こんにちは。HR BrEdge社会保険労務士法人代表、特定社会保険労務士の渡辺俊一(わたなべとしかず)です。
「給料日なのに振り込まれていない…」「会社からも連絡がない、どうしたらいい?」「給料が遅れる会社、ヤバいのでは?辞めるべき?」——お給料はあなたが働いた対価で、家族の生活と将来の安心の土台です。それが当日に振り込まれない不安は、本当に苦しいものですよね。
大阪・東京・福岡・名古屋を中心に、HR BrEdgeの顧問先500社では、人事担当者からの「うちの社員が払えない月が出そう」というご相談と、社員ご本人からの「会社が払ってくれない」というご相談の両方を多数いただいています。今回は本人視点の対処法を主軸に、経営者の適法な対応もカバーする形で詳しく解説します。
結論から言うと、給料が遅れることは労働基準法第24条「一定期日払いの原則」に違反する違法行為です。「来週払う」と言われても、本来はその日に支払われるべきもの。冷静に、段階的に、記録を残しながら対応することで、ほぼすべてのケースで給料は取り戻せます。
こんなお悩みを感じていませんか?
- 「給料が1日遅れただけでも違法?騒ぐべき?」
- 「会社から連絡がない、もう逃げ出しているのでは?」
- 「3か月連続で遅延、会社が倒産しそうで不安」
- 「退職後の未払い分はどうやって取り戻す?」
- 「経営者として払えない月が出そう、違法を避ける方法は?」
この記事では、労基法24条の5原則と違法性、給料が遅れる原因と会社の「ヤバさ」見極め5項目、1日〜1か月の段階別対応マトリックス、連絡あり/連絡なしのケース別対応、遅延損害金の計算(在職中3%・退職後14.6%)、未払賃金請求の5ステップ、未払賃金立替払制度(最大8割)、辞めるべきか5基準、経営者の適法対応まで網羅的に解説します。

給料が遅れるのは違法?労働基準法24条「賃金支払いの5原則」
まず、給料を期日に支払うことは法律で義務付けられています。労働基準法24条が定める「賃金支払いの5原則」を確認しましょう。

賃金支払いの5原則
労働基準法第24条には、賃金支払いに関する次の5つの原則が定められています。
- 通貨払いの原則:現金(通貨)で支払う(給与振込は労使協定により認められる)
- 直接払いの原則:労働者本人に直接支払う
- 全額払いの原則:賃金は全額を支払う(法令・労使協定の控除を除く)
- 毎月1回以上払いの原則:少なくとも月1回以上、定期的に支払う
- 一定期日払いの原則:支払日をあらかじめ決めておく
一定期日払いの原則違反=労基法違反・30万円以下の罰金
会社が定めた給料日に賃金を支払わないことは、「一定期日払いの原則」に違反する違法行為です。労基法120条により、違反した使用者には30万円以下の罰金が科される可能性があります。「来週払う」「資金繰りが悪いから」という事情があっても、違法性が消えるわけではありません。
給料日が土日祝の場合は前営業日
給料日が土日祝にあたる場合、就業規則・賃金規程で定めがあればそれに従いますが、定めがない場合は前営業日に支払うのが原則です。「土日祝にあたるから翌営業日でいい」というのは法律上認められません。
給料が遅れる原因と会社の「ヤバさ」見極め5項目
「うちの会社、本当にヤバい?」というのは多くの方が気になるポイントです。給料遅延の主な原因と、倒産リスクを見極める5項目を整理します。
給料が遅れる主な原因5パターン
- ①資金繰りの悪化:手元現金不足で支払いができない
- ②売上の急減:取引先離脱・市場変化などで急に売上が落ちた
- ③取引先からの入金遅延:本来入る予定の代金が遅れた
- ④経営管理の不足:資金計画の甘さ・経営者の怠慢
- ⑤システムトラブル:振込システム・銀行側エラー(一時的)
システムトラブル(⑤)は1〜2日で解消するため大きな問題になりにくいですが、①②③④は会社の経営状態に関わる重大なサインです。
倒産リスクの見極め5項目
HR BrEdgeが顧問先で実際に見てきた「危ない会社のサイン」を5項目に整理します。3つ以上該当する場合は要警戒です。
- 給料遅延が3か月以上連続している(1か月単発なら回復見込みあり)
- 賞与・退職金がカット・凍結された(資金不足の確定的サイン)
- 経費削減が顕著(光熱費・備品まで節約、人員削減)
- 取引先の信用悪化情報(業界での悪い噂、納入停止等)
- 経営層の言動の変化(株主・取引先との関係悪化を示唆)
「ヤバい」と感じたら証拠保全を最優先
3項目以上該当する場合、会社の状況に関わらず証拠保全を最優先してください。給与明細・タイムカード・労働契約書・通帳記録・メール記録を全てコピーまたはダウンロードして自分の手元に保管します。最悪の場合(倒産)に備えれば、後の請求手続きがスムーズになります。
