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特定技能食品製造の衛生管理指導法|現場の混乱を防ぎ監査を突破する教育の全手順
食品製造の現場で、特定技能外国人の受け入れが進む中、「特定技能食品製造の衛生管理指導法」に頭を悩ませている経営者や現場責任者の方は少なくありません。「何度注意しても手洗いの手順が守られない」「清掃のクオリティにバラつきがある」といった問題は、単なる本人の怠慢ではなく、文化的な背景や「伝え方」のミスマッチが根本原因であることが多いのです。
この記事では、特定技能外国人が自律的に衛生管理を行えるようになるための具体的な教育手順を、数多くの外国人雇用支援に携わってきた社会保険労務士の視点から解説します。これを読めば、現場の「言ったはず」というストレスを解消し、入管や保健所の監査も自信を持って対応できる強固な管理体制を構築できます。
Step1:衛生概念のギャップを特定し再定義する
【結論】このステップでは、日本人と外国人材の間にある「清潔」の基準のズレを可視化し、自社の基準を明確に定義します。
多くの現場で指導が形骸化する最大の理由は、指導する側と受ける側の「当たり前」が異なることにあります。例えば、高温多湿な国出身の方と日本育ちの方では、細菌繁殖に対する危機感のレベルが異なる場合があります。これを個人の資質の問題と片付けず、まずは認識のギャップを埋める作業が必要です。
- 現状の認識レベルを確認する:「この状態は清潔か?」という写真クイズを行い、彼らの基準を把握します。
- 基準を数値化・視覚化する:「きれいに洗う」ではなく「泡を30秒つける」「水滴を完全に拭き取る」など、客観的な行動基準に落とし込みます。
- 背景を説明する:「なぜこれが必要か」を、食中毒のリスクや日本の消費者の期待値(クレーム事例など)を交えて伝えます。
【社労士視点の判断ポイント】
既に雇用している場合は、抜き打ちで手洗いチェッカー(蛍光ローション)などを使い、現状を客観的に見せることから始めます。これから採用する場合は、面接時に衛生管理への意識を確認する質問(例:「前の職場で一番厳しかったルールは?」)を組み込むのが有効です。
Step2:視覚的・体感的なマニュアルを作成する
【結論】このステップでは、言語の壁に依存しない、動画や画像を主体とした「見てわかる」マニュアルを作成・運用します。
特定技能1号の日本語要件(N4相当)は、日常会話レベルであり、専門的な衛生用語や細かいニュアンスを文章だけで理解するのは困難です。文字だらけのマニュアルは、読まれないだけでなく、誤解を生むリスクがあります。
- 作業動画の撮影:正しい手順(Good)と、よくある間違い(Bad)を比較できる動画を撮影します。
- ピクトグラムと写真の活用:「禁止」「必須」などの指示は、ISO準拠のシンボルマークや実際の現場写真を使用します。
- 多言語併記よりも「やさしい日本語」:翻訳に頼りすぎず、「あらう」「ふく」「すてる」など、短く明確な日本語を使います。
【実務での注意点】
現場へのスマホ持ち込みが禁止の場合は、休憩室や更衣室にタブレットを設置し、作業前に必ず視聴するフローを作ります。持ち込み可(専用端末等)の場合は、作業場所ごとにQRコードを掲示し、その場で手順を確認できるようにします。
Step3:条件分岐型チェックリストを導入する
【結論】このステップでは、単なる確認作業で終わらせない、判断を伴う「条件分岐型」のチェックリストを導入します。
「手洗いをしましたか? □はい」という形式のリストは、忙しい現場では無意識にチェックを入れるだけの作業になりがちです。これを防ぐために、具体的な状態を確認し、異常があれば次の行動を促す仕組みにします。
- Yes/Noチャート式の導入:「水温は40度以上か?」→Noなら「ボイラーを確認」へ誘導するような形式にします。
- 異常時のアクション定義:「冷蔵庫の温度が5度以上」の場合、「リーダーに報告する」のか「設定を変える」のか、具体的な行動を記載します。
- ダブルチェックの徹底:特に重要な工程(加熱殺菌など)は、本人だけでなく管理者の確認欄を設けます。
【社労士視点の判断ポイント】
