こんにちは。HR BrEdge社会保険労務士法人代表、特定社会保険労務士の渡辺俊一(わたなべとしかず)です。

「60歳を超えたら社会保険料はどれくらい変わるんだろう?」
「定年再雇用で給与が下がったら、60歳以上の社会保険料は自動的に下がるの?」
「60歳以上のパート従業員の保険料、会社の負担はいくらになる?」

60歳前後の従業員を抱える経営者・総務担当の方から、「保険料の実額」についてのご相談をよくいただきます。

社会保険料は制度の中でも一番「数字」が動くパートで、月給が同じでも都道府県・年齢・雇用形態によって負担額が変わるため、一度きちんと整理しておかないと従業員への説明で詰まってしまいます。さらに2025年の法改正や2026年4月の在職老齢年金改正、2026年4月に新設された「子ども・子育て支援金制度」(5月給与から徴収開始)によって、60歳以上を取り巻く制度環境も大きく変わりつつあります。

この記事では、顧問先500社超の実務経験を持つHR BrEdge社会保険労務士法人が、60歳以上の社会保険料に特化して、2026年最新料率・月給別シミュレーション・同日得喪の軽減効果・扶養180万円の壁・2026年5月新設の子ども・子育て支援金まで、実数値で徹底解説します。

なお、60歳以降の社会保険の取扱い全般(同日得喪の手続き詳細や2026年4月在職老齢年金改正の総論)については、当社の姉妹記事「【2026年最新】60歳になったら社会保険はどうなる?」もあわせてご覧ください。

60歳以上の社会保険料にまつわる「3つの誤解」——年齢だけで免除にはならない

まず前提として、60歳という年齢単体で社会保険料が免除・減額される仕組みはありません。ここが全ての出発点です。実務でご相談の多い3つの誤解を、最初に解いておきましょう。

誤解①「60歳で社会保険料は自動的に免除」の真相

「定年=社会保険料免除」というイメージをお持ちの方が非常に多いのですが、これは誤りです。社会保険料の徴収は、「年齢」ではなく「加入資格があるかどうか」で決まります

厚生年金保険料が発生しなくなるのは70歳到達時、健康保険料が後期高齢者医療保険料に切り替わるのは75歳到達時。いずれも60歳ではありません。なお介護保険料(第2号被保険者分)は65歳で給与天引きから外れますが、これは「免除」ではなく「市町村への直接納付(特別徴収)」への切替えです。

保険料が年齢だけで消えるタイミングは、実質的に70歳と75歳の2つ。60歳はどの保険料にとっても節目ではないことを、まず押さえておきましょう。

誤解②「年金をもらうなら保険料は払わない」の落とし穴

「年金を受け取り始めたら厚生年金保険料は不要」と誤解されている方もいらっしゃいますが、これも違います。

厚生年金保険料は、被保険者として働き続けている限り70歳まで毎月発生します。年金を受給しながら働く場合(在職老齢年金の対象者)でも、給与からは通常どおり厚生年金保険料が天引きされます。

「保険料を納める」と「年金を受け取る」は別々の動きで、同時並行で進む仕組みです。むしろ65歳以降に納めた保険料は「在職定時改定」によって毎年10月に年金額へ反映されていくため、払った保険料はちゃんと将来の年金に戻ってくるのが現在の制度です。

誤解③「給与が下がれば保険料も翌月から下がる」の勘違い

これが実務でもっとも厄介な誤解です。通常の「随時改定」では、固定的賃金が下がった月から数えて4ヶ月目に標準報酬月額が改定されます。つまり4月に給与が下がった場合、新しい保険料が適用されるのは7月分から。この間3ヶ月は高いままの保険料が天引きされ続けます。

この3ヶ月のタイムラグを解消する特例が、60歳以上の定年再雇用時の「同日得喪」(後述)です。知らずに進めると、本人・会社ともに月数万円の過払いが発生します。60歳以上の社会保険料を考えるうえで、この「タイムラグ」と「同日得喪」は避けて通れません。

HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 特定社会保険労務士 渡辺俊一
特定社会保険労務士
渡辺 俊一
私の顧問先でも、60歳の再雇用時に「同日得喪を使わずに3ヶ月分高い保険料を徴収してしまった」というご相談を毎年数件いただきます。知っているかどうかで本人と会社あわせて月数万円の差が出る話ですから、ぜひ仕組みを押さえておきたいですね。

60歳以上の社会保険料の内訳と【2026年最新】料率一覧

では具体的に、60歳以上の方の給与から天引きされる「社会保険料」は、何がいくらなのでしょうか。制度ごとに分解して整理していきます。

60歳以上の社会保険料の内訳と2026年最新料率(厚生年金・健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金・雇用保険の本人負担率)

社会保険料を構成する3つの保険料(厚生年金・健康保険・介護保険)+2026年5月新設の子ども・子育て支援金

給与から天引きされる「社会保険料」は、厳密には3つの保険料の合計です。さらに2026年5月以降は、新設された「子ども・子育て支援金」が4つ目として加わります。

1. 厚生年金保険料:老後の年金・障害年金・遺族年金の原資
2. 健康保険料:医療費の7割負担・傷病手当金・出産手当金などの原資
3. 介護保険料(40歳以上65歳未満のみ):介護サービス利用の原資
4. 子ども・子育て支援金(2026年5月新設):児童手当の拡充・妊婦支援給付・出生後休業支援などの原資。健康保険の被保険者全員が対象(年齢不問)

