こんにちは。HR BrEdge社会保険労務士法人代表、特定社会保険労務士の渡辺俊一(わたなべとしかず)です。
「正社員の欠勤が多くて困っている」「当日欠勤を繰り返す社員、本当に解雇できるのか」「1ヶ月以上の欠勤で社会保険料の処理が分からない」——こうしたご相談を、私の顧問先(500社超)の経営者・人事担当者から毎月のようにいただきます。
欠勤が多い社員への対応は、「労務管理(注意指導・解雇)」と「社会保険・給与計算(保険料・標準報酬月額)」という、性質の異なる2つの実務が同時に絡む厄介な分野です。労務管理だけ見ていると社会保険料の処理を間違え、社会保険だけ見ていると不当解雇のリスクを見逃します。
この記事では、「正社員の欠勤対応を5ステップでフロー化」したうえで、給与・社会保険料・傷病手当金・標準報酬月額・解雇判断・予防策まで、社労士の視点から徹底解説します。判例(不当解雇1,600万円事例、27回欠勤での解雇有効判決)も引用しながら、企業として何を確認しどう動くべきかを明示しました。
「欠勤が多い社員」で悩む経営者・人事の3つの壁
「社会保険 欠勤が多い」「正社員 欠勤 多い」で検索される方からは、ざっくり次の3つの壁をよく伺います。
・「体調不良で欠勤を繰り返す社員にどう注意すればいいのか分からない」
・「1ヶ月欠勤しているが、給料も社会保険料もどう処理すべきか自信がない」
・「他の社員に迷惑がかかっているが、解雇するとトラブルになりそうで踏み切れない」
この3つは、まさに欠勤対応の核心です。順番に解きほぐしていけば、企業として「ルール×記録×段階的対応」の3点セットで、トラブルを未然に防げるようになります。
正社員の欠勤、何日まで黙認していい?基本ルール5項目
まずは欠勤に関する基本的な法律ルールを整理します。「正社員 欠勤 何日まで」のサジェストにも対応する重要パートです。
欠勤と有給休暇・休職の違い
給与計算上の取り扱いを区別するために、3つの言葉を整理しておきましょう。
- 欠勤:出勤予定日に正当な理由なく出勤しないこと。給与は控除可(ノーワーク・ノーペイ)
- 有給休暇:労基法39条に基づく権利。給与は通常通り支給
- 休職:私傷病等で長期療養が必要な場合に労務提供義務を免除する制度。就業規則で規定する
就業規則で「欠勤が連続◯日続いた場合は休職に切り替える」と決めている会社が多いです。
ノーワーク・ノーペイの原則と給与控除
欠勤した日の給与は「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき控除できます。控除額の計算方法は「月給÷月平均所定労働日数」が一般的で、就業規則・賃金規程に明記しておく必要があります。注意点として、完全月給制(欠勤しても満額支給)の社員には欠勤控除ができないので、自社の給与制度を必ず確認してください。
出勤率8割未満で次年度の有給休暇は付与不要に
労基法39条により、有給休暇は「全労働日の8割以上出勤」が付与の条件です。欠勤が多くて出勤率が8割を切ると、翌年度の有給休暇の付与義務がなくなります。ただし、産前産後休業・育児介護休業・労災休業・有給休暇取得日は「出勤したもの」として扱うルールがあり、計算は意外と複雑です。
完全月給制と日給月給制の控除ルールの違い
月給制には実は2種類あります。
- 完全月給制:欠勤しても満額支給(管理職や役員に多い)
- 日給月給制:欠勤分を控除して支給(一般の正社員に多い)
就業規則・賃金規程でどちらを採用しているかを明記していないと、欠勤控除をめぐってトラブルになります。
「正社員 欠勤 何日まで」に法律上の数値基準はない
結論からいうと、「何日欠勤したらクビにできる」という法律上の数値基準はありません。就業規則に基づいて段階的に対応することが必要で、即解雇は不当解雇のリスクがあります。具体的な対応ステップは後の章で解説します。
欠勤しても社会保険料は発生する|保険料・標準報酬月額3つのルール
社会保険料は「給与の支払いの有無に関係なく」発生
意外と知られていないのが、欠勤して給与が支払われない月でも、社会保険料の支払い義務は発生するということ。社会保険料は「標準報酬月額(直近4〜6月の平均報酬で決定)」をもとに算出されるため、当月の給与がいくらだったかには関係ありません。健康保険・厚生年金保険ともに、加入要件を満たす限り保険料は発生し続けます。
