【ICDでわかる!】知的障害の診断基準と等級の違い、障害年金への影響とは?
「知的障害の診断にICDって何?」
「IQだけで判断されるの?」
「ICDの診断基準は障害年金にどう関係してくるの?」
知的障害に関する診断や障害年金の申請を考える際、「ICD(国際疾病分類)」という言葉に出会うことがあるかもしれません。しかし、専門的な用語であるため「よく分からない」と戸惑う方も少なくありません。
なぜ混乱が生まれるのでしょうか?その原因の一つが、「ICD=医学的診断」「年金=生活上の支障」という、評価基準の違いにあります。つまり、ICD上で知的障害と診断されても、障害年金が受けられるとは限らず、逆もまた然りです。
この記事では、知的障害におけるICDの診断基準と、障害年金との関係を詳しく解説します。この記事を読めば、以下のようなことが理解できます:
- ICDにおける知的障害の定義と分類
- IQスコア以外に重視される能力や生活面の評価
- 障害年金での等級判断の基準とICDとの違い
「診断がついたけど、年金の対象か分からない…」と不安を抱える方は、ぜひ読み進めてみてください。
ICDにおける知的障害の分類と診断基準とは?
ICDとは何か?
ICDとは「International Classification of Diseases(国際疾病分類)」の略で、WHO(世界保健機関)が定める全世界共通の疾病分類基準です。日本ではICD-10(第10版)が長らく用いられてきましたが、2025年以降はICD-11の導入も予定されています。
ICD-10における知的障害のコード
知的障害はICD-10では「F70〜F79」に分類されています。代表的な区分は以下の通りです:
- F70:軽度知的障害(IQ 50~69)
- F71:中等度知的障害(IQ 35~49)
- F72:重度知的障害(IQ 20~34)
- F73:最重度知的障害(IQ 20未満)
- F78:その他の知的障害(分類困難な場合)
- F79:知的障害、詳細不明
ICD診断の特徴:IQだけでなく「適応行動」も評価
ICDでは、知的障害の診断にはIQだけでなく、以下の「適応行動(adaptive behavior)」も重視されます:
- 日常生活能力(食事・清潔・移動など)
- 対人関係能力(社会的ルールの理解、他人との意思疎通など)
- 学習能力・職業スキル
つまり、IQが一定以下でも、生活上の支障が軽ければ診断されない場合もあり、その逆もあるのです。
ICD-11ではどう変わる?
ICD-11では「Intellectual Developmental Disorder」という用語に変わり、より包括的な発達的視点が取り入れられています。診断はIQ値に依存せず、「発達年齢」と「生活環境での機能制限」の2軸で総合的に判断される傾向が強くなります。
ICD診断と障害年金等級の違い・関連性とは?
障害年金における知的障害の評価基準
障害年金では、「労働能力」や「日常生活能力」に基づいて等級(1級〜3級)が判断されます。ICDの診断コードそのものではなく、次のような観点が重視されます:
- 単独での通院・買い物が可能か
- 意思疎通の程度
- 金銭管理、服薬管理の可否
- 福祉的支援の有無(障害者手帳の区分など)
等級ごとの生活状況イメージ
- 1級:常時援助が必要。意思疎通が困難で、一人での生活がほぼ不可。
- 2級:日常生活に著しい制限あり。買い物・移動・服薬などに支援が必要。
- 3級:ある程度自立可能だが、労働には著しい制約がある。
ICDと障害年金の評価は別物
重要なのは、ICDによる診断は“医療的評価”であり、障害年金は“生活機能評価”であるという点です。たとえば、ICDで「軽度知的障害」と診断されても、社会的適応が困難であれば2級になる可能性もあります。
事例:20代男性Cさんの場合
CさんはICDで「F71:中等度知的障害」と診断されました。IQは45ですが、身の回りのことは家族の支援があれば何とか対応可能。就労経験はなく、生活支援施設を利用。結果、障害年金は2級に認定されました。
よくある誤解:「診断書にF70とあれば必ず年金がもらえる?」
いいえ、診断名だけでは判断されません。必ず「日常生活の困難さ」が診断書・申立書に具体的に記載されている必要があります。社労士が記載サポートを行う理由もここにあります。
よくある疑問に答えます(Q&A)
Q. 知的障害でIQが低くても、働いていたら障害年金はもらえませんか?
A. 一概には言えません。働いていても支援付きだったり、簡単な作業に限られていたりすれば、等級が認められる可能性があります。勤務状況や生活への支障の程度が判断材料となります。
Q. ICDの診断名がないと申請できませんか?
A. 医師の診断書にはICDコードの記載があることが一般的ですが、診断名そのものよりも、「どのような支障があるか」が年金審査においては重要です。
Q. 障害者手帳とICDの診断名が一致していないけど大丈夫?
A. 問題ありません。手帳と年金は制度が異なり、評価基準も違います。ICDコードの記載が異なっていても、年金では生活機能が重視されます。
Q. ICD-11への変更で年金制度も変わりますか?
A. 現時点ではICD-11の導入が年金制度に直ちに影響することはありません。ただし、診断内容や診断書の書き方が将来的に変化する可能性はあります。
まとめ:ICD診断は“入口”、日常生活の困難さこそが“鍵”
ICDは医学的な診断基準として知的障害の重さを示しますが、障害年金の受給にはそれに加えて「どれだけ生活や仕事に困難があるか」が重視されます。
この記事では以下のことをお伝えしました:
- ICD-10での知的障害分類(F70〜F79)
- IQだけでなく適応行動の評価が必要
- 障害年金は生活機能や支援の必要性が判断基準
ICDの診断名はあくまでスタート地点に過ぎません。「日常生活でどんな困難があるのか」を、申立書や診断書で丁寧に伝えることが、年金受給の可否を左右します。
「自分ではうまく書けない」と感じたら、ぜひ障害年金専門の社労士にご相談ください。制度を正しく理解し、あなたの状況に合った支援を受けることが大切です。