このほかに「雇用保険料」も給与天引きされますが、これは社会保険料とは別枠の労働保険で、料率も負担構造も違います。「社会保険料」という言葉で一般に語られるのは、厚生年金・健康保険・介護保険の3つ(+2026年5月以降は子ども・子育て支援金)だと覚えておきましょう。

厚生年金18.3%は全国一律/協会けんぽは都道府県別で約9.5〜10.5%/子ども・子育て支援金0.23%(2026年5月新設・国一律)

2026年時点の保険料率は次のとおりです。

1. 厚生年金保険料率:18.3%(全国一律)
労使折半で本人負担は9.15%。2017年9月以降、一切変わっていません。
2. 健康保険料率:都道府県ごとに約9.5〜10.5%(協会けんぽの場合)
東京都9.91%、大阪府10.24%、福岡県10.56%など。労使折半で本人負担は半分。
3. 介護保険料率(40〜64歳の第2号):約1.60%
労使折半で本人負担は約0.80%。
4. 子ども・子育て支援金率:0.23%(2026年5月新設・国が一律で設定)
労使折半で本人負担は0.115%・会社負担も0.115%。協会けんぽ・健保組合とも同率で、年齢に関係なく健康保険の被保険者全員から徴収されます。

つまり、40歳以上65歳未満の方の本人負担社会保険料率は、給与に対して概ね14.82〜15.32%(2026年5月以降。子ども・子育て支援金本人負担0.115%を含む)。月給30万円なら月約4.5〜4.6万円、月給40万円なら月約6.0〜6.2万円が天引きされる計算です。

なお「厚生年金保険料 60歳以降 減る」という検索がありますが、結論からいえば料率は年齢では変わりません。給与額(=標準報酬月額)が下がれば保険料の金額も下がりますが、「60歳以上だから料率が優遇される」という仕組みは存在しない点に注意してください。新設の子ども・子育て支援金についても同様に、年齢による優遇はありません。

介護保険料は40歳以上65歳未満のみ上乗せ(約1.6%)

介護保険料は40歳の誕生日を含む月から徴収が始まり、65歳の誕生日を含む月の前月で給与天引きが終わります

65歳以降は「第1号被保険者」となり、年金からの天引き(特別徴収)や口座振替などで市町村へ直接納付する形に切り替わります。会社側は65歳到達月の給与計算で介護保険料の天引きを止める必要があり、この切替え忘れによる過剰徴収が意外とよくあります。

60歳以上で介護保険料がまだ天引きされている方は、「あと何年天引きが続くか」(=65歳到達までの月数)を本人にも事前に説明しておくと、年金との切替えで混乱しません。

【2026年5月新設】子ども・子育て支援金率0.23%——60歳以上にも年齢無関係で一律徴収

子ども・子育て支援金は、2026年4月に開始された「子ども・子育て支援金制度」(こども未来戦略「加速化プラン」の財源)に基づき、健康保険の被保険者から徴収される新しい保険料です。料率は国が一律で示し、初年度(令和8年度)は0.23%、令和10年度には0.4%程度まで段階的に引き上げが予定されています。

1. 適用開始
2026年4月制度開始、給与天引きは2026年5月から(賞与からも徴収されます)。
2. 負担
労使折半で本人0.115%・会社0.115%(任意継続被保険者は全額本人負担)。
3. 使途
児童手当の拡充、妊婦のための支援給付(10万円相当)、出生後休業支援(育休給付率を手取り10割相当に)、育児時短就業給付など。
4. 60歳以上への適用
健康保険の被保険者である限り、年齢に関係なく一律で徴収されます。「子育て世代でないから免除」ではなく、全世代・全経済主体で支える設計です。

標準報酬月額30万円の方の場合、子ども・子育て支援金は月額30万円×0.23%=690円(本人負担345円・会社負担345円)。標準報酬月額44万円なら月額1,012円(本人506円・会社506円)が、健康保険料・介護保険料と合わせて徴収されます。70歳以降も健康保険の被保険者である75歳までは徴収が続き、75歳到達で健康保険を喪失すると、後期高齢者医療保険料の枠組みで支援金分が引き続き徴収される形になります。

60歳以上の社会保険料 計算方法|標準報酬月額の決め方から本人負担額まで3ステップ

ここからは、60歳以上 社会保険料 計算の具体的な手順を、3ステップで追っていきます。

60歳以上の月給別 本人負担社会保険料シミュレーション(18万〜40万円・協会けんぽ東京都・2026年度料率)

ステップ1:標準報酬月額の決定3パターン(資格取得時・定時決定・随時改定)

社会保険料は「月給そのもの」ではなく、「標準報酬月額」という50段階(健保)または32段階(厚年)の等級区分に当てはめて計算されます。標準報酬月額が決まるタイミングは、次の3つです。

1. 資格取得時決定:採用時や再雇用時に、最初の給与額から決定
2. 定時決定(算定基礎届):毎年7月に、4〜6月の平均給与で決定→9月分から適用
3. 随時改定(月額変更届):固定的賃金に大きな変動(2等級以上)があった場合、変動月から4ヶ月目に改定

