では「一人で外出可能」となっていれば、信憑性が疑われます。

5. 就労状況から「支障なし」と判断される

特に精神疾患の場合、フルタイムで欠勤なく働けていると「障害の状態は軽い」とみなされやすくなります。職場で受けている配慮や、帰宅後の疲労困憊した状態が正しく伝わっていないと不支給の原因になります。

6. 対象外の傷病名である(神経症など)

原則として「神経症(パニック障害、適応障害、不安障害など)」は認定の対象外とされています。ただし、精神病の病態を示していることが診断書から読み取れれば対象になる例外もありますが、ハードルは高いです。

7. 20歳前傷病における所得制限

20歳前に初診日がある「障害基礎年金」の場合、本人に一定以上の所得(単身世帯で約370万円以上など)があると、支給が停止されたり全額支給されなかったりします。

8. 受給要件の誤認(65歳以降の初診など)

原則として、65歳を過ぎてから初診日がある場合は、障害年金の請求はできません(老齢年金の受給対象となるため)。制度自体の要件を勘違いしているパターンです。

9. 書類の記載ミス・不備

単純な記載ミスや添付書類の漏れも、審査の遅延や返戻の原因となります。特に日付の不整合は致命的です。

不支給を回避するための「逆転」戦略|申請失敗を防ぐ8つの対策

【ポイント1】初診日の徹底的な調査と証明

なぜ重要か: 初診日が決まらないと、どの年金制度(国民年金か厚生年金か)を使うかも、納付要件の判定時点も決まりません。これが全ての出発点です。

具体的な方法:

  • 古い診察券、お薬手帳、生命保険の給付記録などを家探しする。
  • 病院が廃業している場合は「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成し、2名以上の第三者証明(隣人や当時の同僚など)を添付する。

【ポイント2】保険料納付記録の事前確認

なぜ重要か: どんなに障害が重くても、納付要件を満たしていなければ1円も受給できません。

具体的な方法:

  • 最寄りの年金事務所で、初診日時点での納付状況を確認する。
  • 未納が多い場合でも、初診日をずらす(社会的治癒の援用など)ことで要件を満たせる可能性がないか、専門家と検討する。

【ポイント3】医師へ「日常生活の困難さ」をメモで渡す

なぜ重要か: 診察時間は短く、医師は患者の家庭での様子まで把握していません。また、患者は医師の前では気丈に振る舞いがちで、カルテには「元気そう」と書かれてしまうことがあります。

具体的な方法:

  • 「食事を作れない」「風呂に入れない」「買い物に行けない」など、具体的な生活の支障をまとめたメモを作成し、診断書作成時に医師に渡す。

【ポイント4】完成した診断書の「記載漏れ・不備」チェック

なぜ重要か: 医師も人間であり、記入漏れやチェックミスは起こり得ます。特に裏面の「日常生活能力の判定」などの欄に空欄があると、審査において不利になることがあります。

具体的な方法:

  • 封をされた診断書であっても、本人には開示を求める権利があるため、提出前に必ず中身を確認する(または医師にコピーをもらう)。
  • 記載内容が事実と明らかに異なる場合は、提出前に訂正を依頼する。

【ポイント5】病歴・就労状況等申立書を具体的に書く

なぜ重要か: 審査員は申請者に一度も会わずに審査します。申立書は、唯一自分で「辛さ」を訴えられる書類です。

具体的な方法:

  • 「辛かったです」という感情論ではなく、「週に○回しか外出できない」「仕事ではミスが多く、上司から〇〇と注意された」など、客観的な事実とエピソードを書く。
  • 発病から現在まで、期間を空けずに継続して状況を記載する。

【ポイント6】就労状況について「配慮」を明記する

なぜ重要か: 働いている場合、「一般就労できている=障害等級に該当しない」と判断されるリスクがあります。

具体的な方法:

  • 職場で受けている配慮(短時間勤務、業務量の調整、頻繁な休憩など)を診断書や申立書に詳述する。
  • 「就労はできているが、それは多大な配慮と本人の無理な努力の上で成り立っている」ことを主張する。

