こんにちは。HR BrEdge社会保険労務士法人代表、特定社会保険労務士の渡辺俊一(わたなべとしかず)です。
「扶養内で働きたいけれど、条件がややこしくて、結局何を守ればいいのか分からない」——このお悩み、パートで働いている方からも、パート従業員を雇用している経営者・人事担当者の方からも、毎月のようにいただきます。
実は扶養内の条件って、年収だけで決まるわけではないんです。週の労働時間、月額賃金、雇用期間の見込み、学生かどうかと、全部で5つのハードルがあって、そのどれか1つでも引っかかると扶養から外れてしまう。しかもこの5つのうちの「月8.8万円」という条件が、2026年10月には撤廃されることがすでに決まっています。つまり、従来の感覚でシフトを組んでいると、知らないうちに扶養から外れて社会保険に加入することになりかねません。
さらにもう一つ大きな改正があります。2026年4月からは、130万円の壁の判定方法が「労働契約書の内容ベース」に変わります。これは扶養内で働いている方にとって朗報なのですが、企業側はそれに合わせて労働契約書の整備を今すぐ進める必要があるんです。
これらを一人で正確に把握するのは、正直なかなか大変ですよね。だからこそ、この記事では私が500社を超える顧問先で実際にご相談に乗ってきた経験をもとに、扶養内で働く条件を順を追って丁寧にお話ししていきます。5つの条件の中身、時給別の計算シミュレーション、2026年改正のインパクト、そして企業・パートそれぞれが今すぐやるべきことまで、最新情報で整理しました。最後まで読んでいただければ、もう迷わなくて済むはずです。
扶養内で働く条件とは?税制と社会保険の2種類を整理
まず最初にお伝えしておきたいのが、「扶養」という言葉には税制上の扶養と社会保険上の扶養の2つの種類があって、それぞれ条件がまったく違うということです。ここを混同してしまうと、「社会保険の扶養には入れているのに、なぜ配偶者控除が受けられないの?」といったお悩みにつながるので、最初にきちんと整理しておきましょう。

税制上の扶養(配偶者控除・扶養控除)
税制上の扶養は、わかりやすく言うと「家族を養っている分、税金を軽くしますよ」という仕組みです。たとえば奥様がパートで働いていて年収が基準以下であれば、旦那様の所得税・住民税が配偶者控除で最大38万円軽減されます。
ここで押さえておきたいのが、2025年の税制改正で基準額が変わったことです。従来の103万円から年収123万円以下が新しい配偶者控除の基準になりました(給与所得控除の最低保障額が55万→65万円に引き上げられたためです)。「103万円の壁」と聞き慣れている方も多いと思いますが、今後は「123万円の壁」と言い換える必要があります。
もう一つ税制上の扶養の特徴として、労働時間の制約がないことが挙げられます。週何時間働こうが、月何回出勤しようが関係ありません。1年間の給与収入の合計が基準額以下であれば良い、というシンプルな判定です。また、判定時期はその年の12月31日時点と決まっていて、年末に1年間の収入を集計して翌年の確定申告や年末調整で控除を適用する流れになります。
社会保険上の扶養(保険料負担なし)
一方で、社会保険上の扶養は「配偶者の健康保険・厚生年金の被扶養者として認定される」仕組みです。扶養に入れば、本人は健康保険料も国民年金保険料も1円も払わずに、配偶者の保険証を使えて、将来の年金もしっかり積み上がっていく。この恩恵はとても大きいです。
ただし、税制と違って、社会保険の扶養は条件が複雑です。年収だけでなく、週の労働時間や月額賃金、雇用期間の見込み、学生かどうかまで見られます。そしてこの記事のメインテーマである「扶養内条件」というときに通常指しているのは、この社会保険上の扶養のことです。
判定時期にも大きな違いがあります。税制が「暦年の合計」を見るのに対し、社会保険は「今後1年間の収入見込み」で判定します。つまり、「去年は年収120万円だったから今年も大丈夫」ではなく、「これから先1年間、継続的に年収130万円未満の見込みがあるか」が問われるわけです。この感覚の違いを知らずにシフトを増やしてしまい、扶養から外れてしまうケースを実務でよく見かけます。
【2026年最新】扶養内で働くための5つの条件