60歳の定年再雇用で給与が下がる場合、原則は「随時改定」のルートで4ヶ月目から新保険料ですが、後述の「同日得喪」を活用すれば再雇用月から即改定できます。

ステップ2:保険料率をかけて総保険料を算出

標準報酬月額が決まったら、各保険料率をかけて総保険料を出します。

計算式
・厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 18.3%
・健康保険料 = 標準報酬月額 × 健保料率(都道府県別・協会けんぽ東京9.91%)
・介護保険料 = 標準報酬月額 × 1.60%(40〜64歳のみ)
・子ども・子育て支援金 = 標準報酬月額 × 0.23%(2026年5月から、国一律・年齢不問)

たとえば標準報酬月額30万円(40歳以上65歳未満・東京都)の場合、総保険料は月89,430円(厚年54,900円+健保29,730円+介護4,800円)。2026年5月以降は、これに子ども・子育て支援金690円(30万円×0.23%)が加わり、総保険料は月90,120円となります。大きな金額に見えますが、これが労使折半の元になる数字です。

ステップ3:労使折半で本人負担額を確定

最後に、総保険料の半分が本人負担(給与からの天引き)、残り半分が会社負担です。ステップ2の例(標準報酬月額30万円)なら、本人負担は月44,715円、会社負担も月44,715円となります。2026年5月以降は、これに子ども・子育て支援金345円(本人・会社それぞれ)が加算され、本人負担は月45,060円、会社負担も月45,060円になります。

図解に月給18万〜40万円までの本人負担額シミュレーションをまとめました。60歳の定年再雇用で月給が下がる場合の「月給○○万円なら本人負担○○円」という目安として活用してください。図解の数値は2026年4月時点(子ども・子育て支援金徴収開始前)の本人負担額です。2026年5月以降は、各月給に対し標準報酬月額×0.115%(子ども・子育て支援金本人負担)を上乗せしてください(例:標準報酬30万円なら月345円増)。

数字で見ると分かるとおり、月給18万円(本人負担約26,829円)の方が月給40万円(本人負担約61,110円)になれば、本人負担は月3万円以上増える計算です。再雇用時の給与設計は、本人の手取りと会社の総コストの両面から検討する必要があります。

60歳定年後の社会保険料はいくら変わる?再雇用の月給別シミュレーション

「60歳定年後 社会保険料 いくら」というご質問に、実数値でお答えします。定年再雇用でもっとも典型的な月給30万円→18万円のケースを、同日得喪あり/なしで比較してみましょう。

同日得喪あり・なしの社会保険料比較フロー(月給30万円から18万円への再雇用ケース)

月給30万円→18万円に下がったケース(同日得喪あり/なし)

月給30万円→18万円(いずれも4〜6月平均)の再雇用シナリオです。

1. 同日得喪を使う場合
4月分から標準報酬月額18万円で計算。本人負担は月約26,829円。
2. 同日得喪を使わない場合
4〜6月は旧標準報酬月額30万円のまま。本人負担は月約44,715円(月約17,886円高いまま)。7月分から随時改定で18万円に切り替わり、ようやく月26,829円に。

両者の差は月約17,886円 × 3ヶ月 = 約53,658円。これが本人の過払い分で、会社側も同額の過払いになります。合わせて3ヶ月で約10.7万円が余計に徴収される計算です。

しかも、この過払い分は原則として戻ってきません。「払いすぎたから返して」というルートは、同日得喪の時効(2年以内)での遡及手続きが例外的に認められる程度で、基本的には「気づいた時点からの修正」しかできない制度です。同日得喪は最初に知っておけば防げるロスなので、絶対に押さえておきたいテクニックです。

月給40万円→24万円に下がったケース(部長職から嘱託への典型パターン)

管理職から嘱託への再雇用でよくある「月給40万円→24万円」のケースも見てみましょう。

1. 同日得喪あり(4月分から標準報酬24万円):本人負担 月約35,772円
2. 同日得喪なし(4〜6月は旧標準報酬41万円):本人負担 月約61,110円

差額は月約25,338円 × 3ヶ月 = 約76,014円。本人・会社あわせて3ヶ月で約15.2万円の過払いです。給与ダウン幅が大きいほど、同日得喪の効果も大きくなります。

※ 上記の本人負担額は2026年4月時点(子ども・子育て支援金徴収開始前)の数値です。2026年5月以降は、各標準報酬月額に0.115%(子ども・子育て支援金本人負担)を乗じた額が毎月加算されます(標準報酬18万円なら+207円、24万円なら+276円、30万円なら+345円、41万円なら+471円)。同日得喪の効果額(3ヶ月で約10.7万円・約15.2万円)にも、それぞれ数千円規模の影響が出ます。

賞与がある再雇用契約の保険料設計(標準賞与額の上限)

再雇用契約で「月給は下げる代わりに賞与を残す」という設計をする会社もあります。この場合、賞与にも社会保険料がかかることを忘れないようにしましょう。

賞与保険料の計算式は「標準賞与額 × 保険料率」。月額の保険料率がそのまま賞与にも適用されます。ただし標準賞与額には上限があり、健康保険は年累計573万円、厚生年金は1回150万円が上限です。2026年5月以降は、賞与からも子ども・子育て支援金(標準賞与額×0.23%、労使折半)が徴収されます。

60歳以上の再雇用で月給20万円・賞与年2回各50万円(年収340万円)という設計の場合、月給ベースの本人負担年約357,720円に加えて、賞与ベースの本人負担年約149,050円(50万円×14.905%×2回)が加わります。合計年約50.6万円が本人負担です。2026年5月以降は、ここに月給ベースの子ども・子育て支援金(20万円×0.115%×12ヶ月=2,760円)と賞与ベースの子ども・子育て支援金(50万円×0.115%×2回=1,150円)が加わり、年合計で約3,900円程度の追加負担となります。

