こんにちは。HR BrEdge社会保険労務士法人代表、特定社会保険労務士の渡辺俊一(わたなべとしかず)です。
「もうすぐ60歳になるけれど、特別支給の老齢厚生年金がもらえないと聞いた。自分は対象外なのだろうか?」
「知人は60代前半から年金を受け取っているのに、自分には通知が来ない……なぜ?」
「『特別支給』『特別年金』って結局なに?普通の年金と何が違うの?」
こうした不安、毎月のようにご相談をいただきます。顧問先の経営者・人事労務担当者の方からも「従業員にどう説明すればいいか分からない」というお声を本当によく伺います。
特別支給の老齢厚生年金は、昭和36年4月1日以前生まれの男性(女性は昭和41年4月1日以前)を対象に、65歳よりも前から受け取れる経過措置の制度です。ただし、「対象者のはずなのにもらえない」ケースが7つあって、しかも2026年4月からは大きな法改正が入ります。ここを知らずに放置していると、年金請求のタイミングを逃してしまったり、受給権が5年の時効で消滅したりと、取り返しのつかない損につながることもあるんです。
この記事では、500社を超える顧問先で実際にご相談に乗ってきた経験をもとに、特別支給の老齢厚生年金がもらえない人の7つのケース、2026年4月からの在職老齢年金改正、もらえない場合でも損をしない3つの対処法、女性の生年月日別早見表、そして自分が対象か確認する方法までを2026年最新情報で整理します。最後まで読んでいただければ、ご自身や従業員の方が「本当にもらえないのか」「どうすれば損をしないのか」がはっきり分かるはずです。
特別支給の老齢厚生年金とは?制度の仕組みと対象者をわかりやすく解説
本題に入る前に、「特別支給の老齢厚生年金」がそもそもどんな制度なのかをおさらいしておきましょう。ここを曖昧にしたまま「自分はもらえるのか?」を考えても判断がぶれてしまうので、一度整理するのがおすすめです。
65歳前にもらえる「つなぎ年金」としての位置づけ
特別支給の老齢厚生年金とは、一言でいうと65歳前の60〜64歳から受け取れる厚生年金の経過措置です。本来、老齢厚生年金は65歳からが受給開始年齢なのですが、昭和61年の年金制度大改正で「60歳開始→65歳開始」に段階的に引き上げた際、急激な変化で困る世代への救済として設けられた制度が、この特別支給なんです。
つまり、「昔は60歳からもらえていたのに、いきなり65歳からと言われても困る」という方のためのつなぎ年金として設計されたもの。そのため、対象は生年月日で区切られていて、段階的に廃止が進んでいます。「特別年金とは何?」と検索された方は、この特別支給の老齢厚生年金を指すケースがほとんどですね。
報酬比例部分と定額部分の違い
特別支給の老齢厚生年金は、本来「報酬比例部分」と「定額部分」の2つで構成されていました。
1. 報酬比例部分
現役時代の平均報酬と厚生年金の加入期間に応じて計算される部分。これが現在の対象者が受け取る中心的な金額です。
2. 定額部分
加入期間に応じて定額で支給される部分。ただし、現在の対象世代(男性昭和24年4月以降、女性昭和29年4月以降生まれ)では原則廃止されていて、ほとんどの方は報酬比例部分しか受け取れません。
「年金 62歳 特別支給」と検索される方の多くは、この報酬比例部分を62歳から受け取るケースを想定しているケースが多いです。定額部分がないぶん金額はやや控えめになりますので、ここは最初に押さえておいてくださいね。
女性は5年遅れ?男女別の生年月日基準
特別支給でよく誤解されるのが、男女で対象になる生年月日がずれていることです。具体的には以下の通り。
男性:昭和36年4月1日以前生まれ
女性:昭和41年4月1日以前生まれ
女性は男性より5年遅れで同じ制度が適用されます。これは女性の雇用環境の違いを考慮した経過措置の設計で、「男女差別では?」というお声もいただきますが、制度としてはそういう設計になっているんです。