異常を発見した場合、その場で処置して完了とするか、必ず管理者に報告させるかは、リスクの大きさによって区分けします。食品安全に直結する項目(加熱時間不足など)は、必ず「作業を止めて報告」させるルールを徹底してください。これが重大事故を防ぐ最後の砦となります。
Step4:教育実施記録を作成・管理する
【結論】このステップでは、入管や保健所の監査に耐えうる、客観的で継続的な教育実施記録を作成し保管します。
特定技能制度において、登録支援機関や受入れ機関には定期的な面談や報告が義務付けられていますが、衛生教育の記録も同様に重要です。監査時に「口頭で教えました」は通用しません。「いつ、誰が、何を教え、本人がどの程度理解したか」を書面で残す必要があります。
- 理解度テストの実施と保管:教育後に簡単なテストを行い、その答案用紙を保管します。
- 署名の徹底:教育を受けたことの証明として、母国語で署名をもらいます。
- 定期的な再教育(リフレッシュ教育):入社時だけでなく、半年ごとやルール変更時に実施し、履歴を更新します。
【実務での注意点】
自社で支援を行っている場合は、支援実施状況報告書(四半期ごとの報告)に衛生教育の実施内容を記載することで、適正な支援を行っているアピールになります。登録支援機関に委託している場合でも、現場の衛生教育記録は企業側で保管し、いつでも提示できるように整理しておくことが、コンプライアンス順守の観点から不可欠です。
Step5:指導者から伴走者へ意識を変革する
【結論】このステップでは、一方的な指導ではなく、特定技能外国人が自ら衛生管理に参加できる組織文化を醸成します。
「怒られるからやる」という受動的な姿勢では、監視の目が届かないところで手抜きが発生します。彼らを「労働力」としてだけでなく、チームの一員として尊重し、信頼関係を築くことが、結果として最も高い衛生レベルを実現します。
- 「なぜ?」を問いかける対話:ミスがあった際、頭ごなしに叱るのではなく「なぜそうなったか」を一緒に考えます。
- 改善提案の奨励:「もっとこうしたらやりやすい」という意見を吸い上げ、採用された場合は評価します。
- リーダー役の育成:特定技能外国人の中から衛生リーダーを任命し、母国語での指導を任せます。
【社労士視点の判断ポイント】
リーダー候補がいる場合は、彼らに新人教育の一部を任せることで、責任感が生まれ定着率も向上します。まだ候補がいない場合は、日本人社員とのペア作業を増やし、コミュニケーションの頻度を高めることから始めましょう。孤立させないことが、ルールの形骸化を防ぐ第一歩です。
まとめ
特定技能外国人の衛生管理指導は、単にマニュアルを渡すだけでは完了しません。文化的な背景を理解した上での基準のすり合わせ、視覚的なツールの活用、そして思考停止を防ぐチェックリストの運用が不可欠です。さらに、それらを記録として残し、組織全体で彼らをサポートする体制を作ることで、現場の混乱は解消され、監査にも強い企業体質へと生まれ変わります。
特定技能・外国人雇用に関する詳しい情報はこちらのブログ一覧もご参照ください。
監修者プロフィール
本記事は、HR BrEdge社会保険労務士法人に所属する特定社会保険労務士・渡辺俊一が監修しています。法人顧問業務を中心に、給与計算、労務相談、就業規則整備など、企業のバックオフィス全体を支える実務に携わってきました。
日常的な労務相談から、制度設計、実務運用、トラブル予防まで、「現場で実際に起こること」を前提とした支援を行っています。特に、従業員100名以上規模の企業における実務の属人化や判断が分かれやすい場面への対応を得意としています。
- 社会保険労務士(登録番号:第27070207号・平成19年11月1日登録・平成24年5月1日特定社会保険労務士付記)
- キャリアコンサルタント(登録番号:16131446・平成28年8月23日登録)
- HR BrEdge社会保険労務士法人 代表社員
- 法人顧問を中心とした労務管理・給与計算の実務支援
- 就業規則・社内ルール整備を含む制度運用支援
- 企業向け労務管理に関する書籍・実務資料の執筆・監修
- 経営者・人事担当者向け研修・セミナー講師実績
制度の解説にとどまらず、「このケースではどう判断すべきか」「どこでトラブルになりやすいか」といった実務上の判断ポイントを重視した情報提供を行っています。
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