【ポイント7】社労士による事前レビューを受ける

なぜ重要か: 一般の方が自分の書類を客観的に見るのは困難です。専門家の視点で「審査員がどう読み取るか」を確認することで、不支給リスクを大幅に減らせます。

具体的な方法:

  • 無料相談などを活用し、提出前に書類一式の整合性をチェックしてもらう。

【ポイント8】不支給決定後の「審査請求」を視野に入れる

なぜ重要か: 万が一不支給となった場合でも、決定を知った翌日から3ヶ月以内であれば「審査請求(不服申し立て)」が可能です。

具体的な方法:

  • 諦めずに、不支給理由を分析し、反論資料を揃えて審査請求を行う。ただし、これには高度な専門知識が必要となるため、最初から専門家をつけることが望ましい。

※ここまでの手順で不安や疑問がある方は、専門家への相談をおすすめします。当事務所では初回相談無料で対応しており、あなたの状況に合わせた最適な戦略を提案できます。

障害年金「不支給」に関するよくある質問|不安を解消するQ&A

Q1. 働いていると障害年金は不支給になりますか?

A. いいえ、必ずしも不支給になるわけではありません。

就労していても、職場での援助や配慮が必要不可欠な状態であったり、仕事以外の日常生活に著しい制限があったりする場合は、受給できる可能性があります。実際に、精神障害や内部障害を持ちながら働き、障害年金を受給している方は多数いらっしゃいます。

Q2. 一度不支給の通知が来たら、もう二度と申請できませんか?

A. いいえ、再申請や不服申し立てが可能です。

不支給決定から3ヶ月以内であれば「審査請求(不服申し立て)」ができます。また、期間が過ぎてしまった場合や、症状が悪化した場合などは、改めて最初から申請し直す「再請求」という方法もあります。ただし、一度不支給とされた理由を解消しなければ、同じ結果になるため注意が必要です。

Q3. 診断書の内容が軽い場合、書き直してもらえば通りますか?

A. 提出前に書き直してもらうことは有効ですが、提出後の修正は困難です。

一度年金事務所に提出した診断書は、後から「書き間違えました」と言っても簡単には認められません。だからこそ、提出前にご自身や専門家が内容を確認し、実態と乖離がある場合は医師に相談して修正してもらうプロセスが極めて重要になります。

Q4. 申請から結果が出るまでどのくらいの期間がかかりますか?

A. 通常、申請から3ヶ月〜4ヶ月程度かかります。

ただし、審査の過程で内容確認のために診断書の照会(医師への問い合わせ)が入ったり、書類に不備があって返戻されたりすると、半年以上かかることもあります。早めの準備と、不備のない書類作成が早期受給のカギです。

Q. 精神疾患では障害年金は認定されにくいと聞きましたが本当ですか?

A. いいえ、現在は精神疾患が受給者の中で最も多い割合を占めています。

確かに令和6年度の調査では不支給率の上昇が見られましたが、それでも受給決定者の約半数は精神障害の方です。重要なのは、「うつ病だからもらえる」と安易に考えるのではなく、その症状がいかに日常生活や就労能力を奪っているかを、具体的かつ客観的に証明することです。適切な準備をすれば、正当に評価されます。

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まとめ

本記事では、障害年金が不支給になる理由と回避策について解説しました:

  • 不支給理由は「等級不該当」「初診日不明」「納付要件未達」が3大要因
  • 最新の統計では、特に精神障害の不支給率が増加傾向にあるため対策が必須
  • 医師任せにせず、メモを渡すなどして「生活の困難さ」を正確に伝えることが重要
  • 不支給になっても審査請求や再請求の道はあるが、初回の一発合格を目指すべき

障害年金の申請は、書類一枚の表現で結果が左右される非常にデリケートな手続きです。「自分は大丈夫だろう」という油断が、不支給という辛い結果を招くこともあります。

しかし、正しい知識を持ち、入念に準備を行えば、障害年金はあなたの生活を守る強力な味方となります。「手続きが難しそう」「自分はもらえるかわからない」と悩む前に、まずは専門家の知恵を借りてください。

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