「月給を抑えたから保険料が安い」という思い込みで賞与を厚くすると、総額で想定していた水準を超えることがあります。月給+賞与の総額で保険料を逆算する視点が欠かせません。

厚生年金保険料 60歳以降 減る?——料率・等級・会社負担の3観点から検証

「厚生年金保険料 60歳以降 減る」と検索される方の多くは、「60歳を超えると何か優遇措置があるのでは?」と期待しているようです。結論を先に言うと、料率の優遇はありませんが、実質的に負担が減る要素はあります。3つの観点で整理します。

料率は年齢で変わらない(60歳以降も18.3%固定)

厚生年金保険料率18.3%は、2017年9月以降、全年齢共通で固定されています。60歳以上だからといって特別な軽減率はなく、全国一律18.3%の労使折半で本人負担9.15%は変わりません。新設の子ども・子育て支援金(0.23%)も同様に、60歳以上だからといって免除・優遇される仕組みはありません。

「60歳以上の社会保険加入 メリット」として料率優遇を期待される方が時々いらっしゃいますが、制度設計上そうした優遇は存在しないので、ここは割り切って考えましょう。

等級表の下限・上限(1等級88,000円〜32等級65万円)と60歳以降の実態

厚生年金保険料の標準報酬月額は1等級(88,000円)〜32等級(650,000円)の範囲です。月給が88,000円を下回ると1等級88,000円で固定(=実際の給与より高い標準報酬で計算)、月給が65万円を超えると32等級650,000円で固定(=それ以上は上がらない)という性質があります。

60歳以上の再雇用では、多くの方が標準報酬月額が下がる方向に動きます。たとえば現役時代に32等級(月給65万円超)だった方が、再雇用で月給30万円(22等級)になれば、月の厚生年金保険料は本人負担59,475円→27,450円と、ちょうど半減します。

一方、月給が88,000円未満のパート勤務の場合、実際の給与が下がっても保険料は1等級で固定されます。つまり「時給を下げて月給を抑えても、標準報酬の下限があるため保険料は減らない」という天井ならぬ床があることも押さえておきたいポイントです。

会社負担(労使折半)の視点で見た総雇用コスト

経営者目線で見ると、60歳以上の雇用コストは「月給+社会保険料の会社負担分」の合算で捉える必要があります。

1. 月給20万円(標準報酬20万円)の再雇用者:会社負担 月約29,810円 → 年雇用コスト約275.8万円
2. 月給30万円(標準報酬30万円)の再雇用者:会社負担 月約44,715円 → 年雇用コスト約413.7万円
3. 月給40万円(標準報酬41万円)の再雇用者:会社負担 月約61,110円 → 年雇用コスト約553.3万円

これに加えて雇用保険料(会社負担0.95%前後)や労災保険料もかかります。月給ベースの人件費予算を組む際は、給与の約15.1%を社会保険料会社負担として上乗せして考えるのが現実的な目安です。2026年5月以降は子ども・子育て支援金(会社負担0.115%)が新たに加わるため、月給30万円なら会社負担が月345円増、年4,140円増となります。中小企業にとってはわずかな増加でも、従業員数の多い企業では累計負担が無視できない規模になります。

60歳以上 パート 社会保険加入の保険料|週20時間・月8.8万円の境界線

続いて、60歳以上 パート 社会保険加入の論点です。「60歳以上 社会保険加入条件」を満たすパート従業員がどんな保険料を負担するのか、加入しない場合との比較も含めて整理します。

加入の4要件と60歳以上への適用

60歳以上のパート従業員が社会保険(健康保険・厚生年金)の加入対象になる要件は、次の4つすべてを満たすかどうかです。

1. 週所定労働時間20時間以上
2. 月額賃金88,000円以上
3. 雇用期間2ヶ月超見込み
4. 学生ではない

さらに事業所規模要件(現行:常時51人以上の企業)があります。この要件は2024年10月に101人以上→51人以上へ引き下げられ、2025年6月成立の改正年金法によって2027年10月以降は段階的に撤廃される予定です。60歳以上のパートでも、この要件を満たす事業所で働いていれば加入は強制で、本人の希望で加入/非加入を選べる性質のものではありません。

なお、正社員の4分の3以上の労働時間・日数で働くパート・嘱託(いわゆる「4分の3基準」)の場合は、事業所規模に関係なく加入対象です。

加入した場合の保険料シミュレーション(月給8.8万・10万・12万円)

加入要件を満たすパートの月給別保険料を見てみましょう(協会けんぽ東京都・40歳以上65歳未満)。

1. 月給88,000円:標準報酬月額88,000円(1等級)
本人負担 月約13,116円(厚年8,052円+健保+介護5,064円)
2. 月給100,000円:標準報酬月額98,000円(2等級)
本人負担 月約14,609円
3. 月給120,000円:標準報酬月額118,000円(4等級)
本人負担 月約17,587円

月給88,000円ちょうどで加入した場合、月約13,000円(年約15.7万円)が本人負担です。2026年5月以降は、これに子ども・子育て支援金本人負担分(88,000円×0.115%=月約101円)が加わります。これは決して小さくない金額で、「手取りが減る」と感じる方も多くいらっしゃいます。ただし、この保険料は将来の年金額を増やし、傷病手当金や障害厚生年金の対象にもなる「保険料」と呼べる性質を持っています。