裏を返すと、2026年時点でも新規対象者が発生しているのは女性だけです。昭和36年4月以前生まれの男性は2026年時点で65歳以上なので、すでに本来の老齢厚生年金の受給開始年齢に達しています。
特別支給の老齢厚生年金をもらえない人の7つのケース【早見表】
ここから本記事のメインテーマ、「特別支給の老齢厚生年金がもらえない人」の7つのケースを順番に見ていきます。現状記事や一般的な解説では「生年月日で対象外」の1点に絞られがちですが、実務では対象世代のはずなのにもらえないというケースが想像以上に多いので、網羅的に確認しましょう。

①生年月日が対象外(男性昭和36年4月2日以降/女性昭和41年4月2日以降)
もっとも多いのがこの生年月日によるケース。男性は昭和36年4月2日以降生まれ、女性は昭和41年4月2日以降生まれの方は、制度の段階的廃止により特別支給の対象外になります。
「昭和36年4月1日」「昭和41年4月1日」というたった1日の差で対象か対象外かが決まる仕組みなので、ご自身の生年月日を正確に確認してくださいね。裏を返すと、対象世代の方は1日でも早く制度を理解して請求漏れを防ぐべき、ということでもあります。

②厚生年金の被保険者期間が1年未満
次に見落としがちなのが、厚生年金保険の被保険者期間が通算1年以上あることという要件です。正社員としての勤務経験がない、あるいはパート・アルバイト中心で社会保険適用外の期間がほとんどだった、というケースでは1年未満となり対象外になってしまうんです。
実務でよく見かけるのが、「結婚後はずっと配偶者の扶養に入って第3号被保険者だった」という女性のケース。第3号被保険者の期間は国民年金にはカウントされますが、厚生年金の加入期間にはなりません。厚生年金加入期間は「自分が厚生年金保険料を給与から天引きされていた期間」だけです。
逆に、短期間でも正社員として働いた経験があれば加入期間にカウントされます。ねんきんネットで厚生年金の加入履歴を確認してみてください。
③老齢基礎年金の受給資格期間(原則10年)を満たしていない
3つ目は、老齢基礎年金の受給資格期間が10年に満たないケースです。2017年の法改正で25年から10年に短縮されましたが、それでも10年未満の人は老齢基礎年金の受給資格そのものがないため、特別支給の対象にもなりません。
この10年には、保険料を納めた期間+保険料免除期間+合算対象期間がすべて含まれます。「納付だけで10年」という意味ではないので、ご自身の納付・免除履歴を整理してみると、意外と条件を満たすケースがあります。
また、60歳以降の任意加入で不足期間を補う方法もあります。60〜65歳未満であれば任意加入制度を使って国民年金に加入し、10年の受給資格期間を満たせば老齢基礎年金と特別支給の両方の道が開けるケースがあるんです。あきらめる前に、必ず年金事務所で確認しましょう。
④在職老齢年金で年金が全額支給停止になっている
4つ目が、実務で一番相談が多い在職老齢年金による全額支給停止です。制度的には対象者で請求もしているのに、実質的に年金が1円ももらえていない——というパターンですね。
在職老齢年金とは、60歳以降も厚生年金に加入して働く場合、給与と年金の合計が一定額を超えると年金の一部または全部が支給停止される仕組みのこと。2025年度の基準額は月51万円で、この金額を超えると超過分の2分の1が停止されます。年金月10万円・月給55万円の方なら合計65万円で、(65−51)÷2=7万円が停止。年金月10万円なら大きなダメージですよね。
ただし、これは後述する通り2026年4月から基準額が62万円に大幅引き上げされます。全額停止でもらえなかった方が、改正後は一部受給できるようになる可能性が高いんです。
⑤失業給付(雇用保険の基本手当)を受給している
