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従業員の給与は簡単には下げられない?~後編~

2022.08.02 社労士コラム

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本コラムでは、従業員の給与を減額する際の3つの留意ポイントをご紹介しております。

前編では、以下の2つを紹介いたしました。

1.従業員の同意を得られているか

2.客観的に合理的な根拠があるか

  (例)根拠が認められるケース

  •  -1- 本人の勤務態度や言動等に著しく問題があり必要な減給処分
  •  -2- 人事評価での降格に基づいた減給
  •  -3- 就業規則の給与規定改定に伴った減給


本コラムの前編はこちら


2の客観的に合理的な根拠とみなされるケースは、実はもうひとつ挙げられます。

3つめのポイントの前に、追加でご紹介します。

ポイント2: 客観的に合理的な根拠があるか

-4- 業績不振により最終手段としてやむを得ず行った減額

業績不振という理由があっても、やはり給与の減額は不利益変更となりますので、会社の一存で一方的に減額することは認められません。

ですので、前編で記述したとおり、従業員の個別の同意をとるか、就業規則の変更などの正式な効力のある手段をもって、減額を実施することが前提となります。

また、業績不振を理由に賃金を減額する際は、経営上やむを得ない事情があると客観的に判断されることも必要です。

そのためには、会社が従業員の被る不利益を最小限にする努力をしたと認められることが必要になってきます。

なぜなら、賃金は従業員の経済生活に大きな影響を与える要素であるため、慎重に取り扱われなくてはならないと一般的に解されるからです。


すなわち、業績不振を理由にすぐに従業員の給与減額に着手するのではなく、以下の要素から優先的に経営状態回復のための措置を講じていくことが要求されます。

  • ✔ 役員報酬の減額

  • ✔ 人件費以外の経費の削減


その上で人件費カットが不可避であれば賃金減額もやむなしですが、なるべく従業員の負担を軽減するために、以下の順番で実施することが望ましいでしょう。

  • ✔ 賞与の減額

  • ✔ 従業員給与の一時な減額

  • ✔ 従業員給与のベースカット

また、従業員の中でも管理職など役職の上位者から段階的に実施することが望ましいとされています。

これらの段階を経ながら、前述のとおり、従業員の個別の同意をとったり、就業規則の変更などの正当な手段をもって改定しておけば、やむを得ない給与減額として 一般的に 認められる可能性が高くなります。

ポイント3: 給与減額の程度は適切か

労働基準法第91条により、減給の制裁をする場合は賃金総額の10分の1までと制限されています。

すなわち、制裁(懲戒による減給処分)という理由があれど、労働者の生活を脅かすような多額の減額は認められないという趣旨が見てとれます。

労働基準法第91条が適用されるのは懲戒による減給処分だけですが、法の趣旨を鑑みると、懲戒以外の理由による減給も概ね10%程度に留めておくのが適当といえるでしょう。


ちなみに、上記条文の制限は給与のみに適用され、賞与に関しては一切法の制限がありません。就業規則で厳密な支給額が言及されておらず、支給有無についても明言されていない場合は、極端に支給額が少なくても(不支給でも)違法とはなりません。減額に際して就業規則の変更も不要です。

「賞与は基本給の〇か月分を支給する」と支給額が定められていたり、「支給することがある」ではなく「支給する」と支給する以外の例外が設けられていない規定になっているようでしたら、支給額や支給有無を変更することはもちろん不利益変更になりますので、ご注意ください。

まとめ

前編・後編に分けて、減給の際の3つの留意ポイントを解説してまいりました。

1.従業員の同意を得られているか

2.客観的に合理的な根拠があるか

3.給与減額の程度は適切か

以上の3点がすべて揃っていれば、会社として適切な対応は取れており、減給をきっかけにトラブルに発展する可能性もかなり小さいと言えるでしょう。

また、2の根拠にしっかり該当しているのであれば、従業員本人の同意がなくとも法律上の減給の効力は生じますので、万が一トラブルに発展した場合の訴訟リスクはかなり小さくなります。

減給の要因に応じて会社がとるべき対応は分かれますので、このコラムを参考にしていただき、適切な対応を徹底していきましょう。

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