給与より社会保険料が高くなる「マイナス給与」問題
「欠勤 社会保険料 マイナス」のサジェストに対応する論点です。1ヶ月のうち多くの日を欠勤すると、支給される給与より天引きすべき社会保険料・税金のほうが大きくなり、給与明細上「マイナス」になることがあります。この場合、会社は本人から不足分を徴収する必要があり、現金振込・翌月給与での精算など実務対応が必要です。
標準報酬月額の月額変更届(随時改定)が必要なケース
欠勤が長期化して給与が大幅に下がった場合、「随時改定(月額変更届)」の対象になることがあります。次の3要件をすべて満たすと、変更後の標準報酬月額に修正されます。
- 固定的賃金(基本給・役職手当等)に変動があった
- 変動月以後の継続した3か月間の報酬の平均月額に該当する標準報酬月額と、現在の標準報酬月額に2等級以上の差が生じた
- 3か月とも、報酬支払基礎日数が17日以上ある
欠勤での給与減額は固定的賃金の変動には該当しないため、長期欠勤だけでは月額変更届の対象外です。「給与が減ったから社会保険料も下がるはず」という誤解はここで生まれます。
1ヶ月以上の欠勤|給料・社会保険料・傷病手当金の取り扱い

1ヶ月欠勤して給料は0円になることがある
日給月給制の社員が1ヶ月丸々欠勤すると、給与は0円になります(基本給以外の役職手当等も控除されるのが通常)。これは法律上問題ありません(ノーワーク・ノーペイ)。
1ヶ月欠勤の社会保険料は会社が立替払いになるケース
給与が0円の月でも社会保険料は発生するため、会社は本人の社会保険料(健康保険・厚生年金)を一旦立替えて納付することになります。本人から徴収する方法は、①翌月給与から控除、②本人が現金振込、③復職後に分割徴収、などのパターンがあります。就業規則・賃金規程に取扱いを明記しておかないと、後でトラブルになりやすいので注意してください。
傷病手当金で給与の約2/3が補填される(連続4日以上)
業務外の私傷病で欠勤が続く場合、健康保険の「傷病手当金」が支給されます。要件は次のとおり。
- 業務外の事由による病気・ケガで療養中
- 仕事に就くことができない
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けない(待期完成)
- 休業期間中、給与の支払いがない(または傷病手当金より少ない)
支給額は「直近12か月の標準報酬月額の平均÷30日×2/3」。最長で支給開始から通算1年6か月まで支給されます。「1ヶ月欠勤して給料0円」でも、傷病手当金で生活費の一部が補填されるしくみです。
育児休業との重複時の社保免除との違い
「育児休業中は社会保険料が免除されるのに、欠勤中は免除されない」という相談もよく受けます。育児休業は法律で認められた『労務提供義務の免除』であり、社保免除も法律で定められた特例です。一方、私傷病による欠勤はあくまで個別事情なので、社保免除の対象外。同じ「会社を休む」でも、法的根拠が違うと処理が大きく変わる点を押さえておきましょう。
渡辺 俊一
欠勤が多い社員と社会保険の加入要件|契約ベース vs 実績ベース
「社会保険 出勤日数が足りない」「社会保険加入条件 下回る 一時的」「社会保険加入条件 満たさない月」「社会保険 出勤日数が少ない月」のサジェストに対応する重要章です。
社会保険加入は「契約上の労働時間」で判定
社会保険の加入要件(短時間労働者の場合:週20時間以上・月8.8万円以上・2か月超見込み・学生でない・特定適用事業所等)は、「契約上の所定労働時間・所定賃金」をベースに判定します。実績の出勤日数や実際の支給給与で判定するわけではありません。
出勤日数が一時的に足りない月でも加入は維持
たとえば契約上は週30時間勤務(社保加入対象)の正社員が、ある月に欠勤を繰り返して実出勤日数が10日以下になったとしても、契約自体が変更されていない限り、社会保険の加入資格はそのまま維持されます。これが「契約ベース」のルールです。
契約変更で要件外にする場合は同意・適切手続き必要
欠勤が常態化した社員について、契約上の労働時間を短くして社保加入対象外にする選択肢もあります。ただし契約内容の変更は本人の同意が前提であり、就業規則・労働条件通知書の更新も必要です。一方的な不利益変更は無効になりやすいので、社労士に相談しながら進めるのが安全です。