ここからが本題です。社会保険上の扶養内で働くには、以下の5つの条件を全部クリアする必要があります。1つでも外れると、勤務先の社会保険に加入する義務が発生して扶養を抜けることに。それぞれを順番に見ていきましょう。

条件1. 年収が130万円未満であること
まずいちばん有名な「130万円の壁」です。年間の給与収入が130万円を超える見込みがあると、扶養から外れる扱いになります。月額で換算すると約10万8,000円が上限の目安になりますね。
ここで少し補足しておきたいのが、「年収」に何が含まれるかという話です。基本給だけでなく、諸手当・賞与・残業代・交通費(通勤手当が固定支給の場合)も合算して130万円未満かどうかで判定されます。意外と見落としがちなのが賞与で、「月収は10万円以下に抑えているから大丈夫」と思っていても、夏冬のボーナスで合計が130万円を超えてしまうケースがあるんです。
なお、本人が60歳以上または障害者の場合は180万円未満、19歳から22歳までの特定親族の場合は150万円未満が基準になります。働き盛りのパートの方とシニアの方、学生のお子さんで基準が違うので、自分や扶養する家族がどのラインにいるのかを必ず確認してください。
条件2. 週の所定労働時間が20時間未満であること
次に週20時間の壁。これはサブKWでも扱っていますが、本当に大事なポイントです。週の「所定労働時間」が20時間以上になると、他の条件と組み合わせて社会保険の加入対象になります。
ここで覚えておいていただきたいのが、判定されるのは「実際の労働時間」ではなく「所定労働時間」ということです。「所定労働時間」とは、労働契約書や労働条件通知書に書かれている、会社と合意した1週間の予定勤務時間のことです。だから、たまたま繁忙期に週22時間働いたからといって、すぐに加入対象になるわけではありません。逆に言うと、契約上週20時間と決まっていれば、実働が少なくても加入対象のままなんですね。
ただし、「契約は週19時間だけど、実態は毎週25時間働いている」という状態が2ヶ月以上続くと、実態で判定される可能性が出てきます。ここが曖昧になると、後から遡って社会保険料を徴収されるなど、トラブルの元になるので注意しましょう。
条件3. 月額賃金が8.8万円未満であること(2026年10月に撤廃予定)
3つ目は「月額賃金8.8万円の壁」、いわゆる「106万円の壁」です。8.8万円×12ヶ月でちょうど105.6万円になるので、年収106万円相当ということですね。月額賃金にはここでも基本給と諸手当が含まれます(ただし残業代・賞与・通勤手当は除外)。
ただし、この条件は2026年10月に撤廃されることが決まっています。2025年6月に成立した改正年金法の重要ポイントの一つで、改正後は「月8.8万円以上」という賃金要件がなくなります。つまり、月収がどんなに低くても、週20時間以上働いていれば社会保険加入の判定対象になる、ということ。これまで「時給を上げて時間を減らして、月8.8万円以下に抑える」という工夫をしていた方も、2026年10月以降は通用しなくなります。この改正のインパクトが大きいので、後ほど独立した章で詳しく解説しますね。
条件4. 2ヶ月を超える継続雇用の見込みがないこと
4つ目の条件は、雇用期間が2ヶ月を超えて継続する見込みがないことです。裏を返すと、2ヶ月を超えて働き続ける見込みがあると、社会保険加入の対象になりえます。
注意していただきたいのは、「1ヶ月ごとの契約を続けている場合も『継続雇用の見込みあり』と判断されることが多い点です。「短期契約だから扶養内で大丈夫」と思っていても、更新が前提となっていたら継続雇用扱い。実務では、短期アルバイトからそのまま長期になるパターンが多いので、3ヶ月目以降のシフトを組む前に一度条件を見直す運用をお勧めします。
条件5. 学生ではないこと
最後の条件は、昼間学生ではないことです。大学生や専門学校生がアルバイトで週20時間以上働いても、この条件で社会保険加入の対象外になります。学業優先ですね。
ただし、夜間学部・通信制・定時制の学生は免除されず、一般労働者と同じ扱いになるので注意が必要です。また、休学中の学生も免除対象外です。「学生なら大丈夫」と一括りにせず、学籍の種別まで確認しましょう。
渡辺 俊一
【計算シミュレーション】扶養内でいくらまで稼げる?