加入しない選択時の国民年金・国民健康保険の負担との比較

加入要件を満たさないパート(週20時間未満など)の場合、本人は国民年金+国民健康保険または配偶者の扶養で社会保険をまかなうことになります。

1. 国民年金保険料:月17,510円(2026年度)※60歳未満のみ
2. 国民健康保険料:自治体・所得で変動(年収120万円なら年10〜15万円が目安)

60歳以上は国民年金の加入義務がないため、実質「国民健康保険だけ」または「配偶者の扶養」で済みます。月給8.8万円パートで社会保険加入する場合の本人負担月13,116円と、月給10万円未満で扶養内に収めて保険料ゼロの場合では、手取りで年10万円以上の差が出ることもあります。なお、国民健康保険に加入する場合も、2026年4月以降は国民健康保険料の中に子ども・子育て支援金分が組み込まれて徴収されるため、加入・非加入を問わず支援金の負担は発生します(金額は自治体ごとの計算式で異なります)。

HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 特定社会保険労務士 渡辺俊一
特定社会保険労務士
渡辺 俊一
実務では「手取りを下げないように週19時間以内で」というご相談が多いですが、会社側から時間調整を強いると行政指導のリスクがあります。本人の希望に基づく労働時間設定であれば問題ありませんが、「加入要件を満たさないように会社が意図的に調整している」と見られないよう、契約書やシフト管理に気をつけたいですね。

社会保険料 60歳以上 180万円の壁|扶養と自分で加入のどちらが得か

社会保険料 60歳以上 180万円」という検索が示す論点が、扶養との境界線です。60歳以上特有の「180万円の壁」について、保険料の実数値で比較してみます。

60歳以上の被扶養者は年収180万円未満まで扶養でいられる理由

健康保険の被扶養者要件は、通常年収130万円未満(月額108,334円未満)ですが、60歳以上または障害者は年収180万円未満(月額150,000円未満)まで緩和されています。

なぜ60歳以上だけ緩いのか。これは「60歳以上は公的年金受給が想定され、収入下限を少し上げても生計維持関係に大きな影響がない」という考え方に基づく措置です。60歳以降にパートで月12万円程度を稼いでも、配偶者の健康保険の扶養から外れずに済みます。

重要なのは、この「180万円未満」には公的年金収入も含まれるという点。パート収入と年金収入の合算で判断されるため、「年金で月5万円もらって、パートで月10万円」だと合計月15万円=年180万円で、微妙なラインになります。

扶養内パート(保険料ゼロ)vs 自分で加入(保険料約2万円/月)の手取り比較

扶養内パートと自分で社会保険加入のどちらが得か、具体的な数値で比較します。

ケースA:扶養内パート(月収12万円・年収144万円)
社会保険料負担ゼロ。所得税・住民税・雇用保険料を除けば、手取り年約140万円(配偶者の健保の扶養に入り続ける)。

ケースB:自分で社会保険加入(月収12万円・年収144万円、月給12万円)
本人負担 月約17,587円 × 12 = 年約211,044円。手取り年約123万円

両者の差は年約17万円。短期的な手取りで見れば扶養内が得ですが、自分で加入すれば将来の老齢厚生年金(加入期間に応じて増える)、傷病手当金、障害厚生年金、遺族厚生年金の対象になります。5年加入で将来の年金増額は年間約39,463円(標準報酬月額12万円×5.481/1000×60月)になるため、長期で見ればマイナスばかりとは限りません。

180万円の壁でよくある判断ミスと回避策(月収ペース管理)

実務で多いのが、「年末にパート収入が180万円を超えて扶養から外れてしまった」というトラブルです。

特に60歳前半の方は「年金受給も始まってペース配分が読みにくい」「時給アップで気づいたら予算超過」というパターンがよくあります。月収15万円ペースで毎月管理し、年末の12月給与で「今年の収入見込み」を再計算するのがおすすめです。

また、180万円の判定は「向こう1年間の収入見込み」で判断される仕組みで、過去1年の実績ではありません。「翌年度から180万円を超える見込み」になった時点で扶養から外れる手続きが必要な点にも注意しましょう。

60歳以上 厚生年金加入 メリット|払った保険料は将来いくら戻ってくる?

「60歳以上 社会保険加入 メリット」の核心が、払った保険料が将来どれだけ年金として戻ってくるかです。60歳以降の厚生年金加入は「払い損」なのか、それとも「元が取れる」のか、実数値で検証しましょう。

老齢厚生年金の増額シミュレーション(月収別・加入年数別の詳細早見表)

60歳以降の厚生年金加入は、老齢厚生年金の「報酬比例部分」を増やします。計算式は「平均標準報酬額 × 5.481/1,000 × 加入月数」。具体例で見てみましょう。

加入時の月給 60〜65歳の5年加入 60〜70歳の10年加入 年金増額(年額)
月収20万円 年間約65,772円 年間約131,544円 終身受給
月収25万円 年間約82,215円 年間約164,430円 終身受給
月収30万円 年間約98,658円 年間約197,316円 終身受給