欠勤が多い正社員への対応ステップ【顧問先500社の実務フロー】
ここからが「実務でどう動くか」の本題です。私の顧問先で標準的に運用している5ステップの対応フローを紹介します。「当日欠勤 多い 対策」のサジェストにもこのフローが直接対応します。

ステップ1:欠勤理由を毎回確認・記録する
欠勤のたびに本人から理由を聞き、日付・理由・連絡時刻を記録します。LINEやメールでの連絡記録もそのまま保管。「いつ・なぜ休んだか」の客観的な記録が、後の指導・懲戒・解雇判断のすべての根拠になります。
ステップ2:体調不良なら診断書の提出を求める
体調不良が理由の欠勤が続く場合は、必ず医師の診断書を提出してもらいます。診断書がないと「本当に病気だったのか」の客観的判断ができません。日本ヒューレット・パッカード事件(最高裁平成24年)でも、精神疾患の社員に対して「具体的な病状確認をせずに解雇したのは違法」と判断されています。
ステップ3:注意指導を口頭→書面で段階的に
正当な理由のない欠勤が続く場合は、口頭注意→書面注意→始末書という段階で指導を重ねます。すべての指導内容と日付を残し、本人の署名・押印をもらえると後日の証拠として有効です。
ステップ4:休職制度の活用を検討する
体調不良が長期化する場合は、就業規則に基づいて休職制度に切り替えます。私傷病休職は通常3か月〜2年程度の期間を設定し、その期間内に復職できなければ自然退職または普通解雇となる規程が一般的です。これにより「いきなり解雇」ではなく、段階を踏んだ手続きを確保できます。
ステップ5:それでも改善しない場合の懲戒・解雇検討
口頭注意・書面注意・休職などすべての段階を踏んでもなお改善しない場合に、初めて懲戒処分(戒告・減給・出勤停止・諭旨退職・懲戒解雇)または普通解雇を検討します。この段階に至る前に、必ず社労士・弁護士に判断を仰いでください。
欠勤を理由に解雇できるか?「当日欠勤 繰り返す クビ」の法的判断
「当日欠勤 繰り返す クビ」「当日欠勤 多い社員」のサジェストに対応する核心章です。判例を交えて、解雇の有効性がどう判断されるか整理します。

普通解雇と懲戒解雇の使い分け
欠勤を理由とする解雇には2種類あります。
- 普通解雇:能力不足・勤務状況不良などで雇用継続が困難な場合の解雇。30日前予告または解雇予告手当が必要
- 懲戒解雇:無断欠勤・服務規律違反など著しい非違行為に対する制裁としての解雇。即時解雇可能だが、ハードルが極めて高い
欠勤の場合、多くは普通解雇で対応するのが現実的です。
不当解雇とされた事例(1,600万円支払い命令)
欠勤を理由に拙速に解雇すると、不当解雇として大きな金銭リスクを負います。実例として、適切な指導や休職を経ずに解雇したことで、約1,600万円の支払いを命じられた裁判例もあります。労働契約法16条「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、無効とする」という条文が、解雇の有効性を厳しく判断する根拠になっています。
解雇有効と判断された事例(大阪地裁・27回欠勤判決)
逆に、適切な手続きを踏んだ上での解雇は有効とされる事例もあります。大阪地裁令和4年7月22日判決では、約半年間で27回の遅刻・欠勤を繰り返し、複数回の注意指導を受けても改善しなかった社員に対する普通解雇が有効と判断されました。「事実の積み重ね+適切な指導記録」があれば、解雇は法的に守られるということです。
解雇前に必ず踏むべき4つの手順
解雇の有効性を確保するため、必ず次の4手順を踏んでください。
- 欠勤事実の正確な記録(日付・回数・理由)
- 段階的な注意指導(口頭→書面)と本人署名
- 休職制度の適用検討(私傷病の場合)
- 解雇前の弁明機会の付与(解雇予告通知前に本人の言い分を聞く)
「当日欠勤 多い 対策」|欠勤を予防する5つの仕組み
解雇は最終手段。本来は「欠勤が多発しない仕組み作り」が経営として最も重要です。

就業規則への明記(欠勤定義・控除・懲戒)
欠勤の定義・連絡方法・給与控除ルール・懲戒基準を就業規則に明記します。「無断欠勤が3日続いた場合は懲戒解雇事由」「欠勤の連絡は始業時間までに上長へ電話で」など具体的に書くのがポイント。
産業医との連携(メンタル不調の早期発見)