ここからは、多くの方が一番知りたいであろう「結局いくらまで稼いでいいの?」という具体的な計算の話です。時給別にシミュレーションを用意しましたので、ご自身の状況に近いケースを見てみてください。

まずは月収の上限を押さえましょう
年収130万円を12ヶ月で割ると、月収約10.8万円。これが扶養内を維持する月収の目安です。毎月この金額で働き続けると年収約130万円ぴったりなので、実務ではボーナスや臨時手当の余裕を見て、月10万円程度に収めるのが安心ラインかなと思います。
時給別・週の勤務時間の目安
具体的な計算のやり方は、時給 × 週の勤務時間 × 4.3週(1ヶ月の週数)で月収が出ます。時給別にシミュレーションしてみましょう。
時給1,000円のケース
週25時間まで働いて月収約10.8万円(時給1,000円×週25時間×4.3週)、年収は約129万円に収まります。ただし、週25時間は「週20時間の壁」を超えてしまうため、他の条件(月8.8万円、継続雇用など)を満たすと社会保険加入の対象になります。時給1,000円で扶養内を安全に続けるなら、週20時間未満に抑えるのが実質のラインですね。
時給1,200円のケース
週20時間まで働いて月収約10.4万円、年収約124万円。ただし時給1,200円だと、週17時間で月8.8万円に到達するので、「月8.8万円の壁」に引っかかります。現行制度下(2026年9月まで)では、週17時間未満に抑える必要があります。
時給1,500円のケース
週16時間で月収約10.4万円、年収124万円。こちらも月8.8万円を超える境界は週約14時間とさらに短くなります。「高時給で短時間勤務」が扶養内では必須の戦略ですね。
時給1,800〜2,000円のケース
週12〜13時間が上限。8.8万円を超える境界は週11〜12時間程度。専門職や事務経験豊富なパートの方は時給が高くなりがちですが、その分だけ扶養内で働ける時間はぐっと短くなります。
気をつけたい「働き損ゾーン」130〜160万円
ここでどうしてもお伝えしておきたいのが、「中途半端に扶養を超える」ことの怖さです。年収130万円を超えて扶養から外れると、社会保険料として給与の約15%(年間で20〜24万円ほど)が天引きされることになります。
つまり、たとえば年収135万円で働くと、手取りは130万円 − 保険料約20万円 = 約115万円前後。これは扶養内で129万円稼いだときの手取り(約129万円)を下回ってしまうんです。「頑張って130万を超えて働いたのに、手取りは減った」——これが「働き損ゾーン」と呼ばれる現象です。
扶養を出て働くなら、年収160万円以上を目指すのが損益分岐点。手取りで扶養内を上回るためには、最低でもこのラインを狙う必要があります。中途半端な135万・140万では、体力と時間を使ったわりに手取りが減るだけ、というちょっと悲しい結果になってしまうので、判断は慎重にいきましょう。
渡辺 俊一
月額8.8万円を超えたらどうなる?2026年10月の大改正
「月8万8千円を超えたらどうなるの?」という不安は、私の事務所にも本当に多くいただくご質問です。ここは現行制度と2026年10月の改正を比較しながら、しっかり解説していきますね。

現行ルール(〜2026年9月)は「月8.8万円以上で社保加入」
現在のルールでは、従業員51人以上の企業で働くパート・アルバイトが、以下の4つの要件を全部満たすと社会保険の加入義務が発生します。
1. 週の所定労働時間が20時間以上
2. 月額賃金が8.8万円以上
3. 2ヶ月を超える継続雇用の見込みがある
4. 学生ではない
裏を返すと、月額賃金が8.8万円未満であれば、他の条件を満たしていても加入対象外。これが「月8.8万円を意識して給与を設計する」という考え方の根拠です。「時給1,200円なら週17時間未満に収める」といった実務上のライン設計も、このルールに基づいています。
2026年10月からは「月額賃金要件が完全に撤廃」
ところが、2025年6月に成立した改正年金法によって、2026年10月以降は「月8.8万円以上」という賃金要件が撤廃されます。これは大きな方針転換で、改正後の判定はシンプルにこうなります。
1. 週の所定労働時間が20時間以上
2. 2ヶ月を超える継続雇用の見込みがある
3. 学生ではない
4. 企業規模要件(〜2027年9月までは51人以上、以降は段階的に撤廃)
要件が1つ減っただけのように見えますが、実はインパクトは非常に大きいんです。これまで「月収が低いから扶養内でいられていた」パート従業員の方も、週20時間以上働いていれば社会保険加入の対象になります。時給1,000円で週20時間働くパートの方(月収約8.6万円)は、現行では対象外でしたが、2026年10月以降は加入対象です。