5つ目は、雇用保険の基本手当(失業給付)を受給している期間は、特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止になるケース。両方は同時にもらえない仕組みになっているんです。
60歳で定年退職後に「失業保険ももらいたい、年金ももらいたい」と両方請求される方がいますが、失業給付のほうを優先すると特別支給は支給停止になります。どちらが得かは、基本手当の日額・所定給付日数と、特別支給の月額を比較して判断する必要があります。
実務では、失業給付の日額が高い方(≒退職時の給与が高かった方)は失業給付を先に受け切ってから年金請求、という流れを取るケースが多いですね。ただ、これは個々の状況で最適解が変わるので、ハローワークと年金事務所の両方に確認するのが鉄則です。
⑥年金請求の手続きを忘れている・5年時効で消滅
6つ目が、単純な「請求忘れ」です。特別支給の老齢厚生年金は自動で振り込まれる制度ではありません。支給開始年齢の3ヶ月前に日本年金機構から「年金請求書(ターンアラウンド請求書)」が届くので、必要事項を記入して提出する必要があります。
ところが、住所変更の届出漏れで請求書が届かないケースが実務でけっこうあるんです。転居後も届出をしていなかったり、親御さんが受け取るはずの請求書が家族の引っ越しで行方不明になったり。気づいたときには時間が経っていて、「もう時効なのでは?」とご相談いただくこともしばしば。
そして最大の落とし穴が、5年の時効です。受給権が発生した日から5年経過すると、古い分は時効により受け取れなくなります。しかも特別支給には「もらわずに待てば増える」繰下げ制度がないので、請求を先送りするメリットはゼロ、デメリットのみ。早めの請求が鉄則です。
⑦その他の特殊ケース(障害年金選択・共済加入歴の誤認等)
7つ目が、その他の特殊ケース。代表的なものを3つ挙げます。
a. 障害年金を受給中で、特別支給との選択が必要なケース
障害年金と老齢年金は原則として同時に全額受給することはできません。どちらを選択するかで有利不利が分かれます。
b. 共済年金の加入歴を一元化で誤認しているケース
2015年10月に共済年金が厚生年金に一元化されました。過去に公務員・私学教員だった方は、共済組合期間が厚生年金期間として通算されますが、ご本人が把握できていないケースがあります。
c. 遺族年金を受給中のケース
遺族厚生年金を受給中の方が特別支給の老齢厚生年金の対象になった場合、併給調整のルールが発生します。単純に両方もらえるわけではないので、年金事務所で調整内容を必ず確認してください。
こうした特殊ケースは制度が複雑に絡み合うので、自己判断せず年金事務所や社労士への個別相談が欠かせません。
【2026年最重要】2026年4月から在職老齢年金の基準額が62万円に大幅引き上げ
ここは2026年の最大の改正ポイントです。先ほど触れた在職老齢年金の支給停止調整額が、2025年度の月51万円から、2026年4月には月62万円へ大幅引き上げされます。2025年6月に成立した改正年金法の目玉改正で、働きながら年金を受け取りたい方にとっては大きな朗報なんです。

支給停止の仕組みをおさらい(月収+年金の合計額で判定)
在職老齢年金の減額ロジックはシンプルです。給与(総報酬月額相当額)と年金月額の合計が基準額を超えると、超過分の2分の1が年金から停止されます。
たとえば年金月10万円、月収45万円の方は合計月55万円。2025年度の基準51万円を超える4万円の半分、つまり月2万円が支給停止されます。もし月収60万円なら合計70万円で、(70−51)÷2=9.5万円が停止。年金10万円のうち9.5万円も止められてしまう計算ですね。
ここでいう「給与」には、月給だけでなく賞与も1/12を加算した総報酬月額相当額が使われます。そのため、賞与が多い方は見た目の月給以上に合計額が跳ね上がる点に注意してください。
51万円→62万円の改正で何が変わる?