段階別対応マトリックス|1日・3日・1週間・1か月
給料が遅れた時の対応は、遅延期間によって取るべき行動が変わります。冷静に・段階的に動くことで、ほぼすべてのケースで給料は取り戻せます。

1日遅延:会社へ確認+証拠保全
給料日当日に振り込まれていない場合、まず慌てずに次の対応を行います。
- 人事・経理担当者にメールまたは電話で確認
- 給与明細・通帳の振込記録をスクリーンショット保存
- 会社からの返信を文書(メール)で残す
システムトラブル等の単純な事務ミスなら、ほぼ翌営業日に振り込まれます。ただし、それでも証拠保全だけは必ず行ってください。
3日遅延:書面で支払期日を確認
3日経っても振り込まれない場合、支払予定日を書面(メール推奨)で会社から取得します。口頭の「来週払う」だけでは証拠になりません。明文化された期日があれば、その期日に再度未払いだった場合の対応が明確になります。
1週間遅延:労基署または社労士・弁護士へ相談検討
1週間遅延すると単純な事務ミスの域を超え、会社の資金繰りに問題がある可能性が高くなります。次の段階に進みます。
- 労働基準監督署(労基署)の総合労働相談コーナーで相談
- 社労士・弁護士に第三者として状況を確認してもらう
- 同僚や他社員の状況確認(自分だけか・会社全体か)
1か月以上:内容証明・労働審判・退職判断の本格化
1か月以上遅延が続く場合は法的対応の本格化フェーズです。
- 内容証明郵便で未払賃金の請求+遅延損害金の催告(時効中断効果)
- 労基署への通報・是正勧告の要請
- 弁護士相談・労働審判の検討
- 退職・転職の本格検討(後述の判断基準5つ参照)
渡辺 俊一
連絡あり/連絡なしのケース別対応
会社から事前または事後に連絡があるかどうかで、本人の取るべき対応は変わります。3パターンで整理します。
パターンA:連絡あり(具体的な支払期日提示)
「○月○日に支払います」と具体的な期日が提示されたケース。最も穏当な状況です。
- 提示された期日を書面(メール)で会社から確認
- その期日に再度振込確認
- 再度未払いだった場合は次のパターンBへ移行
パターンB:連絡あり(理由のみ・期日不明)
「資金繰りが悪くて遅れます」「もう少し待ってください」など理由は説明するが期日が曖昧なケース。要注意です。
- 書面で具体的な支払期日の確定を要求
- 期日確定に応じない場合は社労士・弁護士に相談
- 労基署への通報の可能性も視野に入れて準備
パターンC:連絡なし
最も深刻なパターンです。連絡が取れないまま給料が振り込まれない状況。次の対応をスピード感を持って進めます。
- 内容証明郵便で督促状を送付(書面記録が確実に残る)
- 労基署へ通報・指導要請
- 同僚の状況確認・複数人で行動するのも選択肢
- 経営者が「逃げて」いる可能性を視野に、未払賃金立替払制度の準備
遅延損害金の計算|在職中3%・退職後14.6%
給料が遅れた場合、本人は遅延損害金(遅延利息)を請求できます。在職中と退職後で利率が異なります。
在職中の遅延損害金:年3%(民法404条)
在職中に給料が遅れた場合、民法404条(2020年4月改正)に基づき年率3%の遅延損害金を請求できます。計算式は次のとおりです。
遅延損害金 = 未払額 × 3% × 遅延日数 ÷ 365日
例:給料30万円が10日遅延した場合 → 30万円 × 0.03 × 10 ÷ 365 ≒ 247円
退職後の遅延損害金:年14.6%
退職後に未払い賃金がある場合、「賃金の支払の確保等に関する法律」第6条により、遅延損害金は年率14.6%と大幅に高くなります。これは退職後の労働者を保護するための特別利率です。
例:給料30万円が退職後60日未払いの場合 → 30万円 × 0.146 × 60 ÷ 365 ≒ 7,200円
退職後の方が利率が大幅に高いため、退職前に未払い分を確定させ、内容証明で請求すると効果的です。
未払賃金の請求手順|証拠集め→内容証明→労基署→弁護士
未払賃金を確実に取り戻すための標準フローを5ステップで整理します。

ステップ1:証拠集め
請求の基礎となる証拠を必ず手元に保管します。
- 給与明細(過去6か月分以上)
- 労働契約書・就業規則・賃金規程の写し
- タイムカード・勤怠記録(労働時間の証拠)
- 通帳の振込履歴(未払いの証拠)
- 会社とのメール・LINEのやり取り
ステップ2:内容証明郵便で書面請求
内容証明郵便は「いつ・誰が・どんな内容で請求したか」を郵便局が証明する制度です。時効中断(更新)の効果もあり、未払賃金請求の最初の正式な一歩として有効です。郵便局窓口で約1,500円程度で発送できます。