2027年10月からは50人以下の企業にも適用拡大
さらにこの先、2027年10月以降は企業規模要件も段階的に撤廃されていきます。現在は従業員51人以上の企業だけが対象ですが、50人以下の中小企業で働くパートも順次加入対象になる見通しです。「うちは中小企業だから関係ない」と思っていると、数年後には大きな対応が必要になるので、今から準備を始めておきたいところです。
企業・従業員それぞれがやっておくべきこと
企業側の対応:給与計算システムの判定基準を「月8.8万円ベース」から「週20時間ベース」に切り替える準備が必要です。従業員への説明資料も作り直さなければなりません。シフト管理のロジックも、時給と時間の組み合わせで月額を管理する発想から、純粋に時間を管理する発想に変わっていきます。
従業員側の対応:「月8.8万円未満に収めれば扶養内」という安心ルールが使えなくなるので、週20時間未満を厳守する働き方にシフトしていく必要があります。時給が高い方ほど短時間勤務にせざるを得なくなるので、これを機に「扶養を超えて年収160万円以上を目指す」か「きっちり週20時間未満で扶養内を維持する」かの判断も、改めて検討してみるとよいかもしれません。
2026年4月からの130万円判定方法の大変更
2026年の改正はもう一つあります。こちらは4月施行で、扶養内勤務者にとって朗報になる改正です。「130万円の壁」の判定方法が、大きく変わります。

これまでは「実績ベースで判定」されて、扶養から外れるリスクが付きまとった
従来、130万円の壁の判定は「過去の収入実績+現時点からの見込み」で行われていました。つまり、昨日までの給与実績を見て、「このペースで行くと年収130万円を超えそうだ」と判断されると、扶養から外れてしまうんです。
これが実務では結構困った事態を生んでいました。たとえば、普段は月収10万円で扶養内に収まっている奥様が、たまたま職場の繁忙期にシフトを増やして、ある月だけ月収13万円になってしまった——こういうケースで、「このペースだと年収156万円になる」と見込まれて扶養認定を外される可能性があったんですね。
一応、事業主が「これは一時的な収入増です」と証明する書類を発行すれば扶養を維持できる救済措置はあるのですが、この手続きが意外と煩雑で、企業側にとっても従業員側にとっても負担でした。
2026年4月からは「労働契約書の契約上の賃金」で判定
ここが新制度の大きな転換点です。改正後は、労働契約書(労働条件通知書)に記載された契約上の賃金をベースに判定されるようになります。
つまり、「契約上の年収」が130万円未満であれば、たとえ一時的な残業で実収入が130万円を超えてしまっても、原則として扶養を外れることはない、という扱いになるわけです。繁忙期対応も柔軟にできるようになり、事業主証明書も不要になります。これは本当に大きな変更です。
企業側の準備 — 労働契約書の整備が最優先
ただ、この改正が「朗報」になるかどうかは、会社の労働契約書がちゃんと整備されているかどうかにかかっています。判定の根拠が契約書になるので、契約書が曖昧だったり実態と乖離していたりすると、年金事務所や税務署の調査で「実態で判定」に戻されるリスクもあるんですね。
今のうちにやっておきたいのは、以下のような契約書の点検です。
1. 所定労働時間が明記されているか(「週15時間」「週20時間」など具体的に)
2. 月収の見込みが契約書から逆算できるか(時給 × 所定労働時間 × 週数)
3. 契約期間が明記されているか(更新条件も含めて)
4. シフト制の場合、「週平均◯時間」といった記載があるか
これらが整っていないと、せっかくの改正メリットを享受できません。2026年4月までに、ぜひ一度顧問社労士とご相談の上、全パート従業員の契約書を点検されることをお勧めします。
渡辺 俊一
パートが扶養内条件を維持するための実務ポイント8選
ここまで制度の全体像と2026年改正の話をお伝えしてきました。最後に、実際に扶養内条件を維持するためにパート従業員(および雇用する企業)が押さえておくべき実務ポイントを8つにまとめます。人事担当者の方は、ぜひ社内でのチェック運用にご活用ください。
1. 労働契約書を最優先で整備する
繰り返しになりますが、2026年4月以降は契約書ベースでの判定が始まります。所定労働時間・月収見込み・契約期間を正確に記載し、実態と乖離しないよう定期的に更新する運用を整えましょう。口頭やLINEだけでシフト変更を受け付けている会社は、この機会に契約書更新のフローを作り直すことをお勧めします。