増額された年金は生きている間ずっと受け取れるため、長生きするほど総額が大きくなります。

経過的加算と「払い損」論争——国民年金40年満了済みの人の扱い

60歳以降の厚生年金加入には「払い損」論争があります。60歳の時点で国民年金が40年(480ヶ月)満了しているか、65歳到達前に未加入期間が残っているかで状況が変わります。

1. 国民年金が40年満了済みの人:60歳以降の保険料は老齢基礎年金に反映されない。老齢厚生年金(報酬比例部分)のみ増える。
2. 国民年金が40年未満の人:60歳以降の厚生年金加入で「経過的加算」が発生し、国民年金の未加入期間を補填する形で老齢基礎年金相当額が上乗せされる。

経過的加算は満額で年797,000円 × 未加入年数 / 40年が上限。国民年金の未納・未加入が長い方ほど、60歳以降の厚生年金加入による恩恵が大きくなる仕組みです。

保険料の元が取れる損益分岐年齢(何歳まで生きれば得か)

60歳から65歳まで5年間、月給20万円で厚生年金加入を続けた場合の損益分岐を試算します。

1. 5年間の本人負担保険料:20万円 × 9.15% × 12ヶ月 × 5年 = 109.8万円
2. 65歳からの年金増額(年額):約65,772円
3. 損益分岐年齢:109.8万円 ÷ 65,772円 ≒ 16.7年81.7歳で元が取れる

日本人の平均寿命(男性81.1歳・女性87.1歳)を考えると、ほぼ確実に元が取れる水準です。さらに傷病手当金・障害厚生年金・遺族厚生年金の保障がつく点を加味すれば、60歳以降の厚生年金加入は基本的に経済的にプラスと考えてよいでしょう。

HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 特定社会保険労務士 渡辺俊一
特定社会保険労務士
渡辺 俊一
「元が取れるか」で議論されることが多いですが、私が相談を受ける中では「60代で病気になったときの傷病手当金の安心感」を評価される方がかなりいらっしゃいます。経済合理性だけでなく、働き続けるうえでのセーフティネットとして考えると納得しやすいかもしれませんね。

65歳・70歳・75歳の節目で社会保険料はこう変わる|保険料負担の長期カーブ

60歳以上の社会保険料は、その後の65歳・70歳・75歳の節目で大きく変化します。将来の負担カーブを可視化しておきましょう。

60歳・65歳・70歳・75歳の社会保険料変化タイムライン(年齢節目の負担カーブ)

65歳到達|介護保険料が給与天引きから市町村直接納付に切替

65歳の誕生日を含む月の前月分まで、介護保険料(第2号)が給与から天引きされます。65歳以降は「第1号被保険者」となり、市町村からの保険料決定通知に基づき、年金からの特別徴収または口座振替で納付します。

会社側の実務では、65歳到達月の給与計算で介護保険料の天引きを停止する必要があります。クラウド給与計算ソフトの多くはこの切替えを自動処理しますが、手計算の会社では切替えミスで過剰徴収が発生しがちです。

なお、65歳からの介護保険料は市町村の所得区分で変動し、東京23区の標準的な所得帯で年6〜8万円程度。会社員時代の給与天引きより負担感が出るケースもあるため、本人にも事前説明しておきたいポイントです。

70歳到達|厚生年金保険料がゼロに(「70歳以上被用者該当届」で会社の手続き)

70歳の誕生日の前日で、厚生年金の被保険者資格が自動的に喪失します。給与明細から厚生年金保険料(本人負担9.15%)が消え、手取りが月約3〜6万円増える印象になります。

会社側は年金事務所に「70歳以上被用者該当届」を提出します。これは保険料徴収の対象からは外れるものの、在職老齢年金の計算のため報酬を届け出続ける必要があるためです。会社負担(労使折半分)も同時にゼロになり、雇用コストが月数万円下がる側面もあります。

健康保険料は75歳まで継続します。子ども・子育て支援金(健康保険料に合わせて徴収)も健康保険料と同じく75歳まで徴収が続きます。したがって70歳〜74歳までは「健康保険料と子ども・子育て支援金のみが給与天引きされ、厚生年金は止まっている」という珍しい状態になります。

75歳到達|健康保険料→後期高齢者医療保険料へ移行

75歳到達で、健康保険の資格を喪失し、後期高齢者医療制度に自動加入します。健康保険料の給与天引きはここで終了し、以降は後期高齢者医療保険料として市町村から徴収される形に変わります。同時に、健康保険料に合わせて徴収されていた子ども・子育て支援金(給与天引き分)もここで終了し、以降は後期高齢者医療保険料の枠組みで支援金分が引き続き徴収されます。

会社側は「健康保険被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出。保険料の天引きを給与計算から外し、マイナ保険証の利用登録を後期高齢者医療の資格確認書に切り替える案内を本人にします。

後期高齢者医療保険料の全国平均は年約85,000円(2024年度)で、所得によって変動。会社員時代の健康保険料より大幅に低くなるケースが多いものの、被扶養者だった配偶者は同時に国民健康保険への切替手続きが必要になります。家計全体の医療保険料を再設計する節目になりますので、本人への3ヶ月前案内が親切です。

【社労士解説】60歳以上 社会保険料 計算で企業が見落としがちな実務ポイント5選

顧問先支援の実務で、60歳以上の社会保険料 計算まわりで繰り返し見かける「見落としポイント」を5つご紹介します。

ポイント①:同日得喪の失念で3ヶ月分の保険料過払い

何度でも書きますが、これが60歳以上の保険料ミスの筆頭です。月給30万→18万の再雇用で、本人・会社あわせて約10.7万円の過払い。大手クラウド給与ソフトでも「同日得喪」の自動提案まではしてくれないため、60歳到達者リストから手動でチェックするルーチンを作っておきましょう。