2026年4月からの改正インパクトは、ひと言でいうと「減額される人の範囲が大きく縮小する」です。
基準額が11万円も上がるので、月収50万円台の方のほとんどが減額対象から外れます。たとえば月収50万円+年金10万円の合計月60万円の方は、2025年度は△4.5万円の減額→2026年4月以降は減額ゼロに。全額停止でもらえていなかった方が、一部あるいは全部もらえるようになる大転換ですね。
もちろん、月収が60万円を大きく超える高所得のシニア層では依然として減額が発生しますが、一般的な再雇用水準(月収30〜50万円程度)の方は、ほぼ全員が全額受給できるようになる見込みです。
渡辺 俊一
働きながら年金をもらえるケースが大幅に広がる
この改正のもう一つの大事なポイントが、「働きながら年金を受け取る」という選択肢が現実的になることです。
従来は、60歳以降も厚生年金に加入して働くと在職減額で年金がガッツリ止められるため、「だったら働かないか、月給を抑えるしかない」という二者択一になりがちでした。しかし2026年4月以降は、普通に働きながらほぼ全額の年金を受け取れるようになります。
これは「もらえない人」だった方が「もらえる人」に変わる、ということでもあります。特別支給の対象世代で、現役のまま働き続けている方は、2026年4月以降の年金収入アップをぜひ確認してみてください。
特別支給の老齢厚生年金がもらえない場合でも損をしない3つの対処法
「生年月日で対象外」「加入期間が足りない」など、どうしても特別支給を受け取れない場合でも、老後の年金収入を増やす対処法は3つあります。順番に見ていきましょう。
対処法1. 65歳からの老齢厚生年金を確実に受給する
まず大前提ですが、特別支給がもらえなくても、65歳からの本来の老齢厚生年金は別制度です。こちらは条件さえ満たせば全員が受給できます。
65歳からの老齢厚生年金は受給開始年齢の3ヶ月前に日本年金機構から請求書が届く仕組みですが、届かない・紛失したケースもあるので、ねんきんネットで受給開始時期を事前に確認しておきましょう。誕生月より前に動き出しておけば、請求忘れや時効のリスクをぐっと下げられます。
対処法2. 繰下げ受給で最大84%増額(75歳まで)
65歳からの老齢厚生年金・老齢基礎年金には、繰下げ受給という制度があります。これは、受給開始を最大75歳まで後ろ倒しすることで、年金額を最大84%増額できる仕組み。1ヶ月繰り下げるごとに0.7%ずつ増えていく計算です。
たとえば65歳で月15万円の年金を、70歳まで繰り下げて受給すると月約21万円(42%増)、75歳まで繰り下げると月約27.6万円(84%増)になります。ただし、繰下げた期間中はもちろん年金を受け取れないので、当面の生活資金の確保とセットで考える必要があります。
注意していただきたいのが、前述した通り特別支給の老齢厚生年金自体には繰下げ制度がないこと。繰下げ受給が使えるのは65歳からの本来の年金だけ、というのは覚えておいてくださいね。
対処法3. iDeCo・NISA・企業型DCで自助努力の資産形成
3つ目は、自助努力による資産形成です。公的年金だけでは不安という方は、以下の制度を組み合わせて備えておくのが現実的です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
掛金が全額所得控除、運用益非課税、受給時も公的年金等控除が使える三重の税制優遇が特徴。ただし60歳まで引き出せない点は要注意。
つみたてNISA(新NISAのつみたて投資枠)
運用益が非課税で、いつでも引き出せる柔軟性が魅力。年120万円まで、長期・積立・分散投資でコツコツと。
企業型DC(企業型確定拠出年金)
勤務先が制度を導入していれば、掛金を会社が拠出してくれる場合もあります。マッチング拠出制度を使えば自分でも上乗せ可能。
渡辺 俊一
特別支給の老齢厚生年金を「受け取らない」選択肢はある?