2. 週の所定労働時間は「20時間未満」を厳守
扶養内を維持する最重要ラインは、なんといっても週20時間未満です。2026年10月以降は月額賃金要件がなくなるので、このラインだけが唯一の判定軸になります。逆に言えば、ここさえ守っていれば安全度が高い、とも言えます。
3. 月収は「約10万円」を安全ラインに
年収130万円÷12ヶ月で月収10.8万円が計算上の上限ですが、ボーナスや臨時手当の余裕を考えると月収10万円程度に抑えておくのが現実的です。繁忙期に少し増えても、他の月で調整しやすくなります。
4. ボーナス・手当も含めて年収を計算する
これは意外な盲点です。基本給だけでなく、諸手当・賞与・固定通勤手当も年収に含めて計算します。夏冬のボーナスで一気に超えてしまうケースがあるので、年間通しての合計で見る癖をつけましょう。
5. 副業・ダブルワークは全収入を合算する
副業やダブルワークをされている場合、すべての勤務先の収入を合算して判定されます。A社では月5万円、B社でも月5万円、と分散させていても、合算して130万円を超えれば扶養から外れます。人事担当の方は、新規採用時に副業の有無を確認する運用があると、後からトラブルになりにくいです。
6. 年収見込みを毎月試算する仕組みを作る
「気づいたら超えていた」を防ぐために、月次で年収見込みを試算する運用がおすすめです。クラウドの勤怠管理システムなら自動計算してくれるものも多いですし、エクセルでも十分作れます。年収120万円ラインでアラートを出せば、残り2ヶ月で調整する余裕が生まれます。
7. 2026年10月以降は「時給を上げて時間を減らす」戦略を検討
月8.8万円要件がなくなる改正以降は、「時給を上げて勤務時間を短くする」という方向に働き方をシフトするのが、扶養内を維持する賢い選択になります。たとえば時給1,500円×週16時間なら、月収約10.3万円で社会保険加入の対象外、扶養内維持が可能です。経営者側としても、短時間で成果を出す優秀なパートの時給を上げる流れが進みやすくなる改正とも言えますね。
8. 迷ったら顧問社労士に個別相談を
扶養内条件は、個別の働き方や企業規模、契約形態によって判定が変わってくる場面があります。特に、複数の勤務先を持つ方、シフト制で変動が大きい方、契約内容の見直しを検討している方は、自己判断で進める前に顧問社労士にご相談いただくのが結果的に一番早道です。後から遡って手続きをやり直す労力を考えると、事前に正しい判断ができる方がずっと楽ですよ。
よくある質問(FAQ)
Q. 扶養内で働く条件は具体的に何ですか?
A. 社会保険上の扶養内で働くには、(1)年収130万円未満、(2)週の所定労働時間20時間未満、(3)月額賃金8.8万円未満、(4)2ヶ月を超える継続雇用の見込みがない、(5)学生ではない、の5つの条件を全て満たす必要があります(2026年9月までのルール)。これら全部をクリアしないと、どこかで引っかかって扶養から外れてしまいますので、1つずつ確認していきましょう。
Q. 週20時間以内の勤務なら、必ず扶養内でいられますか?
A. いいえ、残念ながらそうとは限りません。週20時間未満でも、年収が130万円を超えたり、月額賃金が8.8万円以上になったりすると、扶養から外れる可能性があります。週20時間未満はあくまで「5つの条件の1つ」であって、扶養内でいるためには他の条件も全てクリアしている必要があるんです。特に高時給の方は週20時間未満でも月8.8万円を超えやすいので、時給と時間の両方でチェックしてください。
Q. 扶養内でいくらまで稼げますか?2026年に変わりますか?
A. 現行制度では年収130万円未満が基本です。ただし2026年4月からは判定方法が大きく変わって、「労働契約書の契約上の賃金」をベースに判定されるようになります。契約上130万円未満であれば、一時的な残業で実収入が増えても扶養を維持できる、という扶養内勤務者にとってはありがたい改正です。事業主証明書も不要になるので、手続きの負担もぐっと減ります。
Q. 月8万8千円を超えたらどうなりますか?
A. 現行(2026年9月まで)では、月額賃金が8.8万円以上で、かつ他の要件(週20時間以上、2ヶ月超の継続雇用、非学生、従業員51人以上の企業)を全て満たすと、勤務先の社会保険に加入する義務が発生して扶養から外れます。ただし、この「月8.8万円以上」という要件は2026年10月に撤廃されるので、それ以降は月額賃金の大小にかかわらず、主に週20時間で判定されることになります。