ポイント②:65歳の介護保険切替忘れで天引きしすぎ

65歳到達月の給与計算で介護保険料の天引きを止めるのは、「65歳の誕生日を含む月の前月分まで」が正しい処理です。翌月分から止めればいいと勘違いし、1ヶ月分過剰徴収してしまうケースが多い。月約1,600円程度ですが、従業員から「返金してほしい」と言われたら二度手間になるため、確実に自動化しておきたいところです。

ポイント③:70歳到達月の厚生年金保険料徴収停止ミス

70歳到達時の厚生年金喪失は「70歳の誕生日の前日」が資格喪失日です。同日が属する月まで保険料を徴収し、翌月分から徴収停止——という処理になりますが、誕生日の前日が月末にまたぐと計算が混乱しがち。70歳以上被用者該当届の提出とセットで給与計算担当と社労士が確認するフローを組むと安全です。子ども・子育て支援金は健康保険料に合わせて徴収されるため、70歳到達後も継続。停止のタイミングは健康保険料と同じ75歳到達時です。

ポイント④:賞与支払届の漏れによる賞与保険料未徴収

再雇用契約で「賞与あり」にすると、賞与支給から5日以内に「被保険者賞与支払届」を年金事務所に提出する必要があります。これを忘れると、本人の厚生年金加入記録に賞与分が反映されず、将来の年金額が実態より少なくなるトラブルにつながります。賞与からは2026年5月以降、子ども・子育て支援金(標準賞与額×0.23%、労使折半)も徴収されるため、提出漏れは支援金未徴収にも直結します。

ポイント⑤:70歳以上被用者該当届の提出漏れで在職老齢年金計算が狂う

70歳以上で働き続ける従業員について、会社は「70歳以上被用者該当届」を提出して報酬月額を届け出る必要があります。これが漏れると、在職老齢年金の支給停止計算が正しく行われず、本人の年金額が実態と合わなくなります。70歳到達時に自動でリマインドが出る給与計算ソフトを使っていれば防げますが、手作業運用の会社では要注意です。

HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 特定社会保険労務士 渡辺俊一
特定社会保険労務士
渡辺 俊一
顧問先では、毎年年初に「今年60歳・65歳・70歳・75歳に到達する従業員リスト」を作って手続きカレンダーに落とし込むことをおすすめしています。これだけで保険料ミスは激減しますよ。60歳以上の雇用が増える会社ほど、この予防運用が効いてきます。

60歳以上の社会保険料に関するよくある質問(FAQ)

最後に、60歳以上の社会保険料についてよくいただくご質問にお答えします。

Q. 60歳を過ぎたら社会保険料は減りますか?

HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 特定社会保険労務士 渡辺俊一
特定社会保険労務士
渡辺 俊一
A. 年齢だけでは減りませんよ。料率は全年齢一律(厚生年金18.3%・健康保険は都道府県別・子ども・子育て支援金0.23%)で、60歳以上だからといって優遇はありません。ただし、定年再雇用で給与が下がれば標準報酬月額も下がるので保険料額は下がります。そのときに「同日得喪」を使えば再雇用月から早期軽減できるので、必ず押さえておきましょう。

Q. 定年再雇用で月給が半分になったら、保険料もすぐに半額になりますか?

HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 特定社会保険労務士 渡辺俊一
特定社会保険労務士
渡辺 俊一
A. 通常の「随時改定」だと3ヶ月遅れて(4ヶ月目から)保険料が下がります。ですが、60歳以上の定年再雇用に限っては「同日得喪」という特例があって、再雇用月から新標準報酬月額に切り替えられます。使わないと本人・会社あわせて月給30万→18万のケースで約10.7万円の過払いが発生するので、必ず使いましょうね。

Q. 60歳以上のパート従業員の社会保険料は企業が全額負担するのですか?

HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 特定社会保険労務士 渡辺俊一
特定社会保険労務士
渡辺 俊一
A. いいえ、労使折半で本人と会社が半分ずつ負担しますね。月給8.8万円のパートなら、本人負担は月約13,000円、会社負担も月約13,000円の計26,000円が保険料総額です。年額で本人・会社あわせて約31万円ほど。この規模感をふまえて「加入拡大時の人件費予算」を組むと実態に合いますよ。

Q. 60歳以上で厚生年金保険料を払い続けるのは「払い損」ですか?

HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 特定社会保険労務士 渡辺俊一
特定社会保険労務士
渡辺 俊一
A. 結論、多くの方はむしろ得をします。月給20万円で5年間加入した場合、損益分岐は約81.7歳で、平均寿命を考えるとほぼ確実に元が取れる計算です。さらに傷病手当金・障害厚生年金・遺族厚生年金の保障もつくので、総合的に見ればプラスですね。「払い損」論は国民年金40年満了済みの一部ケースの話で、全体像では加入メリットの方が大きいです。