サブキーワードでもある「特別支給の老齢厚生年金 受け取らない」。これ、実は判断に迷う方が多いテーマなんです。受け取らない選択肢はあるのか、あるとしたらどんなケースか、時効との関係も含めて整理します。
受け取らない方が良いケース(失業給付受給中・扶養問題)
結論から言うと、一時的に受け取らないほうが得なケースはあります。代表例は以下の2つです。
1. 失業給付を受給中
雇用保険の基本手当を受給している間は、特別支給は全額停止になります。これは自動的に停止になるだけで、「受け取る権利を放棄する」のとは違います。失業給付が終わり次第、特別支給は再開されるので、この期間は事実上「受け取らない」状態ですね。
2. 配偶者の健康保険の扶養を外れるのを避けたい
配偶者の健康保険の被扶養者として認定されるには、本人の年収が180万円未満(60歳以上または障害者の場合)という基準があります。特別支給の年金収入で年収180万円を超えると扶養から外れ、自分で国民健康保険に加入する必要が出てきます。ケースによっては受け取ることで手取りが逆転(減る)することも。
ただし「繰下げで増える」は使えない——時効5年に要注意
ここが絶対に押さえておいてほしいポイントです。65歳からの老齢厚生年金には繰下げ受給がありますが、特別支給の老齢厚生年金には繰下げ制度がありません。
「もらわずに待てば増えるのでは?」と期待して請求を先送りすると、増えないまま5年の時効で受給権が消滅します。たとえば年金月10万円×60ヶ月=合計600万円の年金が、丸々受け取れなくなるわけです。
つまり、意図的な「受け取らない」=損、というのが特別支給の鉄則。対象になったらできるだけ早く請求するのが正解です。
女性の特別支給の老齢厚生年金【生年月日別早見表】
先ほど触れたとおり、女性の特別支給は2026年時点でも新規対象者が発生中です。昭和39年〜41年4月生まれの女性は、まさに今受給タイミング。ここで女性特有の注意点を整理しておきます。
なぜ女性は5年遅れ?制度の経緯
女性が男性より5年遅れで制度適用される理由は、昭和61年の年金大改正以前、女性の厚生年金支給開始年齢が男性より5年早い55歳だったことに由来します。当時は女性の雇用環境が異なっていたため、受給開始年齢にも差が設けられていたんです。
改正で男女とも65歳に統一される過程で、女性だけ5年ぶん経過措置を長めに残したというのが制度的な背景。「女性優遇では?」と言われることもありますが、歴史的な調整と理解していただくのが正確です。
昭和39年〜41年生まれ女性の注意点
昭和39年4月〜昭和41年4月1日生まれの女性は、64歳から特別支給を受け取れる最後の世代になります。具体的な注意点は以下の3つ。
1. 厚生年金加入期間1年以上の確認
専業主婦期間が長い方は、厚生年金の加入期間が1年未満で対象外、というケースが発生しがち。若い頃のアルバイトや短期間の正社員経験も含めて、ねんきんネットで加入履歴を必ず確認してください。
2. 第3号被保険者期間の扱い
配偶者の扶養に入っていた第3号被保険者の期間は、国民年金には算入されますが厚生年金の加入期間には算入されません。「結婚後はずっと専業主婦だったから厚生年金はほぼゼロ」というパターンになりやすいです。
3. 2026年4月改正の恩恵
働きながら受け取る場合、2026年4月の在職老齢年金改正で月収50万円台までは減額なしに。女性で現役継続している方は、改正前より受給額が増える可能性があります。
自分が特別支給の対象か確認する3つの方法
「自分が特別支給の老齢厚生年金の対象なのか分からない」という方は、以下の3つの確認手順を順番に踏んでみてください。
方法1. ねんきん定期便で確認
まずは毎年誕生月に送られてくるねんきん定期便。50歳以上の方には「受給開始年齢と見込み受給額」が記載されているので、「60〜64歳での受給見込額」が記載されていれば対象です。
記載がない場合は、生年月日で対象外になっている可能性が高いです。ただし、厚生年金加入期間不足で対象外になっているケースもあるので、次のステップに進みましょう。
方法2. ねんきんネットでオンライン確認
より詳しく確認したい方は、日本年金機構のねんきんネットが便利です。マイナンバーカードで連携すれば、厚生年金の加入期間・月別の標準報酬月額・将来の受給見込額までオンラインで確認できます。
特に厚生年金加入期間1年以上の要件を満たしているかは、ねんきんネットで明確に分かります。対象世代なのに受給見込が出ない場合は、加入期間不足か受給資格期間不足のいずれかの可能性が高いです。
方法3. 年金事務所・社労士への相談