近年はメンタル不調が原因の欠勤が増えています。50人以上の事業場では産業医の選任が義務ですが、それ未満の会社でも地域産業保健センターの無料サービスを活用できます。早期発見・早期対応で、長期欠勤・休職を防げます。
子の看護等休暇・介護休暇の整備
2025年4月から「子の看護等休暇」が拡充され、対象が小学校3年生修了時まで、対象事由に学級閉鎖・入学式等の行事も追加されました。子育て中の社員の急な欠勤を「無断欠勤扱い」にしないためにも、就業規則の整備と従業員への周知が必要です。
勤怠管理システムでの可視化
欠勤・遅刻・早退の発生状況を勤怠管理システムで月次集計します。「特定の社員の欠勤頻度が異常」「特定の曜日に集中している」などの傾向が見えると、早期介入につながります。
周囲の社員への配慮(しわ寄せ・モラル低下防止)
「仕事 体調不良 休みすぎ 迷惑」というサジェストにも表れているように、欠勤者本人より、周囲の社員のモチベーション低下のほうが深刻な場合もあります。業務分担の見直し・応援体制・必要なら派遣・パート補充など、しわ寄せを最小化する仕組みを並行して用意しましょう。
欠勤対応で企業が陥る5つのNG(失敗事例)
- 注意指導なしの即解雇:労働契約法16条違反で不当解雇判決の可能性。1,600万円の支払い命令事例もある。
- 就業規則のない減給・処分:労基法91条違反。減給は「1回の額が平均賃金の1日分の半額・総額が一賃金支払期の賃金の10分の1」を超えてはいけない。
- 長期黙認による会社責任の発生:何年も欠勤を黙認していると「会社側にも管理責任あり」とされ、いざ解雇しても無効になることがある。
- 診断書を取らずに体調不良を疑う:日本ヒューレット・パッカード事件で違法判断。具体的病状確認なしの解雇はNG。
- 妊婦・育児中社員へのマタハラ・パパハラ:男女雇用機会均等法違反。妊婦健診・子の看護等休暇は出勤扱い。
渡辺 俊一
欠勤・社会保険・解雇に関するよくある質問(FAQ)
Q. 1ヶ月欠勤した社員の社会保険料はどうなりますか?
渡辺 俊一
Q. 欠勤が多くて出勤日数が足りない月、社会保険から外れますか?
渡辺 俊一
Q. 当日欠勤を繰り返す社員はクビにできますか?
渡辺 俊一
Q. 正社員は何日まで欠勤を黙認すべきですか?
渡辺 俊一
Q. 体調不良で欠勤が続く社員にはどう対応すべきですか?
渡辺 俊一
まとめ|正社員の欠勤対応は「ルール×記録×段階的対応」が鉄則
正社員の欠勤対応で大切なのは、次の3点セットです。
- ルール:就業規則・賃金規程で欠勤定義・控除方法・懲戒基準を明記
- 記録:欠勤理由・指導内容・診断書を客観的な証拠として残す
- 段階的対応:注意指導→診断書確認→休職→懲戒・解雇の順に手順を踏む
そして並行して、社会保険料・標準報酬月額・傷病手当金の処理も漏れなく行うことが、企業として欠勤社員に対する誠実な対応になります。「労務管理(解雇判断)」と「社会保険・給与計算」は性質の違う実務ですが、両方を統合して動かせる仕組みがあるかどうかで、企業のリスクと従業員満足度の両方が大きく変わります。
「自社の欠勤対応、本当に大丈夫だろうか?」と感じられた経営者・人事担当者の方、HR BrEdge社会保険労務士法人では就業規則整備から給与計算・社会保険手続き・解雇相談まで、ワンストップでサポートしています。お気軽にご相談ください。
この記事の執筆者
![]() 渡辺 俊一 (わたなべ としかず) |
HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 1977年兵庫県神戸市生まれ。関西学院大学法学部法律学科卒業後、日本マクドナルド株式会社に入社。2005年社会保険労務士試験に合格し、2007年に渡辺社会保険労務士事務所を開設。2016年法人化し、2025年5月に「HR BrEdge社会保険労務士法人」へ社名変更。 顧問先500社超・実績970社以上を誇り、「会社の財産は人・人・人である」を信念に、従業員・お客様・社会の「三方良し」の経営支援を実践。給与計算・社会保険手続き・就業規則・助成金申請から、IPO・M&Aに向けた労務監査まで幅広く対応。 著書『頂点をめざす!~経営者のパートナーとして歩む社労士の物語~』はAmazon「社会保険労務士の資格・検定」部門で1位を獲得。 【所属】全国社会保険労務士連合会/大阪府社会保険労務士会/一般社団法人EO Osaka |