Q. 社会保険加入の扶養条件、何がいちばんの決め手になりますか?
A. 現行は5つの条件全てを満たす必要がありますが、実務上特に重要なのは「週20時間未満」と「月8.8万円未満」の2つです。年収130万円は年末に集計して気づけますが、この2つは毎月の勤怠・給与から判定されるので、日々の管理が甘いと「いつの間にか加入対象になっていた」ということに。2026年10月以降は「週20時間未満」が唯一の決定的な条件になるので、ますます時間管理が重要になります。
Q. パートで扶養内を続けるには、どう計算すればいいですか?
A. 基本の計算式は「時給 × 週の勤務時間 × 4.3週」で月収、それを12倍して年収の目安を出します。年収130万円未満を目標にするなら、月収は10万円程度に抑えるのが安心ライン。時給1,200円なら週約20時間、時給1,500円なら週約16時間、時給1,800円なら週約13時間が目安です。ただし月8.8万円の壁も同時に意識しないといけないので、時給が高い方ほど週の時間を短くする必要があります(2026年9月まで)。
Q. 扶養内の130万円の壁、2026年以降も同じ金額ですか?
A. 基準額(130万円)自体は変わりません。ただし、判定方法が2026年4月から大きく変わります。これまでは「過去の実績+現時点からの見込み」で判定されていましたが、改正後は「労働契約書の契約上の賃金」で判定されるようになります。つまり、契約書の整備が今後ますます重要になってきますので、会社側は事前に全パート従業員の契約書を見直しておくことをお勧めします。
まとめ:扶養内条件の管理は2026年改正への備えが急務
この記事では、扶養内で働く条件について、5つの条件の中身から時給別の計算シミュレーション、2026年4月・10月の制度改正、パートが扶養を維持するための実務ポイントまで、詳しく解説してきました。
最後に、改めて押さえておきたい重要ポイントをまとめます。
1. 扶養には「税制」と「社会保険」の2種類があり、基準も手続きも別物である
2. 社会保険の扶養内で働くには、5つの条件を全て満たす必要がある
3. 時給別の計算で、週の勤務時間上限を把握しておく
4. 2026年10月の月8.8万円要件撤廃で「時間」が唯一の軸になる
5. 2026年4月の130万円判定変更で「労働契約書」が判定根拠になる
6. パートが扶養内を維持するなら、週20時間未満+月10万円の厳守がカギ
7. 中途半端な超過は「働き損」になるので、超えるなら年収160万円以上を狙う
毎年のように制度改正が続く分野ですので、「前に調べた時の知識」が古くなっていることも珍しくありません。特に2026年4月と10月の2つの改正は、扶養内勤務のルールを根本から変えるインパクトがあります。企業の経営者・人事担当者の方も、パートで働いていらっしゃる方ご本人も、最新情報へのアップデートを怠らないようにしていただきたいです。
HR BrEdge社会保険労務士法人では、パート従業員の労務管理、労働契約書の整備、給与計算アウトソース、制度改正に合わせた就業規則の見直しまで、企業の実務負担を軽くするサポートを全国対応で行っています。「うちの従業員のケースはどう対応すればいい?」「契約書はこれで大丈夫?」といった個別のご相談にも、500社超の顧問実績をもとに丁寧にお答えします。
扶養内勤務の条件管理や2026年の制度改正対応でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。あなたの会社と従業員が、安心して新しい制度環境に移行できるよう、しっかりサポートさせていただきます。
この記事の執筆者
![]() 渡辺 俊一 (わたなべ としかず) |
HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 1977年兵庫県神戸市生まれ。関西学院大学法学部法律学科卒業後、日本マクドナルド株式会社に入社。2005年社会保険労務士試験に合格し、2007年に渡辺社会保険労務士事務所を開設。2016年法人化し、2025年5月に「HR BrEdge社会保険労務士法人」へ社名変更。 顧問先500社超・実績970社以上を誇り、「会社の財産は人・人・人である」を信念に、従業員・お客様・社会の「三方良し」の経営支援を実践。給与計算・社会保険手続き・就業規則・助成金申請から、IPO・M&Aに向けた労務監査まで幅広く対応。 著書『頂点をめざす!~経営者のパートナーとして歩む社労士の物語~』はAmazon「社会保険労務士の資格・検定」部門で1位を獲得。
【所属】全国社会保険労務士連合会/大阪府社会保険労務士会/一般社団法人EO Osaka |