特殊ケース(共済加入歴・障害年金併給・遺族年金併給・再婚による姓変更等)がある方は、年金事務所や社労士に個別相談するのが確実です。
年金事務所は予約制になっているので、事前に電話で来所予約を取りましょう。また、企業の人事担当者の方は、顧問社労士と一緒に従業員の年金相談体制を整えておくと、従業員の安心感にもつながります。
渡辺 俊一
企業の人事労務担当者が知っておきたい実務ポイント
特別支給の老齢厚生年金は個人の話と思われがちですが、60代従業員を雇用する企業の人事労務担当者にとっても避けて通れないテーマです。500社超の顧問先で実際によくある相談から、企業側が押さえておくべき3つのポイントを整理します。
従業員から「もらえない」相談を受けた際の対応
60歳を迎える従業員から「年金がもらえないと言われた」「対象外なのか?」という相談が来ることがあります。このとき人事担当者の方がやるべきは、本記事の7つのケースのどれに該当するかを一緒に整理することです。
特に、④の在職老齢年金による全額停止は企業側の給与設計と直結するため、人事担当者が把握しておくべきトピック。「うちの会社の給与水準だと、特別支給がいくら停止されるか」を試算できる状態にしておくと、従業員への説明がスムーズになります。
判断に迷うケースは、顧問社労士に個別の加入履歴・給与状況を共有して一緒に確認していくのがおすすめです。「該当するかどうか自分だけで判断が難しい」というご相談は、毎月のようにいただいていますよ。
在職老齢年金と給与設計の見直し(2026年4月改正対応)
先ほどお伝えした通り、2026年4月からの在職老齢年金改正で支給停止調整額が51万円→62万円に引き上がります。これは再雇用・定年延長の給与設計にとって大きなインパクトです。
これまで「月給50万円を超えると在職減額で年金がガッツリ止められるから、月給を抑えよう」と設計していた企業は、2026年4月以降は月給50万円台でも減額なしになる可能性が高いです。つまり、給与設計そのものを見直せる、ということ。
具体的な対応としては、①シニア従業員の給与水準を再評価、②退職金規程との整合性を確認、③給与計算ソフトの在職老齢年金基準額の設定変更、の3点をセットで進めるのが実務的です。
高年齢雇用継続給付との調整
もう一つ、60代従業員の給与設計で見落とされがちなのが高年齢雇用継続給付との調整です。
これは60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満に下がった場合に、雇用保険から支給される給付金。最大で賃金の15%(2025年度。2025年4月以降は段階的に縮小)が支給されます。ただし、この給付を受けている間は特別支給の老齢厚生年金も一部支給停止されるんです。
複雑な三すくみ(給与・年金・高年齢雇用継続給付)の調整になるので、再雇用時の賃金設計をする際は給付金・年金・税金の総合的なシミュレーションが欠かせません。ここは顧問社労士と一緒に数字を動かしながら最適解を探るのが鉄則ですね。
特別支給の老齢厚生年金に関するよくある質問(FAQ)
最後に、ご相談でよくいただく質問を5つピックアップして、渡辺がお答えします。
Q1. 昭和36年4月2日以降生まれの男性は、本当に特別支給の老齢厚生年金がもらえないのですか?
渡辺 俊一
Q2. 女性の特別支給はいつからいつまでの方が対象ですか?
渡辺 俊一
Q3. 在職老齢年金で全額支給停止の場合、年金請求の手続きは必要ですか?
渡辺 俊一
Q4. 特別支給の老齢厚生年金を「受け取らない」ほうが得なケースはありますか?
渡辺 俊一
Q5. 遺族厚生年金と特別支給の老齢厚生年金は両方もらえますか?
渡辺 俊一
この記事の執筆者
![]() 渡辺 俊一 (わたなべ としかず) |
HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 1977年兵庫県神戸市生まれ。関西学院大学法学部法律学科卒業後、日本マクドナルド株式会社に入社。2005年社会保険労務士試験に合格し、2007年に渡辺社会保険労務士事務所を開設。2016年法人化し、2025年5月に「HR BrEdge社会保険労務士法人」へ社名変更。 顧問先500社超・実績970社以上を誇り、「会社の財産は人・人・人である」を信念に、従業員・お客様・社会の「三方良し」の経営支援を実践。給与計算・社会保険手続き・就業規則・助成金申請から、IPO・M&Aに向けた労務監査まで幅広く対応。 著書『頂点をめざす!~経営者のパートナーとして歩む社労士の物語~』はAmazon「社会保険労務士の資格・検定」部門で1位を獲得。
【所属】全国社会保険労務士連合会/大阪府社会保険労務士会/一般社団法人EO Osaka |