ステップ3:労働基準監督署へ通報・指導要請
労基署は労基法24条違反に対して是正勧告・指導を行います。費用は無料、第三者として強い圧力をかけられます。ただし労基署は労働者個人の代理人ではないため、未払い分の回収業務は基本的に労働者自身で行う必要があります。
ステップ4:弁護士相談・労働審判
労基署の指導でも会社が応じない場合、弁護士に依頼して労働審判を申し立てます。労働審判は原則3回以内の期日で迅速に解決される手続きで、訴訟より早く(数か月)結論が出ます。
ステップ5:訴訟・強制執行
労働審判でも解決しない場合は通常訴訟へ。判決後も支払いがなければ、会社の財産(預金・売掛金等)を差し押さえる強制執行が可能です。
※時効に注意:未払賃金の請求権は3年(2020年改正以降、当面3年・将来5年予定)で消滅時効にかかります。退職金請求権は5年です。早めの行動が重要です。
倒産時の救済|未払賃金立替払制度(最大8割・最高295万円)
会社が倒産してしまった場合の救済制度として「未払賃金立替払制度」があります。労働者健康安全機構が運営する公的制度です。
制度概要
会社が倒産して未払賃金がある場合、労働者健康安全機構が国の制度として、未払賃金の最大8割を立て替えて労働者に支払う制度です。後で機構が会社に求償します。
対象(法律上の倒産+事実上の倒産)
対象となる「倒産」は次の2種類です。
- 法律上の倒産:破産・特別清算・民事再生・会社更生の手続き開始決定
- 事実上の倒産:中小企業で、事業活動停止・賃金支払能力なし・再開見込みなしの状態(労基署が認定)
立替払額(最大8割・年齢別上限)
立替額は未払賃金総額の8割で、年齢別の上限額があります(最高295万円)。退職時の年齢が30歳未満は110万円、30〜44歳は220万円、45歳以上は370万円が上限の未払賃金額に対して8割が支給されます。
申請窓口と注意点
申請は退職日の6か月前の日から2年以内です。労働者健康安全機構へ書類提出が必要で、所轄の労基署または社労士・弁護士に相談すれば手続きをサポートしてもらえます。
辞めるべきか?判断基準5つ+転職活動の進め方
「給料遅延の会社、辞めるべきか」は本人にとって大きな決断です。HR BrEdgeが顧問先で見てきた事例から、判断基準5つを整理します。

判断基準5つ
| 基準 | 留まるサイン | 辞めるサイン |
| 遅延の頻度 | 1回限り | 3か月以上連続 |
| 遅延の期間 | 1〜3日で解消 | 2週間超 |
| 改善見込み | 大型受注・融資確定 | 具体策なし |
| 連絡の質 | 経営者から誠実な説明 | 連絡なし・嘘の説明 |
| 他社員の状況 | 退職者少 | 続々と退職 |
退職前にやるべき3つの準備
- 証拠保全:給与明細・労働契約書・タイムカード・メール記録の全コピー
- 未払い分の明確化:未払い額・遅延損害金の計算書を作成
- 転職活動:転職エージェント登録・求人検索を並行
退職後の未払賃金請求も可能
退職後も時効3年以内なら未払賃金を請求できます。退職後の遅延損害金は年14.6%と高利率なので、退職前に内容証明で請求しておくと有利です。
経営者向け|給料が払えない時の適法な対応
経営者の方で「払えない月が出そう」というケースもあります。違法を避け、従業員との関係も維持する適法な対応を整理します。
役員報酬カット・支払い優先順位の見直し
まず役員報酬の即時カットを検討します。中小企業の経営判断として、給料遅延を起こすくらいなら役員報酬を下げて従業員給料を守るのが正しい順序です。支払い優先順位を「給料>買掛金>諸経費>税金>銀行返済」に組み替えます。税金や銀行返済は猶予交渉が可能ですが、給料の遅延は労基法違反です。
ファクタリング・銀行融資・公的融資の活用
急場の資金繰り対策として次の選択肢があります。
- ファクタリング:売掛金の早期現金化(手数料5〜20%程度)
- 銀行融資・信用保証協会保証:短期運転資金枠
- 日本政策金融公庫:セーフティネット貸付・経営改善貸付
- 社会保険料の納付猶予:年金事務所への申請
従業員への誠実な説明と部分払い
どうしても払えない場合、経営者自ら従業員に状況を誠実に説明し、具体的な支払予定日を提示することが信頼維持の鍵です。部分払い(半額先払い等)も検討してください。書面で支払合意を取り付けると、後のトラブルを防げます。
渡辺 俊一
給料が遅れる件に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 給料が1日遅れただけでも違法ですか?