Q. 扶養内パート(年収180万円未満)で働けば、本当に保険料はゼロですか?

HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 特定社会保険労務士 渡辺俊一
特定社会保険労務士
渡辺 俊一
A. ここは要注意です。「年収180万円未満の扶養判定」と「自分が社会保険に加入すべきかの判定」は別の制度で、週20時間以上・月額8.8万円以上で勤務要件を満たすと、たとえ年収が180万円未満でも本人が社会保険加入の義務を負います。「180万円の壁=扶養の壁」というだけで、保険料ゼロを確約する壁ではないので注意しましょう。

Q. 70歳になったら厚生年金保険料の天引きはいつから止まりますか?

HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 特定社会保険労務士 渡辺俊一
特定社会保険労務士
渡辺 俊一
A. 70歳の誕生日の前日(資格喪失日)が属する月の前月分までが徴収対象です。たとえば4月10日が70歳の誕生日なら、資格喪失日は4月9日で、3月分までが徴収対象。4月の給与では厚生年金保険料を引かないのが正しい処理です。誕生日月をまたぐところは間違えやすいので、会社は「70歳以上被用者該当届」の提出とあわせて二重チェックしたいですね。

Q. 2026年5月から始まった「子ども・子育て支援金」は60歳以上にも適用されますか?いつまで払うのですか?

HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 特定社会保険労務士 渡辺俊一
特定社会保険労務士
渡辺 俊一
A. はい、適用されますよ。子ども・子育て支援金は「全世代・全経済主体で子育てを支える」という設計のため、健康保険の被保険者である限り、60歳以上でも年齢に関係なく一律で徴収されます。料率は2026年度0.23%(労使折半で本人0.115%・会社0.115%)で、令和10年度には0.4%程度まで段階的に引き上げ予定。徴収のゴールは75歳の健康保険資格喪失時で、それ以降は後期高齢者医療保険料の枠組みで支援金分が徴収されます。「子育て世代じゃないから払わなくていい」という制度ではない点、従業員から質問が来たら丁寧に説明したいポイントですね。

まとめ|60歳以上の社会保険料は「料率」ではなく「標準報酬と同日得喪」で決まる(2026年5月以降は子ども・子育て支援金も加わる)

60歳以上の社会保険料は、年齢による料率優遇はなく、標準報酬月額と同日得喪の活用で実質的な負担が変わるというのが結論です。2026年5月からは新たに「子ども・子育て支援金」(料率0.23%)が健康保険料・介護保険料と合わせて徴収されるため、60歳以上の社会保険料の実額も微増しています。

おさえておきたいポイントを整理します。

1. 料率:厚生年金18.3%(全国一律)・健康保険約9.5〜10.5%(都道府県別)・介護保険1.6%(40〜64歳のみ)・子ども・子育て支援金0.23%(2026年5月新設・国一律)。本人負担合計は月給の約14.82〜15.32%(2026年5月以降)。
2. 計算式:標準報酬月額 × 各保険料率 ÷ 2(労使折半)。月給別シミュレーションは図解02を参照。
3. 同日得喪:定年再雇用で給与が下がる場合、月給30万→18万で本人・会社あわせて約10.7万円の過払いを防げる特例。
4. 180万円の壁:60歳以上は扶養年収要件180万円未満に緩和。ただし勤務要件(週20時間・月8.8万円以上)を満たせば年収180万円未満でも本人加入になる点に注意。
5. 節目の切替え:65歳で介護保険料が給与天引きから外れ、70歳で厚生年金保険料がゼロに、75歳で健康保険料と子ども・子育て支援金(給与天引き分)が後期高齢者医療保険料に移行。

大阪・東京・名古屋・福岡など全国の中小企業で、60歳以上の従業員の再雇用・保険料設計のご相談が急増しています。「自社の再雇用契約で同日得喪を正しく処理できているか」「70歳到達時の手続きを忘れていないか」「扶養内パートと自分で加入のどちらが従業員にとって良いか」「2026年5月からの子ども・子育て支援金を給与計算ソフトに正しく反映できているか」——そうした具体的なお悩みは、顧問社労士に個別の状況をご相談いただければ、過去の類似ケースを踏まえて一緒に最適な形を考えていけますよ。

HR BrEdge社会保険労務士法人では、顧問先500社超の実績をもとに、60歳以上の社会保険料設計・給与計算・就業規則見直しまでワンストップで支援しています。お気軽にご相談ください。

この記事の執筆者

HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 特定社会保険労務士 渡辺俊一
渡辺 俊一
(わたなべ としかず)

HR BrEdge社会保険労務士法人 代表
特定社会保険労務士/第1種衛生管理者

1977年兵庫県神戸市生まれ。関西学院大学法学部法律学科卒業後、日本マクドナルド株式会社に入社。2005年社会保険労務士試験に合格し、2007年に渡辺社会保険労務士事務所を開設。2016年法人化し、2025年5月に「HR BrEdge社会保険労務士法人」へ社名変更。

顧問先500社超・実績970社以上を誇り、「会社の財産は人・人・人である」を信念に、従業員・お客様・社会の「三方良し」の経営支援を実践。給与計算・社会保険手続き・就業規則・助成金申請から、IPO・M&Aに向けた労務監査まで幅広く対応。

著書『頂点をめざす!~経営者のパートナーとして歩む社労士の物語~』はAmazon「社会保険労務士の資格・検定」部門で1位を獲得。

【所属】全国社会保険労務士連合会/大阪府社会保険労務士会/一般社団法人EO Osaka
【趣味】トライアスロン(アイアンマンレースに挑戦中)
【信条】人生は挑戦だ!まずやる!なんせやる!とことんやる!