渡辺 俊一
Q2. 連絡なしの場合、すぐ労基署に行くべき?
渡辺 俊一
Q3. 遅延損害金はいくら請求できますか?
渡辺 俊一
Q4. 退職後でも未払い分は請求できますか?
渡辺 俊一
Q5. 未払賃金の時効はいつまで?
渡辺 俊一
Q6. 会社が倒産したら未払い分は諦めるしかない?
渡辺 俊一
Q7. 「来週払う」と言われたら待つべき?
渡辺 俊一
Q8. 給料日が土日祝の場合の扱いは?
渡辺 俊一
Q9. ボーナス遅延も違法ですか?
渡辺 俊一
Q10. 労基署と弁護士はどちらに相談すべき?
渡辺 俊一
Q11. 内容証明郵便の書き方は?
渡辺 俊一
Q12. 同僚と一緒に行動してもいいですか?
渡辺 俊一
Q13. 辞めるサインはどんな兆候ですか?
渡辺 俊一
Q14. 経営者が「払えない」と言ってきたら?
渡辺 俊一
Q15. 給与振込の確認はどうすればいい?
渡辺 俊一
まとめ|「冷静・段階的・記録」で給料未払いに対処
最後に重要なポイントを3つ振り返ります。
- 給料遅延は労基法24条違反の違法行為。1日でも違法ですが、まず冷静に証拠保全と会社確認から始めましょう。在職中3%、退職後14.6%の遅延損害金も請求可能です。
- 段階別対応マトリックスで動く。1日(確認+証拠)→3日(書面で期日確認)→1週間(労基署・社労士相談)→1か月(内容証明・退職判断)の流れで進めれば、ほとんどのケースで給料は取り戻せます。
- 会社の倒産時も諦めない。未払賃金立替払制度(最大8割・最高295万円)で国が救済してくれます。退職日の6か月前から2年以内が申請期限です。
HR BrEdge社会保険労務士法人では、大阪・東京・福岡・名古屋を中心に全国47都道府県対応で、未払賃金請求のサポート・労基署同行・内容証明郵便作成・未払賃金立替払制度申請支援まで、本人の側でも経営者の側でも一気通貫でサポートしています。「給料が遅れて困っている」「払えない月が出そうで困っている」どちらのご相談も大歓迎です。一人で抱え込まず、ぜひお気軽にご相談ください。
渡辺 俊一
この記事の執筆者
![]() 渡辺 俊一 (わたなべ としかず) |
HR BrEdge社会保険労務士法人 代表 1977年兵庫県神戸市生まれ。関西学院大学法学部法律学科卒業後、日本マクドナルド株式会社に入社。2005年社会保険労務士試験に合格し、2007年に渡辺社会保険労務士事務所を開設。2016年法人化し、2025年5月に「HR BrEdge社会保険労務士法人」へ社名変更。 顧問先500社超・実績970社以上を誇り、「会社の財産は人・人・人である」を信念に、従業員・お客様・社会の「三方良し」の経営支援を実践。給与計算・社会保険手続き・就業規則・助成金申請から、IPO・M&Aに向けた労務監査まで幅広く対応。 著書『頂点をめざす!~経営者のパートナーとして歩む社労士の物語~』はAmazon「社会保険労務士の資格・検定」部門で1位を獲得。 【所属】全国社会保険労務士連合会/大阪府社会保険労務士会/一般社団法人EO Osaka |





